(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 149
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314301

作品紹介・あらすじ

「1%vs99%」の構図が世界に広がるなか、本家本元のアメリカでは驚愕の事態が進行中。それは人々の食、街、政治、司法、メディア、暮らしそのものを、じわじわと蝕んでゆく。あらゆるものが巨大企業にのまれ、株式会社化が加速する世界、果たして国民は主権を取り戻せるのか!?日本の近未来を予言する、大反響シリーズ待望の完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のシリーズ完結編なのだが、三部作のうち二作目を読んでいない
    ことに気が付いた。完結篇の本書を先に読んでしまったわ。

    1%の富裕層と99%の貧困層。その本家本元が唯一の超大国である
    アメリカ。本書では食をはじめ、アメリカの政治までもが一握りの大
    企業に左右されている現実を抉り出して行く。

    怖いのは食だ。工業化された農場が家族経営の中小農家を駆逐し、
    家畜はまさに工業生産品と同じ。身動きも出来ない畜舎に詰め込まれ、
    抗生物質と成長ホルモンを投与され、次々に出荷されて行く。

    日本ではスナック菓子の包装にも原材料欄に「遺伝子組み換えでは
    ない」と表示されているが、アメリカでは遺伝子組み換え食品の表示
    義務がない。

    人体にどんな影響があるか不明な遺伝子組み換え食品だが、科学
    雑誌にその危険性を指摘する論文を書こうものなら様々な攻撃に
    晒される。

    そして、餌食にされたのが戦争後のイラクの農業だ。戦後の復興支
    援の名の下、無償提供されたのは遺伝子組み換え小麦の種子だ。

    食ばかりではない。教育も、公共サービスも、大企業にとっては
    投資先に他ならない。利益が生み出されるとなれば、なんにでも
    手を出し、自分たちに都合のいい法案を提出させる為には多額の
    政治献金を行う。

    そうして利益が見込めなくなれば、他へと移って行く。置き去りにされる
    のは誰か。言うまでもない。一般市民である。

    現在、日本が推し進めようとしているTPP参加。関税撤廃を主軸に
    工業vs農業の面でばかり語られがちだが、ちょっと考えてみて欲しい。

    アメリカから大量に安価な農作物や食肉が入って来る分、食の安全
    も脅かされるということを。自由化、効率化を進めたおかげで、国内
    の市場は頭打ちだ。だからアメリカとしては海外に市場を求めたい。
    それがTPPの正体じゃないのか。

    成長戦略、規制緩和。自由化。民営化。口当たりのいい言葉ばかりが
    並ぶが、それは誰の為のものなのか。庶民の為ではないのは確かだ。

    思い出すのは小泉政権だ。製造業への派遣労働を解禁した結果が、不
    況時の大量派遣切りではなかったか。

    これは対岸の火事ではない。TPPなんか参加しなくたっていい。日本は
    ガラパゴスでも構わない。ここはアメリカの準州ではないのだから。

  • 本書を読むと、アメリカという国がそら恐ろしくなった。アメリカの政治、行政、マスコミの全ては、富の集中する多国籍企業に買収され、操られている。多国籍企業はには公共のためという発想がないから、ひたすら営利を追求して富の蓄積を図り、その資金で徹底的なロビー活動を行うから、益々富めるようになり、その代わりに没落していく中間層。自由の国アメリカ、民主主義の旗頭、平等のチャンス、アメリカドリーム等はすべて幻想になってしまっている、という。
    自国のみならずメキシコやアルゼンチン、インドなどの国々で中小農家を種と農薬で支配するアグリビジネス、教育への競争原理の導入と民営化によるコストカット、軽犯罪を含めた犯罪の厳罰化と囚人を使った刑務所ビジネス等、本書が描いている事は真実とは思えないほど余りにもえげつない。
    NAFTAは、結局投資家や多国籍企業を利するだけだったとのこと。とするとTPPもその恩恵に与れるのは、一部日本企業を含む多国籍企業と富める投資家だけということになる。推進役であるはずのアメリカの国内でTPP反対論が喧しいのもよく分かる。
    アメリカをこのように悲惨な状況にしてしまった背景には、何といっても、湾岸戦争やイラク戦争の戦費負担による財政破綻と規制緩和・民営化・市場原理の導入による徹底した効率化が利にさとい営利企業を太らせてしまったことや、不法移民による治安の悪化などがあるんだろう。それにしても、こんな状態で国が長く維持できるのだろうか? 中国のことを心配している場合じゃないのかも。
    著者は、世界中でコーポラティズムが進行しているという。日本も例外ではないだろう。大企業と国民の利害が対立する時代にあって、日本の先行きも益々不安だなあ。

  • 完結編の今作では、アメリカのみならずイラクやメキシコ、アルゼンチンといった諸外国をも飲み込んでいったアグリビジネスを中心に、切り売りされ、市場原理の野に放たれてしまった自治体と公共サービス、政治家やマスコミを巨額の資金で傘下に収めることで世論を支配することに成功した巨大企業などについて、その内情を暴いていく。国際貿易協定で合法的に進められていく「1対99」のグローバル化。TPPの当事者である日本もまた例外ではない。結びで登場する、ITの力で巨大企業に立ち向かう市民の姿が唯一の希望だった。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2015年度第1回図書館企画展示
    「大学生に読んでほしい本」 第1弾!

    本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。

    木下ひさし教授(教育学科)からのおすすめ図書を展示しました。
        
    開催期間:2015年4月8日(水) ~ 2015年6月13日(土)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

    ◎手軽に新書を読んでみよう
    1938年に岩波新書が創刊されたのが新書の始まりです。
    値段も分量も手ごろな新書は「軽く」見られがちなところもありますが、内容的に読み応えのあるものも多くあります。気に入った著者やテーマで探してみるとけっこう面白い本が見つかるものです。広い視野を持つために、興味や関心を広げるために新書の棚を眺めてみましょう。刊行中の新書を多様な角度から検索できるサイトもあります。(「新書マップ」)

    ◇女性ジャーナリスト堤未果の本
    良質のルポルタージュはマスコミが伝えないできごとを教えてくれます。堤氏の一連のアメリカルポはその好例でしょう。アメリカという国の現実はそのまま日本につながります。英語を学ぶだけではアメリカを知ったことにはならないのだと気づかされます。

  • 貧困アメリカシリーズの第三弾から読み始めてしまった。
    けど、これだけを読んでも衝撃はかなり大きい。なぜ、こんなことになってるんだ、アメリカ。
    というか、なぜこれを目指してるんだ日本。

    遺伝子操作されたGM種子やらオーガニック食品の罠やら、すでに直面してるたくさんの問題をなぜにもっと真剣に考えないんだ。どうかんがえても身体によくない食品を平気で流通させる、1%の人々は自分の子どもたちや孫たちの未来をどう考えているんだろうか。

  • 1986年以降、アメリカの鶏加工工場では、加工前の鶏の死亡及び病気に関する審査を義務ずけられてない。
    成長促進剤が注射された鶏は内臓や骨の成長が追いつかず、大半は足の骨が折れたり、肺疾患になってしまう。効率とビジネスの成功という観点わ見れば、これはすごい発明ですよ。42頁

  • アメリカで進行する行き過ぎた資本の論理にメスを入れるシリーズ物ルポルタージュ。
    特に「食」の問題は不気味な程の事実を突きつけている。
    この動きがグローバルに展開していくのは資本の論理からは必然的であり、日本がこの動きに巻き込まれるつつある現実をどう直視すべきなのか。

  • 貧困大国アメリカ3部作のラスト。

    低所得者用の食糧支援、かつてはフードスタンプと
    呼ばれてましたが今はSNAPです。
    これの普及率が、今やアメリカ国民7人に1人。
    これがまた食糧業界とつながっていたりして、
    結局ジャンクフードなどの大量消費につながり、
    糖尿病など医療(業界)に行き、そして
    金融業界へつながるという連鎖。
    貧困層を助けるものではなく、大企業・業界を
    うはうはにするシステムとなってしまっている。

    数々のアメリカの驚くべき、かつ呆れる内部事情が
    今回も多数出てきます。
    このシリーズの醍醐味、全然知らなかったアメリカの
    ばかげた内実が前作よりも楽しめます。

    救いは一つ。動くこと。
    銀行の不当値上げに一人の女性が声をあげて、
    預金を80億円移動させた動きなどは
    我々もできるという希望を示しています。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      ヒョードルさん、最近のレビュー数すごいですね!
      しかも興味を惹かれるものばかりで。
      レビューを読むだけでも勉強になり...
      こんにちは。

      ヒョードルさん、最近のレビュー数すごいですね!
      しかも興味を惹かれるものばかりで。
      レビューを読むだけでも勉強になります。

      食料支援が7人に1人とは驚きです。
      つい先日GMのCEOの報酬が14億とかってニュースになっていましたよね。
      同じ国とは思えませんね・・・(^_^;)

      でも人ごとじゃないですよね。
      ヒョードルさんの「地方にこもる若者たち」のレビューにもある通り、地方経済の現状は相当厳しい。
      日本はどこへ向かっていくんでしょうか・・・。

      またためになるレビュー、お待ちしております♪
      2014/02/13
    • ヒョードルさん
      vilureefさん
      いつも読んでくれて、ありがとう!
      堤さんはFacebookでもやり取りをさせて
      いただいてまして、好きなジャーナ...
      vilureefさん
      いつも読んでくれて、ありがとう!
      堤さんはFacebookでもやり取りをさせて
      いただいてまして、好きなジャーナリストの
      一人です。
      おっしゃるように、貧困・格差、どう
      考えても希望のない状況が目白押しですが
      ”自分(たち)が考えて、動くこと”、
      これしかないかな、と思ってます。
      読書を通じて、これからもお付き合い
      くださいね。
      2014/02/13
  • 多国籍企業と「99%」の戦いを描く。戦いというよりは、一方的にやられていく過程とも言えるかな。
    特に食品関係の記述は怖いものがある。
    日本もTPPが決まれば、本に出てくるような「99%」は何も知らされず危険な食品と知らずに食べたり、多国籍企業の為に奴隷的に働いたりという状況が来る事は明らかだな…
    知識として多くの人に知ってもらいたい内容でした。

  • テレビや新聞に誘導されて些細なことでいがみ合う間に大事なことはスルリと規定事項にされていく。法治国家とか罪刑法定主義とか言うけどもうやりすぎかも。日本では国会議員に立法能力がないのでケアすべきは官僚さまかな。アメリカの横暴に立ち向かっているラテンアメリカの行動が参考になるかな。もう大人なので、絶望してるだけでなく、行動あるのみ。

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著者プロフィール

堤未果(つつみ・みか) ジャーナリスト。東京生まれ。ニューヨーク一市立大学大学院で修士号取得。米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。以後、ジャーナリストとして執筆・講演活動を精力的に続けている。主な著書に『ルポ・貧困大国アメリカ1・2』『株式会社 貧困大国アメリカ』(以上、岩波新書)、『沈みゆく大国アメリカ』『沈みゆく大国アメリカ 逃げ切れ!日本の医療』(共に、集英社新書)、『アメリカから自由が消える』(扶桑社新書)、『政府は必ず嘘をつく 増補版』(角川新書)などがある。

「2016年 『政府はもう嘘をつけない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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