勝てないアメリカ――「対テロ戦争」の日常 (岩波新書)

著者 :
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313847

作品紹介・あらすじ

圧倒的優位にあるはずの米軍が「弱者」に翻弄される。衛星通信を使った無人の爆撃機や偵察ロボットなどハイテク技術を追求するが、市民の犠牲は増え続け、反米感情は高まる。負のスパイラルに墜ちた「オバマの戦争」。従軍取材で爆弾攻撃を受けながら生き延びた気鋭の記者が、綿密な現場取材から、その実像を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • フォトリーディング&高速リーディング。

  • 長期戦に持ち込めば持ち込むほど、「持てるもの」は費用や兵力がかさみ、反戦世論が高まる。これに対して小規模な戦略で臨む「持たざる者」は失うものも比較的少ないので時間が味方すると言う。タリバンなど反政府勢力は、そのことを十分に解し、最大限に使うつもりのようだ。119-120p

    会合に居合わせたアフガニスタン国軍の拒んだり大39歳がつぶやいた「この国は戦争続きだ。人々は国家の未来より、まず自分の未来を考える」。…政府も警察も長らく存在しなかった地域の村村に、突然、政治だ選挙だと言って急ごしらえの「中央政府」を作っても、それがどれほど人々の信頼を集めるだろうか。138p

    一般に、アフガニスタンで1人の青年に戦闘を教え、武器と給与を与えた場合の1ヵ月の費用は200から500ドル(16,000円から40,000円)。アフガニスタン駐留の米兵が、1ヵ月に消費する食品にも満たないほどだ。…IETは民家の台所で作ることができるほど簡単な作りで、安いものでは1個10ドル程度で製造できる148p

    兵士の戦士と言う犠牲があるからこそ、米国はこれまで国民も政治家も、戦争には慎重になってきました。多数が死傷すれば、派遣に賛成した議員は選挙で負けるからです。けれどもパキスタンでの空爆は(米兵が死なないので)米議会で審議されず、戦争と言う認識さえ持たれていません。これは無人機戦争の拡大が生み出した民主主義社会の破壊です210p

    オバマ政権は、地上部隊によるCOINが充分進まず、人心をつかめていない中、空爆戦略を中心とするCTを同時並行で進め「成果」を見せようと急いだ。…だが正確な情報がないままの空爆は誤爆を生み、そのことで反米感情はさらに高まり、地上での「人心をつかむ競争」をさらに不利にした。これこそがまさに、オバマ政権の陥った悪循環のスパイラルだ。223-4p

  • MRAPや軍病院などゲーツさんの自伝で見た懐かしい単語が出てきた。現場でのあるいは帰国してからの米兵の苦しみが生々しい。外傷性脳挫傷TBIは初めて知った。実際に対テロ戦争の現場を取材してIED攻撃を体験しており、その話も面白い。

  • ゼミ同期の毎日新聞大治記者の渾身の作品。
    アメリカはもちろんのこと、戦地であるアフガニスタン、隣国のパキスタンまで足を運び非対称戦争の持つ意味や今後予想される未来まで、事実に裏打ちされた確かな文章で読む者を感心させた。

  • 毎日新聞女性記者が米軍に随伴し取材したレポート。
    対テロ戦争のリアルが淡々と語られている。

  • 読了。

  • 時間切れ タイムリーだった ISとのこれまでのこと少しわかります アメリカに巻き込まれるのはごめんです

  • 本当に文章がうまい人は擬音語をほとんど使わないんだなあと思った。

  • 2階岩波新書コーナー : 392.53/OJI : 3410154877

  • テロとの戦いと称してアメリカはアフガンに軍隊を派遣している。
    戦地から戻ってきた兵士たちの多くがTBIという見えない疾病に悩まされているという。外傷性脳損傷。記憶障害や光に過敏に反応する、イライラなどの症状が出るとのことだ。そして、このTBIの原因と考えられているのが、IEDだという。即席爆破装置のことで10ドル程度で作れる安価な小型爆弾であり、圧倒的な軍事力を持つ米軍に対して絶大な効果をあげているらしい。タリバンらはこの安価な爆弾をあちこちに仕掛けて米兵を苦しめている。昔であれば、爆破で死亡するところが、ヘルメットや防護服の進歩により死ななくなったが、目に見えない障害を受けているという。それがTBI。
    このようなゲリラ戦を称して非対称戦争というようだ。軍隊と軍隊の正面からの戦争ではなく、軍隊と非軍隊の戦争、ということか。正規の軍隊とゲリラの戦いは、泥沼化しIEDのような弱者によるカウンターが強者が「勝てない」状況を作っている。
    最近は、無人兵器などを投入されるようになったが、それでもやはり非対称戦争は終わることがない。
    本書は、それだからどうだとかどうすべきという提言はしていない。簡単に答えがわかるならとっくに米軍もやっているのだ。
    著者は従軍取材をしていて、兵士の生の声も伝えてくれている。右傾化し国防軍がなんだといってる日本において、こうした戦争の実際のようなものを多く吸収する必要があると思った。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1989年毎日新聞社入社。阪神支局、サンデー毎日編集部、東京本社社会部、英オックスフォード大学留学(ロイター・ジャーナリズムスタディー・フェロー)、ワシントン特派員を経て、現在はエルサレム支局長。
2002年の防衛庁(当時)における情報公開請求者への違法な身元調査に関する調査報道、03年の防衛庁(同)自衛官勧誘のための住民票等個人情報不正使用についての調査報道で02、03年の新聞協会賞をそれぞれ受賞。
ワシントン特派員時代は米国の対テロ戦争の実情を描いた長期連載「テロとの戦いと米国」、米メディアの盛衰と再編についての長期連載「ネット時代のメディア・ウォーズ」で10年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。
著書に『勝てないアメリカーー「対テロ戦争」の日常』(岩波文庫)、『少女売春供述調書ーーいま、ふたたび問いなおされる家族の絆』(リヨン社)、共著に『個人情報は誰のものかー防衛庁リストとメディア規制』(毎日新聞社)、『ジャーナリズムの条件1、職業としてのジャーナリスト』(岩波書店)がある。

「2013年 『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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