マヤ文明――密林に栄えた石器文化 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313649

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むまでマヤ文明に関する知識は殆どありませんでした。多くの人が誤解されていると、この本の著者が解説していますが、マヤ文明はアンデス文明と共に世界六大文明(私が習ったときは四大文明でしたが)を構成する一つだそうです。

    今年(2012)の12月22日には、マヤ暦では最後の日であると一時期は終末論とともに論じられたことがありましたが、この世の終わりではないものの、一つの時代の区切りを示しているのかもしれません。

    本日は日本では総選挙があり、多分政権が民主党から交代することになるでしょう。来年からは日本もこれまでとは異なった顔を見せていくのかもしれません。そんなことを、この本を読みながら感じました。

    以下は気になったポイントです。

    ・本書は、マヤ文明を築いた人々の活き活きとした生活や世界観を描き出して、マヤ文明の実像を紹介する最新の入門書である(はじめにp3)

    ・翡翠(ひすい)は緑色の硬い玉であり、メソアメリカでは、グアテマラ高地だけで産出、マヤ人にとって、緑と青は世界の中心の神聖な色であった、緑と青を区別しなかったのは日本人の「青信号」と似ている(p9)

    ・世界七大陸のうち、人類が最後に到達したのがアメリカ大陸、コロンブス以前のアメリカ大陸は、1万年以上にわたってモンゴロイドの大陸であった(p11)

    ・アステカ王国と南米インカ帝国は、マヤ文明(前1000-16世紀)よりもずっと後、スペイン人が侵略した16世紀の直前に発展した(p13)

    ・コロンブスによるアメリカ大陸の発見は、世界の食文化革命をもたらした、トウモロコシ、トマト、カボチャ、トウガラシ、ジャガイモ、サツマイモ、インゲンマメ、カカオ、バニラ、たばこ、ゴム等、世界の作物の6割はアメリカ大陸原産(p15)

    ・マヤ文明は9世紀に突如消滅した謎の文明と誤解されるが、スペイン人が16世紀に侵略するまで盛衰を繰り返しながら発展した(p16)

    ・マヤ人は20進法を使っていた、手足両方の指で数を数えたから(p22)

    ・マヤの支配層は、365日暦、260日暦をはじめ、さまざまな暦を複雑に組み合わせた。小数を使わずに、149月齢が4400日という太陰暦に関する等式を編み出した、金星の5会合周期と365日暦の8年と同じであることも発見した(p23)

    ・マヤ地域では、多様な諸王国が、遠距離交換ネットワークを通して様々な文化要素を共有したので、一つの文明にくくれる(p25)

    ・マヤの東西南北の色は、それぞれ、赤・黒・黄・白、これは4種類のトウモロコシの色と同じ(p26)

    ・260日暦は、13の数字と20個の日の名前を組み合わせた、365日暦はひと月が20日の日が18と、最後に5日だけの短い月がついた、閏年がない365日の1年が52回の周期で循環、つまり260日暦と365日暦の組み合わせは、現代暦で、52年(260と365の最小公倍数)で一巡した(p35)

    ・マヤ文明のいかなる碑文にも、2012年の世界の終末は記されていない(p36)

    ・文字の読み書きは、日本の平安時代と同様に、王族・貴族の男女の秘儀であった(p43)

    ・トウモロコシは、麦、稲と共に、世界三大穀物を構成する、トウモロコシは100-200粒、小麦は4-7粒しか収穫できなかった(p125)

    ・農耕革命が起こらなかったのは、トウモロコシの栽培化と、ゆっくりとした品種改良にある(p128)

    ・四大文明では、船の通れる大河川流域で大規模な灌漑農業が発達したが、マヤ文明の集約農業では、主として中小河川、低湿地を利用して灌漑農業、段々畑、家庭菜園等があった(p142)

    ・マヤ低地北部では、南部の多くの都市が衰退した古典期終末期(800-1000)に全盛期に達した、南部は8~10世紀にかけて衰退した(p189)

    ・マヤ文明の諸都市は、スペイン人によって破壊された、スペイン人や旧大陸の家畜が持ち込んだ天然痘、はしか、チフス、インフルエンザ等の新しい病気が免疫力のない先住民の間で大流行した(p200)

    2012年12月16日作成

  • もう少し 2012/05/28

著者プロフィール

茨城大学人文社会科学部教授(マヤ文明学,メソアメリカ考古学,文化人類学専攻)。
1962年京都市生まれ。東北大学文学部史学科考古学専攻卒業。ピッツバーグ大学人類学部大学院博士課程修了。人類学博士(Ph.D.)。1986年以来,ホンジュラスのラ・エントラーダ地域,コパン遺跡,グアテマラのアグアテカ遺跡,セイバル遺跡,メキシコのアグアダ・フェニックス遺跡や周辺遺跡などでマヤ文明の調査に従事している。「古典期マヤ人の日常生活と政治経済組織の研究」で日本学術振興会賞,日本学士院学術奨励賞を受賞。日本を代表するマヤ文明学の推進者。
【主な著書】
『マヤ文明を知る事典』(東京堂出版,2015年),『マヤ文明 密林に栄えた石器文化』(岩波新書,2012年),『古代メソアメリカ文明 マヤ・テオティワカン・アステカ』(講談社選書メチエ,2007年),『古代マヤ 石器の都市文明[増補版]』(京都大学学術出版会,2013年)など多数。他,欧文による研究書・論文多数。

「2022年 『マヤ文明の戦争 神聖な争いから大虐殺へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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