- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314639
作品紹介・あらすじ
一九一〇年、日本の植民地となった朝鮮は武断政治といわれる憲兵警察体制下におかれた。一九一九年の三・一運動を始めとする民族運動・民衆運動、文化政治への転換、植民地下の近代、独立運動の苦闘の中で生み出された様々な思想、戦時下の「内鮮一体」の実態等を述べ、植民地支配の本質を明らかにする通史。『近代朝鮮と日本』の続編。
感想・レビュー・書評
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日本の軍事支配、3・1運動、文化政治への転換、民族運動の展開、植民地の近代、文化政治の終焉と日本人、戦時体制と朝鮮、戦争と解放。1910年の朝鮮併合から日本の朝鮮植民地化が始まったのではない。明治時代の日朝修好条規より植民地化がすすめられていた。朝鮮併合で日本は朝鮮にいいこともしたと言う人もいるが、インフラの建設や教育はあくまでも日本統治のためであり、朝鮮の人達を第一に考えたわけではなかった。儒教的農本主義、一君万民思想の伝統は、現在の韓国の政治文化にも表れているのだな。「民乱」の伝統。公論の活発さなど。
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いまの日本の東アジア戦略を考えるに必須の良書。広く読まれてほしい
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日韓併合以後、植民地統治下の朝鮮の状況を慨覧する一書。植民地化は日本による強制的なできごととして、政治・経済・思想など多方面から描かれる。
印象としては「人物」中心の語りである。より有り体にいうと、人物名が次から次へと出てくる著作である。その点で、「人物」を視点に据えた植民地朝鮮期史、といえそうである。政治過程史的、と言い直せるかもしれない。一般向けというこの書物の性質がそうさせるのか、思想史を特に専門にする著者の筆致がそうさせるのかはわからないが、社会経済史的視点が弱いように思える。いやもちろん触れているのだが、いわば「結果」「結論」だけが述べられていて、説明がもうちょっと欲しい、と思えたのだった。 -
前著「近代朝鮮と日本」に続いて朝鮮伝統の「儒教的民本主義」を底流に置き、これと日本が持ち込んだ近代化や規律主義の対立というのが本書全体のメッセージのようである。しかし筆者が言う「儒教的民本主義」自体、「平等主義や平均主義を標榜」の一方で「名士意識」「政治は民のためであっても実践主体はあくまでも士」とあり、また「群守(警官)の殺害は王朝時代にあっては革命、民乱を逸脱した反乱行為」の一方で1946年には「伝統的な民乱の作法を踏まえながら警官200名以上を殺害、儒教的民本主義の伝統は帝国日本の支配を受けてもなお生き続けてきた」とあり、今一つ理解しがたい。
そもそも、どこの国であれ近代化には規律の導入が不可欠で、また多かれ少なかれ痛みを伴うものではないのか。日韓併合期に苦しんだ人々がいるのは事実としても、「植民地支配」だからそうなのか、「近代化」だからそうなのか。朝鮮独自の近代化が実現していたらどうだったのか。またどこまでの事象が近代化由来なのか。本書では、白白教事件まで「暴力的に強要される近代になじめず、排除感を強くした民衆が起こした悲劇」と述べている。 -
ナロードニキのように、幻の理想郷への憧憬のような「儒教的民本主義」が繰り返し登場する。果たしてそのような視点からの政治史の分析は妥当なのかどうか。
日本による朝鮮支配がなぜあれほど苛烈であったのか、前著を含めて読むとその理由がよくわかる。帝国主義間の争闘の中から日本が奪い取っただけに、踏みつけにされた朝鮮民衆の憤懣は大きかった(この点が台湾と異なるところ?)。義賊の活躍がそのことをよく表している。
整理された通史としては、よくできているが、「儒教的民本主義」的視点からの切り口が、韓国の歴史的政治風土を特別視しているのではと感じた。古い政治思想や社会的慣習の中に新しいものを見いだせることは、どこの国でもあることであり、同時に新しいものと思ったものが結局は現代社会では実体のないものであるということも、どこの国でも見られることである。こういう発想は韓国・朝鮮の歴史を特別なものと持ち上げてしまう陥穽に入り込む恐れがある。 -
1910年韓国併合から1945年解放まで、日本統治時代の朝鮮の通史。前著『近代朝鮮と日本』(岩波書店、2012年)の続編。伝統的な儒教政治文化(「儒教的民本主義」)が植民地期にも底流で生き続け、朝鮮人の思想や行動を規定したとみなす視点がユニークである。
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淡々と書いてはおられるが、心中察したい。
大陸側からも常に周辺国と観られ、近代になってからは島国からも(秀吉からも)攻められ、苦しめられ、さげすまされてきた民族の悲劇。
個人でもトラウマというのは生涯続くものですが、民族のトラウマは消えることがないような気もする。
ふたつに分かれたままの祖国もまた不幸だなぁ。 -
221.06||Cy