ラジオのこちら側で (岩波新書)

  • 岩波書店 (2013年1月31日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314110

作品紹介

一九七四年、一人のロンドン出身の青年が日本に降り立った―。以来、異国の文化の壁にぶつかりつつ、世紀をまたいで音楽シーンとメディアの激変の波に揉まれながら、良い音楽を電波に乗せるべく今も奮闘中。インターネットとディジタル全盛の現在、愛して止まないラジオと音楽の可能性を、あらためて発信する。

ラジオのこちら側で (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  •  著者はDJとしてよりも、TVのコメンテイターとして認識していた。自分が子どものころからラジオのDJとして、音楽業界に深く関わっていた人だったとは本書を読んで改めて再認識した感じだ。
     また、ラジオもTVもほとんど見ないで外で遊んでばかりの子供だったので、実は70年代、80年代の音楽事情にも暗い。当時、音楽やラジオがいろんな変遷を経て、時代を彩ってきたというのも新鮮な思いで読ませてもらった。

     音楽が世相を映す鏡であること、あるいは世相に抗う力を秘めていることが、当時ヴェトナム戦争の頃のプレイリストを振り返ることで知ることが出来る。今の世に流行る歌には、そんなパワーがあるのだろうか。近頃の流行の歌をあまり聴いてないのも良くないのかもしれない。

     とはいえ、今のラジオは(TVもだろう)、選曲もDJの自由度が低いと著者は嘆く。

    「現在、多くのラジオ番組は、しゃべり手が音楽を選ぶことができません。構成作家が書いた台本のままにしゃべり、自分が選曲していない音楽をかけていると、DJの気持ちが入ってないことが分かってしまいます。」

     確かに、ラジオでかかる曲は、出演者に関係するプロモート的なもの、番組当局が推すキャンペーンソングなどなど。。。 J-WAVEを1週間聴いていても、番組ごとに選曲が異なるというイメージはなく、ある期間は同じような曲がずっとヘビーローテーションだ。
     今、どの番組を聴けば、面白いんだろうな~。

     音楽のジャンルが時代につれて変遷していくだけでなく、音から映像(ビデオクリップの登場)への移行や、電波からインターネットとメディアの移り変わりと、著者が駆け抜けてきた約半世紀の環境の変化は実に波乱万丈だということが良くわかる。

     でも、そんな変化の中でも自分を失わずに、ブレることなく歩んでこれたのは、日本に来て1,2年目の頃、日英の文化の違いにフラストレイションを抱える著者に母親が手紙に書いてよこした言葉があったからではなかろうか。

    「変わったのは日本じゃなくて、自分だということを、あなたは分かっているわよね?」

     ブロードキャスターとしてTVで世相に対するコメントを求められようと、自分は音楽業界の人間であるという彼の矜持が最後まで貫かれていることが良くわかる内容だった。

     そんな時代の変遷の中、21世紀に入り、9.11、3.11とこれまたメディアのあり方を大きく揺るがす事件が起こる。日英と両方の感性を持った著者が眺める世相はバランス感覚があってとても良かったんだろうと思う。
     日本国内の報道は、海外のメディアと較べ偏っているとか、事実を伝えていないなどと短絡的に思いがちだが、9.11後、ブッシュ政権の頃、世界の(というか主にアメリカをはじめとする西側の)メディアは
    「猛スピードでイラクへの攻撃材料を探しはじめ、2003年のイラク戦争が始るまでの間、(中略)戦争一色」
     になったと。著者自身が、
    「政権のプロパガンダを垂れ流すメディアにアメリカが覆われるとは、ちょっと信じられない思いでした。」
     と語る。 
     メディアの脆さというか、メディアにさえも公平、公正さを求めることは不可能ということを良く認識しておかないといけない。自分自身も、公正でもなんでもないし、自分に一番都合のよい情報を取捨選択して生きていくのだからね。

     インターネットラジオは2010年から本格的にスタート、ラジオと共に歩いてきた著者でさえ、ネットの存在は否定できず、「ほんの少し前の社会にとっては、驚くべき現象だった」というYoutubeのない生活を「ぼくはほとんど想像できません」と言う。

     70年代から、10年単位で振り返る彼の半生。2000年以降に詰め込まれる内容の多種多様性、変化のダイナミズムは読んでいるだけでも目が回りそう。というより、実際に今自分の周りで起こっていることなのに、却って現実味が感じられないほどだ。
     音楽とラジオを通じて、面白い半世紀の振り返りだったし、今後にも注目したいと思えた。

  • 私はテレビを持たない。毎日のように触れる放送メディアはFMだ。しかし、どの局にチューニングを合わせても、流れてくるのは毒にも薬にもならないJ-POPばかりという状況には辟易している。

    作者のピーター・バラカンを初めて知ったのは、YMOの最後のLPのスリーブに訳詩のクレジットがあったからだ。その後、TBS深夜のCBSドキュメントをよく見ていた。
    その彼が、日本に来てからこれまでに関わってきた仕事と、彼のラジオDJに対する思いを綴ったのが本書である。

    ラジオから魔法が消えて久しい。その魔法を取り戻すべく、奮闘する彼の情熱がみなぎっている。スポンサーの意向や予算の関係で自分の思うような番組制作ができない厳しさ、そんな厳しいラジオの現状の中から次代のラジオDJを育てたいとう熱意がまぶしい。
    経済効率を優先するのは企業として仕方が無い面がある。しかし、放送局というのは文化を発信するという大きな役目も担っている。

    すばらしい音楽は世界中どこにでもあるということを、筆者は番組で音楽を流すことで語っている。

  • ラジオを聞いていたのは高校生だった91年から96年くらいかな。その頃音楽に興味がわいてきた時期だし、バイト先のレコード屋でずっとかかっていたのもあるかも。好きな番組も出来て毎週かかさずチェックしてたように思う。大学に入るとインターネットにどっぷり浸かってしまい、まったく聞かなくなってしまった。ラジオの記憶というと、92年の秋くらいかクラプトン特集が深夜に一週間くらいあって、ちょうどその年の9月に出たアンプラグドで大好きになって勇んで聴いてみたら、クリームとかデレクアンドザドミノスのオリジナルなレイラを聴いて衝撃と戸惑いを感じたのを今でもよく覚えている。ピーターバラカンさんのこの本を読んで、みんなそれぞれの思い出をたどるのではなうでしょうか。

  • ラジオDJ、Peter Barakanの半生をまとめた自叙伝。特に来日後のラジオやテレビなどメディアの活動を中心に業界の置かれている状況が語られています。欧米で考えられているラジオと日本で考えられているラジオの立ち位置が対比で書かれていてとても興味深かったです。また彼の選ぶ10年毎の10曲はチェックしてみたいです。業界を目指す人は読んだほうがいいと思います。余談ですが、彼の尊敬するジョン・ピール氏のDJの模様は、様座なアーティストが出しているBBC sessionsのようなCDで実際に聴くことができます。

  • バラカンさんが来日してからの自分史と日本のラジオや音楽史が重なる。言いたいことをはっきり正直に苦言を呈しても干されないのは外国人ということもさることながらそういうキャラと認識されてるから? 固有名詞を殆どぼかしているのに竹中平蔵だけ名指しで酷評でワロタ。

  • バラカンさんの人となりが知りたくなって借りてみた本。思っていたよりも事細かに書いてあったり、当時の曲の紹介なども多くあり、思ったより時間がかかったけど無事に読了しました。無知すぎてあれだけど、少しだけバラカンの頭の中を覗けた気がしました。

  • 盛り沢山、意外に率直。メモ: タイム・テーブル、海賊ラジオ局(p.iv)、John Peel (p.41)、Charlie Gillett(p.42)等。図書館本。

  • ピーターバラカンさんのラジオをよく聴いていた。あの訥々とした語りの魅力は、自分で選曲したからこその情熱からきているのだな。言葉に体重がのっているということか。

    本を読んで思ったのは、とても頑固に生きている人だと思った。自分が好きな音楽があって、それを人に紹介したい、という情熱に従う。たとえば、売れるために好きな音楽を曲げたり、しゃべりを多くしたりはしない。その結果、生き方がシンプルになっていると思った。

    数年前ラジオから"Do You Believe in Magic"が流れてきて、そのコーナーが好きだった。その企画の意味を知ることができて、とても嬉しかった。またピーターさんの番組を聴きたいなあ。ラジオ聴きたいなあ。

  • ピーター・バラカンさんとの出会いはよく考えてみたらCBSドキュメントだった。ラジオの人、としての認識はもっとずっと後だったのだが、その昔も今も囁くような低いトーンの穏やかな声は変わらず。ラジオパーソナリティはオンエアと普段の雰囲気が全く違う方が多い中、仕事でお会いした時も電波から聞こえるお声とご本人はあまりに同じで逆に驚いたことも。でもラジオを、音楽を愛する志が、その穏やかなトーンから熱く感じられた。
    「どんなに古い曲も初めて聞いたら新曲なんだ」のひと言は胸に刻む。ラジオから流れる音楽にはそんな魔法が潜んでいるはずだ。

  • 20151207読了

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