世論調査とは何だろうか (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315469

作品紹介・あらすじ

世論調査の数字は不思議だ。同じような質問なのに、結果はしばしば各社各様。どの数字が信頼できるのか?本書は、そんな疑問に答えながら、世論調査の仕組みと働きについて考える。結果次第で内閣の運命も左右する世論調査。国民の意思や意見のありかを伝え、権力を監視する強力な手段としての重要性を説く。

感想・レビュー・書評

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  • 社会

  • ◆NHK記者としての豊富な取材経験と、NHK放送文化研究所世論調査部に所属している独特の経歴から、世論調査の限界と解読のための鍵を開陳する。その中から滲み出てくるのは、著者の誠実かつ実直な様◆

    2015年刊行。
    著者はNHK放送文化研究所世論調査部副部長(当時)。


     現在、ラジオNHKジャーナルにおいて、隔週でニュース解説を担当する著者。映画・アニメから国際情勢、医療他理工系分野まで話題の幅広さ、解説の丁寧さ、滲み出る誠実な人柄に感服しているが、「おおっ、あの岩本さんの著作だ」と思いつつ本書を紐解く。

     内容は、著者が世論調査の専門セクションで得た知見と自身の取材体験とを重ね合わせつつ、米国での世論調査の嚆矢、方法論の変遷、GHQによる日本への導入という歴史を踏まえつつ、さらに世論調査の具体的実例を素材に、その解読の肝、注意すべき事項を提示していく。

     世論調査を含むあらゆる調査とその結果に関しては、様々な観点でバイアスが存在することはもはや所与と言わざるを得ない。
     それを前提とした上で、本書の中で印象的なのは、中間的選択肢と質問上避けるべき言い回しを利用して誤導を招くYS。余計な情報を提供しバイアスをかけてしまうA。という件。各々の報道機関の特徴・悪い意味でのクセとでも言うべき点だからだ。

     他方、重要だと思うのは、
    ① 各社の比較と共に、トレンド・傾向性の把握に注目すべしとの指摘。
    ② 費用対効果との関係で調査数には限界。数%は誤差の範疇。
    ③ 調査対象選択において、適当と無作為は雲泥の差。
    ④ サンプル数、サンプル選択の基準や方針が結果に大きく関わるので、ここに注視する必要があること。
    等だろうか。

     ところで、本書のテーマ・内容とは外れるが、本書には、著者自身の失敗談も幾つか挙げられ、それに対する忸怩たる想いも開陳されている。
     これを見るにつけ、ラジオでお聞かせ頂くのと同様、実に素直な方、実直な方だなぁという印象を強くした。

  • 世論調査に関しては、ニュースで見聞きする程度の素人読者です。
    著者の岩本裕さんは、NHK「週刊こどもニュース」3代目お父さんとして活躍された方で、とてわかりやすい文章・表現が使われていたので読みやすかったです。
    世論調査の世論という漢字のオリジナルは「世論」(=せろん)ではなく「輿論」(=よろん)であったこと、戦後のマスメディアが実施する世論調査をGHQが育成していたことは、全く知りませんでした。
    また、同じ目的の世論調査の結果が各社で異なる原因、結果が異なっている場合の読み方など勉強になりました。
    調査機関やサンプリング方法、質問の仕方などが結果に影響を及ぼす要因なり得るということも、忘れてはいけないと思いました。

    世論調査は民意を示す絶好のチャンスなので、なるべく調査に協力していきたいと思います。

  • NHKこどもニュース司会者らしく読みやすいが中身は薄い。高校生向け。もっと批判レベルの話まで書いて欲しい。

  • 世論調査は、信用できない。
    そんなイメージがある。

    それは、現在の調査方法が原因に思う。
    知らない人からかかってきた電話に出て、丁寧に回答できる人は少ないと考えるからだ。

    実際、本書でも調査方法に関する課題は挙げられている。

    しかし、それでも「世間の空気」を映す手段として「輿論調査」は重要な役割を担っている。

  •  世論調査の歴史、方法、現状を非常にわかりやすくまとめている。読売や産経が社会学の理論では禁じ手の文言による「中間的選択肢」を用いて、集団的自衛権容認に調査結果をミスリードした問題を的確に指摘するなど、現在の世論調査が抱える諸問題を炙り出している。世論調査を民主主義の維持・発展の上で必要なものと見做しているが、著者の建前上の意図とは裏腹に、むしろ世論調査が民主主義にとって有害な世論操作ツールになりつつある現状を示している。

  • 新聞などの世論調査では、内閣支持率、政策に対する賛成や反対の割合、選挙後の獲得議席数の予測などの様々なデータが発表されているのをよく見るが、世論調査とはどのようにして調べるのだろう。そもそも世論調査に協力した数千人程度の人々からの回答が民意を反映していると考えられるのだろうか。選挙の投票後、まだほとんど開票が進まないうちに当選確実が出るのはなぜなのか。本書では世論調査の歴史を振り返りながら時代とともに変わってきた世論調査の方法を解説し、その有益性や問題点について具体例を挙げて考察する。
    現在一般的に行われている世論調査の方法は、コンピュータでランダムに発生させた固定電話の番号に電話をかけるRDD (Random Digit Dialing)という方法である。これは従来の面接法や配付回収法、郵送法などと比べて短時間で実施することができ、費用も抑えられる。その機動性の良さが評価されてRDD法はマスメディアの世論調査の中核をなすようになった。そして、頻繁に行われる世論調査で示される内閣支持率などのデータは、現在では政権や政策に対して大きな影響力をもつ程に重要視されている。
    しかし世論調査は、調査の趣旨は同じでも調査機関や調査方法によって結果が異なることがよくある。回答者は、見知らぬ他人に回答を告げる面接法と他人の顔を見ることがない郵送法では異なる回答をすることがあるし、RDD法でも質問文の作り方や選択肢の順番によって選ぶ回答は変わってくる。つまり質問の仕方によっては世論調査ではなく、調査者の望みの方向に回答を誘導する世論操作になってしまう危険があるのだ。現在世論調査は、携帯電話を含むRDD法やインターネット調査、ビッグデータを利用する方法など色々な方法が研究されており、今後も様々な方法で実施されていくだろう。そこで重要なのは、どんな情報をどんな方法で集めたのかをきちんと把握した上で、世論調査のデータを読み解くことなのだ。
    世論調査は、直接政治に関われない多くの人達の意見を国や行政に届けたり、権力を監視したりするための「武器」である。世論調査に答えることの重要さを理解して、民主主義社会の中で私達に与えられたこの「武器」を有効に利用しようというのが著者の主張である。何気なく見ていた世論調査も、その重要性と問題点を理解すると、データから様々なことが分かってくる。本書を読んだ後で目にする世論調査のデータは、今まで以上に興味深く思えるに違いない。

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:361.47||I
    資料ID:95160072

  • 日本の世論調査の歴史、調査方法、そして読み解くための方法を、コンパクトにまとめてある。
    調査する側と、それを利用する側の両方を経験した筆者だけに、良書だと思う。

    RDD調査については、ほかの本でも読んだことがあったが、欠点や、それを克服しようと工夫されつつある現状について書かれていたので興味深かった。
    また、内閣支持率や、集団的自衛権についての新聞各社の調査結果になぜ違いが生まれるかの章が面白い。
    このあたり、特定の政治的主張を持った人には不愉快に感じられるかもしれないが、ほかの本では突っ込んで記述することが少ないだけに、貴重だ。

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著者プロフィール

岩本 裕(NHKラジオセンターチーフ・プロデューサー)

「2018年 『民意のはかり方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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