飯舘村は負けない――土と人の未来のために (岩波新書)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313571

作品紹介・あらすじ

村に放射能が降った。浜の避難者を懸命に受け入れた人々への全村避難指示、不安と混乱。家を牛を、豊かな土を、丹精込めた村を捨てるのか。世界中が注視するなか、役場の奮闘、若者の発信、女たちのがんばり、諦めない人々の長いたたかいが始まる。寄り添ってきた研究者が様々な村民の声を拾い、未来のために報告する。

感想・レビュー・書評

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  • カテゴリ:図書館企画展示
    2016年度第9回図書館企画展示
    「災害を識る」

    展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。

    開催期間:2017年3月1日(水) ~ 2017年4月15日(金)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

  • 震災前の「までいな」村づくりの経緯も含め、震災後〜放射能に翻弄される現在までのお話。見えない放射能の被害で、村の未来もなかなか見えてこない訳ですが、それを村・村民で決断するのも当然難しい。村を移転させるにしろ、自然消滅させるにしろ、東電の保障だけではどうにもならないし、国もなにかしてくれるわけでもないし…。東京の電力のためにこうやって苦しんでいる多くの人たちがいることを忘れないようにしよう。

  • 9784004313571 241p 2012・3・22 1刷

  • 授業のために手にした本。
    内容は原発事故で全村避難をさせられた飯舘村の過去、現在のことが書かれている。
    村といえば、限界集落をイメージしやすいが、飯舘村はかなり頑張っていた村。
    地方行政だけに任せるのではなく、村民が積極的に関わってより良い村を目指していた村。
    そんな村があの出来事で、住む場所も心の繋がりもバラバラにされてしまった事実に言葉がなくなる。

    この本には解決策を含めた結論は書かれていない。
    でも、それは、これが現在進行形だから書かれるはずがないこと。
    原発事故での様々な被害は、まだ現在進行形。
    それを改めて感じた本でした。

  • 飯舘村は警戒区域・避難準備区域以外で全域にわたって避難指示が出された唯一の自治体であったことから、マスコミも連日連夜取り上げ、テレビ、新聞、あるいは雑誌などで村民の声を聞くことが多い(中略)

    ある側面を切り取って誇張し、過大に取り上げる報道が、村の現実からかけ離れていると思うことも少なくない。さらに恐るのは、メディアが、バイアスのかかった村の情報を切り取るようにして視聴者・読者に提供したあげく「飯舘村」を消費しきって捨てていくことである。


    はじめにより。

  • 「村」というものが、どこも限界村落というイメージではなく、「がんばる村」が飯舘村だったのだ。
    奇しくも、原発災害により有名になった村で、しかも受難を受けるべく、頑張っているのに、天から降ってわいた「放射能」
    SPEEDIの情報が遅きに失したために、たぶん、多くの村民が被爆したに違いないのに・・・・・。
    我が身であれば、怒り心頭に発していたに違いない。
    あらためて、原発の必要性そのものが問われているのかもしれない。

  • (2012.04.19読了)(2012.04.08借入)
    【東日本大震災関連・その76】
    1990年から飯舘村と関わってきた著者たちによる飯舘村についてのレポートです。
    村づくりが、多くの村民の参加により進められてきていたこと、それが原発事故により全村避難になり、それに対して、国に多くの要望を出したり、今後の計画を立案しながら、帰村に向けて進めようとしているけれど、放射能の除染は無理と見切りをつけ帰村はあきらめ、どこか別のところに村を再建する方向を探り人たちもいる、というようなことが述べられています。非常に難しい問題を突き付けられている人たちの動きに今後も注目していきたいと思います。

    【目次】
    はじめに
    第1章 村に放射能が降った
    第2章 村はどう対処したか
    第3章 村づくりのこれまで
    第4章 いのちと健康を守る
    第5章 なりわいを守りたい
    第6章 一人ひとりの復興へ
    あとがき

    ●避難しなくていいのか(14頁)
    「国が大丈夫だと言ってるんだから大丈夫」
    (計測値が高いので)「かなりまずい状況です、あり得ない状況です」
    ●IAEA勧告(21頁)
    3月30日、IAEAは、「飯舘村の放射線レベルが避難基準の二倍に達した」とし、飯舘村を避難勧告の対象にするよう、日本政府に呼びかけた。飯舘村では一平方メートル当たり200万ベクレル(ヨウ素131とセシウム137)を検出したという。
    ●4.11(27頁)
    4月11日、国は新たな避難区域の設定を発表した。それにより、村は1カ月後をめどに「当該区域外へ避難のための立ち退きを行う」こととなる「計画的避難区域」となった。
    ●全村見守り隊(48頁)
    「いいたて全村見守り隊」は、20行政区を三交代制で24時間パトロールする。各行政区ごとに十数人ずつで組織され、一班二人編成で行政区内の各戸を回り、荒された後がないかを確認したり、不審な車や人を見つけたら警察に通報したりする。
    ●除染(53頁)
    土壌汚染を除去して、放射線量を低減させる道筋を、わが国の英知を結集してまとめてほしい
    ●故郷再生(56頁)
    村は、9月28日付で、「豊かなふるさとを再生するために」と題する、飯舘村除染計画書を作成し国に提出した。除染計画の作成は、福島県内の自治体で最も早かった。村の除染計画は、住環境については二年程度で追加被曝線量年間1ミリシーベルト以下に、農地については5年程度で土壌1キロ当たり放射性セシウム1000ベクレル以下に、森林については20年程度で土壌1キロ当たり1000ベクレル以下を目指す、とする。
    ●帰村か移住か(189頁)
    除染して帰村か、賠償・補償をもらって移住か
    ●全村避難の結果(201頁)
    飯舘村では、全村避難の結果、約6200人の村民のうち、9割弱は福島県内に、そして全体の約85%は、村が目標とした「村から車で1時間以内のところ」に避難することになった。しかし、約1700であった世帯数は、実質2700世帯に増え、家族がバラバラにならざるを得なかった。仮設住宅、公営宿舎に入居した世帯は約30%で、70%は借り上げ住宅に入居した。
    ●除染の手順(225頁)
    飯舘村は集落ごとに除染を進める原則を打ち出し、「標高の高い地域から作業する」という方針を打ち出した。家屋の周辺を除染しても、雨が降ると周囲の山林から放射性物質が流れ込んでくるためだ。

    ☆関連図書(既読)
    「食卓にあがった死の灰」高木仁三郎・渡辺美紀子著、講談社現代新書、1990.02.20
    「ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間」菅谷昭著、ポプラ社、2001.05.
    「緊急解説!福島第一原発事故と放射線」水野倫之・山崎淑行・藤原淳登著、NHK出版新書、2011.06.10
    「津波と原発」佐野眞一著、講談社、2011.06.18
    「前へ!-東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録-」麻生幾著、新潮社、2011.08.10
    「災害論-安全性工学への疑問-」加藤尚武著、世界思想社、2011.11.10
    「南相馬10日間の救命医療」太田圭祐著、時事通信出版局、2011.12.01
    「市民の力で東北復興」ボランティア山形、ほんの木、2012.01.15
    「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
    「見捨てられた命を救え!」星広志著、社会批評社、2012.02.05
    「ふたたびの春に」和合亮一著、祥伝社、2012.03.10
    「これから100年放射能と付き合うために」菅谷昭著、亜紀書房、2012.03.30
    (2012年4月21日・記)

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著者プロフィール

1952年北海道生まれ。北海道大学大学院教育学研究科博士後期課程終了、博士(教育学)。現在福島大学行政政策学類教授。著書に『地域における教育と農』(共著、農文協、2006年)等。

「2011年 『小さな自治体の大きな挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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