室町幕府と地方の社会 シリーズ 日本中世史 3 (岩波新書 新赤版1581)
- 岩波書店 (2016年5月23日発売)
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感想 : 19件
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784004315810
感想・レビュー・書評
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鎌倉時代を俯瞰した第2巻は二人の天皇の並立で幕を閉じた。第3巻の本書は二人の足利将軍の並立で閉じられる。室町幕府そのものは信長が歴史の表舞台に出るまで続くが、守護在京の勢力抑制に将軍権力の基礎をおく体制は、荘園制の終焉とともに事実上崩壊する。
モンゴル戦争のような外患こそなかったものの、室町時代とは度重なる内紛(幕府と南朝、朝廷と寺社、尊氏と直義、将軍と守護、大名本家と庶家、細川氏と山名氏…枚挙にいとまがない)と飢饉により荒廃と再生を繰り返した時代であることを再確認できる通史である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主題と視点: 本書は、鎌倉時代後期から室町時代(特に南北朝期〜応仁の乱前夜)にかけての日本の社会変動を、中央の室町幕府と「地方社会」との関係性に焦点を当て、地方に残された多様な史料を駆使して多角的に解明する。従来の幕府中心史観に加え、在地社会の主体的な動きや構造変化を重視する視点が特徴。
幕府成立と南北朝の内乱: 鎌倉幕府滅亡後の建武政権の「徳政」を旧秩序回復思想として分析。政権崩壊と足利尊氏の挙兵、南北朝内乱への突入過程を描写。地方武士たちが所領安堵や恩賞を求め、状況判断で各勢力に与した動向や、幕府による軍事動員が在地社会に与えた影響を解説。鎌倉幕府から室町幕府への官僚機構などの連続性も指摘する。
室町幕府の権威と文化: 足利義満期を中心に、幕府が公家社会との積極的な関係構築(儀式、寺社庇護、文化事業)を通じて権威を高めようとした側面を強調。同時に公家側も幕府に接近。連歌、茶の湯、禅宗文化、水墨画などが公武双方に広まり、融合・変容して独自の「室町文化」(北山文化・東山文化)が形成された過程を描く。
地方社会の構造と実態: 開発の進展と耕地飽和を背景に、村落共同体「惣村」が形成され、入会地利用、祭礼、紛争解決などを自治的に運営した様子を村掟などの史料から分析。荘園制も単なる衰退ではなく、武家領荘園の拡大や守護・地頭支配の強化といった室町時代独自の変化があったと再評価。年貢徴収、災害対応、信仰など、在地の人々の生活実態に迫る。
戦乱の時代へ: 応永の乱、永享の乱、そして将軍足利義教の強権政治とその暗殺(嘉吉の乱)を経て、幕府の権威が失墜していく過程を詳述。有力守護大名による政治、地方における自力救済の活発化、徳政一揆の頻発などが、幕府の統制力を弱め、応仁の乱前夜の社会不安を高めていった状況を描写する。
室町時代の歴史的意義: 本書は室町時代を、鎌倉後期からの社会変動の到達点であり、旧来の社会システムが機能した最後の時代と位置づける。同時に、武士の台頭、社会組織化、年中行事の定着など、現代に繋がる要素が生まれた重要な転換期であったと評価。自然災害と人間社会の関係など、現代的視点からの再考の必要性も示唆する。 -
室町時代の通史。政治・文化を取り上げる。現代とのつながりを意識した記述になっている。南北朝時代の長期化や「徳政」の問題、荘園制についてなど、室町時代の「なぜ」がコンパクトに解説されている。入門に適した一冊。2010年代刊行のため、近年の成果を踏まえた記述を読めるのも嬉しい。
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榎原さんのは面白い。
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鎌倉幕府倒壊から明応の政変までを一気に通史としたもの。政治史より地方や村々に焦点を当て、わかりやすい記述。
室町幕府が京都で公家と武家が婚姻や文化を通じて交わつていたことや在京守護も荘園領主として公家や寺社と同じ立場だったという指摘は面白い。
その上で公武に君臨する室町殿がいたのであれば、なるほどと思う。
鎌倉幕府との -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706028 -
本の感想(http://www.books-officehiguchi.com/?p=19188)
「足利尊氏が鎌倉幕府を倒幕し、建武の新政となった。建武の新政は後醍醐天皇と足利尊氏との対立が激化し、半世紀近く続いた「南北朝の動乱」となった。
なぜ、半世紀近く南北朝の動乱が続いたのか。この本では、南朝との戦いに加えて、足利尊氏・直義との対立、足利尊氏と高師直との対立を考察している。
これらの対立に加えて、地方社会を含めると南北朝の動乱の背景にある要因が複雑になっているという印象を受ける。文庫本とは言え、一筋縄ではいかないのかもしれない。」
内容(「BOOK」データベースより)
足利尊氏はなぜ鎌倉幕府打倒に動いたのか。南北朝動乱が半世紀も続いた理由とは。その後、展開する公武一体の政治の流れをおさえつつ、戦に赴く在地の武士の行動様式、連歌・茶会などの「伝統」文化、現状につながる村々の形成などを見ていく。応仁の乱で再び京が灰燼に帰し戦国前夜へと至る、室町時代の全体像を描く。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
榎原雅治
1957年岡山県生まれ。1982年東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、東京大学史料編纂所教授。専攻、日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
目次
第1章 建武政権と南北朝の内乱(鎌倉幕府の滅亡と建武新政
南北朝の内乱戦乱と村々
内乱の終息)
第2章 もう一つの王朝時代(義満の登場
公武一体の時代
「伝統文化」の誕生)
第3章 南北朝・室町時代の地方社会(現代に続く村
室町幕府の地方支配体制
室町時代の荘園
交易の展開)
第4章 室町公方の理想と現実(徳政と武威
公方の蹉跌
室町幕府体制の動揺)
第5章 動乱の始まり(土一揆・飢饉・戦乱
応仁・文明の乱とその後) -
日本中世史を通して勉強しようと思って読みました。本筋ではないですが、岡山県浅口市の大浦神社競馬神事の話が非常に興味深かったです。下地中分の名残を今に伝えています。
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室町時代の権力・権威の構造と、社会について教えてくれる。
この時代が、中世の終わり、近世・近代の始まりであること、納得しました。 -
室町時代の概観。室町幕府の荘園支配体制は、鎌倉幕府との連続性のもとにあること、室町将軍は公家社会と統合することで独特な公方という王権になったことが面白かった。
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鎌倉幕府の滅亡、建武政権の成立から、明応の政変(足利義材を将軍から追放)まで、政治史を中心に叙述。所領争いで滅んだ鎌倉幕府の課題を、室町幕府は引き継いで寺社領保護と裁判の実施につとめ、それが応仁の乱によって終焉したという時代の描き方はたいへんクリアでよくわかった。室町幕府(前期)の特徴がよくわかる叙述だと思う。
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20170521読了
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南北朝動乱が半世紀
あまり知らない室町時代の武士・文化
現代につながる村々の形成など
読んで納得の室町時代でした -
日本史の中で室町時代が一番難しい気がする。初代将軍の足利尊氏、金閣寺の義満、銀閣寺の義政、それに応仁の乱くらいしか思い浮かばない。南北朝で様々な天皇が出てくるし、管領など有力な守護も一族が多くて覚えきれない。
ところが、本書を読むと、一見無秩序に見える室町時代も、幕府が目指していたところとか、平安時代から続く荘園制度の末期の姿といったものが整理され、また、現代に続く各種文化・生活様式なども室町時代生まれと分かり、何となく親しみが湧いてきた。
他にコンパクトな類書・良書があるかどうかは知らないが、室町時代の特徴やその通史をざっと知りたいという向きには向いているのではないだろうか。結構面白く読めた。 -
シリーズ中でも屈指の分かりやすさ。
史実の流れとその意味づけ・解釈が明快。
南北朝の動乱期、室町公方下での安定期、戦国時代に連なる戦乱期と、室町時代全体を大きく3つに区切って、政治動静や地方社会の実像を描く。 -
前二書に比べ、格段に分かりやすく、興味深い書き口だった。曖昧模糊としていた室町幕府の姿がありありと迫ってきた。構造と生活、地政学的ダイナミズムがきっちり書かれている。
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<目次>
第1章 建武政権と南北朝の内覧
第2章 もう一つの王朝時代
第3章 南北朝・室町時代の地方社会
第4章 室町公方の理想と現実
第5章 動乱の始まり
<内容>
岩波新書日本中世史シリーズ第3巻、室町時代。記述がわかりやすく、ある程度日本史の基礎を知っているとすらすら読める。いわゆる日本通史の諸作を彷彿とさせる書き方。政治史は本当に基本を押さえた感じ。高校教員とかは必須かな? -
これ分かりやすいです。
公武の一体化と土地の所有をめぐる動きがよく分かる。武家の統領で、かつ公家社会に君臨する為政者の限界が室町幕府を混乱に追い込んだわけだ。半済を公家保護のためとする見方にはびっくりしたぞ。 -
南北朝の動乱期から短い室町王権期を経て戦国時代へと向かう時代の通史。……通史だが、最新の研究成果もふんだんに盛り込み、読ませる内容となっている。とくに第3章「南北朝期・室町時代の地方社会」は面白かった。現代に続く村の形、室町時代の荘園体制の再評価、活発におこなわれる遠隔地交易など興味深い記述が満載で勉強になった。
中世史最後の4巻も楽しみである。
著者プロフィール
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