小さな建築 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.48
  • (11)
  • (17)
  • (25)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 256
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314103

作品紹介・あらすじ

強さをめざして進化してきた大きなシステムは、大災害の前にもろくも崩れ去る。大きな建築にかわる小さく自立した「小さな建築」は、人間と世界とを再びつなげられるだろうか。小さな単位を「積む」、大地に「もたれかかる」、ゆるやかに「織る」、空間を「ふくらます」。歴史を振り返りつつ最新作を語り、斬新な発想から建築の根源を問う。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 通常の建築はラーメン構造なり壁構造なり、依存されるモジュールと依存するモジュールからなる。リスボン地震以来、災害に遭うたびに人類は自然に負けない強い建築を作るべく「大きな建築」を作ってきた。それは依存されるモジュールの強度を高めるものであった。

    この本で隈氏が提唱しているのは、殆ど単一のユニットからなる建築で、つまりモジュール同士が依存する/されるの構造を持っているのではなく、共依存する関係である。4つの章のうちでは「織る」がもっとも分かりやすいであろう。縦糸と横糸が互いに折り重なることで強度を生じさせている。これを3軸、4軸にすることで3次元に応用し、パビリオンだけではなく太宰府前のスターバックスのようなパーマネント建築を実現している。

    思想としては、共依存する構造というのは民主主義らしさを表現している。また、モジュールから構成され、またモジュールに分解できる可塑性は、柔をもって剛を制すアプローチであり、坂茂氏の一連の紙管の仕事とともに21世紀の建築構造として興味深い。

  • だまされて家というゴミを買わされている。
    住宅の大きさが人を不幸にする。
    その不幸はリーマンショックに繋がりアメリカ文明の限界を示した。

    ばっさりと評する部分が印象に残ります。

    自然に依存する弱さが生物の本質であり、自分ひとりで扱える大きさが面白い。
    建築的道具ならフスマとか障子とか移動式の畳とか。
    臓器より細胞単位、というものの見方。

    薄っぺらな表面に貼り付けるだけの意匠は大嫌いで、構造と意匠が一体化していて、構成している単位が小さい方が良いとか。

    原宿にあるパイナップルケーキ屋さんの建築の意匠兼構造はこの様な考え方がありそうですね。
    木の構造アイデアの大元は飛騨職人の千鳥が発祥だった!

  • 積む、もたれかかる、織る、ふくらます。をキーワードとして、氏の小さな建築に焦点を当てて語る。
    311以降、大きな建築への批判も込めているのだろう。
    今後の氏の建築にも注目していきたい。

  • 建築はこれまで、より高く、より大きくあろうと発達してきたものです。
    けれど、隈さんは震災以降、人々は建築の脆さを痛感し、自立可能な小さな建築へと目を向け始めた、と書いています。
    小さな建築とはなんなのか。
    それは人間一人で扱える『小さな単位』を見つけ、それによって構築された建物だと隈さんは定義しています。
    本の中ではこれまで隈さんが行ってきた仕事についてその視点に基づいて書かれています。

    例えば、レゴブロックのように積み上げて、中に水を入れることで飛ばされないだけの重さを得ることができるウォーターブロック。
    ポリタンクなので水が入っていなければ軽く、組み立ても解体も楽。
    ある程度の大きさができるので家にもなる。
    あるいは、つなぎ合わせることでドーム型の家ができる特殊な傘。
    これも傘という日用品を紐で結び合わせて作っているので、身近で、扱いやすい大きさのものから建築物ができあがります。
    今までの建築のイメージからはほど遠いと感じてしまうような新しい建築だと思いました。

    そういう新しい建築の実例を見ていると、建築ってなんなんだろうと感じます。
    私たちが住んでいる家って一体なんなんだろう。
    建築物の中に住んで暮らしているのが当たり前ですが、生きるためには本当は建築物なんて不要なのかもしれない。
    自立可能な建築物について語りながら、この本ではインフラに頼らない自立した生活についてのビジョンを示しているような気がしました。

  • 一気に読了。

    東日本大震災をきっかけとして、大きなシステム、強大な建築に対しての疑問を持った。

    人間が取り扱える程度の大きさのユニットで出来上がる「小さな建築」を拠り所とすれば、エネルギー依存の社会を変えることができるかもしれない。

    ・・・というような、震災後にワラワラと出てきたいかにも岩波らしい考えはどうでもいいです。

    ただただ著者のアイディアに感動。
    そしてその土台となっている、日本的な感性にも。
    (利休の茶室について、もっともっと知りたくなりました。)

    読みやすく、そして非常に美しい本です。

  • 法律やら、利害関係者やら、なにやらが絡まってくる「大きな建築」に左右されてたまるか、という叫び。
    合理的な大きな建築、というのは原子力発電に通じる。小さな建築は、オカミから独立して、自分で成立しようとする。構造、意匠、設備と専門がわかれたら、もう「大きく」なっちゃう。
    小さな住宅でさえも、大きいんです。小ささのユニットと、その寿命がうまくマッチしていないと、小ささも活きない。

  • やっぱり隈研吾が好き!負ける建築の次は小さい建築かあ。

  • 本書で述べる「小さい建築」とは、人間の手で扱える程度の小さな単位・ユニットで構成され、設営・撤去が比較的容易な建築を指す。本書で紹介されている例は殆どがpavilion(仮設建築)であり住むことはできないが、「織る」「もたれかかる」等の方法を採用することにより、強度のない部材で実験的な建築を実現している。

  • やっぱり作り手の話は面白いな。思考の枠が外れて、自由を感じられて気持ちいい。
    読んでいると、私がおぼろげにイメージしていた「幸せな状態」というものの正体が形を持って浮かび上がってくるような、パズルのピースがいくつか埋まっていくような感覚があって、ときめいた。
    ぐっときた言葉は、「一体化しながら別物、対等でありながら異質」。とてもイイ。
    興味深かったのは、建築理論家ゴットフリートゼンパーの“織物の延長が建築の枠組み/屋根の技術である“という考え。隈建築の変幻自在なしなやかさは、まさに織物の特性。切断するのではなく、接続するためのもの。
    隈さんの哲学、対象の捉え方やその向きあい方がとても好き。自分という主体が世界と関係することについて大切なことがたくさん書いてある本だと思いました。

  • ☆6

全34件中 1 - 10件を表示

小さな建築 (岩波新書)のその他の作品

小さな建築 (岩波新書) Kindle版 小さな建築 (岩波新書) 隈研吾

隈研吾の作品

小さな建築 (岩波新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする