震災日録――記憶を記録する (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314127

作品紹介・あらすじ

東京で大震災に遭遇した著者は、地域誌『谷根千』での経験や関東大震災直後の記録を読んでいたことから、新聞・テレビ報道ではなかなか出てこない人々の生の声を記録することが大切だと考え、ホームページなどで発信を続けてきた。本書はそれらに加筆して、文化財を含む東北各地の被災状況を小所低所からリアルタイムで伝える貴重な日録。

感想・レビュー・書評

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  • シブい仕事だ、と唸る。東日本大震災から1年にかけて、著者はパニックに揺れる日本の「空気」に時に辟易しながら、その「空気」を記録せんと奮闘してきた。その生々しい記録は今読んでもアクチュアル。こんな雰囲気が確かにあり、こんな事件が確かに起きたと私自身のポンコツな記憶力を恥じさせられる。すべて(特に都合の悪いこと)を忘却したいという欲望は私にもあるが、こうした記録が残されてしまうとその甘さ・怠慢を指弾されているようで襟を正してしまう。いくつか著者の意見に抵抗感を抱いたが、それでもなかなか読めない記録だと思われる

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99476818

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB11753613

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2014年度第6回図書館企画展示
    「命 -共に生きる-」
     
    開催期間:2015年3月9日(月) ~2015年4月7日(火)【終了しました】
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

  • 著者は、2011年3月11日からの一年を「震災日録」として、自身のホームページに書き続けた。原稿用紙で数えればおそらく1000枚以上あるという、それらの日録を、まとめて新書にするにあたり三分の一に圧縮、そうすると「被災地と原発事故に関すること以外はほとんど削らなくてはならなかった」(p.256)という。日常のあれこれを削ると、まるで自分が使命感と情熱で走り続けたように見えるのが面映ゆいと書かれている。

    とはいえ、「記録されないことは記憶されない」という思いで、著者は日々を書き続けた。

    ▼いま起こっている途方もない災厄について、何か分析したり、評言めいたことを書くことは私にはできない。だけど関東大震災について、東京大空襲について、書き遺されたリアルタイムの日録を読んで、あとでまとめた感想や記憶とは違うと納得することがある。新聞やテレビは大所高所から報道する。私は26年間、『谷根千』で小所低所から人々のかそけき声を聞き取ってきた。地域の日常を、被災地で見たものを聞いたことを書いておこうと決めた(3.21記)。 (p.1、発災直後)

    時間がたてば心がゆれる話。
    ▼…私は今度ばかりは町の高台移転が必要なのではないか、と考え、初期にはそう書いた。結城登美雄さんからも漁師たちさえ「もう海際には住みたくない」と言っていると聴いた。しかし時間がたつにつれ、心はゆれる。「1000年後の地震に備えて不便な高台に町を造るよりも、もとのところに住みたい」「今回は逃げなかったから亡くなった人が多いが、逃げたら助かっていた。逃げればいいんだから海際に住みたい」。そんな声も聞こえてくる。…(p.121、「6/14 ずっと住める復興住宅を」)

    南三陸町で1ヵ月ボランティアをした建築家の松下朋子さんの話。
    ▼「…(略)…自分が被災者になる可能性をイメージしてみることが重要。何が足りないか。家族とはどう連絡をとるか、どの経路でどこに逃げるかなど。災害が起こると使えなくなるものは何か、電気システム、ガス、水道、電話などの人為的なものは使えなくなることが多い。いっぽう自然エネルギーとして太陽光、地熱、貯水の知識は必須。トイレをどうするかも考えておく。日頃から誰と逃げて、誰と共同生活するか、考えておくことが大事です」。(p.141、「7/8 お寺を防災のサテライトに」)

    地元で毎週のように集まり、「本当にいのちの助かる防災センターとは何か」を考えてきたこと。
    ▼…私たちは自助、共助、公助ということの内容と連環を少しだけ学んだ。災害時の避難は誰かが安全な場所を教えてくれ、用意してくれるわけではない。自分たちで命を守る判断と行動ができるということが大事なのだ。釜石の子どもたちのように。(p.154、「9/29 討論の蓄積を区に提出」)

    文化とは何か。放っておくと修復不可能だと壊されてしまう文化財をどう救えるか。
    ▼…文化財という場合、国や県、市町村が指定したものだけを刺すわけではない。土地の人が代々その土地で守ってきた、豊かに生きていくために不可欠なものすべてをいう。そういうと文化とはそもそも何か、という話になる。美術史家・高階秀爾氏は「記憶の継承だ」と教えてくださったし、作家・司馬遼太郎さんは「それにくるまれていると心安らぐもの」であると書いておられる。この二つは私にとって気に入った定義なのだが、自分では「生活の細部を輝かせるもの」とも付け加えている。(p.170、「8/25 被災地の文化財救出のために」)

    地元コミセンの防災建て替えでお世話になっている防災都市計画の吉川仁さんから届いたメール。
    ▼「最近の防災のキーワードは「避難」です。が、世間的には、避難=安全なところに移動、という風潮が広まっています。だれかが安全な場所を用意してくれる? そうではなくて、自分(たち)で命を守る判断と行動ができる、ということが重要なんではないか、と思っています」。安全な場所は誰かが教えてくれるわけではない。(p.220、「12/19 学校と津波」)

    「森まゆみ 震災日録」の、削られる前のものはここにまとめられているらしい。
    http://www.eizoudocument.com/0601mori.html

    削って本にまとめられる前の、この記録も読んでおこうと思う。

    (3/7了)

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:369.31//Mo45

  • 森まゆみ『震災日録』岩波新書、読了。本書は東日本大震災を機に「地域の日常、被災地で見たもの聞いたことを書いておこう」。作家の森まゆみさんが翌年同日までの聞取りと雑感を書き続けたブログをもとに新書化。避難所への旅と東京の生活。「記憶」が実に鮮やかだ。地域誌の担い手ならでは。

    「私にできることは小所、低所から人々のかすかな、震える声を聞き取ること」。震災から2年、インパクトはイベントと化す傍ら、現実は置き去りにされたまま=記憶の放置だ。副題は「記憶を記録する」。もう一度、私たちの感覚を新たにさせてくれる好著。

    森まゆみ『震災日録 記憶を記録する』岩波新書 「本書にも独りよがりや気負いや不注意はあるだろう。でもそれはその時の正直な気持ちであり、それを記録したかった」(著者) http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1302/sin_k695.html 森まゆみブログ → http://www.yanesen.net/mayumi/

  •  3月19日も過ぎてしばらく経ちます。折しも、いつも行っている図書館の新着書コーナーで目に付いたので手に取ってみました。
     著者の森さんはノンフィクション作家・エッセイストとして数多くの著作がありますが、地域雑誌の発行等の市民視点の地域活動も積極的に行っています。
     本書は、その森さんによる東日本大震災の等身大の記録です。森さんとその周りの人びとの震災発生後その時々の生の声を残したもので、大マスコミの報道では汲み取ることのできない貴重な現場の姿は、忘れてはならないとても大事な内容です。

  • 20130322 記録しなければ記憶されない。一人一人の積み上げが大事。後どれくらいかかるか、そもそも終わりなんてあるのだろうか。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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