ものの言いかた西東 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314967

作品紹介・あらすじ

おしゃべりな人、無口な人…。ただの個性と思われがちなものの言い方にも、実は意外な地域差があった!さまざまな最先端の研究成果を用い徹底分析。「ありがとう」と言う地域・言わない地域など、具体的なデータをもとに、ものの言い方の地域差と、それを生み出す社会的背景を明らかにする。目からウロコ、新しい方言論の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 名詞や動詞、形容詞の方言の本を
    いろいろ読みましたが
    これは「シチュエーション」の方言
    について書かれた一冊なのがおもしろかった。

    例えば、食事中のこんな場面。
    同席している誰かに醤油差しを取ってもらう。
    そのときあなたは…って、調査なのですが
    「感謝の意にあたる言葉を発しない」
    地域があるなんて!
    でも、ずっーと読んでいくと
    「ありがとう」と言わないだけで
    なんらかの相づちは打つみたいですね。

    他にも、用件にズバッと入るか
    前置きを長く取ってから入るか、とか
    子守唄は脅かし系か甘やかし系か、とか
    そんなところに違いがあったのかと
    いろいろ知ることができました。

  • おもしろかった

    秋田出身なので東北の言い方に関してはとても深くうなずける。筆者二人も東北ベースの人で関西の表現に驚きをもって書きあらわしているところがうれしかった。
    「買う」と言いながら店に入る、「どうも」だけ言い合って会話が終わることは実体験。

    何かを言わないその場の雰囲気も「方言」のうちと言うのは新しい知見だ。

    自分を第三者の場において客観的にものをいうなんて難しいことは確かにしないし考えたこともなかった。

  • 一見、方言の東西比較の本かと思った。方言論には違いないが、一つ一つのことばがどうのこうのというより、いわば言語行動の方言論である。よくしゃべるとか無口かは個性と言える面もあるが、それが傾向として大きな集団について言えれば方言の違いということになる。より正確に言えば、方言の地域区分による言語行動、言語パターンの違いの論である。小林さんは東北(新潟)の出身で、東京を経て仙台に就職した。澤村さんは山形仙台を経て和歌山に就職した。小林さんは東京を経験し、澤村さんはおそらく関西圏のことばに日々触れつつあるのだろう。本書はこの二人の研究を下敷きに、多くの先行論文のデータで補強し、方言による言語行動のパターンを7つに定式化するとともに、それがなにゆえそうなったかを歴史的にさぐっている。その7つというのは、(1)発言性―口に出すか出さないか(2)定型性―決まった言い方をするかしないか(3)分析性―細かく言い分けるかしないか(4)加工性―間接的に言うか直接的か(5)客観性―客観的に話すか主観的か(6)配慮性―ことばで相手を気遣うか気遣わないか(7)演出性―会話をつくるかつくらないか である。(1)はたとえば、おしゃべりか無口かで、お礼を言う人は文句もいい、この傾向は近畿を中心とした西日本と関東に強く東北では弱いというようにである。また、(2)について言えば、東北の被災地で介護にあたった女性は「おはようございます」と言っても挨拶を返してくれなかったことにショックを受けたが、これは、東北ではそうしたときの定型のことばがなく、「おはようーはい」とか「はやいね」のような言い方をするからだそうだ。(3)の分析性では大阪弁が「言え、言い、言うて」のように命令形をいくつも言い分けるとか、痛いときに西日本では叙述と感嘆を「いたい/(あ)いた」と言い分けるのに、東日本ではどちらの場合も「いたい」ですませるといったふうに違いがあるという。いくつもの意味をもつ「どうも」が東北を中心としてよく使われているというのもこのタイプである。(7)では、観光バスのガイドさんがなにかしゃべったとき、関西の人はすぐに反応するが、これはめだちたがりというより、いっしょに会話をつくっていこうという配慮がそこにあるからだという。ぼくは関西の出身で、豊橋にきてすでに40年近くになるが、ここで言う西日本特に大阪人の言語行動はほぼ自分にあてはまる。本書はそうした、人々がなんとなく感じていたことを多くの研究成果を駆使し、大きな論をつくりあげている。その結論は方言周圏論を思わせるものであり、筆者たちはそれを(価値の優劣を含めない)言語発達の段階の違いと述べるが、それは未発達な地域が今後発達地域のあとを追いかけるのではなく、そこでの特徴をより発揮させる方向へ進んでいることを強調している。たとえば、東北方言はオノマトペや感動詞に富むが、それは東北方言が身体化された言語を発達させているのだと言う。各章にまとめがあり、8章にさらにそのまとめをおき、9,10章でその原因を論じる。本というのはこのように全体に体系性がもとめられるのだが、本書はまさにそれを徹底的に具現化したものである。(そこに、「どうだ」という筆者たちの誇らしい顔も浮かぶが)

  • やっぱり人って環境に左右されちゃうのね、、、

    岩波書店のPR
    https://www.iwanami.co.jp/search/index.html
    https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1408/sin_k780.html

  • 面白かった!言うか言わないかも方言なんですね。日本全国のあちこちに親戚がいるので色々と地域差があることは感じていたけど、その説明を読んだのは初めてでした。勉強になりました。

  • 方言には、「なおす」「いただきました」などなど、地域によって違う意味になったり、異なる場面で使われる言葉もありますね。

    所蔵情報:
    品川図書館 818/Ko12

  • 日本において、東北地方の言語文化だけが異質だという結論。研究結果というより個人で調査した結果を羅列した感が否めなかったのは私だけだろうか、とはいえ、納得できる背景と言語文化の成り立ちは読んでいて純粋に面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687479

  • 方言というと、何を思い浮かべるでしょうか。言葉の違い?音の高低?本書は「決まった言い方をするかしないか」「間接的に言うか直接的に言うか」といった言いかたの地域差に着目し、調査をまとめたものです。コミュニケーションが苦手だと感じている方にお薦めしたい一冊です。
    (選定年度:2021年度~)

  • 「ものの言いかた」という視点で方言の研究に新しい領域を切り開こうという意欲的な研究だと感じた。

    方言の研究というと語彙や表現の地理的な分布を分析するというアプローチがまず思い浮かぶが、本書ではもう少し広い視野から、言葉によるコミュニケーションのあり方の地域差を解き明かそうとしている。

    具体的には、以下の7つの「ものの言いかた」の違いを分析している。

    ・挨拶やお礼などを「口に出すか出さないか」
    ・不祝儀の挨拶や朝の挨拶など様々な局面で特定の型をつかった「決まった言いかた」をするかどうか
    ・少ない表現を使いまわすか場面ごとに細かく言いかたを使い分けるか
    ・お願い事などをどの程度間接的に伝達するか
    ・驚きや共感といった心情を間接的に話すか直接的に話すか
    ・敬語システムがどの程度発達しているか
    ・ボケとツッコミの話法のように会話を作るという関係性が共有されているかどうか

    これらの観点からは、おおむね近畿圏は表現の多様性が高く、間接的な話法や敬語システムなどによって、相手との関係性を複雑に発展させてきた傾向が強いようである。

    その反対に位置するのが東北地方であり、依頼や感情は直接的でシンプルな形で表現され、そもそも会話の量は少ない。

    意外であったのは、近畿圏では相手に対してダイレクトな物言いをする印象があったが、実際には間接的な表現で、相手方が察することを期待したコミュニケーションのかたちが取られているという点である。

    これらの違いの背景には、歴史を通じて人口集積がどの程度進んできたか、特に都市化や交流人口の多寡による影響が大きいのではないかというのが、筆者らの分析である。人口動態や商業の発展の歴史的経緯などをもとに、そのような分析がなされている。

    一方、東北地方の言葉は、都市文化の影響を受けることなく、むしろ身体的で直接的な面での表現を発達させてきたともいえる。東北地方の会話表現におけるオノマトペや感嘆詞の豊かさは、そのような特徴を表しているといえる。

    このような「ものの言いかた」はこれまであまり中心的な研究テーマになってこなかったそうだが、異なる地域間の異文化コミュニケーションにおける誤解や摩擦を防ぐためには、これらの知識がとても大切であると、筆者らは述べている。

    たとえば東日本大震災後に、全国各地から多くのボランティアや専門家が東北地方に入って活動したが、その中で東北地方の人とのコミュニケーションがスムーズに取れたケースと、相互の違和感がなかなか取れなかったケースがあったようである。

    これが性格や礼儀の問題として扱われ、その背景にある「ものの言いかた」の地域間格差が認識されないと、本来であればより早く解決できたコミュニケーション上のトラブルが、長く尾を引いてしまうことにもつながる。

    そのような事を防ぎ、人々が多様に行き交う社会の中でより円滑なコミュニケーションが取れるようになるためにも、この本で取り組まれているような「ものの言いかた」に関する研究が、今後も継続して取り組まれていくことに期待をしたい。

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著者プロフィール

傳承文化研究所所長。百人一首や和歌を中心に記紀万葉集等の古典研究を通して、日本語と傳統文化を広げる活動と同時に歴代天皇御製研究を行っている。

「2023年 『天皇御製に學ぶ日本の心〜室町・戰國編〜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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