日本は戦争をするのか――集団的自衛権と自衛隊 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314837

感想・レビュー・書評

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  • いろいろはっとさせられる指摘や分析が多く、久々に良著に出会えたと思った。もちろん、細かい論理で詰めて考えたらどうなのって点もあるかも知れないけど。
    一章不安定要因になった安倍首相で、靖国参拝を通して米国すらも刺激して安全保障環境を悪化させていること。また首相になる前に主張していた退役予定のゆき型の海保編入に関わる勘違い。閣議決定だけで憲法を読み替え国家を無視する手法。日本の安全保障環境は厳しさを増してるってのが2007年から使い回されてる表現でありながら、尖閣を巡る日中の対立以外はあるものの緊迫した危機はないこと。
    二章法治国家から人治国家へで、選挙での勝利をたてに「おれが法律だ」と言わんばかりの立憲主義を理解しない発言。北朝鮮のミサイル発射で米軍は日本防衛ではなく自国防衛のため活動していること。憲法九条を空文化させる国家安全保障基本法。
    三章安保法制懇のトリックで、法律の専門家のいない安保法制懇。例の四類型で、公海での米艦艇の防護では考えうる範囲で集団的自衛権行使の必要性なない、米国を狙ったミサイルの迎撃では技術面安全保障面でもありえない設問、駆けつけ警護は、自衛隊の任務が治安維持ではない。自衛隊が後方活動のみに従事してきたのは先進国として当然で、要員を多数出してるのは外貨獲得手段にしている途上国であること。
    四章積極的平和主義の罠で、日本版NSCで南スーダンでの韓国への弾薬支援が決められたが、それは非公開で議事録もなく、国民の見えないところで重要政策が転換されるおそれがあること。NSCの発足に合わせて成立した特定秘密保護法の原点が、2007年に締結された軍事情報包括保護協定GSOMIAで、その締結のきっかけが2003年のミサイル防衛システムの導入であること。わかりやすかった国防の基本方針を廃止し、量が多くかえって基本方針がぼやける国家安全保障戦略が閣議決定されたこと。グレーゾーンとシームレスが意味が不明瞭で、有事か平時しかなく、平時から有事には防衛出動が下令されるということ。
    五章の集団的自衛権の危険性で、海外派遣が始まった頃から危険を実際に負う制服組の発言力が高まりだしていること。米国の退役軍人省の予算が日本の防衛費の倍近い九兆円もすること。93年北朝鮮のNPT脱退をきっかけに作られたK半島事態対処計画。1999年に周辺事態に備えた図演が海自で初めて行われたこと。
    六章逆シビリアンコントロールで、南スーダンで試みているオールジャパンの取り組みを考え出したのが幹部自衛官や官僚であること。同時多発テロ直後に政治家に談判して米空母の護衛やインド洋派遣へと動かした海幕の幹部自衛官。
    などなどと、書かれてる事実だけでも大変勉強になりました。安倍シンパにただの首相批判と思って欲しくない。

  • 今、読むべき1冊だと思います。

著者プロフィール

1955年、栃木県生まれ。防衛ジャーナリスト。元東京新聞論説兼編集委員。獨協大学非常勤講師。法政大学兼任講師。1992年より防衛庁(現在の防衛省)取材を担当。主な著書に、『変貌する日本の安全保障』(弓立社)、『検証 自衛隊・南スーダンPKO-融解するシビリアン・コントロール』(岩波書店)、「日本は戦争をするのか-集団的自衛権と自衛隊」(岩波新書)、『零戦パイロットからの遺言-原田要が空から見た戦争』『僕たちの国の自衛隊に21の質問』(ともに講談社)などがある。

「2022年 『戦争と平和の船、ナッチャン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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