朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)

著者 : 金時鐘
  • 岩波書店 (2015年2月21日発売)
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  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315322

作品紹介

日本統治下の済州島で育った著者(一九二九〜)は、天皇を崇拝する典型的な皇国少年だった。一九四五年の「解放」を機に朝鮮人として目覚め、自主独立運動に飛びこむ。単独選挙に反対して起こった武装蜂起(四・三事件)の体験、来日後の猪飼野での生活など波乱万丈の半生を語る詩人の自伝的回想。『図書』連載に大幅加筆。

朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • もう既に韓国に20回以上も渡り、主に歴史と平和の施設を巡って来た私なのに、島民の三万人以上も犠牲になったと云われる1948年の「四・三事件」については、今まで記念碑一つ、展示の一つも見たことがなかった。よって、名前だけは聞いていたが、そのほとんど全貌を、この著名な在日詩人によってここまで知らされることになるとは、読んで見るまで全く想像出来ていなかった。もっと緩やかな回想記を想像して読み始めたのである。

    私は、前々回の長い韓国旅行の終わり頃に、筏橋(ボルギョ)で、麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件から始まり智異山ゲリラ抗争に取材した「太白山脈」の存在を知った。あの小説は「四・三事件」「麗水・順天事件」が潰された直後の1948年から始まる。日本で見ることもない骨肉相喰むどろどろとした闘いに圧倒され、私は小説ではない、歴史的な事実の展示を急遽探して麗水・順天を回った。そして虚しく帰った。

    この回想記には、当事者だけが語れる、圧倒的なリアリティある「証言」があった。私は小説「太白山脈」には誇張があるのではないかと、まだ疑っていたのだが、誇張はほとんどないことを確信した。8.15の直後に踊り狂うほどに喜びを爆発させた庶民、独立のために奔走する知識人、いち早く復活した共産党員、一時期鳴りを潜めた親日右翼は半年もせぬうちに親米右翼として復活する、米軍の思惑、ソ連の思惑、叩き上げの共産党員朴憲永と急進共産党員金日成との共同と決裂、裏切り、爆発する暴力の犠牲者たち、ホントに何万人もが数日の間に同族同士が殺しあってそれが歴史の闇に消えてゆく。「太白山脈」とほとんど同じことがその2年前の済州島で繰り広げられていたのである。

    戦前の日本共産党もそれを弾圧する側も、党員は特に自らの命を削る活動をしていたが、最後まで武器は持たなかったし、持てなかった。朝鮮共産党はしかし、武器を持ち、持たざるを得なかった。それが決定的だったのだろうか。わからない。そしてその違いが何処から来たのか、私は展開出来ない。しかし、その違いが圧倒的な大きな悲劇となって、朝鮮民族に大きな「恨(ハン)」を残していることは確かだろう。

    その一翼に戦前の日本軍国統治が影を落としてはいるが、さらに大きな影を落としているのは、米軍であり、親米の右翼たちだった。そのことの解明は、しかしこの新書の役割ではない。この新書で、私は「四・三事件」の詳細を知った。今度はせめてこの書を持ちて済州島を歩かねばならないと思った。

    この書の本題からは少し離れるが、1929年生まれの金少年が、いかにして皇国少年になったかの記述はとても興味深かった。それは、暴力によってよりもむしろ童謡や抒情歌と云われる歌や「日本語教育」によってなったという。

    人間が変わるというのはそのような過酷な暴圧や強制によってよりも、むしろもっとも心情的なごく日常次元のやさしい情感のなかで、そうあってはならない人がそうなってしまうのですね。(53p)

    詩人は言葉に敏感であると共にとても厳しい。蓋し、尊重す可きだろう。
    2015年6月8日読了

  • こうして語られていない人生が多くある

  • これまで著者がこうしたものを書かなかった理由がよくわかる真正の自伝。戦争、革命、非合法活動、暴力、裏切り、テロ、殺戮、亡命、教育と、ありとあらゆる「政治的」な行動が続く。読みながら、もちろんいろいろなことを考えるけれど、目の前で自分の同士が殺され、その後、自分だけが生き残るという経験は、その後の人生に何を与えるのか、ということが最後まで気になった。

  •  固く心の奥底に沈めてきた記憶を初めて語った本。良心のうずき。「運命の紐」で生かされてきた。良心と運命の導きが精神的自由を引き寄せた。そのことが「在日を生きる」という自身の精神生活の指針を与えてくれた。その代わり、生活の苦労を強いられることになったが。

  • 詩人がどのように生まれたのか、その人生がいかに苛酷な時代を生きたのか、個人的な体験と歴史的な大状況を語って、胸打たれました。

  • 勉強になりました。

  • 2015年5月新着

  • 配架場所 : 新書
    請求記号 : SHIN@911@K102@1
    Book ID : 80100012213

    http://keio-opac.lib.keio.ac.jp/F/?func=item-global&doc_library=KEI01&doc_number=002458876&CON_LNG=JPN&

  • 済州島の四・三事件の生き証人ということでしょうか。
    読むにつれ・・・ひとりの人生にしてはあまりに過酷であります。それにしても・・・生きながらえるとということはこれほど奇跡に近く、稀なことであるとは。

  • 戦前に朝鮮から日本に来た人は、戦争が終わったんだから、半島に帰ってもらいたい。まったく日本にいる必要はないし、迷惑な話だ。
    ヂンダレは無国籍主義者の集まりだが、たんなる犯罪集団ではないか。

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