小林一茶 時代を詠んだ俳諧師 (岩波新書)

著者 : 青木美智男
  • 岩波書店 (2013年9月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314462

作品紹介

夏の暑さに豊作を願い、打ちこわし騒動に心を寄せ、大黒屋光太夫の帰国に反応し、「君が代」や「神国」日本を詠む。市井の営みをつぶさに見つめた一茶の句からは、外国船の出現に動揺し、国学に沸く激動の文化文政年間を生きる人びとの姿が浮かび上がる。「幕末維新を準備した」と言われるその時代を、近世史家が読み解く。

小林一茶 時代を詠んだ俳諧師 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  •  この本は江戸後期の俳諧師、小林一茶の65年の生涯の中で書いた俳句を紹介している。
    主な代表作として
    『雪とけて村一ぱいの子ども哉』
    『痩蛙まけるな一茶是に有』
    なども載っている。そして、一つ一つの俳句を説明しており、まったく持って素人の私たちでもわかりやすく書かれている。

     また、一茶の生涯を通して書かれた俳句には時代の背景も見える。
    たとえば、『もたいなや昼寝して聞田うへ唄 道とふも延慮がましき田植哉』という俳句があるが、これは一茶が寛政7年(1753)33歳の初夏、西国の旅の最中で、長門国宇部の周辺を逍遥していた。ちょうど田植えの時期だった。一茶はその光景を見ながら昼飯でも食べようかと土手に上がったが、疲れが出て昼寝をしたくなってしまった。その時、田んぼから田植えする女性の歌う田植え唄が聞こえてきた。それは耕作もせず俳諧など詠んで暮らしている男には、なんともったいない子守唄に聞こえた。そこで一茶の頭にこの句が浮かび、懐中日記の余白に書き留めた【p13】。
     田植えは常に低姿勢を保ちながら稲を植えていく作業でとても腰に負担がかかり重労働となる。そのため、少しでも楽しみながら痛みを和らげるために、女性は唄を口ずさみながら作業をしていることがわかる。

     このように、一茶は普段通りの生活の中でもどんなに小さいことでも瞬時にメモすることで約22,000もの句を書き留めてきた。またそのほとんどの視点が農民に向けられているものが多い。だから、その時代の民衆たちの生活がどのようなものなのかが一茶の俳句から読み取れるところが感動した。(kenkou 20150105)

  • 「一茶は生涯を通して、農民への畏敬、都市に暮らす裏長屋などの下層民への共感、政治や経済への強い関心を変わることなく持ち続けた社会性豊かな稀有な俳諧師であった。その俳諧師が自ら生きた文化文政期という時代をどのように見ていたのか。それを一茶の句を使って描いてみたのが本書である」(p.176)と、著者急逝のため瀬戸口龍一が代筆した「おわりに」で端的に述べられているように、一茶の文学的な研究ではなく、一茶を媒介とした18世紀後半~19世紀前半の江戸社会史である。一茶の遺した大量の句集や日記・書簡などを通して、「先進工業地帯」であった故郷信州の経済構造の変化、年季奉公による江戸と農村の間の人びとの移動、対外危機によるナショナリズムの萌芽、「世直し」志向の台頭といった時代の様相が浮かび上がる。

  • 昨年…2013年・夏…一茶生誕250年ということで…
    その故郷である長野県信濃町を旅した。
    旅から戻り、立ち寄った書店で見つけたのが本書だ。
    好好爺のイメージとは異なる、一茶像が描かれている。

    残された句…芭蕉は976、蕪村は2918に対し、
    一茶は21000と桁違いに多い。それは、句にするテーマの
    広さを伺わせる…江戸に出て俳句を学び、全国を歩き、
    膨大な数の読書をし、時代の趨勢にも眼をやっていた。

    それに、相当なメモ魔で…50過ぎてもらった20代の奥さんと…
    「夜五交」…などと書き残していてビックリ…(@_@。
    本書は、これまであまり取り上げられることのなかった、
    一茶の句を紹介している…名句一歩手前の句?…

     今しがた此世に出てし蝉の鳴

     国土安穏とのん気かがし哉

     梅がゝやどなたが来ても欠茶碗

     涼風の曲がりくねって来りけり

     花の世や出家士(さむらひ)諸あき(商)人

    それから、本書で仕入れた小ネタをひとつ…
    「尾張名古屋はシロでもつ」と云ったのは、
    蕪村なのだそうだが、ここで云う「シロ」とは、
    「井上士郎」…当時の中部俳壇の重鎮だったそう…

    残念ながら本書の完成を見ることなく、著者は
    逝去された…とのこと。俳句を専門としない著者の
    視点は新鮮に感じられ、興味深く読んだのだけれど…
    おそらくや、最終段階まで手を入れるつもりだったろう…合掌。

  • 子どもや動物たちを歌う「優しい一茶」とは別の、江戸後期の時代を写しとる「リアリズムな一茶」に感心しました。また、著者が、一茶の歌う君が代(世)は、徳川幕府下の治世のことを言っているということ、神国については、「神国日本を支配している松平氏=徳川幕府を指し、そんな神々の権威・・・」
    と指摘しているのは、得心したところです。「君が世やかかる木陰もばくち小屋」「神国の松をいとなめおろしや船」

  • 著者は近世史家だという。だから俳句の専門家でない視点での選句となって、かえって新鮮に読めた。米作りに関わらないで言葉で食べていくことを、地元の人だけでなく、一茶自身も「浮いた存在」ととらえていたようだ。その思いが、力なきもの貧しきものへの共感につながったのだろう。
    発行を待たずに亡くなった著者の思いを弟子が引き継いで完成させた1冊。

  • 配架場所 : 新書
    請求記号 : SHIN@911@K101@1
    Book ID : 80100460402

    http://keio-opac.lib.keio.ac.jp/F/?func=item-global&doc_library=KEI01&doc_number=002376877&CON_LNG=JPN&

  • ある意味、小林一茶=ネトウヨみたいな斬新な認識に目ウロコ。

  • 俳諧師でない著者なので、とても身近に感じて読むことができた。
    つまり、小林一茶の俳句評論ではなくて、人間「一茶」をしっかり認識できた。
    必ずしも順風満帆でもなく、むしろ悲惨とさえ思える人生。
    60歳を過ぎてからできた子供がかろうじて次世代に・・・。
    弱きものに向けたやさしいまなざしはどうして生まれてきたのか、結局はわかりませんでしたが・・・・。

  • 岩波新書 911.35/A53
    資料ID 2013101913

  • 13/09/27。

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