成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313489

作品紹介・あらすじ

需要が慢性的に不足して生産力が余り、それが失業を生み続ける現在の日本経済。これまでの経済政策はどこが問題なのか。新しい危機にはいかに対応すべきなのか。新古典派経済学の欺瞞をあばき、ケインズ経済学の限界を打破する、画期的な新しい経済学のススメ。閉塞状況を乗り越え、楽しく安全で豊かな国へと変貌するための処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 経済
    政治

  • 管政権の経済政策ブレーンをつとめ、「増税で景気回復!」みたいな主張が切り出して取り上げられて話題になっていたが、もう少し奥があるようなのでとりあえず読んでみる。

    流動性選好っぽいのや財政支出重視でケインズ派なのかな?と思ったが、そういう訳でもないらしい。ケインズ派の想定する不況は「短期」の現象だが、こちらは「長期」の不況を想定しているという。さらに乗数効果への批判のところで分かったが、財政支出も増減税もぜーんぶクラウディングアウトしてしまいますよ、という所は新古典派的。けっきょく財政によって創り出される、所得移転以外の効用そのものが問題であり、そこから経済成長・雇用確保ができると。発想の根っこは新古典派に近いと思うが、供給力は足りているとの認識で需要サイドを問題にしているところ、貨幣への偏愛を問題にしているところが違う、かな?

    お金を保有したくなってしまう欲求にはキリがないというのがとにかく大事なポイントだ。この場合の「お金」は通常の意味での貨幣に限らない。本書ではあまりそこは直接に解説されていないが、ところどころの記述から推測するに、株だって土地だって価値を表象していて取引がされるのであれば「お金」的要素があると考えてよいみたいだ。そうなると、お金への欲望が土地や株に向かえばバブルが起こり、お金そのものに向かえばデフレと不況が起こる。両者はコインの裏表でしかなく、背後にあるのはモノ・サービスに対する供給力過剰と需要欠如だ。これは肌感覚的に説得力があるな。

    かと言って、、、じゃあ需要不足を解消するために、政府が高齢者へ現物支給するだとか、環境だ新エネだとか言われると、「ホントにそこまでのことなのか?」と思ってしまう。いや、議論の方向性は分かる。社会保障にしろ復興にしろ環境にしろ、ある程度やった方が良さそうで、政府がやることでよさそうで、今現在十分にできていないことはたくさんある。バカバカしい公務員人件費削減の自虐プレイなんかしていないで、多少は増税しようが何しようがそういうことにしっかり資源を投入することは必要だろう。でも、この本の議論はあんまりに極端で引いてしまうところもある。そこまでしなくとも需要を見出すことはできるのでは?具体的にどうしろとは言えませんが。。。高齢化しても供給力過剰は続くとの見方だが、そこは危ういのではないか。リタイア年齢を延ばす余地がどれほどあるか、いわゆるロスジェネで未熟練な労働者(あるいは失業者)が増えているであろうことなど考えるとどうだろう。

    金融緩和の効果に対しては否定的だが、ここは分量も少ないし、議論もなんだかフワッとして説得力がない。しかし、こここそ、貨幣愛が株・土地に向かってしまう可能性を持ち出すと面白いのでは。

    しかし経済学ではいろんな論争があるが、意外と最大公約数がありそうと言うか、政策の実施にあたってはその論争にケリをつけなくたってできることは多い気がする。小野理論は理屈は違ってもけっきょく処方箋はケインズ理論と似ているし、輸出で稼ぐことばかり考えていないで稼いだ国富で消費しろと言うと、野口悠紀雄とまで似たことを言っていることになる。

  • 【由来】
    ・アテネの最終日で

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 現在の日本の経済状況の閉塞感は「発展途上社会」から「成熟社会」に移っていることを認識していないで、「発展途上社会」では有効な経済方策を「成熟社会」で実現しようとしているところにあるそうだ。

  • 経済学の基本理論に忠実で、出るかねと入るかねは同じということで説明している。しかし、そこでの貧困で喘いでいる人の姿が書かれていないのはなぜだろう。

  • 【版元】
    著者:小野善康
    通し番号 新赤版 1348
    ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 経済
    刊行日 2012/01/20
    ISBN 9784004313489
    Cコード 0233
    体裁 新書・並製・カバー・228頁

    需要が慢性的に不足して生産力が余り,それが失業を生み続ける現在の日本経済.これまでの経済政策はどこが問題なのか.新しい危機にはいかに対応すべきなのか.新古典派経済学の欺瞞をあばき,ケインズ経済学の限界を打破する,画期的な新しい経済学のススメ.閉塞状況を乗り越え,楽しく安全で豊かな国へと変貌するための処方箋.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b226135.html



    【長い目次】
    http://d.hatena.ne.jp/Mandarine/20150801

    【簡易目次】
    はじめに(二〇一一年一一月) [i-vii]
    目次 [ix-x]

    第1章 発展途上社会から成熟社会へ 001
    1 お金をめぐる社会の変遷 002
    2 成熟社会に足りないもの 022
    3 混乱する経済政策 040

    第2章 財政政策の常識を覆す 053
    1 乗数効果という幻想 054
    2 雇用創出と税負担 070
    3 財政支出の使い道 084

    第3章 金融政策の意義と限界 105

    第4章 成熟社会の危機にどう対応するか 123
    1 高齢化社会と少子化問題 125
    2 災害対応 140
    3 環境・エネルギー政策と市場の創出 161

    第5章 国際化する経済 169
    1 内需と為替レート 170
    2 企業の海外移転と産業保護 189

    おわりに [207-209]
    主要参考文献 [1-6]

  • レビュー省略

  • 元内閣府経済社会総合研究所所長・小野善康氏が、現代の日本を「成熟社会」と銘打って、日本経済の諸問題について説く本です。難解な『不況のメカニズム』(中公新書)と異なり本書ではグラフや数式がほとんど用いられておらず、そういうものがキライな読者でも直感的に理解できるような説明になっているように思います。

    まず、なぜデフレがここまで深刻になったのかという問題。これに関してはいろんな論者がいろんなことを言っていますが、わたしには著者の説明がいちばん腑に落ちるように感じます。特に以下の文章にはいささか感情的な表現も含まれていて、著者の言わんとするところが余すところなく伝えられていると思われます。

    "結局、お金をためることしか能のない人は、どうしたら物質的にも精神的にも充実した豊かな時間を送ることができるのか、これを考えることができないのです。自分で感動する物やサービスが考えられないので、一生懸命働いて作るだけで自分では使わず、まだ物やサービスが十分には行き渡っていない近隣のアジア諸国の人たちに楽しんでもらって、彼らからお金を受け取って満足している。そういう態度こそが慢性的な需要不足を生んで、不況を長引かせているのです"(P.26)

    "不況のときこそ公共心がいるのに、また、それによって自分にもプラスになる可能性が高いのに、そのときこそ人びとに余裕がなくなり、目先だけを考えて一線も出したくないと言い出す。政治家も、税負担や政府事業の拡大など人気のない政策を掲げるより、負担の軽減や無駄の排除と言ったほうが有権者の支持を得やすい。そのため、たとえ実際の経済のメカニズムがわかっていても、必要な政策を有権者に訴えようとはしません。その結果、財政の無駄の排除という名目で行われる事業縮小と、失業拡大という本当の無駄の拡大が起こって、経済は停滞し続けるのです"(P.99)

    では、どうするか。処方箋の方はこれまでと同様、悪く言えば「具体的にどうやんの?」「そんな(既得権者に不利な)話が本当に通るの?」という感じの、増税&再分配(消費性向の高い家計へのアプローチ)が主になっています。

    "前項に述べた消費全体への波及効果は、国民の可処分所得が増えるから消費が増える、という乗数効果の論理とはまったく違います。増税してもその分は所得でもどしますから、経済全体の可処分所得は変わらず、乗数効果が考えるような経路では消費は増えません。消費が増えるのは、雇用が生まれデフレが軽減されるからで、この付加的消費増大によって経済活動が拡大し、結果として国民所得が増大するのです"(P.75)

    "政府が少しでも役に立つ公共事業をやればいいと言うと、政府にそんな判断能力はない、という反論をする人が出てきます。しかし、ここで言っているのは、投入金額を越えるだけの便益を生む事業を考えるべき、ということではなく、採算を度外視してもできるだけ多く役に立つ事業やサービスを考えるべき、ということなのです。それなら、民間に要求される基準、すなわち赤字企業を再生させるような優れた経営能力まではいりません"(P.103)

    読めば読むほど、この人が「変わった学者」だと言われている理由がよくわからなくなってきました。実現性には留保がつくとしても、マクロ経済学・有効需要管理政策の基本から極端に外れたことを言っているわけではないと思いますし、構造改革や金融緩和のことばかり強調する方々よりも、はるかにまっとうなことを言っているように思えます。

  • 目からウロコの本です。ある対談集で著者の名前を知り単著を読んでみたのですが、現在の経済に関する状況が次々と論破されていき、驚きの連続でした。

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著者プロフィール

小野善康

大阪大学社会経済研究所特任教授。1951年(昭和26年)、東京都に生まれる。東京工業大学工学部社会工学科卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。武蔵大学助教授、東京工業大学教授、大阪大学社会経済研究所教授・所長、内閣府経済社会総合研究所所長などを経て、現職。大阪大学名誉教授。専攻、マクロ動学、国際経済学、産業組織。著書に『寡占市場構造の理論』『国際企業戦略と経済政策』(日経経済図書・文化賞受賞)、『貨幣経済の動学理論』『不況の経済学』『金融 第2版』『景気と経済政策』『国際マクロ経済学』『景気と国際金融』『誤解だらけの構造改革』『節約したって不況は終らない。』『不況のメカニズム』『成熟社会経済学』『消費低迷と日本経済』など。

「2022年 『資本主義の方程式』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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