都市――江戸に生きる〈シリーズ 日本近世史 4〉 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315254

作品紹介・あらすじ

江戸城の周囲に、大名屋敷、町人地、寺社地等が展開する巨大城下町・江戸。そこではどんな暮らしが営まれたのか。町の構成、物の流れはどうか。日本橋近辺、浅草、品川などの地を取り上げ、庶民の訴えや寺の記録、絵図や名所図会などから、都市を構成する多様な要素とその変遷を読み解く。細部から全体を捉える意欲的試み。

感想・レビュー・書評

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  • 一度挫折していたが再び読んでみて面白さに気づいた。玄人向けの本であり玄人向けの著者だと思う。(でもこのような本こそ多くの人に学んでほしい気もしないでもない。)(興味を持てたのは鬼滅のおかげかも)火あぶりになった又介、猫の死骸を抱えていた六兵衛、品川の悪党源次郎と擬似遊郭、舟運と薪など、多様なエピソードは想像力を刺激する。
    「こうした江戸を生きた民衆たちは、本書によって初めてその名が知られたりするのだろうが、けっして「名もなき民衆」ではない。一人一人が、権力者や偉人・英雄たちと同じように、生を受けて以来、かけがえのない名前を持ち、その後の人生を歩んだ実在した人々なのである」

  • 村に比べると色々なアクターが登場する。著者の下からの視座という意気込みはわかるが、全体としてのまとまり、見通しに欠けていたように思う。品川の擬似遊郭の存在は考えさせられた。

  • 通史ものでありながら、通史っぽくない、近世都市史の本。著者本人もあとがきで「「通史」という叙述の形式についてはかねがね疑問を呈してきた」「自分にはこうした対象を選び、叙述の方法をとることしか、外に道はありませんでした、と頭を垂れるほかない」と述べている。

    江戸の都市社会の奥深くというか、そこに生きる「庶民」の姿を描き出そうという著者の視座が非常によくわかる構成である。方法論は、「空間構造論、身分的周縁論、分節構造論」(p.245)の3つである。すなわち、通史でありながら、第1章で時系列に歴史叙述がなされるだけで、あとはいくつかの地域を取り上げてそれぞれ叙述を深める形式になっている点が、本書の最大の特徴といえそうである。本全体が、時系列に述べることにこだわっていない(なぜなら、方法論は前に述べた3つものに拠っているから)といえる。

    このような叙述のあり方は、果して近世史だからできるのか、近代史でもできるのか…歴史学への一種の挑戦、にもなっているように思った。

  • 通史の概説書としては、著者も認めているように、難しいし、江戸だけだし、……。しかし、各叙述を読むと非常に丁寧に史料と向き合いながら何とかして都市の民衆の営みを浮かび上がらせようとしていることはよくわかる。

    第1章では城下町江戸の成り立ち・概略、そして各論に当たる第2〜4章では、町方の中心部である南伝馬町、寺院と寺領の社会である浅草寺、そして有名な宿場である品川とそれぞれ性格の異なる地域が取り上げ、第5章では江戸のエネルギー源であった薪炭の舟運を介しての流通とそれに関わった商人などが取り上げられている。

    経済史的にはやはり最後の薪炭の話が一番興味深いが、それぞれ具体的な分析対象として取り上げられている領域・空間も江戸城下町からイメージされるような武家社会の垂直的統治構造とはかなり違うイメージが喚起され、面白かった。

  • 江戸だから、城下町だから、下から見上げてもいつもお武家さまが視野に入る。日本の町で城下町でないのってどこだろう。この人がそういう街を書いたらどんなだろう。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  城下町・江戸
    第2章  南伝馬町~江戸町方中心部の社会
    第3章  浅草寺~寺院と寺領の社会と空間
    第4章  品川~宿村と民衆世界
    第5章  舟運と薪~江戸の物流インフラと燃料
    おわりに

    <内容>
    マクロな歴史を追求した入門書。江戸の町を残されたデータから紐解いていく。新書を意識して深くは掘り込まず、流す感じ。江戸近郊の物流を燃料である薪から見ていく発想は感心。浅草寺や品川の部分で、この小さな空間の中も、町奉行、寺社奉行などの管轄に分断されていたことをわかり、治安を維持することが大変だったとわかった。

  • 勉強になりました。

  • 江戸城の周囲に、大名屋敷、町人地、寺社地などが展開する巨大城下町・江戸。

    そこでどんな暮らしが営まれたのか、残された貴重な資料から読み解く意欲作。

    本書では「下からの視座」に立ち、ふつうの人々の暮らしや営みを事実に即してリアルに描かれている。

    「社会=空間構造論」「身分的周縁論」「分節構造論」という手法を用い、江戸のごく一部ではあるが、南伝馬町ー江戸町方中心部の世界、浅草寺―寺院と寺領の社会と空間、品川―宿村と民衆世界、舟運と薪―江戸の物流インフラと燃料について、残された資料を読み解いている。

    西洋文明を取り入れざるを得なかった日本社会、その円熟期の日本を「下からの視座」で分析した筆者の今後の著作の発表が待たれます。

  • 2015年6月新着

  • 庶民の視点で江戸時代を紐解こうとするもの。
    シリーズ一番の期待値で頁を繰った。残念なことに記述が学術的すぎるかも。専門用語が多くて、ちょっと分かりにくいかな。それでも品川の章は面白かった。旅籠が擬似遊郭であったことや、駕籠屋の実態を検証するところは興味深い。でもこれって志ん朝の蔵前駕籠や品川心中のおかげかも。

  • 名も無い庶民などいない・・・という、著者の人間味あふれる傾向が本をおもしろくさせている。
    資料でひも解かれていく庶民の歴史がおもしろい。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2019年 『シリーズ三都 江戸巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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