在日外国人 第三版――法の壁,心の溝 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314295

作品紹介・あらすじ

半世紀前にアジアからの留学生に出会い、その後、著者は、在日韓国・朝鮮人や留学生、労働者、難民などを取り囲む「壁」を打ち破るために、長年にわたって尽力してきた。最新のデータとともに、入管法の大幅「改正」のほか、高校の無償化など外国人学校をめぐる問題についても語る。ロングセラーの最新版。

感想・レビュー・書評

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  • この本、随分前に神田の古本屋で見つけて買って読み始めてたのだが、第三版が既に出ていることを知り、「新しい物が出てるんなら、これはもう古い情報だからなぁ~」と思って読むのを止めたんだった。統計が出てたり、近年、外国人に対する処遇(外登法廃止、住基法適用)が変わったので、新しいのが読みたかったんだよね。で、遅ればせながら、図書館で借りて読んだ。

    あーもう、この本、読むのつらかったです。つらかったというか、この本は別にそういう類の本じゃなく、ただ、今まで国が行ってきた外国人政策について淡々と延べてある本なんだけど、もういやになるくらいだった。以前読んだ「ヘイト・スピーチの法的研究」の第1章に「上からの外国人差別」について述べてあったが、これがまさに「上からの差別」についての本だった。

    日本という国は、外国人を人間扱いしてない。外国人のみならず、日本以外の国に住んでる日本人も切り捨ててる。それがものすごくはっきり書いてある本だった。日本以外に住んでいる日本人に対しては「住んでいる国で面倒を見てもらって下さい」と言い、日本に住んでいる外国人に対しては「あなたが来た国で面倒見てもらって下さい」と言う。全く国としての責任を取っていない。国としてやるべきことをやっていない。日本は日本に住んでいる、日本人だけの国なのだ。外国人は、日本に利益をもたらす「のみ」の存在で、彼らが日本で生きていく、暮らしていくための人権なんか、全く考えてない。考えてないどころか、まったく拒絶している。


    それでも、'90年代から2000年代に掛けては国際情勢にも合わせ、少しずつは開放されてきた。が、ここ数年また逆戻り。逆戻りするどころかどんどん悪化している。

    どうすればいいんだろうね。。なんかもう「外国人参政権」なんて権利獲得の話が出たのは夢のような昔のことで、今は口に出して言うことすら憚られるような状態で、今は世間から攻撃されることへの抵抗(権利侵害への抵抗)しかできてない感じがする。日本には、最低限礼儀として(こういうのは別に礼儀とか関係ないのだけど)「他国に住んでいる日本人がそこで与えられている権利について、せめて日本で暮らしているその国の人の権利を保障しようよ」って言いたい。本当は根本的にこういう考えはおかしいと思うんだけどね。でもそれくらい、日本は閉鎖的だ。

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/580116

  • 日本帝国時代には日本人だった在日コリアン、在日台湾人の歴史概要

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18417

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB12487661

  • 大学の講義の予備知識を蓄えるために読みました。国籍について全く詳しくない私でも、その歴史と考え方について深く学べました。

  • 在日外国人の人権を考えるなら、まずこれを読むべしだと私は思っています。最初の版が出たときの「やっとこういうものが!」の感激は今も鮮明です。2020年度までのテキスト。

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:329.9||T
    資料ID:95130768

  •  在日外国人と呼ばれるカテゴリーについて、様々な角度から取り上げた本で、著者はこの分野における支援および研究の第一人者。
     個人的には、戦後の社会保障制度の中で在日コリアン(朝鮮・韓国人)がどのように位置付けられてきたのかについて知りたいと思っていた時にこの本のことを思い出し(なぜか本棚にあった)読んでみたのだが、背景から変遷まで、かなり詳しく知ることができた。初版が出たのは1991年で、改訂を重ねて、現在第三版(2013年刊行)。累計20万部突破とのことで、もはや古典の領域。
     半分以上は在日コリアンについての記述だが、それ以外にも日系ブラジル・ペルー人の労働力受け入れや、外国人実習生・留学生(就学生)についての記述も充実しており、教科書として読むには網羅的でわかりやすい。

     在日コリアンについては、かつては大日本帝国の植民地下に置き、戦時中は「皇国臣民」「天皇の赤子」として育てられ、また戦争に駆り出されるなどしつつも、戦争が終わった後の「最後の勅令(天皇の命令)」によって「当面の間は外国人として扱う」ということが告げられ、さらにはサンフランシスコ平和条約の締結に伴って「正式に外国人になりました(あなたたちはよそものなので私たちは面倒見ません)」と言い渡されたという経緯がある。
     そして、社会保障の様々な制度や憲法の条文では「国民」という文言を元に排除が始まり、苦難の歴史が戦後も続くことになる。

     ところで、この本を読んで個人的に(日本政府の言い分が)あまりにひどいと思った箇所は二つあった。一つは、東京裁判における旧植民地出身者の扱いで、もう一つは指紋押捺拒否裁判の行方である。

     様々な社会保障制度(国民年金や軍人恩給その他)では、在日コリアンは国籍を剥奪されたことによって「日本国民ではないから(外国人だから)日本政府は面倒見ません」という態度を取られたことは先に触れたが、B・C級戦犯として告訴された旧植民地出身者の扱いはどうなるのか、ということが平和条約締結後に議論となった。

     平和条約の条文では、その対象者は「日本国で拘禁されている日本国民」と明示していたからである。これについて、既に国籍を剥奪されていた在日コリアンらが釈放を請求したところ、最高裁判所は「当時日本人だったので、刑罰の対象になります」と請求を棄却。

     著者の山田は、ここで「『罪はかぶりなさい、しかし補償は知りません』ということになろう」(p120)と書いているが、まさにそのとおりだ。一方で、「かつて国民として戦争に加担したのだから」と罰を与え、一方で「かつて国民だったかどうかなんて関係ない」ということで社会保障から排除するやり口というか態度とは、一体なんなのか。

     もう一つ愕然とした、指紋押捺拒否裁判の行方についてであるが、これは80年代当時まだ存在していた外国人向けの指紋押捺義務(外国人であれば定期的に指紋を押すために役所に出向かないといけない)を拒否し、裁判を行った在日コリアンの人々の話である。
     憲法判断を求めて提訴した33人の人々は、しかし「合憲」「違憲」の判決を聞くことができずに終わってしまった。もちろん、通常の裁判であればそんなことは絶対にありえない。「勝訴」でも「敗訴」でも、なんらかの結果が出るはずである。
     何が起こったのかというと、その時期に昭和天皇裕仁が死亡したことで、それに伴う「大赦」(恩赦)が発動し、指紋押捺拒否を巡る裁判がその対象となったのである。
     被告として裁判を提起した人々は、一方的に「免訴」を告げられ、裁判で争う権利すら奪われてしまったのである(その後、1990年の日韓覚書によって、指紋押捺制度の廃止が決定され、その後なくなる)

     田中はそこまでのことは書いていないが、大日本帝国の最高責任者であり、また植民地支配にも多大な責任を持つはずの昭和天皇に関わる「恩赦」によって「おゆるしをいただく」という形になるわけで、植民地支配にルーツを持つディアスポラ当事者の望むことではありえないのは明白である。提訴したすべてのひとが「恩赦を拒否しようとした」という話には、複雑な共感を覚える。

     在日コリアンをめぐる排除というのは、単に「人々の差別意識が…」という話にとどまらず、戦前・戦後の日本という国家が全力を出して排除しようとした歴史なのだということが、この本を読むとよくわかる。こうした歴史を直視しないどころか、むしろ否定(否認)しようとする昨今の排外主義的な風潮については、本当に暗澹たる気持ちを覚える。もちろん、そうした状況に異を唱えるためにも、本書はとても有益な認識を与えてくれる。

  • 田中宏(2013)『在日外国人 第三版 ――法の壁、心の溝』岩波新書


    【個人メモ】
    ・法務省が公開している資料
    「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」<http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html


    【目次】

    まえがき――第三版にあたって 

    序章 アジア人留学生との出会い 
    中国からきたインド人青年/千円札の「伊藤博文」/「8・15」とアジア/奨学金を打ち切られたチュア君/千葉大学に泊まりこんだ三日間/四年半の裁判の日々/医療扶助を受けたため国外退去/チェン君の法務大臣への手紙/ベトナム反戦と入管法案/「帰国入隊命令」のでた留学生/二つの中国のはざまで/入管法案が照らし出したもの

    I 在日外国人はいま 
    外国人登録とは何か/国籍と居住地域/入管法と「在留資格」/在留資格別の人数と国名/「特別永住者」の誕生/新規入国の外国人数

    II 「帝国臣民」から「外国人」へ 
    朝鮮人被爆者、孫振斗さん/二つの課題、「治療」と「在留」/宋斗会さんの訴え/在日朝鮮人と在朝鮮日本人/アメリカの「在日」認識/憲法から消えた外国人保護条項/参政権の停止/外国人か、日本人か/日本国籍の喪失/なぜ「国籍選択」にならなかったのか/国会での政府の答弁/吉田首相からの手紙/日本自身の課題へ

    III 指紋の押捺 
    押捺拒否の意味するもの/各地でおこなわれた「指紋裁判」/指紋押捺制度導入の背景/朝鮮戦争のもとで/「国民指紋法」の構想/導入後も続く抵抗/中国見本市での「事件」/「満洲」指紋の発掘/アメとムチの法改正/恩赦、訪韓、そして廃止へ/指紋押捺制度は、なくなったのか

    IV 援護から除かれた戦争犠牲者 
    石成基さんの40年/軍人恩給の廃止/誰のための援護法か/戦没者の慰霊と叙勲/重要視される「国籍」/「日韓請求権協定」がもたらしたもの/「外国人」の戦犯/問われる 「国籍喪失」/ここにも“心の溝”が/台湾人元日本兵/不甲斐ない判決/野中官房長官の答弁/414件に弔慰金/シベリア抑留にも国籍

    V 差別撤廃への挑戦 
    日立就職差別裁判/変わる日本人/裁判の位置づけ/「協定永住」と民闘連/南北分断のなかで/金敬得君との出会い/アメリカの事例と日本/外国人司法修習生第一号/外国人弁理士の誕生/公立学校の教員採用/つづく新しい挑戦/定住外国人が地方公務員に/「外国人お断り」

    VI 「黒船」となったインドシナ難民 
    国民年金裁判/ベトナム難民の衝撃/公共住宅の開放/国籍要件と国籍条項/難民条約の批准/「日本国民」から「日本住民」へ/年金に老後を託せるか/無年金問題/国籍法の改正/認められた「外国姓」/民族の名をとりもどす/帰化時の指紋、ついに廃止

    VII 国際国家のかけ声のもとで 
    留学生10万人計画/就学生の急増/日本語学校と上海事件/「かわいそうな」留学生/大学への入学資格/門戸を閉ざす国立大学/非欧米系の排除/外国人の子どもたち/外国人学校間の連携/高校の無償化/朝鮮高校は「不指定」に/国際社会からの注視/韓国からの共感

    VIII 外国人労働者と日本 
    「資格外就労」の増加/法改正と日系人の急増/在外邦人と在日外国人/日本人の海外移住史/日米移民摩擦/フィリピンに渡った人びと/中南米から「満洲」へ/日本のおこなった強制連行/人種差別撤廃を提議/外国人労働者の受け入れ/「研修生」とは/外国人労働者の顕在化/技能実習生/実習生をとりまく問題/求められること

    終章 ともに生きる社会へ 
    「91年問題」/新聞にあらわれた“溝”/在日韓国人元政治犯/外国人と地方参政権/諸外国の状況/外国人学校の処遇をめぐって/一方で「反コリアン」デモ/入管法の大改正/つづく“格差”/韓国の対応/憲法のなかの外国人

  • S329.9-イワ-R1429 300291424
    (岩波新書 新赤版 1429)

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著者プロフィール

田中 宏(たなか ひろし)
1937年生まれ。アジア学生文化協会勤務、愛知県立大学教授、一橋大学教授、龍谷大学特任教授を経て現在、一橋大名誉教授。
専門は日本アジア関係史、ポスト植民地問題、在日外国人問題、日本の戦後補償問題。
著書に『日本のなかのアジア―留学生・在日朝鮮人・「難民」』(大和書房、1980年)、『虚妄の国際国家・日本』(風媒社、1990年)、『戦後60年を考える―補償裁判・国籍差別・歴史認識』(創史社、2005年)、『在日外国人―法の壁、心の溝』(岩波書店、1991年/新版、1995年/第三版、 2013年)など。
など。

「2019年 『「共生」を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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