女のからだ――フェミニズム以後 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314769

作品紹介・あらすじ

女性解放運動/フェミニズムの諸潮流の中でも、1970年代に全米から展開した「女の健康運動」は、男性医師の管理下にあった性や生殖を女の手に取り戻す、生身の実践だった。日本ではウーマン・リブの優生保護法改定反対運動、さらには生殖技術をめぐる議論へつながっていく。意識変革の時代を振り返り、女のからだの現在と未来を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 勉強になりました。

  • フェミニズムという言葉は知っていても、その中身について理解していたとは決して言えないので、この本を手に取ってみたことはよかったと思う。そうして、女性(フェミニズム)が現在直面している問題についてもわかりやすく解説されているので論点が整理しやすくなっている。女性でもないフェミニストでもない自分はやはり自分にできることをやっていくだけしかないと感じた。

  • 京都の古書店で買ったと記憶しています。フェミニズムに関心があり、色々本を漁っていた中で見つけたものです。早速読了したのでレビューします。

    堕胎や避妊といった性と生殖に関わる領域、そして女性の身体をタブー化する社会の眼差しを問題にし、「女のからだは誰のものか」を巡って男性中心主義社会と戦った「女の健康運動」。この本は、フェミニズムの潮流でありながらあまり知られていない「女の健康運動」について、主に第二波フェミニズムの時代(1960-80年代)を中心に紹介しつつ、今日の社会にどのような影響を及ぼしているか、また、現代においてどのような問題が未だ残されているかについて論じている本です。アメリカと日本、それぞれの女性たちが「からだ」について真剣に、大真面目に、切実に悩んだ軌跡が伺える書物です。私自身は男性のからだに生まれ落ちた身でありますが、ミニコミ誌を通じて悲痛に世間に訴える女性たちの生の声にとても心を揺さぶられ、共感さえ覚えるのを感じ、それぞれの問題について随分考えさせられました。また、「女の健康運動」が中心ではありますが、そこを軸にしてフェミニズム全体の様相もまた見えてくるように書かれているのもこの本のいいところです。「これだけあるのか!」とビックリするほどの様々なフェミニズム団体、「こんなすごい女性がいたのか!」と感嘆を漏らすほどに実に個性豊かなウーマンリブの闘志たちが本書には登場します。

    私がこの本を通して非常に考えさせられたのは、とりわけ堕胎の問題ですね。プロチョイス(「女性のからだは女性のもの」という主体性を尊重し、中絶の権利を女性に認める)か、プロライフ(生命の尊重という点から、道徳的にも許されない中絶は法律でも禁じるべき)か。
    私としては、プロライフの論理は分からなくもないんですよ。人にもよるかもしれませんが、感覚的に中絶はやはり「子殺し」ですね。ただの臓器、単なる肉片の切除とは違ってきます。生まれる前の子であっても「人を殺してしまったんだなぁ」という思いは多少なりとも湧いてくると思うし、その罪悪感はそれ自体、ある種素朴な、素直な感情だと思うんです。だからこそ、普通人が人を殺したら殺人罪に問われるというのに、胎児を殺しても殺人罪に問われないとは何事かと思うのも、決してメチャクチャな道理ではない。ただ、こういう考え方はやはり、道徳、そして宗教ととりわけ親和性が高いですね。何もプロテスタント原理主義者、モラル・マジョリティ、マザー・テレサ、生長の家に限らず、大体の宗教は「いのちの尊さ」を謳うので傾向としてプロライフに偏りますね。私も僧侶の身なので、真面目な坊さんほど堕胎問題に関してはプロライフだなぁと思わされることは多いです(「国政に訴えて堕胎罪を復活させよう」までいくゴリゴリの人は、私、まだ見たことがありませんが)。
    ただ一方で、中絶はいいもんじゃない、多少なりとも罪悪感は覚えるというのを引き受けた上で、それはそれとしてあるけれども、やはり堕胎罪をはじめ、性と生殖に関わる法律は男性中心的に歪んでいると。あらゆる妊娠・出産・子育ての負担を現に一身に背負っているのはやはり常に女性であって、むしろ男性中心的な中絶の禁止のせいでどれだけの女性が差別され、虐げられていることかと。そういう話も非常に理解できます。
    「基本的に中絶は禁止、妊娠したら必ず産めというのが堕胎罪、でも障害がある人間は産んではいけないというのが優生保護法、そして次世代を担う健全な労働力(障害のない赤ちゃん)を産むための母体保護が母子保護法だと私たちは考え、この3つの法律を女のからだ、人生を管理する「魔のトライアングル」と呼んでいる」(『阻止連ニュース』一二二号、四〜五頁、本書p.179)
    リブに代表される女性たちの問題意識が非常に的確に、分かりやすく伝わってきます。翻って、プロライフ派の宗教者たちは「堕胎罪や優生保護法、母子保護法によって、いかに女性、そして障害者の人権までもが脅かされ、差別されているかを考えた時、人権を脅かしてでも、差別を温存してでも、人殺しとしての堕胎罪はあるべきだといえるのか?」という問いに、どう答えるでしょうかね。

  • 【目次】
    目次 [i-iv]

    はじめに――フェミニズムと女のからだ 001
    変革の時代とフェミニズム/第二波フェミニズムの二つの流れ/コンシャスネス・レイジング/性差ミニマリズム/マキシマリズム/女性学の挑戦/女の健康運動

    第1章 女の健康運動―― 一九七〇年代のアメリカ 017
    1 女と医療をめぐる状況 018
    女の健康運動の始まり/中絶問題の重要性
    2 何よりも中絶の自由を――レッドストッキングス 023
    レッドストッキングスの女たち/中絶法をめぐる攻防/スピークアウトからロウ判決へ
    3 女をモルモットにするな――ピル、DES、ダルコン・シールド 031
    ピルに対する警告/DESの危険性と放置/ダルコン・シールド等のIUDによる被害/女の健康ネットワークの結成/黒人女性のためのプロジェクト
    4 自分の子宮口を見てみよう――スペキュラムとデル・エム 044
    性器を自分の手に取り戻す/デル・エムの考案とセルフヘルプ運動/女のためのクリニックとバックラッシュ
    5 「こちらはジェーンです」――伝説の中絶地下組織 055
    「ジェーン」の誕生/ジェーンでの中絶のやり方/警察の手入れと活動の終了

    第2章 地球を旅する本――『私たちのからだ・私たち自身』の軌跡 065
    1 「それはこんなふうに始まった」――起源の物語 066
    フェミニズムの隠れたベストセラー/OBOSの誕生/OBOSはなぜ支持されたか
    2 OBOSの魅力とは何か 075
    知識は力なり/女たちの経験の重視/当事者によって語らせる/成長し続ける集団プロジェクト
    3 国境を超えて 083
    国際的広がりの三つの時期/さまざまな翻訳・翻案のあり方/グローバル・ネットワークの形成
    4 二つの日本版OBOS 092
    リブのなかのOBOS/第二の日本版OBOS/『からだ・私たち自身』の試み

    第3章 日本のウーマン・リブと女のからだ 103
    1 リブの誕生 104
    「おんな」たちの出会い/ウーマン・リブは輸入か自前か
    2 優生保護法をめぐる対立 110
    優生保護法改定の動きとリブの反対運動/障害者からの反対/リブと障害者運動との対峙/中絶は「女の権利」と言えるのか/リブのなかの分裂/リブは「母性主義」か
    3 ピルへの複雑な思い 125
    ピル推進派と懐疑派と/ピルは飲んでも飲まれるな/からだへの向き合い方
    4 女のからだの日常から 132
    ベビーカ締め出し反対運動/モナリザ・スプレー事件/生理休暇は是か非か論争

    第4章 一九八〇年代の攻防と、その後 143
    1 優生保護法改定運動の再浮上 144
    「胎児の生命尊重」というレトリック/アメリカの反中絶派との連携
    2 改悪反対運動の広がり 150
    女たちの決起/反対運動への既成女性団体の参加/反対運動の拡大と改定の試みの頓挫
    3 富士見産婦人科病院事件 159
    事件の発端/告訴と医学界の反応/長期裁判の過程で
    4 富士見病院事件と女のからだ 170
    「いらない子宮はとってあげる」/無知と羞恥心を乗り越えて/「中絶の自由」への屈折した思い
    5 阻止連と障害者運動 178
    リブを引き継いだ阻止連/女性障害者たちとの連携/優生保護法改定をめぐる相克/妥協の産物としての母体保護法
    6 女のためのクリニック活動 191
    女のための医療づくりに取り組む/アメリカの運動に学ぶ/「私たちはピルを選ばない」/クリニックの開設

    第5章 生殖技術という難問 203
    1 産むための技術の焦点化 204
    新たな問題の浮上/体外受精という技術の持つ意味/(1)生殖プロセスのパーツ化と外部性/(2)生殖の脱セックス化と商品化/(3)生殖細胞への人為的介入の可能性
    2 不妊とフェミニズムの関係 210
    不妊と卵子の老化/卵子老化問題とフェミニズム
    3 生殖技術と日本の現状 215
    ARTと阻止連の主張/生殖技術をめぐる日本の世論
    4 アメリカの生殖資本主義 222
    ベビーM事件/代理出産ビジネスの活発化/代理出産をめぐるフェミニズム内の対立/歯止めをかけることはなぜ難しいか

    おわりに――女のからだは誰のもの 235
    女たちは自由になったのか/ARTをめぐる困難/「選択の自由」の変質

    主要参考文献 [245-247]
    図版出典一覧 [248]

  • 流し読み。身体への自由とは自分の身体だから何をしてもよいということではないと思われるが、それに制限をかけるならいかなる理由によるのか?子どもを産む自由は生命倫理による制限を受けるが、どこまで制限が許されるのか?
    この答えは多分社会規範だと思うが、社会規範それ自体が抑圧的なときそれを受け入れるべきなのか?(振り出しに戻る)

  • ひとくちにフェミニズムといっても、立場や手法、語彙に行動や運動のやり方、かなり多様であること、一様であり得ないことがはっきりとわかる。
    中絶ないし、自分のからだという「やっかいな」問題だからこそ、それはなおさら。

    ツイッターその他でなんちゃってフェミニストを貶めて溜飲を下げる前に、まずは歴史を知ることから始めるべきだろう。それが良識ある人間のすることだと思う。

    わかりやすく読みやすい本でもある。第二次フェミニズムについて主に触れられているが、序でそれ以前の歴史についても整理してあるので、最初に読む本としても問題はない。

  • コンパクトな新書に、かなりいろいろ入ってる感じの本。「女の健康運動の歴史における重要な節目は1969年だろう」(p.18)とあり、この年、アメリカ各地で同時多発的に運動が始まったという。日本では『からだ・私たち自身』というタイトルで訳本が出たOBOS(Our Bodies,Ourselves)の物語も1969年に始まるそうだ。私がうまれた年である。日本ではこの翌年の1970年が「ウーマン・リブ元年」とされているそうだ。

    私が大学に入った年、1988年に出た『からだ・私たち自身』は、ものすごく分厚くて、高かったが、私も買ってあちこちずいぶん読んだし(どうやりくりしてこんな高い本を買ったんやろ…)、この新書で書かれている話は、知っていたこともけっこう多かった。

    でも、知らんかったなーということもあって、たとえば1962年のシェリ・フィンクバイン事件(pp.21-22あたり)、伝説の中絶地下組織「ジェーン」のこと(pp.55-64あたり)、薬害や医療被害者たちのねばり強い交渉の末に、レセプトやカルテの明治、明細のわかる領収証の発行などが実現したこと(pp168-169あたり)など。

    3章の「日本のウーマン・リブと女のからだ」、4章の「1980年代の攻防と、その後」、5章「生殖技術という難問」は、優生保護法改定に際して中絶をめぐって女性の運動と障害者の運動がぶつかったことから、ピルの話、富士見産婦人科病院事件、母体保護法の成立、そして生殖技術と選択の自由についての難しさのことまで、よくまとめられていると思う。

    このかんの、ろくでなし子さんや北原みのりさんが逮捕された「理由」というのを考えてみても、女のからだについて、女自身が語り、表現することへの圧力や忌避感は決して消えていないわけで、女が自分たちの経験を伝え、それを信頼していくことはホンマに大事やなーと思う。

    「阻止連ニュース」122号に掲載されている「魔のトライアングル」が引用されている。女のからだをめぐる法律が、何を意図しているのか、ものすごくよくわかる。

    ▼「基本的に中絶は禁止、妊娠したら必ず産めというのが堕胎罪、でも障害がある人間は産んではいけないというのが優生保護法、そして次世代を担う健全な労働力(障害のない赤ちゃん)を産むための母体保護が母子保健法だと私たちは考え、この3つの法律を女のからだ、人生を管理する「魔のトライアングル」と呼んでいる」(p.179)


    この人の本は、同居人もきょうみあるというので『「家族計画」への道―近代日本の生殖をめぐる政治』を前に買ったが、読みきれないまま積ん読。

    長いこと本棚に差したままの『からだ・私たち自身』も久々に読みたくなり、「家族計画」の本も読もうかなーと思った。

    (12/8了)

  • フェミニズムの一派である女性の健康運動について歴史をたどった理論書。フェミニズム関係を読んでいつも思うが、どうしてデータとか、欧米の研究論考ばっかり並べてあるばっかで、日本になじむように説明していない。
    海外のフェミニストってちょっと異常なんですよね、ヌードを晒したり、大事な部分を見せつけたり。日本でも自分のヌードを3Dデータで送ったアーティストが逮捕されたけど、あれがアート? フェミニズム? なのかといぶかしむ。

    思想の輸入の限界なのか。
    学生闘争時代に花開いたのが、日本の第二期フェミニズムらしいが、こちらは大正期のそれと比べるとかなり過激。

    このフェミニズム闘争に参加した女性たち、今は幸せになったのだろうか。独身女性の高齢貧困という言葉が頭をよぎる。学者や活動家連中が焚きつけたばかりに人生を見失った人もいるだろうに。

    女性の体を女性自身の手にとりもどす。過去のむちゃくちゃな産婦人科診察などからすればごもっともだが、妊娠出産も女1人ではできないもの。女同士だから大丈夫じゃなくて、性別問わずに支え合うような学問を教えるべきだと思うが。

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