欧州のエネルギーシフト (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313700

作品紹介・あらすじ

欧州各地のエネルギー政策の現場を訪れ、政策担当者や企業関係者に取材してきた記者による最新報告。

感想・レビュー・書評

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  • 今後のエネルギー政策を考える上で、非常に示唆に富む。
    特に、国民投票についてのイタリアやスイスの制度設計は非常に参考になる。安易に「原発やめますか?Yes or No 」という投票を実施するのは意味がないということ。

    本書で、紹介されているのは欧州各国の議論の結果であって、経緯を見ると、例えば、ドイツなんかはわずか、半年で原発推進の一歩から、脱原発へ転換しているわけで、決して首尾一貫ではないし、今後どうなるのかも不透明性は当然あるんだろうと思う。だが、そういった点を割り引いても、福島の原発事故以後、各国が真摯にエネルギー政策を議論し、結論を出しているのに対し、当事者国である日本の迷走ぶりは目に余る。「信じがたいほど場当たり的」と批判されても返す言葉は、ない。

  • <目次>
    はじめにー新しい欧州への跳躍
    第一章 苦悩ー原発を切り離せない構造
     1 「世界一安全な原発」の苦闘−フィンランド
     2 環境大国の苦渋−スウェーデン
     3 エリートが築いた「原発大国」−フランス
     4 「市場原理の国」のジレンマ−イギリス
    第二章 脱却−原発と民主主義
     1 脱原発の倫理と論理−ドイツ
     2 倫理委員会報告をどう考えるか−ドイツ
     3 国民投票が示す「民意」−イタリア、スイス
    第三章 分権−ドイツの市民社会では
    第四章 挑戦−自然エネルギー立国への道
     1 風力発電大国の変貌
     2 洋上風力発電に挑む
     3 2050年「脱化石」への道
     4 不安定化する世界への備え
    第五章 創造−新たなエネルギー社会
     1 スウェーデンの環境共生都市
     2 熱エネルギーを探す
     3 暮らしの未来
    第六章 未来へ−欧州と世界
     1 欧州の危機意識
     2 2050年の欧州
     3 新興国は、世界は
    あとがき
    参考文献

    <メモ>
    ドイツ倫理委員会メンバー、ウルリッヒ・フィッシャー司教
    原発を考える際には二つの倫理を考える必要がある。
     心情倫理
     社会的倫理
    社会的倫理には3つ目の側面がある
     第一:創造者に対する責任
     第二:子孫に対する責任
     第三:機能する産業社会を確保するための責任
    産業社会を維持するためには、一定期間の後、代替エネルギーが育ってきた後に原発を閉鎖するという判断も正当化される。

    2012.6.30 新書を巡回していて見つける。
    2012.8.7 読了

  • 読了。

  • フランスでは運転中の原発は58基で、欧州では随一の数。
    EDFが保有している。
    フランスあh原子力に強い自信を持っている。
    第二次大戦の復興で、電力、ガス事業を国有化し、EDFを発足させた。原発によって電力の安定供給を成し遂げ、エネルギーの自立を達成した。ナチスに占領された屈辱をばねに成長してきた。

    原発回帰を図るイギリス政府が重視しているのが、フランスとの協力強化。

  •  ちょっと読む本が切れたので下の娘に相談したところ「これはどう?」と出してきてくれた本です。高校の先生から勧められたとのことですが、新品同様の概観からみると、どうも読んだわけではないようですが・・・。
     内容は、原子力発電への姿勢をはじめとして再生エネルギーへの取り組み等について、主要ヨーロッパ各国の対応を実際の現地取材により明らかにしたものです。東日本大震災とそれに続く福島第一原子力発電所事故後間もない時期の著作ですから、問題に対する真剣さは最大級です。

  • 現在の日本では、東京電力福島第一原子力発電所(福一)の事故により、政府が国策として原子力発電という技術を選択するかの是が非で問われている。事故を契機にEU諸国の電源構成が注目され、特にドイツは日本がお手本にするとよいのではないかという文脈で再生可能エネルギーの導入の取組みが紹介されている。そういったことを背景に本書ではEUでの電源選択の経緯をおいかけている。EU諸国では、全体でみれば原子力発電を電源として選択している国と原子力発電をやめることを決めて、再生可能エネルギーの発電比率を高める取組みをすすめている国にわかれる。EUでは再生可能ネルギーへの挑戦がすすんだきっかけを脱化石燃料としてのオイルショックの1973年以降と温室効果ガスの排出権の取組みがすすんだ時期を紹介する。そして、チェルノブイリ発電所の事故による深刻な放射能汚染問題が生じた時。そして、日本における福一の事故を契機としてEU諸国への影響。電源に対する市民と政府の政策選択の間の関係がEUでは長い間議論されてきた結果であることが分かる。EUの経験から学ぶべきことは、EUでは長い時間をかけて、政府と国民、市民の間で議論がされてきたということで、日本において、なぜEUのような議論がされてこなかったのか疑問に感じるとともに、日本の民主主義的な議論を経た政策選択のプロセスに未熟さを意識するのは私だけだろうか。日本でも再生可能エネルギーが過去に注目され、政策として推進したこともある。しかし、日本ではEUに比べて発電比率は低い現状になっている。これは政策プロセスの成熟度が低いことが遠因となってはいまいかと感じる。再生可能エネルギーといえば、日本では分散型電源という認識をしている人も多い。EUでは大規模集中型と小規模分散型の取組みがあることが紹介されている。再生可能エネルギーにおいて大規模集中型にするか、小規模分散型にするかといった選択も政策的な課題の選択肢になる。もちろん、それはどちらか一方を選択しなければならないというものではなく、どのような主体が電気を生産し、どのような主体が消費するかでデザインしうるものであろう。再生可能エネルギーの発電比率を高めるために、エネルギー消費を問い直して、生活の質を高める中でエネルギー利用をいかなる形にデザインするかという取組みを、筆者はEUの挑戦として紹介しているようだ。

  • 第一線のジャーナリストが現場を歩いて書いた力作。ジャーナリスティックな客観的な現場のレポートは迫力がある。電力自由化が、再生可能エネルギーの利用促進につながったくだりや、小さい村の村人が自分の力でエネルギーを生み出そうとする過程は興味深い。エネルギーシフトはこういうところから始まるのも。

    ただ、この手の話はむしろ主義主張が正面に出てきたほうがわかりやすい。原発は危ない、でもエネルギーは必要なわけで、ぼくらには解、とは言わずとも方針が必要なのだ。いろいろな人がいろいろな「方針」を持っていて、どれが正しいのかわからない。正しい解はどこにもないのかもしれないが、それでも自分がどう考えたらいいのか、その足がかりが欲しい。そういう時には、賛成、反対、あっちとこっち、それぞれの主張と根拠を聞きたい。もちろん、それだけで自分の方針が決まるわけではないけれど、いろいろな人の意見と根拠のセットは当然参考になるのだから。

    ジャーナリスティックすぎてちょっとだけ食い足りない、良書。

  • 長い間欧州(ベルギー)で朝日新聞支局長を勤めていた人の最新欧州再生可能エネルギー事情である。(2012.6.20発行)

    最近になって類似の本は次々と発刊されるが、私はこれが1番わかりやすかった。ジャーナリストの本は、入門書としては適当に専門性もあり、わかりやすく買いである。

    スウェーデンやデンマーク、ドイツなどの脱原発運動は確かな下地があること、欧州の脱原発は地殻変動の最中にありもう止めようがないこと、などもよくわかる。フランスでさえ、脱原発の大きな動きがあり、イギリスでは全体の約半分の原発はこの10年に廃炉にならざるを得ないのである。新築の原発は無い。

    例えば、砂漠からは太陽光発電、北欧などは風力発電などを融通し会おうという計画さえも動き出している。デザーテック構想と言う。電気は一瞬にして国境を超えることができるから実現出来る壮大な計画である
    2012年10月3日読了

  •  日本の「原発政策」は、昨年の「福島原発事故」で大きな衝撃を受け、現在の政治状況をみても、民主党は「脱原発」、自民党は「容認もしくは推進」、第三極といわれる諸党派はそれぞれバラバラと混迷としか言い様がないように見える。
     その中で、「脱原発」の先進国といわれる「ドイツ」をはじめとした欧州の状況はどうなっているのだろうかと思い、本書を手にとってみた。
     本書によると、「原発をめぐって欧州は二分され、亀裂が生じている」という。
     「欧州連合に加盟する27ヵ国のうち14ヵ国で計133基の原発が運転中」であるが、各国の今後の原発政策についての詳細なレポートを読むと、まさにバラバラとの感想を持った。
     それだけ各国が「福島原発事故の衝撃」を受けて苦悩しているのだろう。
     本書で特に印象に残った点に「フィンランドのオルキルト島」の「核のゴミの最終処分地」の報告がある。
     「高レベル廃棄物」の最終処分地としては「世界初」というのだ。よく原発はトイレのないマンションに例えられるが、これだけ世界中に原発があるのにも関わらず「処分地」はここ以外に一つもないとは知らなかった。
     この「最終処分地」の詳細を読むと、この処分方法で「10万年後の安全」が保証できるのだろうかという思いとともに、このような「最終処分地」を地震国の日本で持つことができるのだろうかとの疑問を持った。
     また欧州各国のエネルギー事情を読むと、どの国も「原発」からの脱却はそう簡単ではない。しかし、ドイツの「脱原発政策」の詳細な内容を知ると、やはり相当な時間は必要かもしれないが、いずれ世界はドイツを追いかけざるを得ないのではないのかとも思えた。
     「欧州」は、あまりにも国が多く、それぞれの政策はバラバラのよう見える。「欧州」の特徴かもしれないがこれが「多様性」というのかもしれない。ただ、欧州各国の「エネルギー政策」全体を俯瞰するとトレンドは「脱原発」に向いているようにも思えた。
     本書は「欧州各国」のエネルギー事情を詳しく追いかけた良書であると思う。ただ報告の性質上、読めば日本の「原発政策」が決定するというようなスッキリしたものではない。そう言う意味で読後感はあまり良くないが、それが世界の「原発政策」の現状なのかもしれないとも思えた。

  •  欧州各国のエネルギー事情は全く異なるが、それを淡々と紹介した本。

     最後にまとめているように、欧州では、発送電を分離し、発電会社を自由化して、市場で発電分担をきめさせる(p227)だとすれば、もっと違う整理の仕方もあったと思う。

     たとえば、二酸化炭素をだす発電手法には、炭素税をかけ、原子力発電は、独立した企業がまとめて保有して廃炉までのコストを乗せて売電するといった、社会的費用を内部化する仕組みをつくって、市場にエネルギー分担を決めさせるというのが、そのまとめからいって筋だろう。

     その意味では、「エネルギーシフト」というタイトル自体が、エネルギーの分担率を政策的にシフトさせるようで誤解をまねく。

     自然と市場が決める方向にシフトしていくという意味にならないとおかしい。

     全体を通じて、いろいろ、原子力に制約をかけつつ、社会的費用にみあった方向に時間をかけて誘導するという、冷静な手法を欧州ではとっていると理解した。

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著者プロフィール

1954年生まれ。京都大学法学部卒業、1979年朝日新聞入社。松山支局、和歌山支局、経済部などを経て、1990年よりアジア総局(バンコク)勤務。米国ワシントンへ研修留学後、1997年から東南アジア担当の論説委員。その後、ベルギーのブリュッセル支局長、外報部次長を務めた後、2005年から論説委員。
著書に『大欧州の時代——ブリュッセルからの報告』(岩波新書、2006年)

「2007年 『平和構築の仕事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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