多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315414

作品紹介・あらすじ

選挙の仕組みに難点が見えてくるとき、統治の根幹が揺らぎはじめる。選挙制度の欠陥と綻びが露呈する現在の日本。多数決は本当に国民の意思を適切に反映しているのか?本書では社会的選択理論の視点から、人びとの意思をよりよく集約できる選び方について考える。多数決に代わるルールは、果たしてあるのだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • みなさん,集団で物事を決めるとき,どうしますか?多分よくあるのは,満場一致か多数決か,力のある人(ジャイアンとか)の一声かでしょう.ジャイアンに決められるのは嫌だし,満場一致が本当はいいけどそれは現実的じゃないから,多数決におちつく.多数決で決まったものは「民主的に決まった」ものだから従わなくっちゃ.となるわけ.でもね,満場一致とジャイアニズムの間には,もっと色々なルールがあっていいわけです.その色々なルールを科学的に見ていくと,多数決ってのはみんなの意見をうまく反映できない仕組みのようなのです.もっとましなルールがあるのはわかってるのに.でもみんなそれ盲目的にを使っている.
    政治家を叩くのもいいんですが,政治家の行動原理であるところの選挙制度を疑ってみる,ってことを感じさせられる一冊です.
    あと,この手の話は一通り大学で学んできましたが,とてもわかりやすかったし面白かった.大学1年生の自分にぜひ読ませてあげたい一冊でした.

  • タイトルにひかれて読んだ。予想とは少し違って「社会的選択理論」の入門書的内容だったが、とてもわかりやすく参考になった。

    今やまったく「多数決」はほとんど暴力。「多数決なんだから民主的だ」「選挙に勝ったからこれが民意だ」という粗雑な論理がまかり通る。どうせアタシゃ少数派ですよ、もう何言ったってムダなんだから、とやさぐれた気持ちになりがちだ。

    「有権者の無力感は、多数決という『自分たちの意思を細かく表明できない・適切に反映してくれない』集約ルールに少なからず起因するのではないだろうか。であればそれは集約ルールの変更により改善できるはずだ」

    なるほど、そういう面も確かにあるだろう。して、具体的にどんな方法があるのか。

    筆者は、18世紀の革命前のフランスに遡って(!)話を始める。ボルダという科学者がパリ王立科学アカデミーで多数決についての研究報告を行い、そこで述べられたルールが今ではボルダルールと呼ばれているそうだ。これは、たとえば選択肢が三つだとしたら、一位に三点、二位に二点、三位に一点を加点してその総和で全体の順序を決めるやり方のこと。

    これを皮切りにいくつかの集約ルールが紹介され、比較検討される。その中で「社会的選択理論」というものの成り立ちも説明されている。学術的で難解なところは省き、一般向けにかみ砕いた内容になっているが、学問としての厳密さも伝わってきて、そこがおもしろかった。

    章が進むと論点は広く深くなり、ルソーの「社会契約論」にも言及しながら、「真の人民主権」とはどういうことかについても考察される。最後は、つい最近の小平市の住民投票について。この都道328号線問題は「多数決さえまともにさせてもらえない現状を疑うことの大切さを教えている」と筆者は書いている。「民主的」と称されているだけの制度を実質的に民主化していくことが必要なのだと。

    自分の無力感の出所をもう少し整理して考えてみようという気になった。たとえ末端のそのまた先っぽであっても、今ある仕組みを民主的とは名ばかりのものにさせないことが大事なのだろう。

  • 前著のマーケットデザインを含め、もっと世に知られるべき考え方だと思う
    デザインの観点からも小選挙区制は政治権力を強化した一方で民意を反映しにくくなっており益々独裁を強める方向に向かっている気がしてならない
    イデオロギーの時代から多様性の時代となり二者択一では無く複数選択肢、複数回答のような選択方法を考える必要が益々高まっていると思う
    選択方法の学問的根拠を学ぶのは義務教育に入れてもいいぐらいに重要なことと思った

  • 多数決が本当に民主的なのか。多数決の欠点、それを補う方法が何か。そういったことをまとめた本。中盤に学術的な話となってしまい、非常に苦痛となってしまったが、内容は非常に面白い
    いわゆる多数決の最大の問題点は票割れ。それにより本来の民意と異なるものが選ばれてしまう。票割れさせないために1対1で対決すると、どこかで矛盾(AはBより強く、BはCより強く、CはAより強い。いわゆるジャンケンの関係)が起きる。そのための対策として何点か紹介されているが、スコアリングポイントの一つであるボルダ方式(あらかじめ1位、2位、3位のポイントを決める)が紹介されている
    また民意が本当に正しい判断をするか。神の見えざる手を期待するには、多数決は非常に危うい。ここでは計算式により65%以上でなければ正しい判断がされたとは言えないと書かれている
    最後に小平市の例で、いかに政治の民意が脆弱であるかが纏められている。また「それならば選挙で勝てばよい」という意見に対して、「取引コストがあまりに高く、それは沈黙の強制。それが民主主義にかなっているか」いう返しも痛快。

    これを読んでいると、現在の民主主義がいかに脆弱なルールのもとに成り立っているかが分かる。マジョリティとは何か。現在、大企業の従業員は全体の約3割、それにあわせた法律や経済政策がされている。この歪さをどう理解すればよいか。

  • 多数決ほど、その機能を疑われることなく社会で使われ、しかもその結果が重大な影響をおよぼす仕組みは他にない。選挙も、株主総会も基本的には多数決である。本書はその疑問から出発し、多数決がもつ不完全で危険な性質をわかりやすく説明し、他の「選択方法」についてもメリットとデメリットを解説してくれている。大勢の人間のなかでの意思決定方法、選択方法について学んでおくことは、公平で多様な意思をどう汲み取るかを学ぶことであり、組織運営にも必要な知識だと思う。

  • 星蘭祭のクラスの出し物を何にするか、委員会や部活動の代表者を誰にするか、皆で観に行く映画はどれにするか等々、複数の人がいるグループで、いくつかの選択肢の中からひとつを選ぶ場面は日常にたくさんある。そんな時、どんな方法で決めているかと問えば、多くの人は「多数決」と答えるだろう。日本の国政選挙、地方選挙もひとり一票を投じる「多数決」だ。「多数決」は、いかにも常に多数派の意見を尊重する公平で民主的な方法のように思えるが、本当にそうなのだろうか。
    共和党のジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアが戦った2000年のアメリカ大統領選挙では、優勢だったゴアが、政策が近い市民運動家ラルフ・ネーダーの立候補により票割れを起こし、漁夫の利を得たブッシュが当選した。しかしこれではブッシュの勝利は、多数派の意見が尊重された結果とは言えない。これは「多数決」というシステムに問題があるのだ。著者は、「多数決という意思集約方式は日本を含む多くの国の選挙で使われているが、それは慣習のようなもので、他の方式と比べて優れているから採用されたわけではない。民主制のもとで選挙が果たす重要性を考えれば、多数決を安易に採用するのは、思考停止というより、もはや文化的奇習の一種だ」と言い切る。それでは、多数の意見を尊重する選挙の方法はあるのだろうか。
    集団の意思決定のあり方を理論的に考えるのが、著者が研究する社会的選択理論だ。より正確に民意を反映する方法の研究は200年以上前から行われており、様々な集約ルールが検討されてきた。そのひとつのボルダルールは、自分の意に沿う順に1位に3点、2位に2点、3位に1点という点数を付けて投票し、その合計点で当選を決めるものであり、票割れ問題を解決する。本書では、ボルダルールなどのスコアリングルール、統計的手法を用いるコンドルセ・ヤングの最尤(さいゆう)法、決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルールなど多くの方法が紹介されている。そしてそれぞれの頑健性と脆弱性について具体例を挙げた説明があり、大変興味深い。どれもある意味では理に適っているように思えるが、同じ投票内容でもどの集約ルールを使うかによって結果が全て異なる例もある。集約ルールによって変わるのでは、選挙結果が民意を反映しているとは言い難い。
    著者は多数決の結果が必ずしも民意を反映するものではないことを示し、様々な集約ルールや社会的メカニズムを考察して、現状の社会制度は大きな問題を抱えるものだと教えている。「社会制度は天や自然から与えられるものではなく、人間が作るものだ」との著者の言葉に納得したら、因習や固定観念に囚われることなく、日本の社会制度についてもどんな問題があるのか、どうすればより良い社会になるのかなどを自分の頭で考えてみて欲しい。18歳から選挙権が与えられることになった現在、皆さんはこの問題に関しては、もう当事者なのだ。

  • 難しい理論も簡単なモデル化を行ってわかりやすく説明している。
    憲法改正でまずやらなければならないのが、改憲手続きである第96条であるというのはパラドクスにも感じる。
    新書をオモシロイと思ったのは久々かも。

  • 民主主義の代名詞のように扱われる多数決が必ずしも民意を反映する方法ではないという点から出発して様々な意思決定のプロセスを紹介した一冊。ある国で実際に行われている、候補者に順位を付けて投票→順位に応じて点数を加算という選挙は興味深い。多数決に対して漠然と感じていた違和感が解けた。

  • 多数決の結果は、ルールの設定次第でいかようにも変わる。このことを具体的な事例で示しつつ、ではいかなるルールを設定すればよいのか、厳密な数式に基づく経済学者たちの理論が平易に紹介されていきます。ボルダルール、ヤング・コンドルセの最尤法、不可能性定理による独裁制、クラークメカニズム、、、近年いろいろ問題となる、選挙制度、政策決定プロセスの妥当性について、考え直すためのヒントが沢山得られました。この本で述べられている社会的選択理論という学問分野の知の集積を、民主的ルートの強化のために用いて実際の我々の暮らしに反映していくにはどうすればよいか。やはり我々自身が、選挙で勝ったのだからOK的な、乱暴な言説や煽動に影響されず理知的な判断ができるように、いっそう学んでいくしかないでしょう。私にとってより学ぶ必要性を感じさせてくれる良書でした。

  • 今日の社会においては、多数決は物事の基本的な決め方として幅広く用いられている。が、本書ではその結果に果たして正当性はあるのか、という疑問を出発点に、ボルダルールとコンドルセ・ヤングの最尤法を軸に種々の選択理論の性質について解き明かし、“民主主義的な”選択方法について考察していく。
    例えば、A,B,Cの三者から一人代表を選ぶとして、ある方法ではAが最も多い票を獲得し、別の方法ではBが獲得するとする。では、この結果の違いは一体何を意味するだろう?実の所、有権者の評価よりも、選挙のシステムが結果に影響してしまっているのである。そうした結果を「民意が反映された」と言ってしまって良いのだろうか?
    本書の後半では、ルソーの社会契約論が現代にあって未だ理想的な輝きを放っていると主張し、一つの可能性として中位選択論をベースに話を展開していき、最終章で実際の問題を例に、民主主義を謳う社会にあって、「民主的な選択」からかけ離れてしまっている現状が示される。
    民主主義という言葉に隠れて実は民意が十分に反映されていない、その状況を解決するための手段を社会科学的な見地から考えていく。解り易い解説と明瞭な考察と相重なって、無批判に受け入れがちな選択の本質に光を当てる意味からも、本書には一読の価値があると思う。

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著者プロフィール

坂井 豊貴
慶應義塾大学経済学部教授
1975年生まれ.ロチェスター大学Ph.D.(経済学).横浜市立大学,横浜国立大学,慶應義塾大学の准教授を経て,2014年より現職.国際学術誌に論文多数.
単著:
『マーケットデザイン入門――オークションとマッチングの経済学』(ミネルヴァ書房 2010)
『マーケットデザイン――最先端の実用的な経済学』(ちくま新書 2013)
『社会的選択理論への招待――投票と多数決の科学』(日本評論社 2013)

「2014年 『メカニズムデザインと意思決定のフロンティア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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