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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784004315681
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雇用や社会的身分の問題を深く掘り下げ、現代社会の構造的な課題に光を当てる作品です。最低賃金の引き上げや男女間の雇用差別の解消が求められる中、株主資本主義が引き起こす欲望の最大化や、自由競争の不平等な仕...
感想・レビュー・書評
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題名の「雇用身分社会」とは、筆者の造語であるが、筆者はそれを下記の通り説明している。
【引用】
パート、アルバイト、派遣、契約社員などの雇用形態は、いまでは雇用の階層構造や労働者の社会的地位と不可分の「身分」になっている。本書は、このように労働者がさまざまな雇用形態に引き裂かれ、雇用の不安定化が進み、正規と非正規の格差にとどまらず、それぞれの雇用形態が階層化し身分化することによって作り出された現代日本の社会構造を「雇用身分社会」と名づけて考察してきた。
【引用終わり】
1984年に15%程度強であった非正規労働者の比率は、バブル崩壊以降、増え始める。20%を超えたのが1994年。1999年には25%に迫り、2004年には30%を超え、2019年に38.3%となりピークとなった。その後、比率は少し下がったが、2023年時点での非正規雇用比率は、37.1%であり、依然、40%近い人が非正規雇用者である。
非正規雇用の中身も、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員など色々とあるが、一部を除いて正社員に比べると雇用が不安定であり、また、基本的に低報酬である。2012年時点のデータであるが、非正規雇用者のうち、年収が200万円未満の雇用者の割合は32.9%、女性に限れば55.6%である。これが、ワーキング・プアと呼ばれる問題である。日本の相対的貧困率は2012年で16.1%であり、先進国の中ではかなり高い。OECDは「主な要因は労働市場における二極化の拡大にある」としており、こういった状況を筆者は「雇用身分社会」と呼んでいるのである。データはやや古いものであるが、現在でも状況は変わっていない。
バブル以前にも日本企業が苦境に陥ったときはあったが、その時に企業は、例えば、時間外労働(残業代)やボーナスの削減、退職者の不補充などによる採用数の削減等により対処してきた。しかし、グローバル化が進み、中国をはじめとする、コストの安いアジアの国々とのグローバル市場での闘いを強いられた日本企業は、更に対策を加速させ、正社員を削減し、より流動的な雇用形態の人たちを増やすようになっていったのである。それは、当時の経済団体である日経連が1995年に発表した「雇用ポートフォリオ」の考え方に沿ったものでもあった。この頃から、労働者派遣法の規制緩和方向への改訂などを含め、日本の労働政策は市場主義的な方向を指向することになる。
日本企業における外国人の株式保有比率は、1980年代後半には5%にも満たなかったのであるが、90年代以降急激に高まり、現在はおおよそ30%超である。従来の日本の株式は、メインバンクが保有したり、系列あるいは取引先との株式持ち合い等による安定株主(すなわち、物言わぬ株主)が主流であったものが、現在では外国の投資ファンド等の「物言う株主」が増え、日本企業も株主の意向、すなわち、損益や配当や株価等に留意しながらの経営を行うようになってきている。それは、2010年代半ば以降の、「コーポレート・ガバナンス改革」に繋がっている。従来の日本では、従業員が最も重要なステークホルダーの1つと考えられていたはずであり、企業の雇用施策も組織内部を中心としたもので良かったのであるが、徐々に株主意向に沿ったもの、すなわち、市場主義的なものに変わっていったと言われている。
しかし、バブル崩壊以降、今に至るも、日本の正規雇用者の数はほぼ一定である。非正規労働者が増えた分は、日本全体の雇用者が増えたのと、自営業・家業従事者が減ったのである。これまで、雇用の不安定化・流動化が全体としては進み、非正規労働者は増えたのであるが、実は正規労働者の世界では、それはさほど進んでおらず、正規労働者自体の雇用は維持されてきたのだ。
ところが、政府の政策は、これをも崩そうとすることを指向しているように思える。岸田政権の目玉である「新しい資本主義」政策を説明する「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版」には、日本の賃金水準が低迷している「問題の背景には、年功賃金制等の戦後に形成された雇用システムがある」とし、いわゆる「日本的雇用慣行」を批判し、①リ・スキリング②職務給の導入③成長分野への労働移動の円滑化という、「三位一体の労働市場改革」を政策として訴えている。「雇用の流動化」というのは、歴代政権のいずれもが掲げる政策であり、民主党の野田政権下ですら「定年制を廃し、有期の雇用契約を通じた労働移転の円滑化をはかるとともに、企業には、社員の再教育機会の保障義務を課すといった方法が考えられる。場合によっては、40歳定年制や50歳定年制を採用する企業があらわれてもいいのではないか」という内容の提言を、野田首相が議長であった国家戦略会議の中の分科会が行っている。
市場主義的な労働施策というのは、結局は、アメリカの制度を目指しているのだと思う。アメリカは「at will 原則」、すなわち、双方の自由意思による雇用関係という考え方がベースとなっており、基本的に解雇は自由である(ただし、不合理な差別による解雇、例えば、人種や性別や年齢差別による解雇は違法であり、場合によっては多額の賠償金を企業は課せられる)。それに対して、日本の場合は「整理解雇の四要件」というものが判例法的に存在しており、整理解雇もハードルが高い。これまで、非正規雇用の増大を通じて日本の雇用システムは大きく変わってきているが、こと正社員の雇用については安定的であった。それを、大きく、例えば米国のように解雇自由とするなどによって変えようとしているのであれば、社会にとってものすごくインパクトの大きなことである。
以前のブグログで、現在、大学院の経営学研究科に通って勉強・研究をしているということを書いた。専門は人的資源管理である。狭義の人的資源管理という範囲からは離れるが、上記したようなことを考えてみたい、テーマにしてみたいと今のところ考えている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の雇用について、その歴史も含めて、解説。特に底辺のまずさを書かれている。
事実そういう側面で経済成長してきたのであろうし、今の雇用のあり方にも問題は多い。ただ、非正規やめろ
長時間労働はおかしいといった主張だけではなかなか、成熟した社会における安定した、雇用の形も作れないかと思うが、、、
中身は勉強になる本。
雇用身分社会
目次
序章気がつけば日本は雇用身分社会
派遣は社員食堂を利用できない?
パートでも過労とストレスが広がる使い潰される
ブラック企業の若者たち
現代日本を雇用身分社会から観察する
全体の構成と各章の概要
第1章
戦前の雇用身分制
遠い昔のことではない
『職工事情』に見る明治中ごろの雇用関係
『女工哀史』に描かれた大正末期の雇用身分制
戦前の日本資本主義と長時間労働
暗黒工場の労働者虐使事件
戦前の工場における過労死・過労自殺
第2章
派遣で戦前の働き方が復活
戦前の女工と今日の派遣労働者
派遣労働の多くは単純業務
一九八〇年代半ば以降の雇用の規制緩和と派遣労働
財界の雇用戦略ー『新時代の「日本的経営」』
リーマンショック下の派遣切り
雇用関係から見た派遣という働き方
中高年派遣の実態と派遣法「改正」法案
第3章
パートは差別された雇用の代名詞
パートタイム労働者の思いを聞く
パートはどのように増えてきたか
日本のパートと世界のパート
日本的性別分業とM字型雇用力ーブ
パートはハッピーな働き方か
シングルマザーの貧困
重なり合う性別格差と雇用形態別格差
第4章
正社員の誕生と消滅
正社員という雇用身分の成立
「男は残業・女はパート」
絞り込まれて追い出される
過労とストレスが強まって
拡大する「限定正社員」
時間の鎖に縛られて
正社員の消滅が語られる時代に
第5章
雇用身分社会と格差・貧困
雇用形態が雇用身分になった
戦後の低所得層
非正規労働者比率の上昇と低所得層の増加
現代日本のワーキングプア
潤う大企業と株主・役員
労働所得の低下に関するいくつかの資料
第6章
政府は貧困の改善を怠った
政府は雇用の身分化を進めた
雇用が身分化して所得分布が階層化
男性の雇用身分別所得格差と結婚
高い貧困率は政府の責任
公務員の定員削減と給与削減
官製ワーキングプア
生活保護基準の切り下げ
終章
まともな働き方の実現に向けて
急がれる最低賃金の大幅引き上げ
雇用身分社会から抜け出す鍵
ディーセントワーク
あとがき
主要参考文献 -
最低賃金を上げ, 男女の雇用の差別を少しずつ無くしていくしかない。今のままでは貧困の連鎖が続いてしまう。株主資本主義の行き着く先は、欲望の最大化。
効率的な市場は欲望を最大化させるだけで, 人間的な尊厳を持った生活を万人に提供することはできないのではないか。自由競争は強い奴が勝つ仕組みであり、政府の人間が一部の大企業や機関投資家や銀行などのために規制緩和を続けているのは政治家としてどうなんだろう。
規制緩和の結果、一般市民に利益はあるのだろうか。裏で政治献金や賄賂をもらっているから,彼らに利益になるような政策を出しているのではないかと思ってしまう。
適正な規制と適正な規制緩和を考えるのが官僚や政治家の役割であって、なんでも規制を緩和すればいいのなら国家なんかいらないって理屈になるのではないか?
国家こそが個人にとって一番の規制だと思われるからである。
今のような状況が続くなら、雇用によって社会的身分が分かれ、個人個人が分断された社会が完成してしまう。
男女が協力しあい、長時間働きたい人は働き、フレッキシブルに働きたい人は自分お時間に合わせて働くそんな社会が望ましいと思う。
理想を語れなきゃ政治家なんていらない。 -
非正規雇用の闇を知ることができたが、最後の提案がイマイチだった
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女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000026307
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配置場所:2F新書書架
請求記号:366.2||Mo 62
資料ID:C0037104 -
派遣社員が社員と同じ食堂を使えない職場があることに衝撃。同じ仕事をしてても契約形態でここまで格差があるのはやはり異常
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かなり読み辛い
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湯浅誠の貧困社会の本の続きのような内容。賃金格差、非正規労働者の話がメイン。もう少し多角的な見方をしてほしい感じもある。
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生活できる時給は1500円である。
ダンピングである。
日本では、シングルマザーの貧困率が高い。 -
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・日本でフルタイム労働に従事する男性が殆ど家事労働をしない理由は、あまりにも長く働いているためである。
・その結果、女性に家事労働のしわ寄せが押し寄せ、女性のフルタイム労働を難しくしている。男性が現在のような働き方を求められ続ける限り、女性の多くは結婚・出産後、一時的にせよ家事に専念するか、パートタイム労働者として家事と勤めを掛け持ちするしかない。
・企業はこうした性別分業の存在を前提に、女性を低賃金の使い捨て労働力として働かせる戦略を選択してきた。企業が女性パートを採用するのは、労働力の確保、労働コストの軽減、業務の繁閑への対応等のためであり、女性に社会参加の場を提供するためではない。
・高島道枝は、パートタイム労働の日英比較の論文で、日本ではパートタイム労働者がフルタイム並みに働いていることに着目して、「日本では時間の長短ではなく、正規常用労働者に対比した差別的処遇、劣った身分を示す概念として用いられている」と指摘している。
・最近では中高年社員を窓際に追いやり、「仕事を探す」という仕事をさせてやる気を削ぐような「追い出し部屋」のやり方は古くなってきている。
・会社はスキルアップの名目で社員を人材会社に行かせ、キャリア志向性や「人生の根っこ探し」を称した適正診断テストを受けさせる。事実上の退職勧奨・転職強要であり、転職先は人材会社が斡旋する。
・2011年の社会生活基本調査によると、「正規の職員・従業員」のうち、調査対象期間中も勤務し続けていた男性の週間労働時間は66.7時間に上る。(中略)日本の働き盛りの猛烈サラリーマンは、週休2日とすれば、1日14時間程度は働いているのではないか。
・1997年の男女雇用機会均等法の改正により18歳以上の女性の残業時間規制は撤廃されてしまったが、実は今でも現行の育児・介護休業法に「事業所は育児や家族の介護を労働者が請求した場合には(男女の別を問わず)1ヶ月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働をさせてはならない」とある。
togetterまとめ
https://togetter.com/li/1160992 -
いま現在、雇用保険の手続きの仕事をしているが、未加入なんて人は多い。労働者側も知識を身に付けなければならないと思う。
会社は会社で、私の勤める会社なんかは賃金は出したくないが良い人を雇いたいと。
生活が成り立たない様な賃金では、今は誰も応募してこないのでは?と感じる -
以前働いていた職場でこんなことがあった。製造業派遣が解禁される前、請負として大量の非正規職の人達が定年退職者の代わりとして入ってきた。やっている仕事は正社員と大差ない。それまで皆仲良く助け合ってやって来た職場だったが、突然正社員に特権意識が芽生えて請負作業者を下に見るようになり、職場の雰囲気も殺伐としたものになった。『身分社会』が生じた瞬間だった。
雇用形態の差が身分社会の形成や差別にまで繋がっているという著者の認識は実に的を射ている。雇用を取り巻く歴史的状況も俯瞰することができ参考になった。
一つわからないのは、高額所得者を含む全ての所得階層で所得が減っているとすると、この20年間の僅かばかりの経済成長の果実は一体どこに行ったのか? 統計に現れないほど極少数の資産家に集中しているのだろうか?この極端な格差の是正が最優先課題だ。著者の言う通り派遣法の改悪を元に戻すと共に、使いきれないほどの富を貯めている金持ちに応分の負担を求めなければならない。今の政治体制では絶望的だけれど。 -
p184のグラフ "主要先進国の平均賃金の推移"を見て,我が国の政策が賃金を下げているのだと思った.日本だけが下がっているのだ.1985年の労働者派遣法の制定がこの憂慮すべき事態の原因だと感じる.あまりにも大企業寄りの法律で,一旦制定されると次々と改悪される.戦前の治安維持法と同じ.この悪法を廃止することを政策に掲げる政党は出てこないのかな.
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著者は関西大学で経済学部2014まで教えていた。専門は企業社会学。雇用の状態~正社員、パート、アルバイト、臨時、派遣などによって給料が違い、雇用が身分化して所得分布が階層化しているとする。
明治中ごろから紡績などに女工が集められたが、多くは募集人によって農村部から集められ工場に送り込まれた。この場合雇用関係は工場主と女工との契約の前に、工場主と募集人との契約関係であった。85年に労働者派遣法ができたことによりこの戦前と似た関係になった。くしくも85年は同時に均等法もできている。
雇用身分社会から抜け出す鍵として、1労働者派遣制度を抜本的に見直す~著者はゆくゆくは制定以前の規制に戻したいが単純業務の職種を禁止とすべきとしている。2非正規労働者の比率を引き下げる。3雇用・労働の規制緩和と決別する。 4最低賃金を引き上げる。 5八時間労働制を確立する。 6性別賃金格差を解消する。を提案している。これができれば安倍さんは苦労しないが・・
またディーセントワークという言葉を紹介している。これがこの本の最大の収穫だ。decentとは見苦しくない、礼儀正しい、恥ずかしくない、裸でない、人並みの、人間らしい、親切な、寛大な、適切な という意味。著者は「まともな働き方」としている。また、江口英一の「現代の低所得層」1979を紹介し、その中でワーキングプアは「あるべきものがない状態」、人並みの状態が「剥奪deprivation」されており、一般に当然と認められている状態から遠ざけられているので、社会参加不可能の状態に置かれている、と紹介し、デプリペーションはディーセントでない状態、であるとしている。
お金がないのは社会問題だというのは誰でも分かるが、根本の問題は、不安定な雇用により、まともな権利(正当な賃金と社会保障)から遠ざけられ、「社会参加ができなくなっている」ことだというのが分かった。この考えを政治家、企業家に認識して欲しい。 -
良書。
怒りが込み上げてくる。
日本人の給料は、悪い方向に向かっている。日本の経済は、低所得者に支えられている。
政府は、これを推進する政策を行なってきた。もっと国民は、怒らなくてはいけない。 -
現在、関西大学名誉教授である著者が、2014年3月に定年退職する直前に構想が浮かび、昨年10月に発刊された新書。「雇用身分制」をキーワードに、日本の労働社会全体像を概観したことが特色(筆者談)としてあげられます。
「職工事情」「女工哀史」「貧乏物語」など、日本における資本主義が作られてきた過程の中で書かれた本の内容が紹介されていますが、今の労働実態をめぐる状況と比較しても遠い昔のことでなく、むしろ悪くなっているといえる現状に、恐ろしさを感じました。
非正規労働者が増えたということはそれだけ正社員が減らされたことであり、さらに縮小させられる方向と指摘。それに関連して、人材派遣会社パソナ関係者が「正社員が安定して雇用という常識はもう通用しない。正社員にはリストラや定年がある。フリーターなら本当の意味で一生涯終身雇用が可能」と発言したとの記述には驚きを隠せませんでした。
「派遣労働を規制し、パートやアルバイトであっても何とか生活できる水準にまで最賃を引き上げ、合わせて性別賃金格差を解消し、八時間労働制を実現するだけでも、働き方はいまよりはるかにまともになる」という提言は、ぜひ実現させなければなりません。
お勧めの一冊です。 -
渋沢栄一も夜業をすすめた。
諏訪の千人風呂は、片倉財閥が立ったまま短時間で入浴できるように深く作ったもの。
ファイリングとビルメンテナンスを派遣に認めた頃から変貌した。
派遣業は蟹工船の周旋屋、女工の募集人などと同じ。
労働組合は正社員の解雇にのみ反対した。
限定社員の拡大=低賃金化。
バブル(地価と株価の上昇)は1983年ごろ。
総合職は有給が取れず、サービス残業、休日出勤は当たり前、転勤も拒否できない。
一般職は、休日出勤はない、有給消化率100%、転勤もない。しかし真っ先にリストラ合理化の対象になる。
正社員の消滅=同一労働同一賃金
キャリア上の死のキスを40歳で。
ワーキングプア=労働力のある低所得層
生活保護の利用率は、ドイツで9.7%、日本は1.6%、捕捉率もフランスで90%、日本で18% -
格差の問題を雇用形態、いわゆる派遣業務、派遣社員という切り口で考察している。
はじめは、戦前の「女工哀史」に代表される過酷な労働の様子から話しが始まる。
なんとも悲惨な労働を強いられていたかと暗澹たる思いになるが、それほど遠い昔の話ではない。自分の母親からも姉妹や従姉妹が繊維工場に勤めに行って体を壊して若くして亡くなったり、足を悪くしてびっこになったりした話を聞いた覚えがある。女工の勤務体系は斡旋業者の介在する、まさに派遣労働だったのだ。そして、終戦後労働法が整備されるまでは労働者の待遇はとてもひどかったと言える。
そして、その雇用形態は労働者と人集めの会社(あるいは親方)との雇用契約と、人集めの会社(あるいは親方)と実際に労働者を働かせる会社側の契約とは別々になっていた。このため労働者は直接働いている会社側に文句を言えない構造になっており、戦後はこのような形態の派遣業は禁止されてきていたが、1980年以降の雇用の規制緩和と共に次第に緩和されてきた。
つまり、現在の派遣業務は戦前の労働環境へ回帰しており、パートタイム労働、非正規労働など不安定な労働をどんどん生み出していると言うわけである。
それらの労働問題の大きな流れとそれぞれの問題点の提起はたいへん勉強になる。
結局のところ高度経済成長後の株主民主主義の台頭により、利益を得るのは企業と金持ちの株主だけになり労働者の地位はどんどん低下し、正社員もどんどん非正規社員に置き換えられていき、より格差が広がっていく社会になっていると言えるのだろう。
著者は最低賃金の大幅引き上げをはじめとするいくつもの提案をしているが、改善するのはなかなか難しいように思える。国会で審議しているのは結局のところ金持ちや企業から支援を受けている政治家ではないか。ピケティの金持ちは民主主義の敵だと言わんばかり主張はよくわかる。 -
現在の勤労者のおかれている状況を戦前の歴史からひも解き、現在の「雇用身分社会」という状況が出現した様が解説されており、わかりやすかった。そして今後の提言として、「派遣労働を規制し、最低賃金をパートやアルバイトであっても何とか生活できる水準にまで引き上げ、合わせて性別賃金格差を解消し、八時間労働制を実現するだけでも、働き方はいまよりはるかにまともになる」という提言は納得すると同時に、このような提言をしないといけないほど雇用破壊?が進んでいるという実感を持ち末恐ろしくなった。
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