地下水は語る――見えない資源の危機 (岩波新書)

著者 : 守田優
  • 岩波書店 (2012年6月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313748

作品紹介

井戸水や湧き水として身近な地下水。都市化のなかでその大量利用が続いた結果、地盤沈下や湧水の涸渇、新たな汚染が発生している。世界の穀倉地帯には、農業用水の危機も迫る。日本の事例についてさまざまな障害がどのように発生するかを解説し、これからの地下水との付き合い方を、資源・環境・文化の面から考える。

地下水は語る――見えない資源の危機 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 2015年刊。著者は芝浦工業大学工学部教授。

     本書は、環境問題を軸にした地下水あれこれの書である。

     さて、地下水に関する環境問題について、地盤沈下は国内では昭和30~50年頃に問題となったが、それが今では世界各地の水需要の増加に伴い、中国他、各地で発生している。

     一方の現代日本。ここでは地盤沈下よりも、難分解性分子の地下水汚染(ここでは半導体メーカーの汚染水が例示)が問題視され、地下を含む水循環の実態把握の重要性と、清廉な地下水の飲料他生活用水のバッファとしての役割に光が当たる。

     また、地下水利用に関する史的展開も若干触れられる。中でも、江戸時代、特に享保期以降の上水整備に多く筆を割いている。そこでは、武蔵野台地での井戸の開発とその技術面の進歩が興味深いところだ。

     なお、フクシマによる地下水汚染の問題も避けて通れない課題だが、判明している情報はさほど多くはない。


     さらに、水循環の維持確保の観点で、地下鉄などの地下構造物がその循環を阻害している可能性とその都市生活への具体的被害、さらには水循環との関係で、大深度地下開発の是非に際しても想起すべき事項か。

  • 新書文庫

  • 読了。

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  • 14/5/18読了

  • 地下水は語る-見えない資源の危機』

    2013年10月04日 06時34分53秒 | Weblog


    守田 優著『地下水は語る-見えない資源の危機』。「地番沈下」、「湧水」、「地下水の環境」と続く。

     東京大学の中の構内に戦前から設けられていた、深さ380メートルの実験用の井戸が、あった。そこが実は地下水位を計測するデータ取得源となる。結果、江東区など「東京ゼロメートル地帯」を生みだした、地盤沈下の要因がわかる。要因は工業用水の取得にあった点が明確になったといいう。

     井の頭池。井の頭公園は良く聞くが行ってみたことはない。そこが玉川上水、神田上水の水源となっているということなのだ。その池の水位がひくくなって、上水の水源は途中から供給される生活排水というから、たいへん。池の水位が低下する要因は<湧水>の枯渇。

     昭和55年から10年かけて清流をとりもどす取り組みが積みあげられたのだそうだ。

     地盤沈下が安定したところで発生したのが、地下水に有機溶剤などが蓄積する、<地下水の環境>問題。水質悪化が、人体にも有害な化学物質を含有することが、問題に。絶縁液体の排出やクリーニング溶剤を未処理のまま、排出したためということ、か。

     目下、読んでいる途中。なぜ、地下水はこれほどまでに傷めつけられるか。サブタイトルに「見えない資源の危機」とある。水に<公水>と<私水>があって、地下水は<私水>にあたり、規制の網がかかっていなかったうえ、水質としても透過、兆時間の伏流できわめて安定性と成分均一性が高いのだと、いう。

     よく、非火山性の温泉を掘り当てて、地盤沈下がおこらないのかと、心配する人がいる。そうした声が、本書をてにとった要因のひとつではある。世間は、「眼にみえるものは感心をもつ」。しかし目に見えないものには、人間の都合を押し付けいるだけではない、か。あらためて本書は、そうした点を考えさせてくれる。(岩波新書 2012年6月)。

  •  その昔、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』にて、地下水を組み上げすぎたためにデパートが倒壊するというエピソードを読み、地下水と建造物の関連が気になり、読んでみた。
     
    はじめに
     地下水を組み上げすぎると地盤沈下が起きてしまう。日本においてこの事が最も注目されたのが60〜70年代であるが、この傾向は全世界で今も進行しており、その背景には開発途上国を始めとする人口増加がある。人が増えたことにより食料生産に拍車がかかり、 農業用水の需要が押しあがってしまっているのだ。特に目立つのは、インド・中国・台湾、そして日本を含んだアジアの都市である。そして世界人口の四分の一は飲料水を地下水に依存していることもあり、水系伝染病に苦しんだヨーロッパは、75%が地下水を利用しているという。

    沈む大地
     昭和9年9月29日、室戸台風に苦しんだ東京都深川区では「区画整理の水防道路が建設されているにも関わらず、地区の四分の三が浸水してしまうとはどういうことだ」という、区民からの苦情が発生した。
     郷土史家の菊池山哉は、この浸水被害は地表面の沈下現象によるものと認識していた(翌年に『沈み行く東京』という本を出版。それが後年、研究者和達清夫によって『沈まぬ都会』というエッセイで引用した)。
     和達清夫は大阪でも同様の現象が起きていることから、双方の相関を突き止め、「地下水の過剰な組み上げによって地盤沈下が起きた」と結論づけた。自然な状態では、被圧帯水層の水の圧力と加圧粘土層の圧力は釣り合っているのだが、被圧帯水層の水の圧力が下がると、加圧粘土層の水分が帯水層へ移動してしまい、その分粘土層は縮んでしまう、その結果、地盤沈下が発生するのだ。
     何故東京でこのような事が起きたのかというと、明治時代以前から高度経済成長期にかけて工業用水として地下水を汲み上げ続けたことにより、「東京ゼロメートル地帯」と呼ばれる海水面よりも低い地域が出来上がってしまったためであり、この事は311以降、津波による甚大な被害が起こりうるという、新たな恐怖を投げかけた。現在は法律の施行もあり少しづつ地下水位も回復している。が、一度沈下した地盤は元には戻らない。

    枯渇する名水
     かつて、三鷹市には井の頭池という湧水池が存在していたが、現在は枯れてしまっている。これ以外にも善福寺池や三宝寺池といった湧き水も枯渇してしまった。この原因は、自然涵養量を超える揚水を続けてしまったことで、不圧地下水が下方の被圧帯水層へと漏れ出したことによる。つまり、武蔵野台地の急激な被圧地下水開発により被圧地下水位が低下してしまい、枯れてしまったのだ。これは井戸にも関係しており、揚水を続けることで深さの異なる井戸毎の地下水位がほとんど同じになってしまう。つまり、深さの浅い井戸からは水が汲めなくなってしまう。このような現象は、改善しない限り全国で見られるようになっていくという。

    環境としての地下水
     




    自分用キーワード
    センターピポット方式(自走式スプリンクラーを用いる灌漑システム) グレートプレーンズ(アメリカの大穀倉地帯。地下水の枯渇が懸念されている) 裂罅水(地下水の一つ。岩石の割れ目や空洞に存在し、トンネル工事では邪魔者とされる) 地層水(地層の粒子間、砂や粘土の隙間を満たす水) 帯水層(水を通しやすく、地下水が流動しやすい地層。その逆が難透水層) 沖積低地(沖積世とされる18000年間に河川の土砂が堆積して出来た低地のこと) 被圧帯水層(上部の粘土やシルトの層の圧力を受けている帯水層。ここにある地下水を被圧地下水という) 江東治水事務所(敷地内に抜け上がった井戸があり、文化財に登録されている) 水利権 浦和水脈(地下水の汲み上げによって、結果的に出来上がった人為的な水脈) 被圧帯水層の不圧化(被圧状態でなくなった帯水層に空気が流入すること。土の中で還元状態であった鉄と結びつくことで、酸欠事故を引き起こす原因となる) 工業用水法 ビル用水法 名水百選(環境庁により選ばれた「清澄な水」) まいまいず井戸(東京都羽村市にある古代の井戸。すり鉢状になっているのが特徴) 

  • 大自然のメカニズムとは、実によくできているものだと、改めて感心する。しかし、地球に本来備わっているこの絶妙ともいえる水の循環システムに、人間は自らの利便のため都合の良いように手を加え、多大なるダメージを与えている。
    工業や商業地域の拡大、地下交通網の新設・延長、上下水道の整備、減反政策による田んぼの減少などにより、雨や雪が大地に吸収されることが少なくなっている。そしてさらに、農業や工業用水としての水のくみ上げが、水の循環バランスを崩すことにつながっている。
    本書は、その結果としておこる、地盤沈下や湧水の枯渇といったさまざまなトラブルを、武蔵野台地、井の頭池、上野駅、江東地区など、身近な例を挙げ詳細にレポートしている。

  • 2階岩波新書コーナー : 452.95/MOR : 3410154101

  • 岩波新書 452.9/Mo66
    資料ID 2012101287

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