ルポ 保育崩壊 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315421

感想・レビュー・書評

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  • 「新人いじめの張本人リーダー保育士にとって、仕事ができる、できないというのは保育士の質ではなく、段取りのこと。ダメダメと言われてばかりで振り返りもなくては、本人が自分のどこが悪いかもわからない。これでは、自分が相手から信頼されている、期待されている、だからいい仕事をしようと思う気持ちが育たないまま、潰れてしまう」

    運営費(補助金)の人件費部分の積算基準が低く抑えられたままであること、現場の実態に合わない不十分な職員配置基準

  • 働く女性のために保育園の拡大を急激に推し進めた結果のレポ。よくまとまっているとはいえ、一面的な見方にも感じる。子供をぞんざいに扱ったり、子供を無理やり集団行動に従わせたりといった例が挙げられる。しかし確かに子供を大事にとはいえ、子供を集団行動させるには、全てが子供中心に出来るわけではないと思う。もちろんそれが理想とはいえ、それを追求することがこの本で指摘する保育士への過剰な労働に繋がってしまうのではないか。保育園に子供を預ける母親は心配になってくるので、あまりオススメしづらい。
    とはいえ保育士が薄給であることはその通りだし、改善しなければいけない。現状を知らしめるということにおいては価値がある。

  • 少子高齢化社会での保育と介護こそ、IT活用や働き方変革が必要だと思う。

  • もうすぐ出産予定、保育園見学も片手以上の数はした上で読みました。
    都市部に住んでいて、保育園は選びようがないというのが正直なところです。

    感想としては、保育園に預けなければ仕事を続けられない身として、暗澹たる気分になりました…。
    今までの見学で自身が感じたことすら、「実は◯◯なのでは…」と疑心暗鬼に陥ってしまいます。
    見学時に、それぞれの先生個人の保育に対する考えも聞いてみたいなとは思うようになりました。

  • 『保育園落ちた日本死ね』と題された2016年2月15日に「はてな匿名ダイアリー」に投稿されたエントリが、国会まで巻き込む騒動となり話題となった。

    その際、待機児童問題と同時に大きく取り上げられたのが保育士の待遇や、資格を保有していても保育所で働いていない潜在保育士の存在だ。
    しかし、待機児童を解消するための無理な施策が、逆に子どもが受ける保育や保育士の労働環境を悪化させている面もあるようだ。

    2015年4月に刊行された本書は、今回の騒動の1年前にそれらを指摘し、さらに子どもにとっても問題があると思われる劣悪な保育現場が描かれている。
    やや過剰な表現や、筆者としては「そこまで保育所に求めるべきか?」といった部分も少なくないものの、事実に基づいた記述がなされている。

    「保育の質」や「保育士の待遇」の低下については、特に小泉政権下における規制緩和による民間参入が要因として指摘されており、本書では以下のような記述がある。

    ・認可保育所の収入は定員による上限がある一方、運営コストの7~8割を人件費が占めることから給与がコスト削減の対象となり、ある企業では人件費の比率が総経費の5割以下まで削減されており、職員平均年収が200万円程度など、通常の企業に比べ待遇が低くなっている。

    ・勤務する保育士に弁当持参を許可せず子どもと同じ給食を食べることを強制され、その給食をグループ会社が作っている保育所。さらに同グループに保育士派遣会社も保有しており、保育士の給与からピンハネする構造となっている。

    ・ベテラン保育士は待遇悪化などにより退職し、新卒の離職率も極めて高い。1年ですべての保育士が退職した保育所も紹介されている。さらに非正規職員の比率が増加しており、本書では正規職員がゼロの保育所についても書かれている。

    『保育とは何か』(岩波新書)の著者であり大学教員でもある近藤幹夫氏は、知人が「新卒の保育士50人を集めてもらえば1人の基本給を5万円上乗せする」といった交渉を持ちかけられたことを明かしています。保育所の増加に対して、保育士は次々と離職するため、新卒の大量採用によって補っている構造と思われる。

    こうした状況により保育経験豊富な保育士が圧倒的に不足しており、それが子どもが受ける保育の質を悪化させているようだ。
    一方、保育士として働いている人は約38万人でああるが、潜在保育士は60万人程度とされている。保育業に就いていない主な理由は待遇をはじめとする職場環境にあるようだ。

    保育士の勤務は残業やシフト制による不規則な勤務などが指摘されているが、筆者の感覚では他の民間企業、特に長時間営業が定着している小売・サービス業界と大きくかけ離れた状態ではないように思われる。
    ただし既に述べたように給与をはじめとした待遇面とのバランスを著しく欠いているように思われるし、それによるデメリットを受けるのは保育される子どもである。

    本書ではどの保育所か明らかにされていないものの、耳を疑うような保育の内部実態が紹介されています。うち多くが株式会社をはじめとする民間運営の保育所のようだ。

    ・認可に必要な部屋面積を確保しつつも、管理を楽にするために柵を使って部屋の2分の1や3分の1といった範囲に子どもを押し込めている保育所。

    ・施設内に園庭がない場合は近隣の公園を園庭として用いることになっていながら、半年間働いた間に1度も公園へ散歩に行かなかったという保育士の証言。

    ・新設開園2日前に内装工事をしておりクラス担任も決まっていない保育所。

    ・スケジュールに追われ、子ども押さえつけ無理やりごはんを掻き込む保育士。

    ・コスト削減のために食器などを家庭から持参させる保育所

    ・障がい児など「要支援児」には別途補助金が与えられるが、実際にはその補助金に当たる保育士が配置されない保育所

    本書では、こういった保育現場の問題点を指摘する一方、子どものために真摯に取り組む保育所も紹介されている。
    保育所の目的からすると「子どもの最善の利益」が優先されるべきで、その質を確保するには保育士に一定以上の待遇が必要であり、そのための社会的負担は、やむを得ないだろう。

  • 2016年4月27日読了。2015年刊のノンフィクション、60万人を超える待機児童への対応が問題となる中、規制緩和により株式会社が参入し保育園が乱立するが、虐待に近い保育の内容・低賃金かつ激務により燃え尽きる保育士たち・権限が無く保育の現場の惨状になすすべのない園長、など何とも絶望的な内容だ・・・。全ての保育園がこんな状況ではないと思うが、なぜこのような事態が発生し、その状態が是正されないのだろう?と思うが、何をやるにも「人」と「コスト」が必要、ということなのだな・・・。こんな状況では、「そこまで苦労して、子どもにつらい思いをさせてまで保育園に入れたくない」と考えて退職する女性が多いのもやむをえない、という気がする。なぜ安心して働けないのだろう?保育ってなんだろう?

  • 保育について、こういう積極的な本がもっと多く世の中に出てくると良いと思う。
    0〜6歳までの幼い子の権利を守るのは、その親や関わる大人達。
    日本の20年後の未来に対する投資が国家予算の1%に過ぎないというのは、常々思っていたが、成長する気がないという風に感じられる。
    社会人のスキルアップでさえ、年収の20%使わないと10年後の自分はないと言われているにもかかわらず…だ。

  • 衝撃的だな。この本だけ読むと保育園に預けるoptionはなくなる。関わる人が崩壊させようとしているわけではなく,制度上,質の低下を招きやすいということなんだろう。核家族で共働きが一般的になってきたからこそ,社会の持続的な発展のために「保育・幼児教育・初等教育」の重要性を再評価するべきだ。

  • 保育が厳しい環境にあること、保育行政にまだまだ不十分な点があることはそのとおりだと思いつつ、結局それらを解決するには国の予算配分が一番重要という主張(そのような読後感でした。)にはあまり説得力を感じなかった。

  • 今、待機児童が問題になっている。
    けれども、預けられたらいいという問題ではない。
    けれども、母親たちには選択の余地はない。入園できたらラッキーなのだ。

    待機児童も問題ながら、保育士の待遇や質の問題もある。
    問題が多すぎて、どうしたら解決するのやらさっぱり希望が持てない。こんな社会じゃ、子どもを産み育てる気持ちにならないですよね。

    私は幸い、よい保育園に子どもを預けることができ、好きな仕事もできる。よい保育園で子どもが育つことが、どれほど大切なことで、どれほどありがたいことが実感した。

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