日本にとって沖縄とは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315858

作品紹介・あらすじ

いま、日本政府は沖縄・辺野古に新たな巨大基地の建設を強行している。それは単なる基地建設の問題ではなく、戦後70年の日本、米国、そして沖縄の関係史の"到達点"として存在している。「構造的沖縄差別」を克服するために、どうすればよいのか-。沖縄現代史の第一人者が戦後の歩みを振り返り、本質を厳しく問う。

感想・レビュー・書評

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  • 書き方がクドいなと感じる。
    とは言うものの、分かりやすくまとめられてはいる。
    YouTubeなどで沖縄のことをざっと勉強してから読む方が効果的。

  • 借りたもの。
    沖縄の米軍基地反対の大衆運動を時系列でまとめた一冊。
    米軍基地反対姿勢の著者の思考一色で、公平さに欠ける。
    タイトルの「日本にとって沖縄とは何か」の答えが、どうやら「米軍基地負担の捨て石になっている」と言いたいらしい。
    矢部宏治『知ってはいけない』( https://booklog.jp/item/1/4062884399 )の沖縄地域限定版?

    その割には、沖縄の人たちの「本音」が見えない…というか、戦後75年以上たって、その意味も色々と移ろっているためだろう。
    沖縄だけ日本でなかった時。
    日本になっても米軍基地が残った時。
    本州と違って高度経済成長の恩恵を得られなかった時。
    米兵による婦女暴行事件……

    虐げられている、それらはすべて『米軍と日本政府のせい』と…他人のせいらしい。(先の戦争で日本軍は沖縄を見捨てたのだろうか?軍を派遣し、玉砕した…市民を守れなかった、という面もある)

    95年の米兵による少女暴行事件によって「沖縄は戦時中から日本政府・アメリカ軍によって虐げられている」という怒りが沖縄全島に広がった。
    そして2000年代からの流れ……

    米兵による犯罪検挙統計表(p.88)が掲載されているが、真ん中が95年まで累計で、番下の総計が72年からの総計だった。明らかに95年以降、米兵の犯罪検挙が減っているが、それは米軍側のコンプライアンス上昇もあるのではないか?それについて言及はされていない。
    米軍側も努力していると思うのだ……

    そういえばこの本、沖縄で起こった時系列はよくまとまっているけれども、米軍の軍事戦略についてや、日本の国防については一切触れていない。
    佐藤正久『高校生にも読んでほしい安全保障の授業』( https://booklog.jp/item/1/4847093690 )にも指摘されているが、現代でもし戦争が起こるならば、それは一対一の国同士で戦うことはないこと、複数国家が相互にけん制しあっていることが“安全保障”であることを加味してもいない。

    最も、この本が出版されたのは2016年。
    現在、中国の不穏な動きに神経を尖らせざるを得ない2021年。
    秋元千明『戦略の地政学』( https://booklog.jp/item/1/4863101864 )感想にも書いたが、2020年、中国が海警法の改正草案を公開。中国の管轄する(勝手にそう言っている)海域で違法に活動し、停船命令に従わない場合は武器を使えると明記した点を鑑みても、目と鼻の先である沖縄に、どうしても基地が必要になる。

    ずっと疑問に思っていることがある。沖縄の人たちが「戦争に負け、虐げられた」というならば「敗北する惨めさ」を良く知っている地域のはず。ならばそれに「対抗するにはどうするか」を考えるものではないのか?
    報道でも沖縄の人たちが「米軍の代わりに自衛隊を」と言っているとは聞かない。

  • 第1章 平和国家日本と軍事要塞沖縄(三位一体の占領政策―象徴天皇制・非武装国家日本・沖縄の米軍支配;サンフランシスコ体制の成立―「目下の同盟国」日本と「太平洋の要石」沖縄;「島ぐるみ闘争」の時代―それは砂川闘争の時代でもあった)
    第2章 六〇年安保から沖縄返還へ(六〇年安保改定と沖縄―構造的沖縄差別の定着;復帰・返還運動から沖縄闘争へ;沖縄返還とは何であったか)
    第3章 一九九五年の民衆決起(沖縄返還後の変化と住民・市民運動;一九九五年の民衆決起;普天間、そして辺野古をめぐる動向)
    第4章 「オール沖縄」の形成(教科書検定問題の意味するもの;政権交代・オスプレイ配備・埋立承認;尖閣問題への視点―先島諸島の状況)
    第5章 沖縄、そして日本は何処へ(二〇一四年の高揚;扇長県政と安倍政権の対峙;日本にとって沖縄とは)

    著者:新崎盛暉(1936-、東京、日本史学者)

  • 著者は1965年以降10年スパンで新書で沖縄現代史を振り返っている。国土の0.6%に米軍の75%が駐留しているのはどうしようもない現実だ。
    軍事的には要石なのかもしれないけど、明らかに日本は沖縄を捨石にしている。ゴミ処理場と同じで、必要だけど自らの近くにあることは拒否する。これは人間普遍のエゴなのかも。
    答えは持ち合わせていないけど、自らを反省させてくれる一冊だ。

  • 沖縄戦は明らかに本土決戦への時間稼ぎであり、沖縄の多くの住民が犠牲になりました。そして、どうしても昭和天皇の「沖縄メッセージ」が甦ってきます。米軍は沖縄占領と同時に住民を収容所に入れている段階で、広大な軍用地を接収し無償で使用しました。沖縄は日本国でありながら、戦争末期から今日まで日本国民から見捨てられた存在です。ですから、「辺野古新基地阻止を、集団的自衛権容認や新しい軍事基地建設による抑止力強化に抗う日本国民に突き付けられた眼前の実践的課題として捉えることが必要」という著者の主張が耳に痛い。

  • 2016年3月新着

  • 現在までの歴史を追っている

  •  困難な諸条件に包囲されるとき、疎外感を中央あるいは国家と一体化することで埋めようとする動きも現れる。そうした状況を利用し、地域の分断を図ろうとする政治勢力の介入も目立つ。自衛隊配備や教科書採択問題から見えてくるのは、そうした現実である。その際、尖閣問題=「中国脅威論」が最大限に利用される。(p.174)

     対話の道を遮断し続ければ、力による解決しか道はない。平和的な問題解決のためには、対話による説得、あるいは妥協が不可欠である。日中両国の対話の場に、沖縄と台湾という二つの地域を加えることは不可欠である。そのことによって領土ナショナリズムを相対化する糸口も見えてくる。
     日台漁業協定のような、国家による近視眼的暴挙あ避けられなければならない。それは逆に国境地域住民の友好関係を引き裂くことになりかねない。文化、経済、観光など、あらゆる面での交流を盛んにし、自己中心的で偏狭なナショナリズムを薄める努力をすることが必要である。その意味でも、先島と台湾だけでなく、沖縄県と福建省、那覇市と福州市などの交流の実績もある沖縄の役割は大きい。(pp.174-175)

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。東京大学文学部卒業、専攻は沖縄近現代史・社会学。沖縄大学名誉教授。
中野好夫主宰の沖縄資料センター研究員として沖縄戦後史を研究。沖縄大学教授を経て1989年まで同大学学長をつとめる。また石油備蓄基地反対闘争、一坪反戦地主会など沖縄の住民運動に参加。主な著書に『戦後沖縄史』(日本評論社)、『沖縄現代史』(岩波新書)など多数。

「2010年 『時代の求めにこたえて 武 建一対談集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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