フォト・ストーリー 沖縄の70年 (岩波新書)

著者 : 石川文洋
  • 岩波書店 (2015年4月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315438

作品紹介

一九三八年に沖縄に生まれ、幼い頃に本土に移住した著者は、ベトナム従軍カメラマンとして、ベトナム戦争に関わる沖縄米軍基地を取材した。それをきっかけに、自らのルーツとも向き合いながら沖縄について考え続け、撮り続けてきた著者が、七〇年の歴史を、戦争と基地を軸に描き出す。カラー写真多数。

フォト・ストーリー 沖縄の70年 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 報道カメラマン・石川文洋。私の中ではヴェトナム戦争を取材した
    カメラマンとの印象が強い。なので、沖縄出身であることは知って
    はいたが、僅か4歳で本土へ移住していたことは知らなかった。

    当然、沖縄で過ごした時間よりも本土で生活している年月が多い
    文洋さんだが、自身は「沖縄人」との意識が強い。そして、自らを
    「在日沖縄人」と呼ぶ言葉に、本土に生まれ育った私は多大なる
    うしろめたさを感じる。

    文洋さんは沖縄戦を知らない。おばあ様から話を聞いた。その沖縄戦
    の話が、ヴェトナム戦争に重なる。ヴェトナムで犠牲になった一般市民
    の姿が沖縄戦で犠牲になった市民と重なる。

    そのベトナム戦争には沖縄の米軍基地から多くのアメリカ兵が送り
    出され、戦闘機が向かった。

    文洋さんの眼は、自身が見聞きしたヴェトナム戦争を通して沖縄を
    見る。明治政府による琉球併合以降、沖縄は中央政府の政策に
    翻弄され続ている。

    先の大戦後のアメリカによる占領、日本返還後も本当の大部分に
    米軍基地が残り、そして現在は美しい辺野古の海が新たな基地
    建設の為に埋め立てられようとしている。

    静かに、深い怒りがある。「戦争は命を奪う。個人、公共の財産、
    文化財、自然を破壊する。軍隊は民衆を守らない」。文洋さんの
    こんな言葉が耳に痛い。

    沖縄に何もかもを押し付けて来た70年ではなかったのだろうか。
    無関心でいた訳ではないけれど、沖縄を犠牲にすることで戦後
    の70年を築いて来たことを自覚しなくてはいけないのではないか。

    未だ、私は沖縄に行けない。それはある種のうしろめたさがあるから。
    でも、行かなきゃけないんだよな。

    そうして、この国のやることに疑問を持って、理不尽には怒りを持続
    させなきゃいけないんだよな。

    時代時代を写した写真も豊富に掲載されているが、本文と一致して
    いないものがあるのが少々残念。

    だが、文洋さんの沖縄への想いがひしひしと伝わって来る良書だ。

  • 著者の石川文洋は沖縄生まれの報道写真家。
    4歳で本土に移住したが、自らは「在日沖縄人」であり、「琉球王国の成立、薩摩藩の侵略、琉球併合、沖縄戦、米軍基地といった沖縄の歴史は、私にとっての歴史」といい、戦後70年の沖縄の歴史について、「皇民化教育、本土防衛のための捨石とされた沖縄戦、日本独立のため沖縄を切り捨てたサンフランシスコ条約調印、本土復帰後の安保条約と米軍の押しつけ・・・最近も沖縄人の民意を無視したオスプレイの強行配備、辺野古新基地建設と東村・高江のヘリパッド基地建設の進め方に怒りを覚えている」と沖縄の人々の思いを代弁する。
    本書で著者は、沖縄戦や、サイパンなどの南洋諸島に移住した沖縄の人々の戦争中の体験については、多くの生存者にインタビューを行っているが、米軍に追い詰められて、親が子供を手にかけざるを得なかった数々の話には、胸を締め付けられる。
    また、戦後については、沖縄の基地からB52が次々と飛び立っていったベトナム戦争、無条件の本土復帰を目指したゼネスト、1996年の日米地位協定の見直しと基地の整理縮小を圧倒的賛成多数で支持した沖縄県の住民投票、2014年の辺野古新基地建設を実質的に拒否した沖縄県知事選挙、米兵の治外法権的な扱いの状況などを、自らのリアルタイムの取材を基に、多数の写真を交えて語っている。
    本書は、学者が沖縄の戦後70年を網羅的に解説したものではなく、著者自らがいう「在日沖縄人」が、自ら取材した事象を中心に、沖縄の民衆に近い目線で振り返ったものであり、だからこそ、沖縄の多くの人々の思いを反映していると言えるであろう。
    沖縄の米軍基地問題を考えるにあたり、忘れてはいけない視座を与えてくれる一冊である。
    (2015年6月了)

  • 基地問題以外の扱いを増やして欲しかった

  • ぐんぐん読める本である。写真の下の文字がなぜか読みづらい。沖縄の野球のことも書いてあるので政治だけとは一風変わった写真である。

  • 今年は戦後70年なので、沖縄や戦争関連の本も読もうと思い、手にとった。しかし、本を読んでいくとまったく「戦後」ではない。沖縄はまだ「戦中」だ。沖縄戦の記憶で深く傷ついている人もいる、基地問題で闘っている人は多くいる。
    基地の前での抗議運動の写真で、沖縄特有の“歌”や“踊り”で抗議をする人もいて、特に印象に残っている。
    この他にももっとエピソードを掘り下げて書いてほしかった写真が多く載せられている。

  • 何しろ知らないことばかりであり、
    また、考えていなかった大切な視点が示されている。
    安保を語るには、沖縄の歴史も踏まえた視点を理解し、
    そして、対極の政権の視点も理解してからでないといけないと思った。

  • 戦後70年の沖縄の歴史について、沖縄戦、南洋群島での沖縄人、ベトナム戦争、本土復帰、米軍基地と写真とともに語られている。
    戦争の悲劇、基地問題とインタビューもあり、改めて沖縄に置かれている状況を考えさせられる。
    戦争の記憶は引き継いでいかなければなりませんね。

  • 勉強になりました。

  • 2015年6月新着

  •  海を隔てている沖縄の人々は、ベトナム戦争を本土よりももっと身近なものとして真剣に考えていた。
    その理由は二つある。一つには、自分たちの戦争経験から、同じように地上戦に巻き込まれたベトナムの民衆の悲劇を体で理解できていたからである。(中略)
    さらにもう一つの理由は、沖縄の基地の動きによって、ベトナム戦争の動きを察知できたからである。B52が嘉手納を飛び立った翌日の新聞には、外電でベトナムのB52爆撃が報じられ、人々はそれが前日、自分たちの土地から飛んでいったB52が落としたものであることを知る。(p.78-79)

    沖縄の人々にとってこのゼネストは、ただB52の撤去を求め、原子力潜水艦の寄港に反対するというだけではなかった。
    琉球国に対する薩摩の侵略と琉球除名処分による日本への併合、太平洋戦争での悲劇、敗戦後四年におよぶアメリカ支配下の生活、そういった中で起こってきた沖縄人の怒りだった。基地包囲はアメリカに対する抗議だけではなく、沖縄に犠牲を強いてきた日本政府に対する怒りでもあった。むしろ、その方が強かったとも言える。(p.109)

    浦添市の県立陽明高校の新城俊昭氏「沖縄の平和教育は沖縄戦で止まってしまっています。基地の問題にはあまり触れない。基地の存在を許して沖縄から平和を発信することはできません。沖縄は沖縄戦、基地による被害を強調するが、ベトナム戦争では沖縄の基地が最大限利用されたように、加害者の立場に立ったこともあることを考えなくてはならない。その点、大人と比較して被害者意識の少ない若者は、基地のみを正確に考える潜在性を持ち、九月四日、五日に行われた「高校生の県民投票」では、高校生の基地に対する関心の深さが表明されました。若者の基地に対する意識がさらに強くなることを望んでいます」(p.164)

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