グリーン経済最前線 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313670

作品紹介・あらすじ

経済危機から抜け出せない先進国、資源不足と環境汚染に悩む新興国、貧困に苦しむ途上国。追い打ちをかける気候変動と原発事故。これらはすべて、二〇世紀型経済の負の側面だ。世界ではすでに、資源消費を減らし、自然との共生を目指す、グリーン経済に向けた競争が始まっている。中国など大国の動向と世界のユニークな試みを紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 面白いと思ったら末吉さん!とくにアグロフォレストリーの話が面白かった。

  • S519-イワ-R1367 300221686

  • 20世紀型の経済の下では、企業は利潤を追求し、結果的に各国の経済を「成長」させることが最も重要だとの考え方が一般的だった。産業活動の結果として出てくる二酸化炭素は単に大気中に出してしまえばそれで終わりだった。だが、いまや企業は「二酸化炭素の排出はコストである」という価値観への転換を迫られている。
    「労働生産性」や「経済的生産性」の向上が競争の原理だった20世紀の経済とは異なり、「炭素生産性」が新たな競争原理として浮上してきたといえる。(p.37)

    Don't Buy This Jacket (p.91)

    気候・エネルギー省のリデガー大臣:「グリーンな経済成長への投資はデンマークの将来を保証する。狭い視野で見れば当面、エネルギー価格は高くなると思うだろう。だが、これは保険のようなものだ。投資は高くつく。だが、将来の予想されるものを考れば、それは安いものだ。グリーンエネルギーへの投資はデンマークを気候の安定に資する技術のリーダーに押し上げる。もし、デンマークの産業界がこの好機に投資をするならば、それはデンマークにとって長期的には大きな利益をもたらすことになる」(p.113)

    ドイツ銀行の環境問題の専門家のパバン・スクデフ氏:「グリーン経済は成長や繁栄を止めてしまうものではなく、真の富といえるものを築くことだ。つまり、投資を単に自然資源を掘りおこすことよりも再利用に向け、少数の人々の利益よりも多数の人々の利益を実現するのである。健全で恵みに溢れた地球をこれから生まれてくる世代に受け継ぐために、すべての国のいまの世代が責任を認識しなければならない」(p.176-177)

    アナン事務総長(2003年当時):「皆さん、気がついていますか。地球の将来は皆さんの手の内にあることを。なぜならば、皆さんが投資方針を変えないかぎりは二酸化炭素を減らそうとしないからです。皆さんは企業に二酸化炭素の削減を求めないまま投資をし続けてきました。このままでは地球温暖化は進む一方です。ぜひ、その投資判断の基準を見直し、環境に取り組む企業をもっと支援してほしいのです」(p.187)

  • 前半は各国の先進的な取り組みを紹介。様々な具体的な事例が取り上げられている。

    第4章では、UNEPが2011年に発表した「グリーン経済に向けて」の内容を紹介している。化石燃料の開発、乱獲につながる漁船、毒性の高い殺虫剤の購入など、持続可能とは言えない資源利用を加速する補助金が世界のGDPの1〜2%に上る。年間1.3兆ドル(世界のGDPの2%)を効率よく投資することによって、低炭素で資源利用効率が高いグリーン経済に移行することができる。分野別では、エネルギー供給3600億ドル、運輸1940億ドル、建築と観光それぞれ1340億ドルなど(p.160)。グリーン経済を進めることにより2050年には、現在の経済を続ける場合よりGDP全体も1人あたりのGDPも大きくなる。また、エコロジカル・フットプリントはバイオキャパシティとほぼ等しくできる可能性がある。グリーン経済への移行は、二酸化炭素の高排出・少雇用から、低排出・多雇用への転換を意味する。

    今や、イギリス、デンマーク、スウェーデン、フランスなどのGDPあたりの二酸化炭素排出量は日本より少なくなっている。

  •  いま、私たちのようなエネルギーをたくさん使う生活を続けると2030年までに2つ地球が必要となる。私たちの生活は地球の許容力を超えているのだ。
     このことを解決するためにはどうしたらいいか?解決策は最近新聞をにぎわせている太陽光発電、風力発電、洋上発電などの”グリーンエネルギー”である。
     本書はグリーンエネルギー推進にとりくむ中国・米国・欧州・韓国の例や、自然エネルギー100%で成立しているデンマークの島々を取り上げている。特に中国の取り組みは想像以上であった。例えば”一票否決制”という、省エネ対策のできていない各省幹部と企業幹部を問責する制度がある。さらに今の中国は風力発電量が世界トップである。本書の「中国の環境問題は深刻であるが、中国が世界最大級の『緑色市場』」という言葉に心がうたれた。
     各国の取り組みを例に、本書ではグリーンエネルギーを推進していくことにより発生するメリットをあげている。例えばグリーンエネルギーを推進することによって生まれる雇用=グリーン・ジョブの増加や漁業保護による漁獲量30%アップ。このような利益は世界GDPの2%の資金を投入すれば得られるのだという。
     しかし筆者の推奨するモーダルシフト(公共交通機関の利用)を推進していけば、自動車産業はどうなるのだろうと思った。いくら電気自動車を推したとしても、国がモーダルシフトに取り組めばなす術がないだろう。またグリーン・ジョブは増えるかもしれないが、それは永遠とはいえない。いつまで増加して、いつから限界がくるのかというのが述べられていないので、グリーン・ジョブの将来がどうなるか疑問に思った。

  • 各国で行われている最新の環境対策を知ることができる、という点ではいい本だと思います。
    しかし、費用対効果などを考えた上で現実的な案であるのか、といったところに踏みこめておらず、日本は環境対策が遅れているからとにかくお金を費やすべきだ、という感情的な意見であるような印象を受けました。

  • アジア初のキャップ&トレードn導入を決めたのが東京都。
    EUも議定書目標達成の手段として、EU全域でのキャップ&トレードを導入決定した。

  • 環境負荷が大きい20世紀型の経済を「ブラウン(茶色)経済」、21世紀に目指すべき自然環境と調和した新たな経済を「グリーン(緑色)経済」と呼ぶそうだ。今や各国がしのぎを削るのはGDPでも軍事力でもなく、CO2の削減量であり、自然エネルギーによる発電量であり、低炭素や自然エネルギー・ビジネスのシェア争いというわけだ。
    残念ながら日本は、3.11という未曽有の大災害を経験してもなお、今後原子力発電を何%にすべきかなどと延々議論をしていたような体質が表わす通り、見事なまでにズルズルその地位を下げている。本書はそのタイトル通り、世界各地のグリーン最前線をまるではとバスのように、手際よくぐるりと短時間で見て回ることができる格好の1冊だ。EUやアフリカ、南米などの地域特性を生かしたユニークな試みもさることながら、今や世界最大のCO2排出国である中国の、思いのほか積極的なグリーン化への取り組みは興味深い。

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著者プロフィール

井田徹治:共同通信社科学部編集委員。本社科学部記者、ワシントン支局特派員などを経て、2010年より現職。環境と開発、エネルギー問題をライフワークに、途上国の環境破壊の現場や、多くの国際会議も取材。著書に『生物多様性とはなにか』(2010年)など。

「2021年 『BIOCITY ビオシティ 88号 ガイアの危機と生命圏(BIO)デザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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