タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)

著者 : 志賀櫻
  • 岩波書店 (2013年3月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314172

作品紹介

税制の根幹を破壊する悪質な課税逃れ。そのカラクリの中心にあるのがタックス・ヘイブンだ。マネーの亡者が群れ蠢く、富を吸い込むブラックホール。市民の目の届かない場所で、税負担の公平を覆すさまざまな悪事が行われている。その知られざる実態を明らかにし、生活と経済へ及ぼす害悪に警鐘を鳴らす。

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 日本の所得税制は、負担率が所得額1億を分水嶺として減少に転ずる「逆進性」を有している――。著者はこの税制のアンバランスの原因をタックスヘイブンに求め、これをプラットフォームの一部に組み込んだヘッジ・ファンドの暗躍は、破綻時の世界全体に与える影響が過大であるため規制すべきとする。著者の義憤は確かに良く理解できる。

    だが、本書で提示されるようなタックス・ヘイブンの国際取引からの締め出しや金融機関への規制(プルデンシャル・レギュレーション)等の「対症療法」で本当に効果があるのかと疑問が湧く。これらの規制を強化してもまた別のtrickyな手口が考案されるだけではないか。こうしたヘッジファンドに資金を提供しているのは元を辿れば大規模QEを続ける日米欧の中央銀行であり、その背後にはこれに過度に依存する政府がいる。だとすれば課税当局の怒りの矛先は巡り巡って自分に向く、ということになりはしないか。著者にはこの辺の矛盾をもっと突っ込んで記述して欲しかった。しかしタックス・ヘイブンの維持を目論む一部の金融立国に対する舌鋒は鋭く、共感が持てた。

    著者の稀有な経歴(とても一言で表せない)によるエピソードがリアルで面白い。

  • タックス・ヘイブンの害悪を知ることの出来る一冊です。一般人では到底体験できない様な筆者の体験談も交えられており、非常に面白いです。一方、専門用語が多く、経済や金融を全く知らない素人の私には理解できない部分も多かったので、不完全燃焼でした。
    タックス・ヘイブンの特徴は、①まともな税制がない、②固い秘密保持法制がある、③金融規制やその他の法規制が欠如しているの3つがあるそうです。そのタックス・ヘイブンが世界に多くて驚きました。イギリスのロンドン(シティ)やらアメリカのデラウェア州など、「そんなとこまで?!」と驚きを隠せませんでした。その他、国単位としてスイス、ルクセンブルク、ベルギー、オーストリア、勉強になる事が多かったです。
    個人的には、スイスのUBSとアメリカのIRSの戦いが面白かったです。何だか、話が壮大で現実とは思えませんが、著者のストーリーとしての伝え方は上手いですね。
    タックス・ヘイブン対策として、それ自体の対策税制と移転価格税制が重要な様です。過少資本税制はあまりインパクトがないと、著者の直接体験から述べられていました。
    新しい税のあり方は、各国が様々な試行錯誤を繰り返してるのだなあと思わされました。アメリカのシティズンシップ課税、フランスや韓国の航空券連帯税(国際連帯税の一種)、フランスの金融取引税、アメリカの出国税などなど。私は、所得税を基幹税とすべきと考えていましたが、タックス・ヘイブンに徴収するはずの税が逃げてしまう日本の現状では非常に厳しいのですね。是非、シティズンシップ課税制度は導入してほしいものです。改めて、日本の重大問題を明らかにされた気分です。
    最後に、本書を読むと新自由主義がいかに強者の強欲を満たす思想であるか分かります。労働者にツケが回ってくるこのシステムはいち早く止めるべきだと思いました。

  • パナマ文書で世の中の関心が高まったとはいうもののG20でいくつかの対抗策が進められたことは成果だが、いっときのようだった。
    しかし長い目で見ると経済のグローバル化の進行とともに規制も制限も国際協調として今後も進められていくのだろう。たとえすぐにピケティが唱える国際課税が出来なくとも。
    そういう意味では本書が取り上げている多くの節税(脱税)エピソードも知識として知っておくべきだろう。ただ、できれば著者にはもう少し歴史を踏まえた大きな視点が欲しかった点には不満を感じた。

    2017年5月読了。

  • 表題から「ケイマン諸島等にペーパーカンパニーを作り、主たる活動拠点での脱税を図る企業の暴露本」と思って読み始めると、豈はからんや①海外取引ある法人(多国籍企業が主)や富裕層の脱税(節税という美辞麗句が腹立たしい)に加え、②マネ・ロン、③投資銀行や証券会社が仕掛け、個人・中小企業へも勧誘の手が伸びるデリバティブ取引の問題、④90年代以降の金融資本主義の亢進の結果、バブル崩壊多発の意味、⑤租税回避地確保を目論む金融センターとこれを支援・利用する国や諜報機関(英シティが代表格)の跳梁跋扈等多岐のテーマを叙述。
    著者来歴と徴税側へ偏頗した内容とみる読メレビューには首肯するところ大だが、その問題を承認しても読むべき価値はある。◆つまり、昨今、世界各地で頻発するバブル崩壊事案をまとめ、富裕層や法人の租税回避行動という本書のメインテーマにおいて、中間層の重税感を強める結果、税の所得再分配機能への反発(貧困層のみならず、老人福祉維持への反発を含む)だけでなく、中間層没落の要因という視座も見受けられる。故に「資本主義という謎」の良い補完・補充に。◆かつ、広義のデリバティブ取引の本書の問題意識は同感。
    買手に標榜する高金利が、高リスクを購入者・消費者に転嫁させる対価にすぎない事実を明快に示している点だ。◆加え、外交・安保からも見逃せない。米英諜報機関の跳梁跋扈は勿論、北朝鮮問題・アルカイーダ(恐らくイスラミック・ステートも?)の資金洗浄、日本の財産(株・土地等)をヘッジファンドに購入される問題(円安はこれを加速)等、集団的自衛権のゴリ押しよりずっと重要かつ喫緊の課題を提示。◆確かに本書はさわりだが、問題意識獲得に個人的に有益だった。◆2013年刊。元大蔵省主税局国際租税課長、元金融監督庁国際担当参事官。

  • タックス・ヘイブンのあまりの酷さに愕然。米国,英国の独り善がりにも驚いた。
    グリードな人々とマネーによって世の中がとんでもない状態にされているが,なんともならないんだ。

  • 一つ思考実験をしてみよう。ある日突然100億円の遺産を相続することとなった。6億円超の税率は55%で控除額を合わせても50%前後は失ってしまう。さて、あなたはどうするか? 当然、弁護士・税理士に相談することだろう。で、財団法人の設立となる。資産家が経営者や政治家であるのには理由がある。相続税の回避だ。株式会社や政治資金団体というトンネルを通して彼らは甘い汁を吸い続ける。
    https://sessendo.blogspot.jp/2016/07/1.html

  • タックス・ヘイブンとは何か。タックス・ヘイブンがどのように利用されているか。タックス・ヘイブンはなぜ害悪か。これらの点を解説してるのだが、専門用語が多く金融に明るくない自分には難しい…。
    グローバル経済の危うさと国民国家の限界について考えさせられる。

  • 富裕層の租税回避で一番負担が重いのは中間層である。
    脱税、租税回避対策が今後重要な施策とすべきなのだろう。でも、選挙の争点にはあまりなっていないようだ。

  •  魑魅魍魎。税を逃れようとする資本家と、多分それでもいいと思っている多数の政治家、官僚。これは、「思想」の問題か? 

     資本主義も民主主義も「公平」なルールに基づいて運用されているという了解のもとにあるから、その結果としてある程度の不平等や自分の思いとは異なる主張や制度も受け入れざるを得ない、というのが現在社会の基本的な「了解」ごとなんだろう。しかし、「公平」なルールに基づいてないとしたら・・。
     情報とヒト・モノ・カネの移動が国境を簡単に越えていくようになった現在、そしてそれはテクノロジーの発達とともに人間の本性としても不可逆的な動きであることはおそらく明らかで、だからすべての仕組み・制度がグローバルに対応することを始めないと、そこに「公平」はなくなってくる。「了解」ができないことになり、紛争の種が撒かれていく。もうすでに、種は発芽し、次第に大きくなっている。そんなことを考えさせられた本であった。

  • 大蔵省=財務省で主税局主計官、東京税関長を務め、財務省退官後は政府税調メンバーとして国際税制の世界に関わるかたわら、弁護士として企業の国際会計を支え来た人物の著書。筆者は官僚として大蔵省・財務省として在籍した期間のほとんどを、国際税制の世界で過ごしてきた。彼が紹介する世界は、あの手この手を使って節税を逃れようとする資本家及びグローバル企業と、それを阻止しようとする税務当局の暗闘である。しかも資本家・グローバル企業サイドには、本来なら脱税を取り締まる側にあるべき徴税機関が、資本家サイドに与しているという、驚愕の事実が明らかにされる。タイトルにある「タックス・ヘイブン」の起源は、もともと王族の資産を管理するためのものであり、その秘密を守るためには、諜報機関がしゃしゃり出るのは日常茶飯事なのだ。そのため筆者は、相手の理不尽な言い分に煮え湯を飲まされることを何度も経験してきた。彼の筆致からは、そのことについての憤りがひしひしとかじられる。だがそれ以上に無念なのは、筆者が昨年末に病のために昇天したことである。「パナマ文書」が国際ジャーナリスト集団によって暴露されたが、日本ではいつの間にか話題にすら上らなくなった。筆者が生きていたら、この事態をどう解説したのだろうかと思うと、無念でならない。

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