日本語の考古学 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314790

作品紹介・あらすじ

『源氏物語』を書いたのは誰と聞かれたら、どう答えればよい?-現代の常識は必ずしも過去にはそのまま当てはまらない。土器のかけらを丁寧に拾い集める考古学者にならって、写本等の文献に残された微かな痕跡をつぶさに観察してみると、そこにはどんな日本語の姿が蘇るだろうか。小さな手がかりから様々に推理する、刺激的な一書。

感想・レビュー・書評

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  • 行のはじめに繰り返し符号を置かない、などの行感覚が生まれるのは鎌倉時代。

  • 〈目次〉
    第一章 「書かれた日本語」の誕生~最初の『万葉集』を想像する
    第二章 『源氏物語』の「作者」は誰か~古典文学作品の「書き手」とは
    第三章 オタマジャクシに見えた平仮名~藤原定家の『土左日記』
    第四章 「行」はいつ頃できたのか~写本の「行末」を観察する
    第五章 和歌は何行で書かれたか~「書き方」から考える日本文学と和歌
    第六章 「語り」から「文字」へ~流動体としての『平家物語』
    第七章 「木」に読み解く語構成意識~「ツバキ」と「ヒイラギ」と
    第八章 なぜ「書き間違えた」のか~誤写が伝える過去の息吹
    第九章 「正しい日本語」とは何か~キリシタン版の「正誤表」から
    第十章 テキストの「完成」とは~版本の「書き入れ」
    おわりに

    〈内容〉
    タイトルからイメージしにくいが、日本語の表記を中心にして日本語とその周りのさまざまな問題を綴ったもの。ちょっとくどい物言いなので、読みにくかったが、それにガマンできれば興味深い。紙のサイズと表記とか、写し間違いから、当時の物言いがわかるとか…。まさに考古学だ。学校図書館

  • 言葉はどんどん変化していくものだ、と言うことを再認識。そして、ほんの百年前の言葉も分からなくなってしまうのだから、千年前の「日本語」はかなり強敵だ、というのも分かった。でも、読めるようになると楽しそうだな。行書の勉強、してみようかな、と言う気にさせてくれた。

  • 8月新着

  • 出だしは面白かったんですけど、後半になればなるほど、屁理屈や俺様理論に走っているように思えてしまったのは、気のせいでしょうか…。

    とはいえ、日本語が文字を持つようになるまでの経緯(についての類推)や、万葉詩人の存在意義、ひらがなが統一されるまでの経緯、といったあたりは、なかなか興味深かったです

  • その道の専門家はすごいや。

  • 今野真二『日本語の考古学』岩波新書、読了。印刷書物や電子データになじむと、「源氏物語の作者は?」と問われれば「紫式部」という常識に拘束される。しかし、写し手や時代が変わればがわりと変わるから、考古学的にアプローチする他ない。僅かな痕跡から日本語の変貌を解き明かす魅惑的試み。

    例えば8世紀に成立した万葉集は、歌う「うた」を初めて「文字で書かれたテクスト」。現存する最も振るいテクストは西本願寺本(鎌倉時代の写本)で漢字に仮名振りだが、原万葉集は当然全て漢字表記と想定される。またテクストによって書体も異なってくる。

    「『失われた部分』への意識をつねに持ち続けること。今目の前にある日本語がすべてだと思わないこと。そうしたことが、言語の長い歴史を復元していくときに必要な態度ではないかと思う」。日本語を考古学的に考察することは自明の前提にとらわれないことが必要。

    字体の再編成は、書写の段階で誤認を起こすことも。紀貫之のテクストを書写した藤原定家もその一人で、文字がオタマジャクシに見え、写生するが如く書き写した模様だ。言語にはゆれの幅が存在した。統一されるのは一九〇〇年の第一号表(著者『百年前の日本語』岩波新書、参照

    本書は『源氏物語』、『土左日記』、『平家物語』といった古典だけでなく、キリシタン版の「正誤表」から「正しい表記」という考え方の誕生や、「行」はいつ頃から出来たのか等々、多様性に富み、可能性にも満ちて開かれていた言語の歴史を発掘する。

    グローバル化の進展は、(そもそも複数存在した)言語の単一性を自明のものと見なし、何かテクニカルな技術と点数に言語教育を還元し、ひたすら反復練習を繰り返すが、言語を理解する、学ぶとはそう歪なものではないだろう。考え方リフレッシュさせる好著。

  • コアな学問ですね。
    文字は内容を知るためのものと思っていました。
    そうではなくて、色々な秘密が隠されているんですね。
    微に入り細に入り研究するというのはたいへん。

  • 勉強になりました。

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著者プロフィール

1958年、鎌倉市に生まれる。早稲田大学大学院博士課程後期退学、高知大学助教授を経て、清泉女子大学文学部教授。専攻は日本語学。
著書に、『仮名表記論攷』(清文堂出版、2001年、第三十回金田一京助博士記念賞受賞)、『文献から読み解く日本語の歴史』(笠間書院、2005年)、『消された漱石』(笠間書院、2008年)、『文献日本語学』(港の人、2009年)、『振仮名の歴史』(集英社新書、2009年)、『大山祇神社連歌の国語学的研究』(清文堂出版、2009年)、『日本語学講座』(清文堂出版、全10巻、2010-2015年)、『漢語辞書論攷』(港の人、2011年)、『ボール表紙本と明治の日本語』(港の人、2012年)、『百年前の日本語』(岩波新書、2012年)、『正書法のない日本語[そうだったんだ!日本語]』(岩波書店、2013年)、『漢字からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2013年)、『常識では読めない漢字』(すばる舎、2013年)、『『言海』と明治の日本語』(港の人、2013年)、『辞書からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2014年)、『辞書をよむ』(平凡社新書、2014年)、『かなづかいの歴史』(中公新書、2014年)、『日本語のミッシング・リンク』(新潮選書、2014年)、『日本語の近代』(ちくま新書、2014年)、『日本語の考古学』(岩波新書、2014年)、『「言海」を読む』(角川選書、2014年)、『図説日本語の歴史[ふくろうの本]』(河出書房新社、2015年)、『戦国の日本語』(河出ブックス、2015年)、『超明解!国語辞典』(文春新書、2015年)、『盗作の言語学』(集英社新書、2015年)、『常用漢字の歴史』(中公新書、2015年)、『仮名遣書論攷』(和泉書院、2016年)、『漢和辞典の謎』(光文社新書、2016年)、『リメイクの日本文学史』(平凡社新書、2016年)、『ことばあそびの歴史』(河出ブックス、2016年)、『学校では教えてくれないゆかいな日本語[14歳の世渡り術]』(河出書房新社、2016年)、『北原白秋』(岩波新書、2017年)などがある。

「2017年 『かなづかい研究の軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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