ルポ にっぽんのごみ (岩波新書)

著者 : 杉本裕明
  • 岩波書店 (2015年7月23日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315551

作品紹介

日本のごみは年間約四億二〇〇〇万トン。分別収集やリサイクルが奨励され、最新型の焼却炉は環境に配慮されるようになっている。しかし日々の「ごみの行方」はどうなっているのか。最先端のリサイクル施設、不法投棄の現場、海を渡った中古品、関連法施行の背景、拡大するリユース事情などを長年取材を重ねてきた著者が活写。

ルポ にっぽんのごみ (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 【目次】(新赤版1555)
    目次 [i-ii]

    序 章 にっぽんのごみ 001
    ごみの基礎データ/ごみを処理するための法律/個別のリサイクル法の仕組み

    第1章 ごみはどこに行っているのか? 013
    九〇〇万人のごみを受け入れる東京湾の埋立処分場/焼却灰の埋め立てをやめ、セメントに利用する多摩地域/“嫌われ者”の焼却灰は全国をさまよう/基盤から貴金属とレアメタルを取り出す

    第2章 リサイクル大国の真実 025
    1 ペットボトルを求めて争奪戦 026
    リサイクルの優等生/浮き沈みが激しい業界/自治体の独自処理ルートで中国へ?/海を渡るペットボトル/石油からつくるバージン原料の市況に影響される/輸出を止めようとする環境省/輸出されるペットボトルの大半は事業系/多額な自治体の収集・選別・保管費用
    2 複雑怪奇なプラスチックの行方 042
    杉並区の容器包装プラスチックが千葉県に一キロ二〇〇円近くする収集・選別・保管コスト/材料リサイクルと化学リサイクル/一キロ一〇~二〇円でしか売れない再生原料/製品プラスチックのリサイクルを進める/費用負担のため収集しない東京都世田谷区と岡山市/焼却発電を主張する学者たち/国が進めた「油化」/認められなかった焼却発電/どうなる製品プラスチックのリサイクル
    3 リサイクルをめぐる三角関係 066
    骨抜きにされた廃棄物処理法の改正/容器包装リサイクル法の制定過程/製鉄会社は容器包装リサイクル法で新たな起業/自治体の負担は二一〇〇億円にも/フランスでは、事業者が自治体の収集費用の八割を負担/家電リサイクルは手作業中心/処理料金を払うのは前払いか後払いか/形骸化する審議会/使用済み製品の三割を占める「見えないフロー」とは/食品廃棄物は品物ごとにバーコードで管理/企業の自主的取り組みに頼る食品リサイクル法/バイオガス化施設の普及/都内の食品廃棄物は、東京スーパーエコタウンへ/中小事業者の食品廃棄物が自治体の焼却施設で燃やされる理由

    第3章 市民権を得て拡大するリユース 093
    1 国内リユースの世界 094
    若者の目当てはオーディオと楽器/時代の波がリユース業を押した/まるで「一卵性双生児」のブックオフとハードオフ/ネットを使ったリユースが大流行/膨れ上がるリユース業界/オークション会場でリユース品を調達/電気用品安全法に反対し、中小業者が結束/リユースの市場規模は三兆一〇〇〇億円/リユース瓶は減っている/ペットボトルとは競争にならない/リユース促進に環境省も乗り出した
    2 リユースと廃棄物の狭間で 114
    不用品回収業者の一日/海外リユースを展開し、三〇か国に輸出/リユースに転身/パトカーに止められ、警察署に連行?/空き地型回収業者を摘発/収集運搬業の許可を取るのは困難/小型家電リサイクル法との競合/小電法の狙いは、スクラップの輸出禁止?/不用品回収業者が組合を設立
    3 海を渡った中古家電 133
    コンテナに五二六台の中古家電/ごみになるようなものは買わない/修理代は、部品の代金だけ/新品の中国製テレビは中古品でできていた/もったいない精神/通電検査に代わるトレサビリティとは/土壌汚染で子どもに健康リスク/製品の寿命を延ばし、資源の消費を節約/プリント基板を日本へ輸出/基盤四八キロで六六〇〇ペソを得る

    第4章 ごみ事情最先端 149
    1 焼却工場が余っている 150
    ごみが足りない!/ごみが減っても清掃工場の建設が続いた/干潟をごみで埋めようとした名古屋市/横浜市はG30でリサイクルに転換/リサイクル率ワースト一の大阪市/競争入札から総合評価方式へ/灰溶融施設の整備義務づけ、税金とエネルギーの無駄遣い
    2 産業廃棄物の不法投棄の歴史 167
    青森・岩手県境事件では、廃棄物と汚染土が一五〇万トン/法律を使った排出責任者の追及は空振りに/リサイクル偽装は香川県豊島で始まった/リサイクル偽装の背後に政治家の影/規制緩和が不適正処理を誘発
    3 生ごみを資源として活かす 178
    生ごみのリサイクルの歴史は古い/生ごみで「地域循環」/市民の力で生まれた/「堆肥化」から「減容化」に転換/生ごみでつくった堆肥を使わない/実験成功なのにバイオガス化をやめて、全量焼却に転換/日本初の機械選別によるバイオガス化施設が産声をあげた/全量焼却と比較し、バイオガス化に軍配が/エネルギー問題を視野に入れたバイオガス化施設
    4 複数の選択肢を持つ合理主義のドイツ 200
    容器包装ごみは無料、その他の家庭ごみは有料/高性能の自動選別機が威力を発揮/ペットボトルや古紙は中国に輸出/ごみを燃やしても熱回収率は抜群/埋め立てを禁止された生ごみはバイオガスに/デポジット効果は疑問、使い捨て容器が増加/家庭ごみのリサイクル率は六五%が目標
    5 行き場のないごみ 放射性物質による汚染廃棄物 215
    微量汚染で反対運動にあった「災害廃棄物」/「町民に不幸をもたらす政策は受け入れない」と訴えた塩谷町長/候補地は、自然が豊かな水源地/宮城県では、候補地のすぐそばで地滑り/最終処分場と焼却施設は安全なのか/茨城県では一四自治体が分散管理を提唱/千葉県では東京湾の東電の火力発電所が候補地に/最終処分場を「長期管理施設」と呼び方を変える/中間貯蔵施設というが、実態は最終処分場

    第5章 循環型社会と「3R」 233
    リサイクルから、ごみのリデュースとリユース重視に/幻に終わったもう一つの循環型社会法案/拡大生産者責任の実現をめざしたが/廃棄物処理法と資源有効利用促進法の統合を/「3R」と焼却施設は、共存できるのか

    あとがき(二〇一五年五月三十一日 杉本裕明) [245-247]
    主要引用・参考文献 [1-3]

  • 日本におけるごみ処理の現状について解説。基本的に焼却処理に傾倒している傾向を指摘。

  • 2015.7刊 著者は2014年まで朝日新聞の記者。
    日本のごみ、家庭からのごみ、産業廃棄物、リサイクルの現場、バイマス発電、などの現場をルポ。

    環境省は2001年に環境庁(1971年創設)から昇格。それに伴い廃棄物行政は厚生労働省から環境省へ。
    ごみ法案は、産業界とリサイクル業界の圧力というか調整があり、環境省発案の法令も経済産業省との調整で微妙に変化してゆく、のがわかった。

  • 「ゴミの行方」をテーマにしたルポをもとにまとめられた1冊。不法投棄問題やリユース会社の成長、輸出された中古品の扱い、核のゴミと言われる放射性物質、また国と自治体と関連企業とのかみ合わない三角関係の図式、中国との再生資源の奪い合い、不可解な経緯をたどってきた法制度の問題点など、ゴミにまつわる様々が分かりやすく浮き彫りにされている。身近なテーマであるだけに、興味を持って読んでもらえれば思う。

  • 長年しっかりと調査し続けた成果がこのお値段で読めるのはありがたい。この内容を、写真付きで実例集として大判で出すと、全国の図書館が必ず購入するものになるんじゃないでしょうか。役場も買いそう。

  • 「ごみ」にもいろいろ種類があって、家庭から出る生ごみもあれば、原発から出る放射性廃棄物もあります。
    そういった様々な「ごみ」についての現状、おもに「リサイクル」「リユース」「リデュース」のいわゆる3Rの視点から書かれた本です。

    この本によれば、「ごみ問題の解決には、意識の改善が必要」だが、「意識の改善は難しい」だから「ごみ問題の解決は難しい」とのことですが、適切なインセンティブを用意すれば、劇的に改善する可能性はあるように思います。
    ただ、そのインセンティブが思いつかないんですけどね…。

  • ゴミが右肩上がりで増え続けた頃、自治体は焼却施設と埋め立て処分場の整備に力を入れた。しかし、バブルがはじけ、経済活動の停滞でゴミが減り、リサイクルが進展し、実はゴミの排出量は減少している。ゴミの排出量は2002年度の5,161万トンから2013年度は4,487万トンに減ったが、焼却能力は1割しか減っておらず、2013年度の焼却能力は実際の焼却量を4割以上も上回っている。ゴミ焼却施設が過剰となる時代が到来しているという事実は、かなりの勢いで驚きである。また、昨今では、リサイクルのためペットボトルを求めて激しい入札競争が繰り広げられている。隔世の感。ちょっと目を離している間に世の中が大きく変わっている。時代の移り変わりのスピードに驚かされた。日進月歩、技術の進展。清掃工場は、今、それを維持するためのゴミがないという状況に立ち至っている。ゴミ事情の最先端を知ることができる。

  • 日本の政策は焼却一辺倒で、ゴミを資源として有効活用するという発想がない。全国に焼却施設は余っていて、ゴミの争奪戦さえしている。ドイツは住宅や産業施設の近くに焼却場があり、電気や熱エネルギーを供給する施設もかねている。
    プラスチックのリサイクルは高度な技術が発達しているのに、省庁、自治体、事業者の間で足の引っ張り合いをしていてリサイクル率が上がらず、プラスチックを石油に戻すプラントも潰れてしまった。目の前のコストばかりに気を取られて、ゴミを減らすことや貴重な資源を有効活用することをお座なりにしている。
    東京湾の江東区にある人工島には最終処分場があり、原発事故で汚染されたゴミや下水汚泥を燃やし、セシウムが8000bq/kgを超えた焼却灰が一時保管されている。行き先がないので、撤去される可能性はまだない。
    東京の多摩地域では、最終処分場建設に反対する市民が森の一部を買い取り、トラスト運動を展開した。都は強制収用して処分場は完成したが、反対運動のしこりは残り、全国の反対運動のシンボルとなった。多摩地域は処分場を作れなくなったので、焼却灰をエコセメントとしてリサイクルすることにした。しかし放射性物質で汚染された焼却灰は処分もリサイクルも出来ず、嫌われ者である。
    秋田県小坂町は最終処分場建設に反対する市民が森の一部を買い取り、トラスト運動を展開した。都は強制収用して処分場は完成したが、反対運動のしこりは残り、全国の反対運動のシンボルとなった。多摩地域は処分場を作れなくなったので、焼却灰をエコセメントとしてリサイクルすることにした。しかし放射性物質で汚染された焼却灰は処分もリサイクルも出来ず、嫌われ者である。
    秋田県小坂町は都市鉱山の顔も持ち、貴金属やレアメタルを取り出している。もともと足尾銅山などと並ぶ日本三大銅山の一つだったが、リサイクルに大きく舵を切った。電気回路が組み込まれた基盤を1300度の高温で溶かした後、比重、溶解温度、化学反応の違いを利用し、大半を占める銅のほか、金、銀の貴金属を取り出す。微粉炭を熱源とし、鉱石を使わずに基盤などリサイクル原料だけでも精錬することができる。この工場で生産される金の量は、国内で唯一残る菱刈鉱山の年7tに匹敵する6tである。鉱石に含まれる金の量は1tあたり40gに過ぎないが、携帯電話には300gも含まれているので効率がいい。
    北九州エコタウンは、自動車や家電、蛍光管などのリサイクル施設が集まる全国最大規模の静脈産業団地だ。製造業など製品を供給するのを動脈産業、廃棄物を回収、再生利用するのを静脈産業という。ペットボトルはリサイクルの優等生と呼ばれ、北九州でも大量に扱われている。運び込んだペットボトルは、まず機械でキャップとラベルを除去して粉砕。洗浄して熱で溶かしてフィルターで異物を取り除き、ペレットとフラフにする。ペレットは制服やネクタイに、フラフはシートなどに使われている。もとの素材を生かしたリサイクルなので、材料リサイクルと呼ばれる。
    杉並区の容器包装プラスチックは材料リサイクルを行っている千葉県富津市のエム・エム・プラスチックと、君津市にある新日鐵住金の君津製鉄所に運ばれる。製鉄所ではコークス炉での化学反応を利用し、コークス、軽油などの原料にしている。こうした化学反応で組成を変えてリサイクルするものを、化学リサイクルと呼ぶ。エム・エム・プラスチックではドイツ製の光学式選別装置で様々な組成のプラスチック製品から純度の高い単一素材の製品を作り出すことができる。素晴らしい技術なのに、使い捨ての製品との価格競争で、同社の経営は厳しい。ドイツでは選別工場の規模が大きく、作った高品質の再生原料が高値で取引されている。一部は自動車部品など工業製品にも使われ始めた。
    リユースの市場規模は3兆1000億円(自動車、バイクを除くと1兆2000億円)で、増え続けている。リユース瓶は重いので、給食の職員などが高齢だと負担が増す、などの理由で減っている。国は、家電リサイクル法のルートに乗らず、リユースに回ったり、スクラップされたりする別の流れを見えないフローと呼び、問題視している。しかしリサイクルよりリユースの方が言いに決まっている。リユースせず、短期間で消費者が廃棄してくれた方が、回収量が増え、リサイクルしやすいと考えているのだ。長く製品を使い続けるリユースとは、商売敵のような関係である。
    フィリピンでは、日本から輸入した製品を修理して長く使い続けている。そこで買った製品は修理代をとらず、部品代だけで修理している。
    横浜市は中田市長のときに、ヨコハマ3R夢(スリム)プランとして焼却から排出抑制重視の政策を打ち出した。
    新潟県長岡市のバイオガス化施設は、焼却施設の隣に生ゴミを発酵させる二つの発酵槽と、ガスを貯蔵するガスホルダーが設置されている。そうして発電された電気を東北電力に売電している。生ゴミを可燃ごみとして燃やしてしまうのでなく、再生可能エネルギーとしてリサイクルする流れは、今後広まっていくようだ。
    ドイツではゴミの分別回収にお金をかけず、高性能の赤外線選別装置で選別している。ただ、施設で働く作業員はトルコからの移民や旧東ドイツの出身者で、そうした低賃金労働者が工場を支えているのだ。
    放射能の汚染廃棄物を焼却する施設では、環境省がバグフィルターで放射性物質を100%近く捕集できると言っているが、家庭ごみを大量に混ぜて濃度を大幅に下げて燃やすというインチキをしており、数万ベクレルの汚染廃棄物だけを燃やした経験はない。処分場のコンクリートは数十年でひび割れ100年も持つわけでなく、地下水に漏洩し溶けて下流域に広がる危険性がある。セシウムは沸点が低くてガス化しやすいので、バグフィルターをすり抜ける可能性がある。
    環境省は庁から昇格したばかりで権益が少ないが、原発事故による汚染で増した。中間貯蔵施設や最終処分場の建設で巨大な予算と天下り先を確保した。最終処分場は長期管理施設と名前を変えたそうだ。

  • 2015年9月新着

  • 確かに・・・ごみについて総ざらいの勉強ができます。

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