フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳――いま、この世界の片隅で (岩波新書)

著者 : 林典子
  • 岩波書店 (2014年2月21日発売)
3.83
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314714

作品紹介

独裁政権と闘うジャーナリスト、難民キャンプで暮らす少女、配偶者から硫酸で顔を焼かれた女性、震災で家族を失った被災者、誘拐され結婚を強要された女子大生-。世界最大規模の報道写真祭で最高賞を受賞した気鋭の写真家が、世界各地で生きぬく人びとに寄り添い、その姿を報告する。カラー写真多数。

フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳――いま、この世界の片隅で (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「こういう仕事をしたい」と思って、その道にまい進する人もいれば、
    些細なきっかけで思ってもみなかった仕事に就く人もいる。

    本書の著者は後者のタイプか。アメリカに留学していた大学3年
    の時に研修で訪れた西アフリカのガンビア。

    研修中にガンビアで開催されたアフリカ連合の人権問題に
    ついての会議でのガンビア人ジャーナリストの発言がきっかけ
    だった。

    アフリカの小国の多くが独裁国家だ。ガンビアもその例に漏れない。
    独裁国家には言論の自由も、報道の自由もない。そんな国でも
    権力を監視するメディアは存在する。勿論、せいめい・身体の危機
    と隣り合わせの仕事だ。

    著者は研修期間を延長し、ガンビアの独立系の新聞社で記者たち
    について仕事をする。たまたま持っていたカメラが、その後の彼女
    の進む道を決めた。

    このガンビアでの出来事をはじめ、内戦の犠牲となったリベリアの
    難民たち、カンボジアでは母子感染したHIV感染者の少年、男の
    身勝手な理由で硫酸をかけられたパキスタンの女性たち、東日本
    大震災と原発事故の被災者たち、誘拐結婚の横行するキルギス
    を、写真と文章で報告している。

    特に衝撃だったのは、硫酸に焼かれた女性たちだ。正直言って
    掲載されている写真からは目を背けたかった。塞がった目、
    引き攣れた皮膚。美しかったであろう女性たちは、何度移植
    手術を繰り返しても元の姿には戻らない。

    それでも、女性たちは苦しい手術に耐え、自分の姿を受け入れ
    生きていくしかないんだよな。一部地域で行われている女子割礼
    もそうだが、何の咎もないのにこんな酷い行為が世界の片隅で
    は実際に起きているんだ。

    章が進んでいくごとに、著者がフォト・ジャーナリストとして成長
    していく過程が伝わって来る。そうして、私たちが知らない出来事
    が今も世界のどこかで起こっているんだと考えさせられる。

    本書で報告さているような出来事を知ったからといって、何が
    出来る訳でもない。もしかしたら、知らなくてもいいことなのかも
    知れない。知ってしまったら、辛くなるから。哀しくなるから。
    怒りがこみあげて来るから。

    でも、著者のように写真で、文章で伝えようとする人がいる限り、
    世界のどこかで起きていることを、私は知りたいと思う。知って、
    泪することだけでは何も変わらないのは分かっている。それでも、
    これからもこのジャンルの作品には手を出し続けるだろう。

  • なんというか、まだ、問題の核心に迫っていないもどかしさがある。社会問題のつまみ食い感しか残らない。問題だけでなく、個々の当事者の生き様にも迫りきっていない。ダメな本ではないが、不全感が強く残った。

    他の方の評判が良いから手に取ったが、わたしは当事者のことを知りすぎているのかもしれない。

  • 出会えてよかった、と思える本。想像を絶する理不尽なことが、今この瞬間にも起こっているかもしれないことを思い起こさせてくれる。

  • マララさんのノーベル平和賞に関わる諸々の報道があって、『カーリーⅢ』でインドって怖いなと思って、そのあと後藤健二さんの事件があって、日本の常識ではフィクションにさえ思えてしまう日常が世界にはあるということを、根本的に私は知らなすぎるのではないかと思ってもう一度ちゃんと読んでみた。写真とそのキャプションを眺めているだけでも、世界の見方が変わる。

  • 旅を単なる観光だけで終わりたくなと思っている人には良い教科書になる本。生活に密着した写真も参考になる。
    2016年4月に再続する。前回読んだにもかかわらず忘れてしまっている箇所が多かった。印象深い本だけにショックだった。

  • 本屋で岩波新書のコーナーを歩いていたら「林典子」が目に飛び込んできた。いつかのナショジオでキルギスの誘拐婚の記事を書いた人で、その後のナショジオでナントカ賞を受賞したことや写真集を出したことなどを見ていて名前に覚えがあった(確認すると2013年7月号だった)。手に取って「やっぱりあの人だ!オレの記憶力もまんざらでもないな」と一瞬得意になったけど、著者名のフォントはけっこう小さいし、帯には顔に硫酸をかけられた女性のインパクトの強い写真が載っているし、次の瞬間には「自分は本当に著者名に反応したのか?」と疑心暗鬼になった。本書との出会いはそんな具合だったわけだけど、購入を即決してすぐ読んだ。出会った偶然に感謝。

    本書は6章からなり、「第一章 報道の自由がない国でーガンビア」、「第二章 難民と内戦の爪痕ーリベリア」、「第三章 HIVと生きるーカンボジア」、「第四章 硫酸に焼かれた女性たちーパキスタン」、「第五章 震災と原発」、「第六章 誘拐結婚ーキルギス」で構成されていて、著者が大学を休学してガンビアに渡ったところから時系列に並んでいる。

    ガンビアと言えば、前『和風総本家』というテレビでテレビ局(国営だったか?)のクルーが日本を訪れ、ガンビアに日本を紹介する番組を作っていたが、まさかこんなに報道が規制され、ジャーナリストが命を狙われたりしていたとは。あの番組では全然悪いイメージを持たなかったので今回驚いた。

    どの章も重く心にのしかかってくるような内容だったけど、パキスタンの、女性が顔に硫酸をかけられるというのは本当に痛ましかった。結婚や交際を拒否したり、浮気の疑いをかけられた女性が、名誉を傷つけられたとする男や近親者から報復として顔に硫酸をかけられる事件が後を絶たないという。写真の威力は強力。顔なんてちょっとした違和感でも目立っちゃうのに、こんなふうに顔面を破壊されてしまうなんて。若い女性ばかりだからなおさら気の毒。それでも被害者の女性たちが現実を受け止めて強く生きていく様子が紹介されているのはよかった。被害者の女性の「弁護士になって同じ硫酸被害に苦しむ女性の権利を守りたい」という夢はぜひ実現してほしい。

    キルギスの誘拐結婚はナショジオに続いて二度目だけど、改めて考えさせられる。一目ぼれ同然の女性を無理やり誘拐して結婚に同意させる。一度男の家に入った女性が出てくることは恥ずかしいことという価値観も手伝っているよう。自殺してしまう被害者もいるし、同意して結婚したものの夫から暴力を受けて後悔する女性もいる。一方で「誘拐されたけど、今は結婚して幸せだ」という女性もいる。
    19世紀以前の誘拐結婚とは、両親に決められた相手との結婚を拒否した恋人同士が駆け落ちすることだった。そして、駆け落ちの誘拐結婚が、「伝統」としてここ半世紀の間に、現在の暴力的な誘拐結婚の形にねじ曲がって伝えられたという。信じられないような話。
    結婚について、恋愛結婚に任せていると日本のように未婚・晩婚が増えてしまうのである程度強引な手段もありなのではないかという気もしている。ここで紹介されるような誘拐はめちゃくちゃだけど。

    写真を扱う本が新書で出るというのは果たしてふさわしいのかという疑問があったけど、価格、大きさの面からもお手ごろだし、たぶん岩波文庫/岩波現代文庫より多くの人の目に入る。近年やたらと立ち上がった他の新書レーベルじゃ信頼感もないし、やっぱり岩波新書くらいで出るのがふさわしいし多くの人に読まれる気がする。

    あとがきより「見たくないから見ないといえば、それで済んでしまうのが日本で暮らしている私たちの日常かもしれない。ただ、世界には見たくないと思っていても、見なくてはいけない問題に直面しながら生きている人びとがいる。」結局テレビでもネットでもほとんど見たいものだけを見るばかり。意識的にこういう本などに接していきたいと思う。

  • 年若く、キャリアも浅いのに、ここまでの仕事をしていることに感心する。

    個人的に人権派というのはどこか胡散臭く、信用していないのだが、虐げられた人々に寄り添いながら情景を切り取る(フォト)ジャーナリストというのは、シャッターを押すたびに身を削る思いをしているのではないか。

    テーマごとのレポでありながら、通読すると著者の成長譚にもなっている。

    東日本大震災の際に立入禁止区域まで入り込んで取材をしたのが海外メディアだけであった、というところに本邦マスコミの限界を見る。

  • 7月新着

  • キルギスの誘拐結婚という写真集が、ホンズで紹介されていて。
    興味深い著者さんです!

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784004314714

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