まち再生の術語集 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314189

作品紹介・あらすじ

停滞と閉塞の時代に注目されるコミュニティデザインという発想。地域の力は、人々がヒト・モノ・コトの渦に参加し物語りを紡ごうとする意志から始まる。まち育ての助っ人として全国を駆け回る筆者が、住民・行政・専門家・支援者のトラブルをドラマに変える現場で捕まえた、まち再生の思想と手法のキーワード集。

感想・レビュー・書評

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  • 地域再生の事例と手法の紹介なのだけれども、特にワークショップ運営関係に関しては、その他のテーマ(大学図書館の職員研修も含め)でも役に立ちそうな感じだった。特に、議論は盛り上がったけど結局どんな集まりだったっけ? とならないためのまとめ方法として、音韻要約はいいなと思った。

    オススメ度:
    ★★★★☆

    ふかし芋(図書館職員)

    所蔵情報:
    品川図書館 518.8/E59

  • ~名古屋、長者町、物語としてのコミュニティデザイン?~

    豊富なまちづくりのWS等の経験があって、それをうかがわせる。名古屋にいたときに読んでおけば、長者町とか名工大とか、ゆかりが探れたかもなとかとも思う。

    難しい内容ではなく、まちづくりのエッセンスみたいなことが、絵本みたいな感じで綴られる。
    ただその文章が読み易いかというと、そうでもなくて、必ずしも入り込んでいけないから、基本、うわべのみ読んで流してしまう感じがある。ちょっと、玄人好みなところが強いかな。

    市民に「参加」してもらうための楽しさ(#6)、笑い(#7)というのは本当にそうだろうなと思うし、そう思わせるエピソードが示されているのは、面白いし説得力がある。
    合意形成のため「生活知」(#18)をきくというのも、吉村伸一さんの和泉川とのやり方に似ていて、共感した。

    ワークショップ(#22)の7つの重要ポイント
    ――プロセスデザイン、プログラムデザイン、参加者デザイン、ファシリテーション、合意形成支援、情報編集、ロジ――。
    このあたりは参考になったし、今後機会があればまた読み返してみたいとも思った。
    岡崎「りぶら」のことで語られているのも印象的だし、もっと「りぶら」を知りたかった。

    こういう内容は、新書というより、もっとビジュアルに満ちたカタログ的な書物のほうが向くようにも思った。
    変わった一冊だったなあ。

  • 地域づくりの思想的な本。ノウハウ本ではありません。

  • ・まちづくりについての術語集。著者の遊び心のお陰で、コトバ遊び的な面白さに引っ張り回されてるうちに、実は気付かぬうちに都市景観の計画論から行政、ひいては西田哲学までを包含した広大な「まちづくり」空間を案内してもらっていたことに気付く。著者はかなり「いけてるファシリテーター」らしいが、本書でもその面目躍如の感がある。

    ・なお、本書で「まちづくり」と言っているのは、住民主体のサステナブルなコンテンツジェネレート型コミュニティといったところか。古き佳き日本的な住民コミュニティの礼賛が若干強すぎるきらいもあるが、許容範囲かと。

    ・そこかしこに散見されるコトバ遊び。松岡正剛さんなら「編集の達人」と位置づけるのかなとぼんやり思った。

    ・「クリストファー・アレグザンダー(アメリカの建築家)によれば、まちは八パーセント以上の空き地が発生すると、そのまちは死滅に向かう、それ程のドンゾ底に落ち込んでいます。(P24)」

    ・「高等動物には、『他の個体への共感の高さ』があり、『人類も、採集狩猟生活をしていたころ、生きているもの、動くものすべてに共感していた』といいます(野田正彰『共感する力』みすず書房」。(P64)」

    ・(台湾での事例を挙げて)「ある日の会合で、行政側の責任者は『私たちは今まで原住民に漢民族のやり方(法律・制度)をおしつけてきました。しかしこれからは、私たちが原住民の文化に学ぶ時代が来ました。この提案を生かしましょう。」と歴史的発言。(P84)」

    ・「どんなややこしいトラブルにおちいっても、ユーモアやニュアンスや笑いという別次元のコミュニケーションが出口を開きます。グレゴリー・ベイトソンの「ダブルバインド理論」が示唆したように、人間のコミュニケーションは複数の次元(言葉と態度、表情と行動など)で重層的に発信されており、相矛盾するメッセージで相手を追い詰めることも可能なら、逃げ道を開くことも可能だからです。(P86)」

    ・「西田幾多郎の語る『場所の哲学』を参照しますと、『我とは主語的統一ではなくして、述語的統一でなければならぬ、一つの点ではなくして一つの円でなければならぬ、物ではなく場所でなければならぬ』とされています(『西田幾多郎全集第三巻』)。(P143)」

    ・「本書のコンセプトはまさに『人生ってエエモンやなあ』『自分のまちは捨てたもんやないなぁ』と『生を楽しむ』センスです。(P205)」とあるが、まさに、本書からは、そんなセンスを強く感じた。

    ・図書館の岩波アラートで

  • まぁ・・・つぎはぎで儲けようとしたのでしょうか。
    著者がやたら難語を散らかすのも好感が持てない。
    術語集ということで、まち作りを目指す人が、ぺらぺらとめくる程度の本かな。ぺらぺら漫画同様に。

  • 多数の事例に関連させながら実践的に活用できる言葉を述語として集め説明している。著者らしい文体は非常に好感がもてた。

  • 必死のパッチ(モモヒキを指す)とは、関西弁で「トコトン粘り強く状況に挑戦する態度」のこと。

  • ゼミで延藤安広先生の「まち再生の術語集 (岩波新書)」を輪読することにした。珠玉のような術語が星座のように並んでいる。ページの左下には、なんとパラパラ漫画まである。疲れた時にはパラパラ漫画で休んで下さいという気遣いでしょう。パラパラ漫画がある岩波新書は初めてだ。

    ところで、分担して、読み始めてちょっと困ったなあと思っている。それは普通に要約して報告して議論をするというやり方が、馴染まないような気がするから。

    なぜかと考えた。つまりこの本は詩集のような本、この世界に浸ることが大事。なので要約→議論にはそぐわない。感想を述べ合うことは良いかもしれない。むしろ、詩集のように、朗読してみましょうか。

  • まち再生に向けての知恵がつまってるとは感じたが、ちょっと全体的に理念的・文学的にすぎるかなという気がした。

  • コミュニティデザインのキーワードがさながら星座のようにちりばめられた1冊。「歓喜咲楽」「私発協働」「対話共有」「軋変可笑」、さまざまなキーワードが有機的、流動的に結びつき合ってコミュニティを形成する複数の解がこの中にあるように思う。

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著者プロフィール

1940年、大阪生まれ。工学博士。日本におけるコーポラティブ住宅や住民参加型のまちづくり研究・実践の第一人者。専攻は生活空間計画学。
みずから撮ったスライド写真と名調子による「幻燈会」が各地で大好評。またの名を「まち育ての語り部」。千葉大学教授をへて、2003年4月よりNPO法人「まちの縁側育くみ隊」代表理事。05年より愛知産業大学大学院教授。
意味ある小さな出来事の連続と人びとのゆるやかな変容が、やがて構造を再編成していくという「まち育て」の仮説のもとに、人間・環境相互浸透論、ハウジング、コミュニティ・デザインを中心とした研究と実践をかさねている。受賞多数。

「2006年 『【びじゅある講談】おもろい町人(まちんちゅ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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