エピジェネティクス――新しい生命像をえがく (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314844

作品紹介・あらすじ

ゲノム中心の生命観を変える、生命科学の新しい概念「エピジェネティクス」。遺伝でもない、突然変異でもない。ゲノムに上書きされた情報が、目をみはる不思議な現象を引き起こす。自然の妙技と生命の神秘。世界中のサイエンティストが熱い視線を注ぐ、いま一番ホットな話題を楽しく語る。

感想・レビュー・書評

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  • ☆☆☆☆ 難しかったけれど興味があったので最後まで読みました。エピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基礎を頭に入れた上で様々な研究結果について書かれたものを読むと、なんとなく分かるけれど、自分の口から説明できるほど理解できていないというのが正直なところ。エピジェネティクスはすべての生命現象に関与しているけれど、それがどのように機能しているか詳細に解明されている例は少ないそうなので、この分野には今後も注目していきたいです。

    p6
    学習や記憶のいうのは神経活動であるから、神経細胞の電気的な興奮が重要である。しかし、それだけではない。最近の研究では、エピジェネティクスな状態の変化が必要である、ということも明らかになってきている。いってみれば、細胞レベルでのエピジェネティックな「記憶」は、一般的な意味での記憶にも必須なのだ。

    p21
    エピジェネティックな特性とは、DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型である

    p30
    エピジェネティクスとは「染色体における塩基配列をともなわない変化」、もう少し専門的にいえば、「ヒストンの修飾とDNAメチル化による遺伝子発現制御」である。

    p33
    われわれの体は、およそ六〇兆個の細胞でできている。二〇〇種類以上あるとされるそれらの細胞は、ごくおおざっぱに、たった二つの種類、生殖細胞と体細胞に分けることができる。生殖細胞とは、オスでの精子とメスでの卵子、および、それらの細胞を作り出す元になる細胞のことである。体細胞とは、それ以外すべての細胞をさす。
    どうして、「たった一種類の細胞」対「その他の細胞」という分け方をするのか。それは、その細胞がもっている遺伝情報が子孫へ伝達されるかどうかという、生物学的に重大な点において大きな違いがあるからだ。体細胞は、その個体が生きている間の一代きりしか機能せず、個体が死んでしまったらそれでおしまいの細胞である。それに対して、生殖細胞は、個体が死んだ後も、その遺伝情報を子々孫々へと伝えていける唯一の細胞系列なのである。

    p37
    生殖細胞ができる際、ゲノムに、塩基配列の情報以外のなんらかの情報、精子には父親特有の、卵子には母親特有の情報が付加されているはずだ。この現象は、それぞれのゲノムに新たな情報が刷り込まれる、という意味で、ゲノム刷り込み(ゲノムインプリンティング)と呼ばれる。ゲノム刷り込みという現象は、DNAの塩基配列の変化をともなわない上書き情報、すなわち、エピジェネティクスというものの存在を決定的に示している。

    p38
    …ある遺伝子のDNAが高度にメチル化されると、その遺伝子の発現が不活性化され、その遺伝子がコードするタンパクが作られなくなる….

    p42
    DNAを鋳型にしてRNAが産出される過程は、核酸であるDNA(デオキシリボ核酸)から核酸であるRNA(リボ核酸)へと塩基配列を写し取るだけであるから「転写」という。それに対して、RNAからタンパク質がつくられる過程は、核酸からタンパクへ、すなわち異なった種類の高分子へと、遺伝情報の意味を維持しながら情報が変換されるので、「翻訳」という。

    p46
    遺伝子が活性化される、すなわち、遺伝子DNAの情報が最終的にタンパクに翻訳されるには、まずRNAへ転写される必要がある。転写とは、DNAを鋳型にして、RNAをつくる酵素であるRNAポリメラーゼが、遺伝子の上流から下流へと移動しながら、塩基配列な情報をDNAからRNAへと写し取るプロセスである。そのためには、まず、プロモーター領域へRNAポリメラーゼがリクルートされ(招き寄せられ)、活性化されなければならない。それを調節するタンパクが、転写因子である。
    転写因子の多くは、制御領域に存在する特定の塩基配列を認識して結合し、転写のコアクチベーター(補助活性化因子)を介して転写を活性化させる。いうならば、転写因子とは、転写のスイッチとして機能するタンパクである。それぞれの遺伝子の制御領域には、ユニークな塩基配列が存在するので、複数の異なった転写因子がいろいろな組合わせをもって結合する。その結果として、それぞれの遺伝子は特有な転写活性化をうけることになり、細胞系列に特異的な発現調節がおこなわれる。

    p48
    DNAの二本鎖は、単独で折りたたまれて染色体を形作っているわけではない。ヒストンというタンパクに巻き付いたうえで折りたたまれている。(中略)
    しかし、ヒストンの役割はただ単にDNAを巻き付けてコンパクトに折りたたむだけではない。いろいろな酵素によって化学修飾をうけることで、転写の調節にも重要な役割をはたしている。

    p50
    ①ヒストンがアセチル化をうけると遺伝子発現が活性化される
    ②DNAがメチル化されると遺伝子発現が抑制される
    この二点が、エピジェネティック修飾による遺伝子発現制御の基礎の基礎である。

    p53
    タンパクは二三種類のアミノ酸で構成されており、それぞれのアミノ酸には、リジンはK、アルギニンはRなど、アルファベット一文字の略号がつけられている。また、タンパクを構成するアミノ酸は、そのアミノ末端側から順に番号がつけられている。だから、たとえば、「H3K9の修飾」といえば、「ヒストンH3のアミノ末端から9番目にあるリジンの修飾」という意味になる。

    p54
    ヒストンがうける修飾には、修飾基の種類によってアセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化などがある。ヒストンコードにとってとりわけ重要なのは、このうちのアセチル化修飾とメチル化修飾である。

    アセチル化はリジンにアセチル基が、メチル化はリジンあるいはアルギニンにメチル基が付加される修飾である。これらの修飾は、それぞれ特異的な酸素によっておこなわれる。アセチル基は一個だけしか付加されないが、メチル基は一つ、二つ、三つの場合がある。

    p60
    しかし、多能性幹細胞であるES細胞やiPS細胞においては状況が少し異なっている。これらの細胞では、発生に関係する遺伝子のコントロール領域において、活性型の修飾であるトリメチル化H3K4と抑制型の修飾であるトリメチル化H3K27の両方が存在するという不思議な状態になっているのである。このような状態は、相反する二つの状態が同居しているので、化学用語で「二価」を意味するバイバレントという言葉があてられている。
    バイバレントな状態にある遺伝子は、すぐに活性化できるような状態を保ちながら抑制されている、と解釈することができら。すなわち、多能性の状態では抑制されているが、いったん細胞の分化が開始されるとすぐに、これらの遺伝子は活性化できるように準備されているのだ。

    p62
    DNAには、その科学的性質によって5'から3'へという方向性があり、DNAが複製されるときも、RNAへと転写されるときも5'側から3'側へと合成されていく。A、C、G、Tのうち、CとGが5'側から順に並んで存在する場合は、CとGの間にリン酸基(p)が存在することから、CGの方向性を示すために、より正確にCpG配列と呼ばれる。この配列があった場合に、酵素の働きで、シトシンがメチル化をうけることがあるのだ。

    p63
    DNMT1とDNMT3はDNAメチル化の書き手であるが、DNMT2は看板に偽りがあって、DNAをメチル化する機能はなく、RNAをメチル化する酵素である。さきに紹介したヒストン修飾の書き手には、メチル化だけでも実に様々な酵素があるのに対して、DNAメチル化の書き手は、おおまかにはDNMT1とDNMT3の二種類しかない。
    DNAメチル化は、新規メチル化と維持メチル化に分けることができる。新規メチル化とは、メチル化されていないDNAに、新しくメチル基が付加される反応であり、DNMT3によっておこなわれる。そのため、DNMT3は新規DNAメチル化酵素と呼ばれることもある。
    それに対して、維持メチル化は、DNAが複製されるときに、すでに存在しているDNAメチル化が維持される現象である。
    メチル化されたDNAが複製されるとき、どのようにメチル化が維持されるのであろうか。メチル化DNAは、二本鎖の両方がメチル化された状態にある。そのDNAが複製されると、もとからあったDNA鎖はメチル化をうけているが、新しく合成されたばかりのDNA鎖にはメチル基が付いていない。このような状態のDNAは、片側だけがメチル化されているという意味で、ヘミメチル化DNAとよばれる。そのヘミメチル化DNAに特異的に結合するタンパクが、維持メチル化酵素であるDNMT1などをリクルートすることにより、反対側のDNA鎖のシトシンにメチル基が付加されるのである。
    DNMT1が存在しない細胞ではどうなるかを考えてみよう。そのような細胞では、DNAが複製されて、一つの細胞が二つになったとき、鋳型になった側のDNAはメチル化されているが、新しく合成された側のDNAはメチル化されていない、という状態になる。さらにその細胞が二つになると、片側のDNAだけがメチル化された染色体と、両側ともメチル化されていない染色体が半分ずつ存在する状態になる。
    さらに、この細胞が分裂すると、メチル化されたDNAの量が、さらに半分にというように減少していく。このように、維持メチル化酵素DNMT1が存在しない場合には、倍々ゲームでDNAの脱メチル化が進行していくのである。この脱メチル化は、DNAの複製および細胞分裂によって受動的にひきおこされることから、受動的DNA脱メチル化と呼ばれる。これに対して、DNA複製や細胞分裂に依存しない、能動的DNA脱メチル化というものもある。

    p70
    新規DNAメチル化酵素であるDNMT3を欠損するマウス、あるいは、維持メチル化酵素であるDNMT1を欠損するマウスは、正常に発生できない。

    p71
    受精後すぐにゲノム全体にDNA脱メチル化が生じて、ほとんどのDNAメチル化が消去されるのだ。

    p76
    このように、体細胞では、受精卵の段階から徐々にDNAメチル化が進行していくのに対して、生殖系列では、始原生殖細胞の段階において、いったんほぼ完全なDNA脱メチル化が生じる。

    p80
    DNA型のトランスポゾンは、DNA断片そのものが切り出されてゲノムの別の場所へと転移する。それに対して、レトロトランスポゾンは、RNAへと転写され、そのRNAを鋳型として二本鎖のDNAが生成され、ゲノムのどこかに挿入される。
    このように二つのタイプのあいだには、「カット&ペースト」と「コピー&ペースト」のような違いがある。DNA型のトランスポゾンの場合は、転移後に元のトランスポゾン遺伝子がなくなる。それに対して、レトロトランスポゾンの場合は、転移後でも元のトランスポゾン遺伝子は残ったままである。
    トランスポゾンは、挿入先において突然変異をひきおこしうるので、その活性化は潜在的に有害である。そこで、動物であっても植物であっても、簡単には転移が生じないように、DNAメチル化によって遺伝子発現が抑制された状態に保たれている。そうでないと、ぴょんぴょん飛び回られて、どんどん突然変異が増えてしまうからだ。

    p99
    全塩基配列をゲノム(Genome)と呼ぶように、ゲノム全体のDNAメチル化状態をメチローム(Methylome)と呼ぶ。他にもタンパクの網羅的解析はプロテオーム(Proteome)というように、いまや網羅的「オーム」解析が大流行である。ひと昔前までは、一つずつの遺伝子についてDNAメチル化を調べるしかなかったが、いまでは網羅的に解析することが可能になっている。

    p106
    長期記憶の成立には遺伝子発現とタンパクの合成が必要であり、なかでもCREBという転写因子が重要である。

    CREBが転写因子として機能するには、転写のコアクチベーターであるCBP(CREB結合タンパク)が必要である。CBPは、名前が示すように、CREBと結合して転写を活性化するコアクチベーターである。第2章で紹介したように、CBPはヒストンのアセチル化、すなわち、HAT活性も有している。そのHAT活性を低下させると長期記憶が障害されることから、記憶にはCBPのHAT活性が重要であることが明らかになっている。

    p108
    人間にも動物にもストレスはある。ストレスにさらされたとき、心拍数の増加、呼吸数の増加、血圧の上昇、発汗、血糖値の上昇、筋肉の収縮など、生体はいくつもの防御反応をとる。これらの反応の多くは、アドレナリンやコルチゾールによってひきおこされる。アドレナリンは副腎の髄質から、コルチゾールは皮質から分泌されるホルモンである。アドレナリンは神経刺激によって分泌が促進されるのに対して、ステロイドホルモンの一種であるコルチゾールは、脳下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によって分泌が促進される。
    ACTHの分泌は、さらに視床下部から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)という長い名前のホルモンによって刺激される。一方、視床下部には、コルチゾールに対する受容体(糖質コルチコイド受容体=GR)があり、コルチゾールからのシグナルを受容して、CRHの産出を抑制する。このように、コルチゾールは、分泌が過剰にならないように、視床下部ー下垂体ー副腎系における負のフィードバック機構によって、その産出が制御されている。さらにこの視床下部ー下垂体ー副腎系は、海馬によって制御されている。

    p109
    乳児期における育児の仕方がちがうだけで、成体になってからのストレスに対する反応が異なる。生後一週間、よくかわいがる親に丁寧に育てられたラットは、ほったらかしの親に育てられたラットに比べて、ストレスにさらされたとき、ACTH、そして、コルチゾールの血中濃度が低い。すなわち、ストレスに強いラットに育つのだ。
    ACTH値の低さは、上位にあるCRHの産出の低下に起因する。さらに、海馬におけるGRの発現が調べられたところ、よくかわいがる親に育てられたラットでは、その発現が上昇していることがわかった。生後一週間、よくかわいがられて育てられたラットは、成体になってからも、海馬におけるGRの発現量が多いためにコルチゾールからの刺激が強く入る。その結果、ストレスをうけても、負のフィードバックが強くかかって、視床下部ー下垂体ー副腎系が抑制され、最終的にコルチゾールの分泌量が低く保たれるのである。

    p110
    かわいがられた育ったラットでは、そうでないラットに比べて、海馬のGR遺伝子制御領域におけるDNAメチル化が低下しており、そのためにGRの発現が上昇していることがわかった。

    毛づくろいのような快感刺激によって、海馬の細胞がセロトニンの刺激をうけ、ある転写因子のGR制御領域への結合が増加する。その転写因子が直接DNAメチル化制御するわけではないのだが、結合の増加が何らかのメカニズムを介してDNAの低メチル化を誘導すると考えられている。

    p127
    がん遺伝子もがん抑制遺伝子も、一対の染色体それぞれに乗っかっているので、一つの細胞には二個存在する。アクセルとブレーキのたとえで考えてみると、アクセルであるがん遺伝子は、二つのうち一つがオンになっただけで細胞増殖の刺激がはいる。それに対して、ブレーキであるがん抑制遺伝子は、片方が壊れても、もう片方があれば機能してくれる。がん抑制遺伝子が二つとも異常になってようやく、細胞増殖につながるのである。

    p145
    糖尿病とは、血液中のグルコース濃度が病的に高い状態であり、大きく1型と2型にわけられる。1型糖尿病は、インスリンを産出する細胞、膵臓のβ細胞が少なくなり、インスリンが不足するために発症する。それに対して2型糖尿病は、β細胞からのインスリン分泌が低下する、あるいはインスリンが機能しにくくなる、すなわちインスリン抵抗性になることが原因である。
    インスリンの作用の一つは骨格筋や肝臓へのグルコースの取り込み促進である、胎児が低栄養にさらされた場合、インスリンの分泌が低下すると同時に、インスリン抵抗性が上昇し、骨格筋のような臓器へのグルコース取り込みが抑えられる。そうすることにより、赤ちゃんの発達にとって最重要な器官である脳に、できるだけ大量のグルコースをまわすようにするのである。

    p171
    ほ乳類の性染色体は、オスではXY、メスではXXである。メスにはY染色体がないので、Y染色体には生命機能に重要な遺伝子はほとんどなく、ほぼオスになることを決定する遺伝子だけが存在している。一方、X染色体には約一〇〇〇個もの遺伝子が存在している。ごく単純に考えると、X染色体上の遺伝子はメスにおいて倍量が存在しているのであるから、発現が二倍になってしまいそうだ。しかし、実際にはそうならないように、メスでは二本あるX染色体のうち、一本が不活性化されている。

    p176
    RNAがタンパクへと翻訳されるには、RNAが核から細胞質に出なければならない。

    p179
    ゲノム全体におけるエピジェネティクスの総体をまとめて解析するのが、エピゲノム解析である。塩基配列に依存しない遺伝子発現調節を包括的に解析してしまおうというのだ。

    p188
    メチローム解析はDNAにおけるシトシンのメチル化の有無を調べるだけであるから、まださも単純である。しかし、ヒストン修飾には、おおよそ一三〇種類もが存在すると報告されているし、一つのヒストンに複数の修飾がはいることもあるので、それらを勘案すると七〇〇種類以上の修飾状態があるとされている。

    p204
    (前略)がんという病気は、無限の細胞増殖やアポトーシスの異常といった、いくつかの異常によって支えられている。

    p205
    しかし、がんの発症機構を考えると、やはり重要なのは遺伝子の突然変異である。おそらく多くの悪性腫瘍において、エピジェネティックな異常という柱は、それほど太くはなくて、重要な位置を占めていない可能性が高い。だとすると、エピジェネティックの制御による治療は、それ単独だの治療ではなく、他の治療法と併用する補助的なものになることが多そうだ。

    p205
    (前略)一つのエピジェネティック修飾因子が、がんの発症にも抑制にも関与していそうな場合がある。がんの発症にとっては柱でもあるが、逆にゆるがすような機能ももっているのである。このような場合は、どう制御すれば治療につながりうるのかの判断が容易ではない。がんゲノムの情報などから、慎重に症例を選ばなければならないだろう。エピジェネティクス制御と疾患の関係というものは、どうにも一筋縄ではいかないもののようである。
    エピジェネティクスを利用した創薬においてまず必要なことは、どの疾患において、どのエピジェネティクス状態が「大黒柱」であるかを突き詰めることにある。これには、エピゲノム解析が大きな威力を発揮するはずだ。しかし、それだけでは不十分であって、いろいろな疾患、エピゲノム状態の攪乱が功を奏しそうな疾患に対して、試行錯誤的にDNAメチル化阻害剤やヒストン修飾の阻害剤を投与し、どの疾患に有効であるかを調べるというスクリーニングが必要かもしれない。

  • エピジェネティクス:遺伝子発現制御機構
    ・DNAの塩基配列の変化を伴わずに染色体における変化によって生じる安定的に受け継がれる表現型
    ・ヒストン修飾(アセチル化で活性)
    ・DNAメチル化(抑制)
    ・動く遺伝子:DNA型トランスポゾン、レトロトランスポゾン
    朝顔の模様、春化現象(低温処理で発現up)、ミツバチ(女王蜂、ロイヤラクチン)、プレーリーハタネズミ
    ・非コード化RNA(miRNA,SiRNA,piRNA)
    ・エピゲノム解析:ゲノム全体の遺伝子発現調節(DNA修飾、ヒストン修飾)を包括的に解析すること
    ・エピゲノム創薬:エピジェネティクス状態の変化をもたらすことで治療
    ・ゲノムは一次元・不変、エピジェネティクスは二次元、三次元・可変
    ・三毛猫-X染色体の受精後のランダム不活性化(Xistによる)→体細胞核移植を行っても同じ毛並の猫はできない。
    ・生命科学は各論の蒐集(わかればわかるほど複雑化)
    ・健全な好奇心、適正な懐疑心

  • 人間の幸福感にも関係しているとされるエピジェネティクスについての概要。
    難解な記述も多いが、教科書のレベルまで落とし込まれていると思う。

  • エピジェネティクな特性とは、"DNAの塩基配列の変化をともなわずに、染色体における変化によって生じる、安定的に受け継がれる表現型である(p21)".この文章を最初に読んだ時、何だこれは! と感じたが、本書を丹念に読んでいくと、分かってきた.さらに "最終的な遺伝子発言機構は、ヒストン修飾やDNAメチル化制御を介しておこなわれる.(p178)"という表現も、何かなじめる感覚を持てるようになった.難しい解説の間に、ほっとするようなエピソードがうまく挿入されており、楽しめた.遺伝子の転写の失敗ががん発生につながるようだが、画期的な治療方法がエピジェネティクスの技術から生まれてくる感触が高まってきた感じだ.

  • 簡単な言葉で説明できない、だけど、わかると非常に面白い生命現象。難しい内容から逃げずに、正面きって解説してくれる。「研究内容を正しく一般の人に広く伝える」著者の姿勢に恐れ入る。
    恥ずかしながら、私が数十年前に習った遺伝子関連の知識では、その後の最先端の学術情報には次第についていけなくなっていた。大きな声で言えないけど、そうか、こういうことだったのかと理解したたところが少なくない。

  • 「細胞が分裂しても引き継がれうる、DNAの塩基配列によらない情報が存在する」という興味深い内容ですが、難解でした。
    しかし、遺伝子のあり方やエピジェネティクスなど、生命というものの不思議さや奥深さは感じることが出来ました。

  • 1944年の冬はオランダの飢饉だった。オードリーヘップバーンは、15歳でバレリーナだった。華奢な体は飢饉の影響があったと考える人もいる。
    ホバーの反証可能性。
    トーマスクーンが提唱したパラダイム=理論的枠組み=新しい現象が出ても否定されずにそれを取り込んで理論を維持する。耐えられなくなった時、新しいパラダイムが生まれる。

  • 「はじめての新書」フェアで気になった本

  • 【由来】
    ・東洋経済

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 遺伝子の配列が生物個体の一生を単純に決定する訳ではなく、環境因子の変動を受けDNAのメチル化やヒストンのアセチル化等により遺伝子発現制御に影響する事を簡潔な事例を交え丁寧に説かれており大変勉強になった。

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著者プロフィール

仲野徹(なかの とおる)
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ街(大阪市旭区千林)に生まれる。大阪大学医学部医学科卒業後、内科医から研究の道へ。ドイツ留学、京都大学・医学部講師、大阪大学・微生物病研究所教授を経て、2004年から大阪大学大学院・医学系研究科・病理学の教授。専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。2012年には日本医師会医学賞を受賞。著書に、『幹細胞とクローン』(羊土社)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)、『エピジェネティクス』(岩波新書)、『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)など。趣味は、ノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。

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