朝鮮と日本に生きる 済州島から猪飼野へ (岩波新書 新赤版1532)

  • 岩波書店 (2015年2月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784004315322

みんなの感想まとめ

複雑な歴史と個人のアイデンティティを深く掘り下げたこの作品は、済州島出身の著者が体験した波乱の人生を描いています。日本の統治下で育ち、敗戦により一変した世界に戸惑いながらも、朝鮮人としてのアイデンティ...

感想・レビュー・書評

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  • 「朝鮮と日本に生きる」金時鐘著、岩波新書、2015.02.20
    292p ¥929 C0295 (2025.10.11読了)(2025.09.26借入)
    ハン・ガン著「別れを告げない」を読んで、「四・三事件」について詳しく知りたくなり『済州島』をキーにして図書館の蔵書検索をしてみたらこの本がヒットしたので、借りてきて読みました。
    朝鮮半島が日本の支配下にあり、日本語教育を受けてすっかり日本人として同化していた少年が日本が負けたことによって朝鮮が日本から「開放」され一つの朝鮮として独立すると期待されていました。ところが、事実上北は、ソ連が占領し、南はアメリカが占領していました。一つの朝鮮として、共同で信託統治をすることになっていたのですが、米ソの話し合いは決裂し、北は金日成を担ぎ上げ、南は李承晩を担いでそれぞれ別の道を歩きはじめます。
    南は、統治のため日本が統治していた時代の組織と人をそのまま活用します。本来なら日本の手先となっていた人たちは、袋叩きにあって追放されてしかるべきだったと思われます。
    共産主義勢力の浸透を恐れるアメリカは、赤狩りを強行したようです。
    済州島は、日本における沖縄と同様独立した国だった時代があったようで、朝鮮本土とは、別の気風があったようです。そのため、「開放」後も本土とは別の動きがあったようです。
    「四・三事件」の始まりは、1948年3月1日の三・一節二八周年済州島民大会後のデモ行進を阻止した警官隊と米軍が発砲して六人の死者が出たことです。米軍と李承晩は、南朝鮮単独政府樹立を唱え、済州島民は、南北の統一独立を望んでいました。その後、島民はゼネストを行ったり、4月3日には、武装蜂起を行います。それに対する対抗策として、拷問や弾圧が行われ、はては島民に対する無差別な処刑が行われ、5万人ぐらいが犠牲になった。
    これに伴い、多くの島民が済州島を離れたとのことです。

    【目次】
    はじめに
    第1章 悪童たちの中で
    第2章 植民地の「皇国少年」
    第3章 「解放」の日々
    第4章 信託統治をめぐって
    第5章 ゼネストと白色テロ
    第6章 四・三事件
    第7章 猪飼野へ
    第8章 朝鮮戦争下の大阪で
    終章 朝鮮籍から韓国籍へ
    あとがき
    年譜

    ☆関連図書(既読)
    「別れを告げない」ハン・ガン著・斎藤真理子訳、白水社、2024.04.10
    「朝鮮史」梶村秀樹著、講談社現代新書、1977.10.20
    「物語韓国史」金両基著、中公新書、1989.05.25
    「閔妃暗殺」角田房子著、新潮文庫、1993.07.25
    「韓国併合」海野福寿著、岩波新書、1995.05.22
    「スカートの風」呉善花著、角川文庫、1997.02.25
    「韓国併合への道」呉善花著、文春新書、2000.01.20
    「韓国」渡辺利夫著、講談社現代新書、1986.10.20
    「謎の独裁者・金正日」佐々淳行著、文春文庫、1999.02.10
    「朝鮮戦争」神谷不二著、中公文庫、1990.03.10
    「朝鮮戦争」萩原遼著、文春文庫、1997.06.10
    「ソウルと平壌」萩原遼著、文春文庫、1998.10.10
    「朝鮮と私 旅のノート」萩原遼著、文春文庫、2000.04.10
    「北朝鮮に消えた友と私の物語」萩原遼著、文春文庫、2001.05.10
    「拉致と核と餓死の国 北朝鮮」萩原遼著、文春新書、2003.03.20
    「友情」西部邁著、新潮社、2005.04.20
    「韓国からの通信」T.K生著、岩波新書、1974.08.20
    「続・韓国からの通信」T.K生著、岩波新書、1975.07.21
    「第三・韓国からの通信」T.K生著、岩波新書、1977.10.20
    「軍政と受難」T.K.生著、岩波新書、1980.09.22
    「在日」姜尚中著、集英社文庫、2008.01.25
    「在日外国人 法の壁、心の溝(第三版)」田中宏著、岩波新書、2013.05.21
    (「BOOK」データベースより)
    日本統治下の済州島で育った著者(一九二九~)は、天皇を崇拝する典型的な皇国少年だった。一九四五年の「解放」を機に朝鮮人として目覚め、自主独立運動に飛びこむ。単独選挙に反対して起こった武装蜂起(四・三事件)の体験、来日後の猪飼野での生活など波乱万丈の半生を語る詩人の自伝的回想。『図書』連載に大幅加筆。

  • もう既に韓国に20回以上も渡り、主に歴史と平和の施設を巡って来た私なのに、島民の三万人以上も犠牲になったと云われる1948年の「四・三事件」については、今まで記念碑一つ、展示の一つも見たことがなかった。よって、名前だけは聞いていたが、そのほとんど全貌を、この著名な在日詩人によってここまで知らされることになるとは、読んで見るまで全く想像出来ていなかった。もっと緩やかな回想記を想像して読み始めたのである。

    私は、前々回の長い韓国旅行の終わり頃に、筏橋(ボルギョ)で、麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件から始まり智異山ゲリラ抗争に取材した「太白山脈」の存在を知った。あの小説は「四・三事件」「麗水・順天事件」が潰された直後の1948年から始まる。日本で見ることもない骨肉相喰むどろどろとした闘いに圧倒され、私は小説ではない、歴史的な事実の展示を急遽探して麗水・順天を回った。そして虚しく帰った。

    この回想記には、当事者だけが語れる、圧倒的なリアリティある「証言」があった。私は小説「太白山脈」には誇張があるのではないかと、まだ疑っていたのだが、誇張はほとんどないことを確信した。8.15の直後に踊り狂うほどに喜びを爆発させた庶民、独立のために奔走する知識人、いち早く復活した共産党員、一時期鳴りを潜めた親日右翼は半年もせぬうちに親米右翼として復活する、米軍の思惑、ソ連の思惑、叩き上げの共産党員朴憲永と急進共産党員金日成との共同と決裂、裏切り、爆発する暴力の犠牲者たち、ホントに何万人もが数日の間に同族同士が殺しあってそれが歴史の闇に消えてゆく。「太白山脈」とほとんど同じことがその2年前の済州島で繰り広げられていたのである。

    戦前の日本共産党もそれを弾圧する側も、党員は特に自らの命を削る活動をしていたが、最後まで武器は持たなかったし、持てなかった。朝鮮共産党はしかし、武器を持ち、持たざるを得なかった。それが決定的だったのだろうか。わからない。そしてその違いが何処から来たのか、私は展開出来ない。しかし、その違いが圧倒的な大きな悲劇となって、朝鮮民族に大きな「恨(ハン)」を残していることは確かだろう。

    その一翼に戦前の日本軍国統治が影を落としてはいるが、さらに大きな影を落としているのは、米軍であり、親米の右翼たちだった。そのことの解明は、しかしこの新書の役割ではない。この新書で、私は「四・三事件」の詳細を知った。今度はせめてこの書を持ちて済州島を歩かねばならないと思った。

    この書の本題からは少し離れるが、1929年生まれの金少年が、いかにして皇国少年になったかの記述はとても興味深かった。それは、暴力によってよりもむしろ童謡や抒情歌と云われる歌や「日本語教育」によってなったという。

    人間が変わるというのはそのような過酷な暴圧や強制によってよりも、むしろもっとも心情的なごく日常次元のやさしい情感のなかで、そうあってはならない人がそうなってしまうのですね。(53p)

    詩人は言葉に敏感であると共にとても厳しい。蓋し、尊重す可きだろう。
    2015年6月8日読了

  • 済州島は「韓国のハワイ」とあります。ウイキで検索してみましたら景色がいいですね。

    韓国の高校生がその島へ修学旅行中、船の転覆事故(セウォル号沈没事故)にあい死者負傷者多数、日本でも大きなニュースになり知られるようになりました。

    朝鮮半島の先にある日本に近い小さな島、この書で知りましたが、戦前戦後を通して公式非公式「表裏取り混ぜて」、島民が日本にたくさん入国している縁があるということに、なるほどと思いました。

    東西冷戦下での国家成立に際して朝鮮半島が混乱、離れ島故の陰惨な闘争があり、虐殺事件が起こり、その中で作者が経験したことと、その後たどらなければならなかった波乱な人生の回想録です。

    常々、朝鮮半島が二つの国に別れなければならなかった経緯をたどる時、東と西に分かれて戦ったという単純なことではないとは思います。

    日本統治下、日本語で生育し自我に目覚めた時は日本の世界だったということ。そして18歳の時に日本の敗戦によって突然「解放」されてしまって戸惑う青年著者。この子供のころの記憶、詩人でもあるがゆえに切々と書いてある様子は読んでいて胸迫るもの。

    次第に朝鮮人としてアイデンティティを取り戻すも、東西冷戦下、本土(半島)から蔑視されている離れ島、島内は混乱状態になる悲劇。

    その辺の事情・事件が事細かく書かれているのですが、その様相はちょっと想像を絶するしつこい残虐さなので、人間の「ごう」について考え込まされます。

    闘争に巻き込まれ、官憲に追われた著者が済州島を脱出して日本に逃げてくる描写は不謹慎ながら映画のように迫力がありぐんぐん読ませ、しかし、その後大阪でいろいろ苦労しながらも人生をおくれたのはさいわいでした。

    幼いころの日本語教育、日本に逃げなければならなかったために日本に住み続ける葛藤。

    時の権力者の意向、政治によって国の方向性が決まるのは摂理。仕方がないこととはいえ、翻弄される個人。哀しみを覚えて読了しました。

  • 済州島で生を受け、朝鮮併合による皇国教育によって、皇国少年となっていた金時鐘少年は、日本の敗戦で180度変わってしまった世界に生きざるを得なかった。日本語からハングルへ、済州島弁を正しい韓国語にと。北と南の政治情勢から、島として離れていた済州島は全島あげて民主化を目指したが、それは米軍政と右翼勢力からは共産勢力とみなされ、4.3事件という惨劇が起こった。ようやく日本に逃れた筆者は、猪飼野で在日としての生活をはじめ、文化教宣、教員、詩人として生きてきた。今回筆者の回想記を読んで、済州島での出来事を初めて知った。隣国についてもっと知らなければいけないことが沢山あるのだろう。

  • なぜ日本に来たのか、よく理解できなかった

  • 済州島は韓国のハワイと呼ばれ
    ハルナ山には桜の頃に旅しようと
    思ったくらいの知識しかなかった

    その故郷から追われ
    日本の猪飼野でやはり追われた人々と
    助けあって生きていく
    済州島で起きた四・三事件
    日本、アメリカ、朝鮮が絡み合い
    悲惨な武装蜂起
    何万もの人民が亡くなり
    血を流し 親族と別れた

    そんな歴史を引きずって生きて
    いくことはシンドいだろう
    想像もできない
    今でも語れないこともあるという

    読むのがシンドい本だった
    評価も難しい
    理解できる歴史観が
    私に無いからだろう 悲しい

  • イ・ジュンソプにしても、著者にしても、日本の植民地時代、四・三事件、国家樹立、朝鮮戦争、軍事政権下、民主化の流れに生涯が合わさって、振り返ることも辛いことだけれど、記し残す決意も伝わりました。済州島のことをさらに知りたくなりました。

  • 在日朝鮮人で詩人の著者による若き頃の半生記。日本の植民地から解放されてすぐの済州島で「四・三事件」について知ることができたら、また、アカとして追われる身ゆえに日本に逃避行し、以後日本で生きてきた文化人の目から見た当時の鶴橋・猪飼野あたりの様子を知ることができたらと思って読んでみた。
    主観的な視点で書いているので「四・三事件」の全容を知るには不向き。一個人がああいう惨禍のなかをどのように生き抜いたかといったことは何となくわかるけれど。鶴橋や猪飼野の様子についても、日本に来てからのことにあまりページが割かれていなくて消化不良な感じ。

  • こうして語られていない人生が多くある

  • これまで著者がこうしたものを書かなかった理由がよくわかる真正の自伝。戦争、革命、非合法活動、暴力、裏切り、テロ、殺戮、亡命、教育と、ありとあらゆる「政治的」な行動が続く。読みながら、もちろんいろいろなことを考えるけれど、目の前で自分の同士が殺され、その後、自分だけが生き残るという経験は、その後の人生に何を与えるのか、ということが最後まで気になった。

  •  固く心の奥底に沈めてきた記憶を初めて語った本。良心のうずき。「運命の紐」で生かされてきた。良心と運命の導きが精神的自由を引き寄せた。そのことが「在日を生きる」という自身の精神生活の指針を与えてくれた。その代わり、生活の苦労を強いられることになったが。

  • 詩人がどのように生まれたのか、その人生がいかに苛酷な時代を生きたのか、個人的な体験と歴史的な大状況を語って、胸打たれました。

  • 勉強になりました。

  • 2015年5月新着

  • 済州島の四・三事件の生き証人ということでしょうか。
    読むにつれ・・・ひとりの人生にしてはあまりに過酷であります。それにしても・・・生きながらえるとということはこれほど奇跡に近く、稀なことであるとは。

  • 戦前に朝鮮から日本に来た人は、戦争が終わったんだから、半島に帰ってもらいたい。まったく日本にいる必要はないし、迷惑な話だ。
    ヂンダレは無国籍主義者の集まりだが、たんなる犯罪集団ではないか。

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著者プロフィール

1929年朝鮮・元山市生まれ。著書に「猪飼野詩集」「光州詩片」「原野の詩」(小熊秀雄賞第一回特別賞受賞)、評論集「『在日』のはざまで」(毎日出版文化賞受賞)他

「年 『草むらの時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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