ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 231
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314608

作品紹介・あらすじ

差別と侮辱、排除の言葉をマイノリティに向けて路上やネット上で撒き散らす-ヘイト・スピーチとは差別煽動である。差別も「表現の自由」として、当事者の深刻な苦しみを放置するのか。民主主義社会をも破壊する「言葉の暴力」と向き合う国際社会の経験と制度を紹介し、法規制濫用の危険性も考えながら、共に生きる社会の方途を探る。

感想・レビュー・書評

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  • やっとやっと、3週間以上かけて、図書館の返却期限を過ぎて読み終わった。

    なんというか、振り返ってみればそう大して難しいことは書いてないはずなのに、第2章と第3章は読んでるとすぐに頭が疲れてしまって、それで長く掛かったんだよね。。

    この本は、ヘイトスピーチは法で罰すべき、との立場から書かれた本だけど、この人も書いてるが実際問題として問題が山積み過ぎてどこから手を付けたらいいのかって気分がする。だいたい国や裁判所からして外国人に対して差別的なので、うっかり手を出すと逆にマイノリティがやられちゃう、ってことは明白だからだ(だから差別に反対しててもヘイトスピーチ規制に反対している人たちがいるのは分かる)。

    だからこの著者も書いてるんだけど、まずはヘイトスピーチを民事裁判で裁けるような法律からかなあ。あとは絶対に国の機関から独立した国内人権機関を作るべきだと思う。が、これも「一体誰が作れるんだよ」という気がして、それを作るには現在の有権者が頑張らないとダメなんだろうと思う。

    外国(取り上げられている国はドイツ、オーストラリア、英国、アメリカだけど)と比べても、日本は格段に遅れてて(というか、何もしていないどころか国を挙げて差別してる国なんてないよ)目の前真っ暗になる。こんな国が本当に「先進国」なわけ????????聞いて呆れるより、悲しくって涙が止まらないよ、ホンマ。

    「あとがき」の中でこんな一節がある。

    > 政府がここ数年「多文化共生」との用語を使うようになってきたのは、特に1990年以降の移住労働者の急増に伴う当事者や関連するNGO団体、さらに地方自治体などの取り組みの成果とはいえるが、その内実は、多様な食べ物や踊りなどの上っ面の文化を日本人が楽しむという以上ではない。

    本当にこれ、全くそう!こないだわたしがアイヌの写真展を見に行った「人権啓発センター」が行っている、写真展中のイベント、「アイヌのなんちゃら作り」(刺繍とか?)みたいなものはもう、満席で予約受付終了なのに、アイヌ映画の上映と、わたしが行ったトークイベントは満席にはなってなかった(ただし、トークイベントと映画上映は人数が多いし、結局のところ、トークイベントはほぼ満員に近くなっていたようだ)。楽しそうなイベントだけすぐに満席で、そうでない「人権」に触れそうなイベントは避けられる、、わたしはそれを見てなんだかいやあな気分だったんだよね。

    それと、わたし自身、こないだは朝鮮学校のお祭りに行ってきて、いろいろな料理を食べたり、キムチ買ってきたりしたけれど、やっぱなんだか違和感を感じてしまってるのは確かなのだ。いや、これはお祭りという性質上は問題ないのかも知れないが、でも、他のイベントなんか見ててもやっぱり「食べ物と踊り、音楽」は主流であって、わたしらはそれを享受しているだけ。楽しいとか美味しいとか、そういう感想しか持てないじゃん。

    しかし、これは当事者の問題、というよりは、国がきちんと教育しないことが原因であり、わたしたちもきちんと学ぼうとしないのが原因だと思っている(まぁ国が一番の原因者だとは思う)。

    「外国人差別はそんなに深刻ではない」という国とそれに甘んじている国民。その中でじわじわと勢力を拡大している差別主義者。一体、どこからどうすれば、解決に向かうんだろう、正直、この本はとても「理想的」な本で、書いてあることも非常に明確なのだが、わたしは目の前が真っ暗にしかならなかった。

  •  現在の日本におけるヘイト・スピーチ(差別煽動)、特に在日コリアンや被差別部落出身者に対するそれの横行の状況、日本政府による差別放置・助長の現状、現行法下での規制の限界、イギリス・ドイツ・カナダ・オーストラリアにおけるヘイト・スピーチ規制の現状と課題を示し、罰則を含む包括的な差別禁止法制の必要性を訴える。日本の法曹界では、権力の濫用により「表現の自由」を危うくするという理由で、ヘイト・スピーチの法的規制(特に刑事規制)に否定的な見方が強いが、国際的には人種差別撤廃条約に基づく法規制の流れが一般的であり、事実上無法状態にある日本の現状はむしろ異常であることを強調している。

     法学的アプローチからのヘイト・スピーチ問題の評論としては主要な論点を網羅しており、この問題を考えるうえで必読の書と言えるが、本書が示す日本の絶望的現況(特に差別主義者の多い安倍内閣の存在)は、仮に法規制が実現してもむしろ「日本人差別」と称してマイノリティ迫害に逆利用される可能性を容易に推測させる。

  • 師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』岩波新書、読了。民主主義社会を根柢から覆す差別煽動としてのヘイト・クライムの蔓延する現代日本。本書は日本の現状と背景を概観した上で、諸外国の人種差別撤廃政策を参照し、現代日本が取り組むべき対策について具体的な提案を試みる。

    字の如く「ヘイト・スピーチ」の「スピーチ」に注目するとそれは「表現」の一種と見まがうが、それ自体が言葉の暴力であるだけでなく、物理的暴力を誘引する点で表現を凌駕する暴挙である。勿論、世界各地でヘイト・スピーチは散見されるが、公人によるヘイト・スピーチが撒き散らされ続けるのは日本だけだ。その代表が石原慎太郎前東京都都知事であり、著者は「差別の見本市」という。

    ヘイト・スピーチの話者は「差別の意図はない」というし、石原発言に関しても日本政府は人種差別を助長する意図はないから人種差別撤廃条約の対象にはならないという。しかし、差別の意図の有無は「その文言の内容や文脈などから客観的に判断すべきである」。

    良質の対抗言論がヘイト・スピーチを「駆逐」するという意見もある。しかし「ナチズムが『表現の自由』を行使してヘイト・スピーチを行い、反対勢力を「駆逐して」権力をとり、多くの人々をユダヤ人虐殺の加害者とさせた歴史的事実に照らしたとき、どの程度説得力があるだろう」。

    著者は慎重論も丁寧にすくい上げながらも、「日本社会が真に問われているのは、法規制か『表現の自由』かの選択ではなく、マイノリティに対する差別を今のまま合法として是認し、その苦しみを放置しつづけるのか、それともこれまでの差別を反省し、差別のない社会を作るのかということではないだろうか」。

    日本社会の現状を冷静に報告し国際社会の経験と制度を紹介し、他者と共に生きる社会の方途を探る本書は、若い人に手にとってほしい一冊である。

  • 「差別煽動」(意訳。p.ii)。図書館本。135

  • 表現の自由の問題がからむヘイトスピーチ。
    日本のヘイトスピーチに対する姿勢はまだまだ世界的に遅れをとっていて、もっと向き合っていくべきだ!ということを学んだ。

  • 全日本人必読の書であると言いたい。評論というのは多少なりとも筆者の思想や立場によって偏りがあるし絶対的にこれが正しいということがないのが通例であるが、こと差別に関して、人種や民族、障害者、社会的マイノリティといったジャンルで概念化した差別に関してはいかなる事情があろうとも絶対的悪であり、ましてやその差別を助長し扇動するような汚らしい罵詈雑言など文明社会に存在してよいはずがない。

  • ヘイトスピーチの定義から、その形成の歴史、国際的な潮流、わが国での法規制の是非について総合的に論じた書。ヘイトスピーチ対策法が成立する前に書かれた書なので、若干古いのですが、わが国におけるヘイトスピーチをめぐる議論が紹介されており、いずれもヘイトスピーチの法規制が必要という立場から論じており、勉強になりました。

  • ヘイトスピーチについての執筆依頼をいただいた際に参考文献の1冊として読んだ。

  • ヘイト・スピーチは、表現の自由によって守られるのか、法規制で一定制限するのか、ここの話はよく語られるところかと思う。
    でも、議論の土壌は、あとがきにもあるように、①マイノリティーに対する差別を合法として容認・黙認し、その苦しみを放置し続けるのか、それとも②これまで日本がしてきた(植民地支配など)ことを反省し、差別を許さない社会にしていくかだと思う。

    差別の多くを煽動、助長しているのは権力である。忘れたらあかん。

  • 非常に良い、と最初は思ったけどねぇ。

    でも、この手の問題でポジションを取って、丁寧に一般向けに論じるというのは大事な事だと思う。

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