中学受験 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 116
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314622

作品紹介・あらすじ

いま、首都圏では小学生の五人に一人が受験をするという。なぜここまで過熱するのか。金銭的・心理的・時間的な負担は、どれほどなのか。一見、情報はあふれているものの、肝心なところは不明のまま。果たして信用できる情報はどこに?気鋭のジャーナリストとして、また自らも受験生の父親として、圧倒的かつ綿密な取材を元に実態に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 今月の岩波新書のラインアップの中で気になるのが、横田増生の『中学受験』です。
    『アマゾン・ドット・コムの光と影』『ユニクロ帝国の光と影』という企業もののノンフィクションを書いた筆者が中学受験を取り上げるのですから、当然、読者としては中学受験の光と影を期待します。
    実際、本の帯にはこう書かれています。
    「中高一貫校は“夢の楽園”なのか?
    プラスとマイナスを徹底検証」

    まだ「はじめに」しか読んでいませんが、そこには本書執筆の動機・問題意識が丁寧に書かれています。筆者は中学受験や私立中高一貫校に関する情報が、業界紙に似て、内輪に甘いものになっていることに違和感を感じているようです。

    「中学受験に関する情報の発信源の多くが、受験塾を中心とした受験に利害が絡む立場の人であるのも大いに気になった。
    教育業界に通じていていない一般的な読者が、私立中高一貫校に都合の悪いことを伏せた情報を大量に読めば、全体像を見誤ることにもなりかねない。
    (・・・)本書では、バランスをとるため、これまでの中学受験の本では取り上げられることの少なかったマイナスの面を意識して取り上げることとした。(『中学受験』「はじめに」より引用)」
    中学受験コースを設置している我々としても非常に興味のある本です。
    中学受験を考えているお父さんお母さんにとっては切実な本となるのではないでしょうか。

  • -108

  •  『私立中高一貫校に関する情報に違和感を覚えたのは、業界紙に似た、内輪に甘い臭いが鼻についた』(はじめに)
    『中学受験に対して(略)冷静な判断をくだす人たちがいる。(略)いずれも自分自身が私立中高一貫校に通ったという経験を持つという点だ。(略)そこが"夢の楽園"ではないことを経験値から分かっているのだろう。』(P226)
    『地方出身の親の多くが中学受験にのめり込む理由の一つは、自分の知らない私立中高一貫校を必要以上に美化し、子供をそこに預けることさえ出来れば将来は安心だ、と安易に信じているところにあるのではないか。」(P226)

    そうだ。よくわかる。
    親としては悩ましい。

    知り合い(特に女性)は中高出身者が多かったなーという、経験値のバイアスが自分にはある…。

  • そりゃ公立中高一貫校に入れたいでしょ‼️

    三鷹市は公立小中一貫に力を入れてます。

  • 中学受験の光と闇を中立的に描いたルポルタージュ.結局,親が中高一貫校を通して子供に何を与えたいかなのだが,与える選択肢が貧弱に過ぎる点に問題点は集約される.それは塾から見たら鴨を背負った葱だろうて.

  • 本書の結論は、表題を「中学受験」ではなく「教育格差」としたほうがしっくりくるものだった。序と結章で主張の一貫性がなくなり、読了後はなんともいえない残念な気持ちになった。中学受験に実際にかかわった人々の取材を通じて、様々な立場のコメントを収集し、批判的に負の面を描き出そうとしてる。ただ海陽中学の次に、生活保護世帯の学習支援を行う「塾」を取り上げている。そもそも異なるシステムを比較しても、違うのは当然だろう。製作過程において、編集者側にも工夫できる余地があったのではないか。

  • そこから降りる勇気をもつ。
    できるなら何度でもやり直しができる社会が誰にでもいいだろうに、ね。

  • 世の中にあふれる中学受験の本・雑誌。大学受験に強いなど中高一貫校のメリット、あるいは公立校への懸念や不安が書かれているが、本当なのか。
    著者は業界紙時代の経験から、こういう本・雑誌は、広告主である私立学校や受験塾への配慮から、いいことしか書かない体質を持っていることを機敏に察知し、敢えて中学受験のネガティブな面に迫った。
    読んでみると、実に面白い。本当に知りたいこと、聞きたい本音がたくさん載っている。特に、受験を降りた親子、入学した学校を退校した生徒の話など、受験雑誌では決して出てこない当事者の話は貴重だ。こういう事実も踏まえて中学受験に挑戦してほしいという意味で、受験生の親には必読の一冊だと思う。
    ただ、後半に一定の分量を占める経済格差と学力格差、つまり、貧困家庭の子が十分な教育を受ける機会を与えられていないというテーマについては、これはこれでジャーナリストの著者としては重要なのだろうが、前半とは別のテーマで、この2つを1冊にまとめることが適当であったかという点は疑問が残る。

  • 中高一貫校の受験について、実例をもとに、プラス面、マイナス面を比較。子供がいる場合に中学受験するかどうかの判断に役立つほか、中学受験を通して初等中等教育の現状や課題についての理解も深まる優れたルポタージュである。
    中学受験については、中高一貫校を「夢の楽園」として描くなど、美化された言説が多く流布している現状があるので、本書では、そのマイナス面を意識的に取り上げている。例えば、中学受験自体にかかる親子の経済的・心理的負担はもちろんのこと、中高一貫校に行ったとしても、内部で競争があり、「落ちこぼれ」が生まれる、家庭教師代や塾代もかかる、いじめもあるといったことである。
    中学受験が盛んになったきっかけとして、都立高校の学校群制度の導入が指摘されていた。学校間格差をなくすという触れ込みで始まった政策が、都立高校の凋落をもたらし、それに不安を持った裕福な保護者は私立中高一貫校への受験に走り、余計に教育格差を拡大することになった。ゆとり教育も公教育への不信を高め、私立中高一貫校を利することとなった(ゆとり教育導入にあたって意思決定を行った中教審の委員に私立中高一貫校関係者がいて、自分たちを利するように誘導していたというエピソードも驚きだった)。公教育改革の影響の大きさを思い知るととともに、公教育改革にあたってはどういう結果になるのかをよくよく考え、しっかりと制度設計することが重要だと感じた。

  • 高校受験のない学校に通う生徒ってどんなんだろうと思い読んでみましたけど、これは大変だなと思います。
    私みたいな地方の人間は、大体市町村立の小学校と中学校→県立高校→大学というルートが一般的だし、勉強が出来る生徒もこのルートです。県内にはいわゆる超有名な私立進学校もあることはあるのですが、そこに入るのはよっぽどの能力がないと不可能。地元の小中学校からは数年に一人いればいいのではないでしょうか。
    しかし、近年いわゆる「公立中高一貫校」が各地に設置されて、公立並みの授業料で私立進学校並みの授業を中学校から受けられるということで、人気が出てきています(東京の都立白鳳高校附属中学校による白鳳サプライズが教育界を揺るがせました)。
    今後、私立の中高一貫校、公立の中高一貫校、市町村立の中学校の学力や経済力による棲み分けがなされるんでしょうか。多様な環境や能力の差から人間関係を学ぶ機会が失われるという危惧がある一方で、能力的に近い人びとが集うことでそれに見合った授業が展開できるというメリットもあります。つまり、能力の高い生徒がさらに伸びることもできるし、学力に問題のある生徒もじっくり学ぶことが出来ると言うことです。
    今後中高一貫校は普及していくことでしょう。メリットとデメリットとをしっかりと考えながら、生徒たちにとって最良の教育環境を整えていきたいものです。
    以下備忘録
    公立中高一貫校の三類型
    中等教育学校
    →中学校からの入学しか認めない中高一貫校

    併設型
    →中学と高校から入学することが出来る

    連繋型
    →中学校が市区町村立で、高校が都道府県立というよに、世知する自治体が違う。

    公立中高一貫校の入学に際しては、法律によって、私立中高一貫校のような学力試験を行わない(「学校教育法施行規則第110条)。学力試験の代わりに公立中高一貫校で行われるのが適性検査となる。
    私立中高一貫校の入学試験は、国語、算数、理科、社会という科目ごとに行われ、受験生はどれくらい多くの知識を蓄え、試験用紙の上でそれを再現できるのかが問われる。
    それに対して、適性検査では、小学校で学んだ技能を使って教科の枠にとらわれず、問題を解き、論理的な記述による解答を作成する能力が求められる。・・・原則として、小学校の授業を受けていれば受験(ママ。受検の間違い?)できるような問題作りを目指している。

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著者プロフィール

横田増生(よこた ますお)
1965年、福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務め、99年フリーランスに。

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