家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの (岩波新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314493

作品紹介・あらすじ

食事の支度や後片付け、洗濯、掃除、育児に介護…。だれもが必要とする「暮らしの営み」のはずの労働が、なぜ正当に評価されないのか?不公正な分配が、いかに生きづらさや貧困を招き寄せていくか。終わりなき「見えない労働」を担う人々が、社会から不当に締め出されている実態に光をあて、困難から抜け出す道を内外にさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 「家事までハラスメントになるのか?!」
    「ハラスメント」という言葉が横行している昨今、正直この一言が脳内にガツン!と響いた。
    私自身、結婚してから専業主婦なので、家事にハラスメントが付けられると、なんだか気まずいような…。
    でも気になるので読んでみました。

    読み終わって気づいた。
    日本は国民、特に女性に頼りすぎだ!と。

    そういえば、私自身もなぜ専業主婦になったのか?
    当時勤めていた所で家事しながら仕事は体力が持たないと。
    さらに子供が欲しかったので、子供が居たら更に難しいと。
    でも今思えば、なぜ家事育児を全部やることが前提だったのだろう。
    私も日本古来の思考に囚われていたわけです。
    親含め、周りの価値観に自分も染まってしまっていた。

    時代と共に、いろんな状況・価値観は変わるのに、なぜ「家事育児は女性がする」という思考だけは変わらないのか。
    日本の、その場しのぎの政策で振り回される私たちに気づく1冊だと思います。

    この本が刊行されたのは2013年。
    「10年経っても、何も変わってねーじゃねーか!!」
    と本を政府に叩きつけたくなると思います(笑)

  • 読みながら、ふつふつと夫への殺意が生まれてきた。
    そう、こいつと結婚さえしていなければ、私は今頃正規雇用をあきらめたり、家事・育児・介護に農家の嫁労働としてこき使われて…あげく実家の相続権を放棄させられて、この婚家でも私財産の形成のままならない状態に甘んじていることなどはなかったのだと!
    あたりまえのように、作られた夕飯を食べて、会話もなくテレビの前にくつろいで、メタボ腹をさらしている夫に、殺意が…(-_-#)
       まあ、そんな本気の冗談は置いといて、
     どうすればこの生き辛い状態がよくなるのだろうか、
    なぜ労働時間の規制法が個人の尊厳を無視する方向で決着してしまうのだろうか、イスラムの男尊女卑の今の風潮を笑えない、日本の意識の低さが再生産されているとしか言いようがない

  • こんなにも深刻な家事ハラを、「夫の家事へのダメ出し」というクソしょーもないことを表す言葉に使った人のセンスを疑う。経済界だけでなく、法律まで家庭内無報酬労働を推奨する日本、終わってる。

  • 付箋貼りながら読んでたら本全体が付箋だらけになってしまったほど、大きくうなずきながら読んだ。
    あの手この手で家事労働が「ないもの」とされ、そのせいで社会全体に大きなひずみが生じている。そして今、世界から日本のその状況が批難の的になっているにもかかわらず、現在の政財界は家事労働無視・長時間勤務礼賛への歩みを強めようとしている。
    主婦だけではない。働くことに息苦しさを感じている人は一度読んでみてほしい。何かヒントが見つかるはずだと思う。

  • ワーキングマザー的な話題の中で、あるブログで紹介されていた本。3歳男子の子育て真っ最中、仕事・家事・育児をどう両立するかが自分自身の課題であるとともに、それって自分ひとりの問題じゃなくて、世の中の問題じゃないの?と常々思っているのですが、そのあたりをしっかりまとめてくれている一冊。なぜ家事労働が軽視されているのか、もしくは美化されて(家事は尊いものだから)無償であるべきとされているのかの理由を追いかけるとともに、問題提起しています。
    長年取材してきた内容も踏まえつつ、現在の法制度の背景や、なぜ日本はこういう社会なのか、ということに向き合っていく。自分が漠然と感じていた違和感のようなものを、ちゃんと説明してくれた…というか。

    ただ、タイトルをキャッチ―にしたかったのは分かるのですが、「ハラスメント」というのは内容とズレがあると思っています。ハラスメントというと個人から個人へのいやがらせのように受け取れてしまうのですが、これはあくまでも単純に個人的な「ダンナが奥さんの家事を軽視している」という問題ではなくて、社会として「家事労働を軽視する仕組みになっている」という問題だ、ということを訴えています。ワーキングマザーに限らず、パパ達も、むしろ子育て世代じゃない人たち、管理職の人たちとか社会や会社の仕組みを動かす・作る立場にある人たちにも是非一読して欲しいですね。

  •  この国の社会システムが既に詰んでいることがよく分かる1冊。家事労働の分配は想像以上に影響の大きい問題ですね。高校生くらいの若い人の必読図書にしてもいいくらい。
     自助・共助・公助って1979年に自民党福祉部会が出した「日本型福祉社会構想」まで遡るのね。政府的には40年以上既定路線だっただのに何で今更反発?って感じかもね。
     「欧州の病人」と呼ばれたオランダも詰んでたけど,ちょっと持ち直したかなというところを見るとやればできる部分はあるんでしょうけど,まぁ,望み薄。
     自分なりにあがいてはいるけど,それって結局自助に追い込まれてるだけじゃないかと思うと,政府の思うつぼで,なんだか馬鹿馬鹿しくなりますね。
     
     

  • へーベルハウスのコマーシャルで話題になった「家事ハラ」という言葉。へーベルハウスの社員は誰もこの本を読んでいないと確信しました。
    「人々が気づいていなかった現象に新しい名前をつけることで、その問題点を見えるものにするという社会改革の試み」が社会学者の仕事なのだから、へーベルハウスのしたこと(学者が命名した言葉を、命名の意図とかけ離れた意味で使用し、流布する)は、学者の生命を断ちかねない重大な営業妨害でした。
    著者の抗議が受け入れられたのはせめてもの救いです。著者の業績(炯眼)が汚されず、社会改革に寄与し続けられるよう祈ります。

  • そうなのよ‼︎という内容。
    家事は、毎日の事でひとつひとつは大した事のない労働でもつもり重なるとかなりの労働。かつ、認められないもの(やって当たり前)。そういったものが主に女性にのしかかってきている現状をきちんと把握して欲しい。

  • 今、家事ハラという言葉が喧伝されています。
    夫が自分なりに家事をがんばったのに、妻がそのお粗末さに上から目線で貶めるという、夫が行う家事行為に対して妻が嫌がらせをすることという意味で使われているようです。

    どこが出処かわかりませんが、この本は違います。

    日本の社会の中で家庭に関わる全ての無報酬労働が、われわれを苦しめて来たことを掘り起こしています。

    この本は私にとっても生きづらさの根幹を掘り起こして見せてくれました。

    これからさらに勉強して、次世代に伝えたいと思いました。

    久々に衝撃的な本でした。

  • 【読書その77】以前facebook上で読んだ感想が書かれていたので気になって手に取る。結婚して多少妻と分担をして家事をするようになって大変さを多少なりとも知った(あくまで多少ですが)。実家では母が飲食店を経営しつつ、全て家事をやっていたので本当に大変だったよなぁと、今更ながら母ばかりに家事を押しつけていたことを反省することが多くある。育児をしながら共働きをするには夫婦で家事の分担が不可欠。それを改めて痛感するのでした。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2021年 『POSSE vol.47』 で使われていた紹介文から引用しています。」

竹信三恵子の作品

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