村 百姓たちの近世〈シリーズ 日本近世史 2〉 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315230

作品紹介・あらすじ

古くさい因習の共同体とイメージされがちな近世の村社会。だがこの時代、百姓たちは生産力の主な担い手であり、互いに支え合いながら田畑を切り拓いて耕し、掟を定めて秩序を保ち、時には国家権力にさえ物申す存在だった-。活力あふれる村の生活を丹念に追うことから近世日本に新たな光を当てる、画期的な一書。

感想・レビュー・書評

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  • 岩波新書の日本近世史シリーズ②は、「村」というテーマで江戸時代を通観する。当然、長い期間の間に村は大きくその形を変えていったはずだが、非常にゆっくりとした変化はなかなか掴みにくい。第4章「暮らしと生業」の最後、「牧歌的に見える「豊年万作の図」の光景も、じつは変遷する家族形態や動態的な雇用労働力形態のなかのある段階を切り取った描写図だったことになる」(162ページ)と述べられているように、本書全体を通じても一見スタティックに見える江戸時代の村がさまざまなダイナミクスを展開していったことが随所に指摘されている。

    個人的には第3章「百姓と領主」が興味深かった。従来は中世の自力救済型の自助・自力には高い評価を与える一方で、近世の村のあり方を身分制の中で差別・抑圧されたそれとして低い評価しか与えられてこなかった。しかし、近世の公儀領主権力の法度や掟に依存する部分と自分たちの生産・生活の秩序については自力で解決し、余ったエネルギーを生産の工夫に向けるといった村の「自力」のあり方を、著者は中世の「自助型自力」と区別して「身分型自力」とし、それを積極的に評価している。

    また同時に公儀領主権力もそうした「身分型自力」に依存しつつ、全国どこでも土木行政の推進により領域の編成・統合をすすめるという点で、「「土木行政国家」という評価を与えても、あながち言い過ぎではない」(115ページ)。

    こうした近世農村のあり方を前提にすると、エコな循環型社会という最近流行の近世農村のとらえ方にも留保が必要である。著者は、資源循環型の社会がどのように限界を迎え、新しいステージに突入していったのかについて、第5章「開発と災害」の中でクローズドなシステムからオープン・システムの移行を「金肥」投入を画期と見つつ、描いているのである。

  • 戦国乱世がなかなかハードだったので一休み。百姓の定義とは。個人的に蒲生氏が好きなので、触れてくれて嬉しい

  • 史料から人が生きていたことが、ありありと伝わってくる。農業が技術であったことと肥料を通してその移り変わりを描く。最終章の開発と災害に至って、一気に記述のダイナミズムが増す。歴史が今に繋がることがリアルに感じられた。

  • とても面白かった。児玉幸多『近世農民生活史』に匹敵する、新たな近世農村史入門書といってよいのではないだろうか。コンパクトなぶん、児玉書よりとっつきやすさという点で利あり、である。

    印象的だったのは、中世の自力のあり方を「自助型自力」としたうえで、近世のありようを「身分型自力」と位置づけたところ。「身分型自力」とは、①天下の「政道」や「成敗」については公議権力の力を支持し、これに依存する、②生産や生活秩序については自分たちでルールを決める、③そして、①によって生じた余力を生業に投入する(p.102)、といったもの。

    定められたそれぞれの身分が、依存しあいながら「自力」を発揮し生産を増大させていくというイメージは実に明確で、伝わってくる。いささか唐突だが、戦後の日本が、軍事力においてはアメリカに依存しつつ、経済復興に全力をつくしたというイメージと重なりあう部分もあるように思えてくる。(ただ、戦後の日本がアメリカの「政道」にどこまでもの申したか、と言われると、微妙なところだが)

    もうひとつ、以下の記述が印象的である。

    「「自然にやさしい循環型社会」の象徴とも見られる近世の里山は、じつは人間の生業と自然の遷移との厳しいせめぎあいの場であり、その景観は自然を人間仕様に改造した状態だった」(p.145)

    「近世エコロジカル論」みたいなものがいかに非歴史的かということを述べたある種痛快な文章だった。

    ほかにも土木行政国家としての近世国家というイメージ(p.115)も、印象的であった。

  • 以前別の本で鉄火起請を知り「近世農村怖ぇ〜」てガクブルったけど、この本で実際はそう滅多に実施しなかったと知り、多大な安心と少しの落胆を感じた(笑)

  • 読了。
    近世農村史。

  • 大学院の演習で水本先生の研究書を輪読したことがあるので理解しやすかった。

    本書は、著者が80年代後半から主張されている江戸時代の自治村落論研究の内容を一般書の形で書かれたものである。

    特に氏が主張した画期的なものに公儀と村が互いに依存し、時にはせめぎ合う関係にあるということを明らかにされた。

    また、本書後半では2011年の東日本大震災に関わってか、災害復興の村の「自助」と、公儀領主が村の「自助」に期待していた様子をうかがい知ることができる。

    歴史学の「ムラ」に関する研究に疎い人でも、第1章を読めば具体的な「ムラ」の様相を理解することができる。

    新書の形をとっているが、かなり内容の濃い充実した一冊である。

  • 2015年5月新着

  • 「古くさい因習の共同体とイメージされがちな近世の村社会。だがこの時代、百姓たちは生産力の主な担い手であり、互いに支え合いながら田畑を切り拓いて耕し、掟を定めて秩序を保ち、時には国家権力にさえ物申す存在だった」(カバー袖より)

  • 勉強になりました。

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著者プロフィール

1946年群馬県に生まれる。1975年 京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在 長浜バイオ大学教授、京都府立大学名誉教授 ※2012年12月現在
【主な編著書】『近世の村社会と国家』(東京大学出版会、1987年)、『草山の語る近世』(山川出版社、2003年)、『徳川の国家デザイン』(小学館、2008年)

「2019年 『海辺を行き交うお触れ書き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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