教師が育つ条件 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313953

作品紹介・あらすじ

社会の鏡である学校において、教師が問われるべき資質・能力とは何か。いじめ問題や教師の問題行動の報道などに不安が巻き起こる今、求められるものとは。学校現場を育てるのは小手先の政策ではなく、教員集団であり、子ども自身であり、また保護者でもあることを多くの声から紡ぎ出す。教育の本源をみつめる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 教師にとっての資質と能力についての記述が印象に残りました。

    学校現場における問題解決や課題達成の力、教科指導や生徒指導についての知識・技術など、具体的にすぐに役に立つような個別的かつ実践的なものが能力。

    授業観・教育観や教師としての向上心や探究心といった、普遍的で教師の成長に不可欠だが抽象的かつ評価しにくいものが資質。

    どちらも相互に必要とされるものである。

  • 大学における教員養成ばかりが重視され、教員の自発的な校内研修や自治体が執り行う教員向けの研修に対する認知度の低さが指摘されていた。
    これはLIFE SHIFT2で指摘されていた3ステージ構成の人生のあり方からの転換と、それに伴う生涯学習の拡充の必要性とリンクしていると感じた。
    また、より長期的、相互的な意味合いをもつ「評価」と、短期的、一方的な「査定」との違いに触れており、世間の言う評価は後者の意味合いで扱われてしまっている、という指摘も面白かった。
    本来の意味の「評価」に戻る上でも、学校は隠蔽ではなく現状を明らかにしていく姿勢が、地域や保護者はその現状を踏まえて、学校と共に子どもを育てていく姿勢が必要だと思った。

  • 〇目次
    第1章:いま、教師は
    第2章:教師の質とは何か
    第3章:教師をどう育てるか
    第4章:教師が育つ環境
    第5章:「評価の時代」にどう向き合うか

    筆者は教員のコンピテンシーは「資質」と「能力」に分け、二つをいかに育てていくかが大事だと考えている。しかし、政府や世論は教員の資質向上に関する問題が挙がる時は必ず「能力」重視の制度改革にばかり走ってしまう。
    教員養成の仕組みを「教師が育つ道筋」と「教師を育てる制度」の二つに分け、「挙酔が育つ道筋」をいかに作っていけるかが大事なのである。

    本当に教員を育てるにはいかにして「資質」を育てて、「能力」を挙げていくかが大事である。筆者は学校現場という職場での「協業」をキーワードに掲げ、学校内で取り組まれてきた研修(初任研、十年経験者研、指導改善研、研究授業)などの「教師が育つ道筋」をもっと充実し活用することを提言する。

    また、学校現場での同僚教員との「協業」、児童生徒との「出会い」の中から「資質」・「能力」というコンピテンシーを伸ばすことができるのであり、教職大学院などでもこうした生きた経験が積めるようにカリキュラムを組めば、実のあるものとなるだろうとしている。

    自分自身、学校現場は研修に関しては充実しており、正直大学の教職課程よりも現場で学ぶことの方が大変多い。協業も近年では「組織として」「チームとして」「連携」という形でかなり全国の教育現場にも浸透している。

    今後筆者が言っている「教師が育つ道筋」の充実でバーンアウトする若い教員が出ないようにしていかなければならないだろう。

  • 【請求記号】
    374.3||643

    【蔵書検索リンク】
    http://nieropac.nier.go.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB16228155&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 資質の足りない教員にいかに対処するかが鍵のようだ.本書ではごく一部の資質の足りない教員が問題になっているように書いているが,近年「その一部」が増大していたりしないかが気にかかる.

  • 「信頼」とは、対人関係で相手の考えや感じ方、行動のすべてを知っているわけではないのに、知り得た一部の情報から相手が今後に示すはずの行動を肯定的に見通す可能性のことである。なるほど、信頼を得るべく日々精進しなければならない。さて、本書は新聞広告で見て「はじめに」を立ち読みして即購入した。学級崩壊にあったクラスが、新しい担任のもと立ち直っていく様子が描かれていた。私の子どものクラスでも似たようなことがあった。先生の取り組み一つで大きく変わることがある。一方で、先生の力以上に生徒たちの潜在能力で大きく成長していくこともある。何らかのきっかけがあればよい。本書に紹介されているのは私立女子高でのケータイに関する取り組み。生徒たちが教科の勉強と関係ないところで、ハンドブックを作成していく。頼りない親のもとで子どもが自立するということもあるが、教室でもそういうことがあり得るかもしれない。指導力不足の教員をどう育てていくのか。そんなことに税金を使わずに辞めてもらったらいいのでは、という思いも確かにある。しかし、教育の場で育つのは子どもだけではない。教師自身も保護者も育っていく。そうならば、本人が続けて行きたいという強い意志を持っているのであれば、まわりの協力があっても良いようにも思う。評価と報酬の話の中で、「外的報酬」と「内的報酬」という区別があった。私にとっては圧倒的に「内的報酬」の方に強いインセンティブがはたらく。そう「喜んでもらえる」ということが一番なのだ。なのに、会社というところは、「外的報酬」を与えておけばよいと思っているふしがある。それはなければないでつらいけれど、そのためにだけ働いているわけではない。

  • ゼミの新入生発表で教育について取り扱うことになったので、その参考として。
    今まで教育についてぼんやり興味は持っていたものの、親書を読んだり調べたりしたことはなかったので、本書から得た教師についての情報はどれも新鮮だった。
    教師教育の充実も、教育の充実には不可欠なものだと感じた。
    メンタルヘルスの改善も課題である。
    やはり、多忙すぎることに問題があるとするならば、本書のようにサポートする団体に任せる、という体制を確立することも求められてくるのではないか。

  • 本書は、一般的な学校教育に関する情報と、実際に各学校現場で見聞きすることとの間にかなりの隔たりが存在していることを痛感した筆者が、各地域の学校や全国の教育センターなどを訪問し、多くの教師の声を聴いて「学校臨床社会学」として体系化を試みたものです。教える側の教師の立場から見た学校の詳細な実態を知らしめ、「教師が育つ条件」を発達社会学的に検討した本作から、教職について多角的に考えて戴きたいと思います。

    教育学部 M.T


    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000888536

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著者プロフィール

名古屋大学名誉教授、愛知東邦大学教授

「2019年 『いじめ・虐待・体罰をその一言で語らない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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