WTO――貿易自由化を超えて (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314165

作品紹介・あらすじ

WTOは今、岐路にある。日々の暮らしを支える貿易のルールを決める機関として、どんな働きをしてきたのか。現在、話題のTPPやFTAとはどう違うのか。グローバリゼーションの弊害を克服し、自由貿易を確立することは可能か。第二次大戦後に誕生した前身のガット時代から現在までの歴史を見通し、課題と展望をわかりやすく提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 網羅してる、貿易への蒙昧無知を思い知らされた

  • 版元
    https://www.iwanami.co.jp/book/b226203.html


    【目次】
    はじめに―― WTOは、いま [i-x]
    原発事故と対日輸入制限/国際的な生産ネットワークへの影響/WTOとわたしたちの暮らし/保護主義に抗して/分岐点に立つWTO
    目次 [xi-xvii]
    写真出典 [xviii]

    第1章 ガットからWTOへ
    1.1 第二次世界大戦後の貿易体制構想 002
    ITO構想の挫折とガットの成立/ハル国防長官の思想/大西洋憲章第四項/米英相互援助協定第七条/ITO憲章/ガットの成立/ITOの挫折
    1.2 ガットの歩み 012
    草創期のガット事務局/ガットの歩み/日本の加入/ケネディラウンド/東京ラウンド/農産品の貿易制限/ガットと途上国/貿易摩擦の激化/米国の一方的制裁措置/ウルグアイラウンド/テーマごとの攻防

    第2章 WTO、18年の歩み
    2.1 WTOの誕生と成長 031
    ジャクソン教授の構想/WTOの成立過程/シンガポール閣僚会議/情報技術協定(ITA)/紛争解決手続の整備/日米自動車紛争
    2.2 つまずきと克服の努力――シアトルからドーハへ 041
    シアトル閣僚会議の失敗/失敗の背景/ドーハ閣僚会議での進展/中国のWTO加盟/貿易関連知的所有権協定と公衆衛生/ドーハ開発アジェンダの難航/世界金融危機とWTOの対応
    コラム WTOの加盟国 030
    コラム もう一つのWTO(世界観光機関) 034

    第3章 どんな組織が、何をしているのか
    3.1 WTOの任務 052
    WTO協定の構造/WTO協定の実施――第一の任務/貿易自由化の推進――第二の任務/政府調達市場の自由化/紛争解決――第三の任務/貿易政策の検討――第四の任務/IMF、世界銀行との協力――第五の任務
    3.2 WTOの組織 063
    WTOの加盟交渉/WTOの組織/閣僚会議と一般理事会/理事会・委員会/事務局長と事務局/ガット・WTOの事務局長/WTOの予算と財政/WTOの意思決定

    第4章 WTOの貿易規律 
    4.1 貿易自由化の原則と例外 080
    無差別原則/最恵国待遇原則/内国民待遇原則/多角的関税交渉と関税譲許/数量制限の禁止/一般的例外と安全保障のための例外
    4.2 国内産業への配慮 090
    セーフガード/セーフガードの発動要件/アンチダンピング税と補助金相殺関税
    4.3 農産品と繊維製品の貿易ルール 098
    農業協定/衛生植物検疫措置協定(SPS協定)/EU-ホルモン牛肉事件/繊維協定
    4.4 サービス貿易と知的所有権 105
    サービスの貿易に関する一般協定(GATS)/GATSが加盟国に課す一般的義務/約束内容に応じて課す特定の義務/サービス貿易自由化の進展/貿易関連知的所有権協定(TRIPS協定)/知的所有権の範囲/途上国と先進国
    コラム 日本の酒税事件 083

    第5章 WTOの紛争解決手続 
    5.1 手続の流れ 116
    越境賭博禁止事件/WTO紛争解決手続の特色/パネル手続/上級委員会手続/勧告の履行
    5.2 利用実績 124
    紛争解決手続の利用実績/途上国の申立てはなぜ少ない/WTO法助言センター/中国と紛争解決手続/日本の申立てはなぜ少ない/企業とWTO紛争解決手続/WTO紛争解決手続の見直し
    5.3 ソフトな履行確保の手段 136
    貿易政策検討制度(TPRM)/通報・審査制度/深刻な対立を回避する
    コラム パネル報告・上級委員会報告の拘束力 126

    第6章 WTOと市民社会 
    6.1 WTOは環境保護に敵対するか 142
    シアトル閣僚会議と市民の抗議/ガットと環境保護――マグロ・イルカ事件/WTOと環境保護――エビ・ウミガメ事件/生産・製造工程規制と産品規制
    6.2 WTOは雇用・労働条件を悪化させるか 149
    貿易自由化と雇用・労働条件/ガットと社会条項/WTOと社会条項/ILOの消極的な姿勢/ILO基本権宣言
    6.3 WTOは食の安全を犠牲にするか 157
    WTOと食品安全――SPS協定の基本的な規制/国際基準とSPS措置の関係/SPS協定五条
    6.4 貿易自由化との両立のために 163
    貿易自由化と非貿易的な価値の調整/民間基準を通じた非貿易的価値の追求/民間基準をどうとらえるか
    コラム 自由貿易協定(FTA)と基本権宣言 156
    コラム 日本の牛肉輸入規制措置とSPS協定 161

    第7章 WTOと途上国 
    7.1 自由貿易に加わる途上国 170
    ガットにおける途上国の地位――一九八〇年代の変化/ウルグアイラウンドと途上国/途上国に対する規律の強化/ウルグアイラウンドの決着/特別かつ異なる待遇(S&D)/S&Dにおける機能不全/WTO協定の「実施問題」/ドーハ決定
    7.2 途上国への支援 183
    キャパシティ・ビルディングとは/キャパシティ・ビルディングの内容/貿易のための援助(AfT)/カンボジアに対する日本のAfT/開発援助と貿易との連携を/発展途上国向け支援――拡大統合枠組
    コラム 途上国の定義 172

    第8章 WTOはどこへ行く 
    8.1 台頭するFTA 194
    ドーハ開発アジェンダはなぜ行き詰まったのか/ウルグアイラウンドとの違いは何か/ドーハ開発アジェンダはこの先どうなるのか/FTAはなぜ急増したのか/FTAは何を目指しているのか――TPPの対象事項/生産ネットワークの国際化
    8.2 WTOを見直す 210
    WTOに活路はあるか/WTOの再活性化を

    あとがき(二〇一三年二月 中川淳司) [215-217]
    主要参考文献 [04-10]
    略語一覧 [01-03]

  •  本書全体の特徴としてとにかくWTOについてぎっしりと書かれている。前半ではWTOの歴史や役割などについて、後半ではWTOと市民社会、途上国とのかかわり、及びFTAとの違いについて述べられている。 

     この本を読んで思ったことはWTOはFTAより途上国に対してきちんと配慮しているということである。現在でもドーハラウンドは行き詰っている点が多く、代わりにFTAの締結が進んでいるが、やはり途上国を含めた世界全体としてのルール作りを進めていくことが必要ではないかと感じた。
     
     内容については自分自身国際貿易について明るいわけでもないし著者の意見もあまりないため反論するところは特にないが、全体的に文章がかたく、また専門用語や条約が多く出てくるわりに索引がないために読みものとしてもおもしろくなく、調べものとしても使いづらい。中身は決して悪いものではないだけにもったいにない本だと思った。

  • WTOの任務は貿易自由化の推進、紛争解決、加盟国の貿易政策の検討。
    TPPは産品とサービスの貿易の自由化について締約国の間でWTOの最恵国待遇を上回る自由化を達成することを目指している。TPPはルールに関してもWTOがカバーしていない広範囲の領域で貿易や投資の自由化と円滑化につながる新たな規律を盛り込むことを目指している。

  • WTOについて書かれている。
    ・・・・というだけに尽きるかなぁ。
    知識が得られるというだけでは、教科書と同じ。
    岩波新書とするだけのものだろうか。
    TPPに便乗して・・・・の感がある。
    おもしろくない本。

  • 678||Na

  • WTOについてまとめられた本。

    飽くまでもWTOの経緯や制度、機構についてまとめられているだけでおり、自由貿易体制について何かテーゼを定めて書かれているわけではない。

    WTOについて、詳しく知りたい人にとってはいい本だと思うけど、先に述べたように自由貿易体制についてという大きいテーマで書かれてはないので、面白いとは思わなかった。

  • WTOとTPPの対象事項の比較、興味深い。

  • WTOに関わる基礎知識が、新書サイズでコンパクトにまとまっています。また、各ラウンド交渉における論点も整理されており経緯の復習にも使えます。
    また本書の特徴的は、制度や交渉の経緯に加え、WTOに対し否定的な意見もある中、事務局がどのような努力を払っているかも解説されていることです。
    実務的な観点からも基礎知識を得られるという意味でお勧めです。

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著者プロフィール

東京大学教授

「2014年 『基本経済条約集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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