移植医療 (岩波新書 新赤版1488)

  • 岩波書店 (2014年6月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784004314882

作品紹介・あらすじ

脳死問題が盛んに議論される陰で、本来あるべき包括的法整備や当事者保護が行き届かない面のあった日本の移植医療。現実にどんな問題があるのか、海外ではどうか。よりよい医療を実現するために、今考えるべきことは何か。臓器移植の限界と再生医療の展望を論じる、研究者とジャーナリストの共著。

みんなの感想まとめ

医療の現場における臓器移植の実態とその課題について深く掘り下げた一冊で、特に日本の生体移植に関する法律の緩さが指摘されています。生体移植の割合が高い日本では、ドナーの同意さえあれば手術が可能であり、結...

感想・レビュー・書評

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  • 日本の移植医療をめぐる問題を論じた一冊。
    移植医療といえばまっさきに頭に浮かぶ脳死のみならず、生体移植や細胞までひっくるめた移植医療の問題について。
    とはいえ「脳死は人の死か」に代表される生命倫理にはあまり踏み込まない。
    この本のテーマは日本でのルール(の無さ)への問題提起にしぼられている。
    だから論点が明確で読みやすい。

    日本では最初の心臓移植にけちが付いたこともあって、議論が技術の信頼性に終始してしまい、移植医療のルールがきちんと整備されないまま今に至るらしい。
    「人から人への移植」を一元的に管理する法や機関はなく、問題が起こるたびにそこだけ応急処置をして、結果、穴だらけの体制になってしまった、と。

    こういうのを読んでるとつくづく日本は「全体を見る」とか「なんのため」を考えるのが苦手な国なんだなとうんざりしてしまう。
    どうして人権関係になるとこうもダメダメになってしまうんだろう。

    出てくる話がみんな怖かったけど、生体移植の部分が特に恐ろしかった。
    生体移植は人身売買や強制のおそれをぬぐえないし、健康な他者を傷つける。
    だから、世界的にはなるべく避ける流れになっているが、日本では生体移植が主流。
    チェックもゆるいからすでに臓器売買事件が起こってしまった。

    赤の他人の売買はともかく、強制は脅迫によるものだけじゃないから避ける方法があるとは思えない。
    生殖医療もそうだけど、「家族なんだから当然」「見捨てるなんて人でなし」というプレッシャーから断れない人がきっといる。
    母親が幼児への移植を拒んでも尊重されるくらいの状況じゃなきゃ「自由意思」なんて確認できない。


    疑問だったところ。
    臓器移植は日本の死生観に合わないから定着しないという説がよくあるけれど脳死者が使者に見えないのは万国共通で云々という部分。
    話の枕ではあるけれど、脳死の拒否と死体観って関係あるのかな。
    遺体を傷つけたくないということであれば脳死も心臓死も同じだ。
    (体が欠けたら天国に行けないという発想も日本特有じゃない。キリスト教でもエジプトのミイラでも中国の宦官でも「体のパーツをそろえて埋葬する」エピソードを読んだことがある)
    むしろ生体移植への抵抗の無さに儒教的な感覚があるような気がする。
    親の病をいやすために自分の股の肉を食わせたという孝行話や、処女肉を食わせるための殺人事件とか聞いたことあるぞ。
    でも生体移植重視は「東アジア」ではなく「日本」の特徴らしい。
    ううん。やっぱり感性よりシステムかなあ。

  • 10月新着

  • 漠然と臓器移植というものに忌避感を持っていたのですが、この本を読んだらなぜ自分がそんな忌避感を感じるのか、理由が分かった気がした。日本の移植に関する法整備ってまだまだ穴だらけなんだなってこともよく分かる。
    脳死移植を急ぐあまり、死因を追及する作業がないがしろにされると、その人の死因となった元の病気の解明ができなくなる、という話は目からウロコだった。脳死移植をする前に死因を特定することがいかに重要かが、よくわかった。

  • 2009年の臓器移植法が改正されました。
    著者らは、法改正により起こった問題点を指摘しています。
    改正点は以下の2点です。
    ①本人の意思が不明でも家族の同意だけで臓器を提供できる。
    ②15歳未満でも親の同意があれば臓器が提供できる。
    改正が必要なほど日本では脳死移植の臓器提供者(ドナー)の数が欧米諸国に比べて少ないということです。
    この改正により臓器移植の提供者の死因が十分に追及されずに臓器移植されるということが起こりました。
    著者らは、40%が不自然死だとしています。

    http://ameblo.jp/nancli/entry-11929896773.html

  • 日本の臓器移植で特徴的なのは、生体移植の割合が多いことだ。死者の臓器を使う方が「資源の再利用」という点でエコであり、他の先進国では主流。が、日本は生体移植の法律的制限が非常にユルい。ぶっちゃけドナーの同意さえあればできてしまう医療行為であり、結果報告義務もない。医師たちは臓器売買リスクやドナーの手術負荷よりも法的に簡易な方を優先してしまう。

    そこで、2009年臓器移植法が改正され、脳死者からの臓器提供は生前の本人意志がなくても、一定の基準を満たせばできるようになった。が、それでも生体移植の割合は下がらない。最近では宇和島徳洲会病院で暴力団が介入した臓器売買事件や病気腎移植手術も明らかになった。

    なぜ、日本医療は死者臓器移植にビビってしまうのか。その理由の一つに1968年の日本初の心臓移植手術の疑惑に白黒つけなかったツケがあるようだ。

  • 勉強になりました。

  • 490.15||Nu

  • 真相が語られるにつれ、日本は三流国家だなと思えてくる。
    そもそも東大卒らしい官僚の狭隘な世界観のせいなのだろう。
    これだけわかっている知者がいるのに、なぜ「ちゃんと」できないんだろうなぁ。

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著者プロフィール

1960年横浜生まれ。東京大学文学部卒。同大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士)。専門は生命倫理、科学技術文明論。三菱化学生命科学研究所主任研究員、自治医科大学客員研究員、東京財団研究員などを経て、生命倫理政策研究会共同代表。著書に『脳死・臓器移植と日本社会』(弘文堂)、『先端医療のルール』(講談社現代新書)、『生命の研究はどこまで自由か』『精神を切る手術』『もしも宇宙に行くのなら』(以上、岩波書店)、『生命科学の欲望と倫理』(青土社)、『これからの死に方』(平凡社新書)、『移植医療』(岩波新書、出河雅彦氏と共著)などがある。

「2023年 『科学技術の軍事利用』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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