ものの言いかた西東 (岩波新書)

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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314967

作品紹介・あらすじ

おしゃべりな人、無口な人…。ただの個性と思われがちなものの言い方にも、実は意外な地域差があった!さまざまな最先端の研究成果を用い徹底分析。「ありがとう」と言う地域・言わない地域など、具体的なデータをもとに、ものの言い方の地域差と、それを生み出す社会的背景を明らかにする。目からウロコ、新しい方言論の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 一見、方言の東西比較の本かと思った。方言論には違いないが、一つ一つのことばがどうのこうのというより、いわば言語行動の方言論である。よくしゃべるとか無口かは個性と言える面もあるが、それが傾向として大きな集団について言えれば方言の違いということになる。より正確に言えば、方言の地域区分による言語行動、言語パターンの違いの論である。小林さんは東北(新潟)の出身で、東京を経て仙台に就職した。澤村さんは山形仙台を経て和歌山に就職した。小林さんは東京を経験し、澤村さんはおそらく関西圏のことばに日々触れつつあるのだろう。本書はこの二人の研究を下敷きに、多くの先行論文のデータで補強し、方言による言語行動のパターンを7つに定式化するとともに、それがなにゆえそうなったかを歴史的にさぐっている。その7つというのは、(1)発言性―口に出すか出さないか(2)定型性―決まった言い方をするかしないか(3)分析性―細かく言い分けるかしないか(4)加工性―間接的に言うか直接的か(5)客観性―客観的に話すか主観的か(6)配慮性―ことばで相手を気遣うか気遣わないか(7)演出性―会話をつくるかつくらないか である。(1)はたとえば、おしゃべりか無口かで、お礼を言う人は文句もいい、この傾向は近畿を中心とした西日本と関東に強く東北では弱いというようにである。また、(2)について言えば、東北の被災地で介護にあたった女性は「おはようございます」と言っても挨拶を返してくれなかったことにショックを受けたが、これは、東北ではそうしたときの定型のことばがなく、「おはようーはい」とか「はやいね」のような言い方をするからだそうだ。(3)の分析性では大阪弁が「言え、言い、言うて」のように命令形をいくつも言い分けるとか、痛いときに西日本では叙述と感嘆を「いたい/(あ)いた」と言い分けるのに、東日本ではどちらの場合も「いたい」ですませるといったふうに違いがあるという。いくつもの意味をもつ「どうも」が東北を中心としてよく使われているというのもこのタイプである。(7)では、観光バスのガイドさんがなにかしゃべったとき、関西の人はすぐに反応するが、これはめだちたがりというより、いっしょに会話をつくっていこうという配慮がそこにあるからだという。ぼくは関西の出身で、豊橋にきてすでに40年近くになるが、ここで言う西日本特に大阪人の言語行動はほぼ自分にあてはまる。本書はそうした、人々がなんとなく感じていたことを多くの研究成果を駆使し、大きな論をつくりあげている。その結論は方言周圏論を思わせるものであり、筆者たちはそれを(価値の優劣を含めない)言語発達の段階の違いと述べるが、それは未発達な地域が今後発達地域のあとを追いかけるのではなく、そこでの特徴をより発揮させる方向へ進んでいることを強調している。たとえば、東北方言はオノマトペや感動詞に富むが、それは東北方言が身体化された言語を発達させているのだと言う。各章にまとめがあり、8章にさらにそのまとめをおき、9,10章でその原因を論じる。本というのはこのように全体に体系性がもとめられるのだが、本書はまさにそれを徹底的に具現化したものである。(そこに、「どうだ」という筆者たちの誇らしい顔も浮かぶが)

  • やっぱり人って環境に左右されちゃうのね、、、

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  • フォトリーディング&高速リーディング。
    こういう研究もあるんだと感心させられた。速読用でなければ手に取らないジャンル。興味の範囲を広げられた。

  • おもしろかった

    秋田出身なので東北の言い方に関してはとても深くうなずける。筆者二人も東北ベースの人で関西の表現に驚きをもって書きあらわしているところがうれしかった。
    「買う」と言いながら店に入る、「どうも」だけ言い合って会話が終わることは実体験。

    何かを言わないその場の雰囲気も「方言」のうちと言うのは新しい知見だ。

    自分を第三者の場において客観的にものをいうなんて難しいことは確かにしないし考えたこともなかった。

  • 面白かった!

    方言ではなく、その状況で何と言って進めるか、言うか言わないかにも地域差があるってことが、統計によっても一部明らかになっている。
    言うか言わないか、たったそれだけのささいな違いだけど、だからこそその文化を知らなければお互いを簡単に誤解してしまう。
    そんなこと言う・言わないなんてヒジョーシキ!なんて簡単に口にしてしまう。

    後半は前半の実例を踏まえての学術的分類のお話になってちょっと読みにくいのと、いろいろ詰め込み過ぎな感があるのですが、新書でいろいろな方向性を示唆したい、というような意図もあるようなので、まぁよいかと思います。

  •  ものの言いかたには違いがあるが、特に目立つのは関東と関西だ。人の話し方は、話す人の個性に関係していると思われがちであり、それが事実と言う面もある。しかし、著者はものの言い方にも明らかに地域差、つまり「方言」が存在すると述べている。


    読んでいて著者も例に何度も上げている関西は目立つなあ。特に読んで「へえー」と思ったが、「自己と話し手の分化」だ。尾上圭介の『大阪ことば学』での「当事者離れ」という話し方を取り上げている。「ヨー言ワンワ」だ。この表現は、「あきれて、私は何も言えないよ」を意味する。しかも「その場の状況のバカバカしさを、遠巻きに眺めている雰囲気が漂う」として、第三者であるかのように振る舞う言い方に注目している。「主観の視点を瞬時に客観に切り替える」やりかたは、他の地方、特に東北人にはできないテクニックだと述べている。


     ものの言い方と地域が深くつながっているとは。関西の方の場合、地域の環境で「ボケやツッコミができるおもろい人」が出来上がるとは思っていたが、そのほかの地域でも周りの環境が大きく左右しているのだなあと思った。

  • 方言も含めた会話の作法の違いを明らかにしようと試みる一冊。
    おしゃべりなのか、無口なのか、この要因を個性だけに求めるのではなく地域差に求めている。もちろん東北の人が無口で、関西人は多弁という大方の予想が変わることはないし、都会と田舎の違い、中心部か周辺部かによる差異もその通り。これを具体的なデータで検証しているところがオモシロい。方言の中には感謝表現を持たない地域があるってのにはびっくり。
    相手に気を遣い、客観的な会話ができるのが関西圏なのだという指摘はその通りだと思う。だからと言ってそれが誠実かどうかは別問題とする著者は東北出身なんだけどね。

  • 「ものの言い方」を「方言」と同一に捉えて考察した好著だ.第1章から第7章までの基礎データを第8章以下で修練させていく過程が、読んでいて非常に楽しめた.「ものの言い方」の地域差を認識することは、様々な人達と折衝する機会の多い人はぜひ身につけて置くべき素養だと感じた.

  •  冒頭で、歌謡曲を通して『無口』と『おしゃべり』を論じるにあたって、ドラマの役柄、言うならば実在していない歌手の歌を例に挙げたくだり(p.15 l.5)には、正直「色々な意味で本当に分かって書いているんだろうか」と面喰ったが、それ以降はおおむね興味深い内容ではあった。

     実際に関西、東北に住んでいる人たちにとっては「何を今さら」と言った内容かも知れないが、何気なく話している言葉、方言、言い回しは、実は知らず知らずのうちに成り立っている定理や原則みたいなものの上にあるようだと理解できた。

     ものの言い方の地方差については、まだ研究が進んでいない分野だという。もし可能ならばいつか研究の続きを読みたい。

  • 12月新着

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