村上春樹は、むずかしい (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 242
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315759

作品紹介・あらすじ

はたして村上文学は、大衆的な人気に支えられる文学にとどまるものなのか。文学的達成があるとすれば、その真価とはなにか-「わかりにくい」村上春樹、「むずかしい」村上春樹、誰にも理解されていない村上春樹の文学像について、全作品を詳細に読み解いてきた著者ならではの視座から、その核心を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 私はけっこう真剣に村上春樹を読んできた人間なのだけれど、一番なんども読み返している本はなにかというと、実はノルウェイの森だった。村上春樹というと、羊をめぐる冒険や世界の終わり、ねじまき鳥などがやはり真骨頂、傑作とされていて、ノルウェイの森は商業的に成功を収めた作品、といった印象で、ノルウェイの森が好きというのは村上春樹の読みとしてどうなのか?というそこはかとない空気があるような気がしており、私はノルウェイの森が一番好きだ、ということをほとんど誰にも言ったことがなかった。でも、大切に大切に、それこそワタナベくんが『グレート・ギャツビー』に対してそうであったように、なんども繰り返しいろんなページを開き、暇があれば読み返し、1ミリたりとも私を失望させることはなく、むしろ、どのページであっても、いつも何かしらの感動を与えてくれたのは、ノルウェイの森だった。というか、おそらく他のどの小説家のどの作品よりも、私はノルウェイの森を読み返している。が、そのことは誰にも言ったことがない、私の秘密だった。
    しかし、この本を読んで、そのノルウェイの森に対する感覚は全く恥ずかしいものではなかったということ、加藤天洋の読みによってそのような安心感を与えられていくような気がして、とても嬉しかった。引用に載せるけれども、他の作品は、どうにもこうにもいかにも村上春樹の書きたいことがぎゅうと詰まり、それが上手いこと整列しているような印象を受け、それはそれで面白いとは思っていた。けれど、ノルウェイの森だけは、著者の意識を超えた響きがあるように感じていて、それが私の心を動かしていたのだった。そのことに気づけただけでもとてもありがたかった。
    最近面白いと思っているのは、村上春樹が加害者としての日本に非常に敏感な作家なのではないかということ。それは最近の文藝春秋に掲載された『猫を捨てる』というエッセイとも繋がるし、加藤天洋の持つ戦後日本の「ねじれ」の感覚とも繋がってくる。確かに、戦争の悲惨さ、失われた命の尊さについてはたくさんの言及があるが、意外と日本人の加害性に敏感な小説というのは少ないのかもしれない。そんなことなどを考えた。

  •  ずっと読んできたのに、『1Q84」が読み切れない。なぜか知りたくて、本書に助けを求めました。青豆の造形につまずいていたのでした。初期の作品から、デタッチメント(距離をおくこと)なる主人公の行動にどれだけ影響を受けたでしょう。そして、村上春樹は深化(進化)しつづけているのが、納得できました。そのことについていけず、または、誤解を加えて、違和感を持っていたのでした。今、あらためて、初期から読み直してみたいと思っています。春樹氏は、自分の評論を読まないと発言していますが、読者の道案内に本書はありがたい。

  • 加藤典洋の村上評本。頭の中にあった漠然としていたものに、言葉を与えてくれるので、村上春樹を自分がどう読んでいたかを整理してくれる。「村上春樹の短編を英語で読む1979~2011」ですっきりさせてもらった。

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    <選者コメント>
    村上春樹の「文学的達成の実質を計量する」ことを狙いとする本です。村上
    作品を年代順に精緻に紐解きながら、各作品の文学(界)的な位置や価値が
    丹念に論じられています。毎回のようにノーベル文学賞が期待されるベスト
    セラー作家としてしか知らない人も、読んでみると村上作品に興味が湧くかも
    しれません。
    (医療福祉学科 杉本巧先生)

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  • ものすごく個人的なところで閉じていた村上作品世界が段階を踏んで模索を重ね開かれていく様子を描いていてさながらビルディング・ロマンスのような作りになっていて、素直に感心してしまった。

  • ミステリを読んでいるかのように、ひきこまれた。読み進むにつれて、謎が解かれていく気分の良さ。解かれていく謎っていったら、そりゃ村上春樹という作家さんの謎でしょう。タイトルの通り、村上春樹は難しい。これはこういう話だったんだ、というスッキリ感があまりない。それでもなんか読んでしまうし、好きな作品は何度か読み返したりもしている。それは村上春樹自身がしばしばいうように、文体に魅力があるからかもしれない。あるいは、他に何か企業秘密的に表に出てこない魅力があるのかもしれない。

    本書で説かれているのは、もちろん加藤氏の見方ではあるだろう。でも、作品を対比し、広い知識と明確な論理で語られる解釈は、強い説得力があるんだよなぁ。

    『海辺のカフカ』以降では特に、村上作品には悪の存在が出てくるなんて話はよそでも読んだけどさ。その悪とは、それ以前の村上作品における主人公たちであり、著者のもつデタッチメントな方面のファクターだ、なんていう話は妙に納得してしまった。

    面白かったねぇ。

    村上春樹を再読したくなったのはもちろんなんだけど、内田樹や豊崎由美など、他の、村上作品を論じている人の文章も読みたくなった。それだけ楽しく、刺激的な本だったのだと思う。

  • タイトルだけ読むと、本書の主題は「村上作品が何故難しいのかを解き明かす」と思ってしまうが、本当の主題は「日本文学の延長線上に村上作品があることを示す」である。この主題は、村上作品が日本文学の伝統に基づいておらず、日本文学界から評価されていないという前提に基づいている。この前提を私は知らなかったので非常に驚いたが、長年の謎が少し解けた気がする。その謎とは、村上作品の文体は翻訳調、内容は抽象的なため、純文学読者層にしか届かなそうなのに、何故こんなにも売れているのかという謎である。

  • まずはご冥福をお祈りいたします。亡くなられたからという訳じゃないけど、このタイミングで読んでみることに。先だって読んだ内田樹作・春樹評の中でも触れられていたしね。おおむね好意を寄せながら、褒めの一辺倒じゃないってところは好感。未読作品も、早く読んでしまいたくなりました。ただ、春樹特別って訳じゃなく、あくまで他の作家と同列に、普通に面白い作品として味わっている自分としては、まあ時が来れば読みましょう、くらいの感じではあるんだけどね。

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著者プロフィール

加藤典洋(1948・4・1~2019・5・16) 文芸評論家。山形県生まれ。1972年、東京大学文学部仏文科卒。国立国会図書館勤務、明治学院大学教授、早稲田大学教授を経て、2014年、同大学名誉教授。85年、最初の評論集『アメリカの影』刊行。97年、『言語表現法講義』で新潮学芸賞、98年、『敗戦後論』で伊藤整文学賞、2004年、『テクストから遠く離れて』『小説の未来』で桑原武夫学芸賞を受賞。主な著書に『日本風景論』『戦後的思考』『もうすぐやってくる尊皇攘夷思想のために』『9条入門』『完本 太宰と井伏 ふたつの戦後』『大きな字で書くこと』などがある。

「2020年 『村上春樹の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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