右傾化する日本政治 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315537

作品紹介・あらすじ

日本は右傾化しているのか、それとも「普通の国」になろうとしているだけなのか。いったい、どちらなのか?-政治主導のもと、寄せては返す波のように時間をかけて、日本社会の座標軸は右へ右へと推し進められていった。そのプロセスを丹念にたどりつつ、新しい右派連合とその「勝利」に直面した私たちの現在を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 映画主戦場にも、インタビュー出演してた中野氏による、保守55年体制から今日の安部政権までの、保守の流れ、変質と、時にリベラルによる揺り戻しに関する考察。資料や証憑に基づく、学者らしい観察と分析、鋭い洞察が見て取れます。この間の歴史的事実を知らないと、理解は難しいかも。

  • 戦後日本の政治家、首相の歴史を紐解くのがメインとなっていた。

  • 「右傾化」という言葉が言われはじめて久しいが、実際に日本は「右傾化」しているのかどうか、しているのならばどのような経緯を経ているのかを、国政レベルで検討している。本書では「右派連合」の新旧を分けるものとして経済/新自由主義との距離があげられている。ナショナリズムの称揚と新自由主義が結びついていく点に関しても、政策決定や政党政治の力学から分析されていて興味深い。

  • 長い時間をかけて振り子のように揺り戻しを繰り返しながら段々と右傾化している、という分析。

  • ☆第一次政権をあれだけの失態で閉じた安倍が、驚くべき復権を遂げた拝啓は2つの要因がある。
    ・野党化した自民党が、さらに右傾化していた
    ・有権者の政権選択が可能となる競争システムが、民主党政権の挫折とともに崩壊したこと
    ☆リベラル左派連合再興のための基礎条件
    ・小選挙区制の廃止として選挙制度改革
    ・リベラル勢力が新自由主義と決別すること。
    ・左派運動の在り方の転換

  • ポイントを抑えた的確な現状認識にはうなるほかないが、読み進むたび随所でため息をつかざるを得なくもなる。最後に記された処方箋も正直なところ実現できなさそうなのが切ない。

  •  本書のユニークかつ斬新な点は、1980年代以降の政治右傾化プロセスを「支点が徐々に右に動く振り子」のような「揺り戻し」を含む曲線運動と捉えていることにある。「振り子が右に振れるとき支点も一緒に右に動き、やがて振り子は左に振れるわけだが、前の周期の左端まではもどらず、もっと右の位置で留まる」。これにより「改革の後退」「改革の修正」とみなされる時期や政策が、結局のところ本質的には新自由主義化の動きそのものを停止させるに至らない力学が説明可能になる。

     他方、今日の右傾化プロセスの因果関係を探求する上で最大の難問は、経済面でのグローバル化=自由化と、一見それに逆行するような国内政治局面でのナショナル化=反自由化の関係性をいかに矛盾なく単一の枠組で内在的に明らかにすることだが、その点はインターネットのブログ言説レベルの表層的な分析にとどまっており、正直なところ期待外れだった。偏狭な排外主義や復古的な国家主義の台頭を単に「格差社会」の矛盾から目を逸らすプロパガンダと見なしているだけでは、その意外な強靭さや拡散浸透を説明しえない。本書はこの30年余りの政治史を新自由主義と国家主義の「新右派連合」の「勝利」の過程として描いているが、例えば公共事業の在り方が小泉政権と現在の安倍政権では180度異なる点でも「新右派連合」の内実は相当な開きがあり、より精緻な解析と理論構築が必要だと思われる。

  • 日本は右傾化しているのか、それとも「普通の国」になろうとしているだけなのか。
    いったい、どちらなのか?
    著者は、日本社会の座標軸は右へ右へと推し進められたとする。
    そのプロセスを丹念にたどった著作である。
    以下、その内容である。
    序章 自由化の果てに
     1現在を生んだ新右派転換
     2なぜ「反自由の政治」へ向かったのか
    第1章 55年体制とは何だったのか
        ―旧右派連合の政治
     1二つの歯車 ― 開発主義と恩願主義
     2革新勢力 ― 「三分の一」の役割と限界
     3なぜ旧右派連合は破綻したのか
    第2章 冷戦の終わり ― 新右派転換へ
     1新自由主義の時代へ
     2自由化・多様化する日本政治
     3国家主義 ― 新右派連合を支えるもう一つの柱
    第3章 「自由」と「民主」の危機
        ― 新右派連合の勝利
     1小泉政権 ― 「政治の新自由化」の時代
     2安倍政権 ― そして「反自由の政治」が現出した
     3寡頭支配時代へ ― 立憲主義破壊の企て
     4日本政治は右傾化したのか
    終章 オルタナティブは可能か
     1民主党の成功と挫折
     2「リベラル左派連合」再生の条件

    結局、自民党が政権を取ろうが、民主党が政権を取ろうが、それは、「政権党交代」に過ぎない。

    「政権」というものの実質を牛耳る「官僚制」を民衆が打破できるかにかかっている。

    検察と国税という絶大な権力の前では如何なる政治家もひれ伏してしまうのである。

    「右傾化」を操るのは、また「官僚」を牛耳る裏の権力とは?

    最後の行は、私の感想です(笑)。

  • 民主党政権の総括がされている。政権「党」交代ということで納得。
    二大政党が無理なら小選挙区制を改めるべきなんだろうな。

  • 問題提起は面白い。
    自民党内のオールド・リベラルが衰退し、一方で新右派連合が力を握り、非常に国家主義的な言説が流布するようになり、その政治志向は「戦後レジームの脱却」というものであらわすことができるという。

    言いたい事は分かるのだが、非常に問題を短絡的に捉えている気はする。
    しばしば新右派連合=大企業(グローバル企業)のために、言説を動員する事で国家主義を煽るみたいな印象を受けるが、新右派連合と財界自身にも緊張関係はあるわけで(例、中国を巡る問題など)。

    こうした事実も目を向けた方がいいきがする。

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著者プロフィール

中野 晃一(なかの・こういち) 1970年生まれ。東京大学文学部哲学科、英国オックスフォード大学哲学・政治コース卒業。米国プリンストン大学で博士号(政治学)を取得。上智大学国際教養学部教授。現在は学部長。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。主な著書に『戦後日本の国家保守主義―内務・自治官僚の軌跡』(岩波書店、2013)、『右傾化する日本政治』(岩波新書、2015)、『つながり、変える私たちの立憲政治』(大月書店、2016)、『私物化される国家―支配と服従の日本政治』(角川新書、2018)、『噓に支配される日本』(共著、岩波書店、2018)ほか。

「2019年 『野党が政権に就くとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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