南海トラフ地震 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315872

感想・レビュー・書評

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  • 1 地震本には、飽きたという人にも読んで欲しい一冊です。著者の山岡氏は、地震や火山現象研究の第一人者です。私が、本書を良いと思ったのは、“地震の仕組み・構造等は勿論、私達の行動基準を分かりやすく説明”している点です。大学教授の本の多くは、他文献の引用や一般人には理解困難な理屈論を書いています。それとは一線を画しています。
    2 さて、南海トラフは、東海地方から西日本太平洋側の海底の地形の名称です。南海トラフ地震とは、この駿河湾から四国沖まで延びる南海トラフで発生する巨大地震の事です。
    3 地震の仕組み等の科学的な内容は、本書に譲るとして、私達への具体的な示唆と私のコメントを少し書きます。
    ①いつ地震が起きてもよい様に事前対策をする ⇒ 避難場所の確認、自力で生き延びる為の水と食料備蓄、スマホの充電器、等。
    ②浸水深さが30cmになると、人が流される危険性がある、2mになると、木造住宅が被害を受ける目安 ⇒ 私は知りませんでした。
    ③観光シーズンで渋滞している時に地震が起きたら、車を捨ててすぐに高台に避難 ⇒ 第一に生命という事でしょう。私はドライブが趣味なので留意します。
    4 最後に、私の感想です。
    ①私は、阪神大震災発生時に車で早出出勤の途上でした。車体が大きく揺れ、追突されたと思うほどの衝撃だったと今でも忘れません。その後、神戸周辺の悲惨な映像を見て、言葉が出ませんでした。それを教訓にして、時々災害本をよんだり、防災品棚卸しをしています。
    ②日本列島周辺では、マグニチュード2以上の地震が1日平均550個発生しているそうです。地震がいつ発生するかは、予測不可能です。しかし、必ず発生します。個人・家庭は自力で生き延びるしかありません。心構えと出来る事をやりましょう。
    ③東日本大震災では、大人に比べ、小中学生の犠牲者が少なかった。大人は“これまで生きてきた”事から“この次の瞬間も生きている”という「連続のワナ」に陥り勝ちと、言われています。災害に対しては、「私は大丈夫」という意識は禁物と心に刻みましょう。

  • いつかは発生する大型地震。
    現代の科学ではいつ起こるか、どのくらいの規模の被害が出るか、など予想がつかない。
    あまりにも大きな危機であるため、普段の生活では、そのリスクを考慮外にしてしまうことが多い。
    そこで本書を読むことで、改めて自分ごととしてリスクを認識することができた。
    リスクは都市、住居地によって異なるので、自分の置かれている状況を再認識しよう。
    自助、共助、公助、この言葉はコロナ禍で知った言葉だが、まさにこれが大事。順番も大事。
    まずは自助できるように、準備を進めていこうと思う。
    まさに教養の1冊でした。

  • 災害対策の基本は自助。人生設計を行う中で正確な情報を適切に判断し、自らの責任で対策を行っておくことが必要であると感じた。

  • 南海トラフ地震のメカニズム、今後の発生確率の根拠、誘発される断層型地震、被害想定が丁寧にまとめられていて読みやすい。

    南海トラフ沿いの深さ40km以上の場所は温度が300℃以上で、ずれの速さが大きくなっても摩擦力が小さくならないため、境界面は常に一定の速度でずれ動いている。地震を発生させる温度の低い場所と常に動いている場所との間は両者の中間的な性質のため、プレート境界のスロースリップに伴う深部低周波地震が半年に1回の頻度で起きている。スロースリップは、その場所のひずみを解消するが、浅い側の巨大地震発生域にひずみを増大させる。

    浜名湖付近と豊後水道付近、紀伊水道付近では、プレート境界面が地震を起こすことなくゆっくりとずれ動くスロースリップが起きる。スロースリップが発生することによって、周囲のひずみは大きくなる。

    フィリピン海プレートは、紀伊半島の下では周囲に比べて深い角度で沈んでおり、プレート表面の摩擦力が強くずれにくい。潮岬を超えて地震が連動しにくいため、東は東海地震と東南海地震、西は南海地震と呼ばれている。

    南海トラフの地震は、繰り返し間隔が一定とする固有地震モデルの方が、地震発生頻度を一定とするポワソンモデルより当てはまるという研究結果がある。固有地震モデルを用いた今後30年間の地震発生確率は3%になるが、信頼性の高い宝永地震以降のデータを用いると25%となる。さらに、安政地震から昭和の地震まで90年と短いため、地震の規模とその次の地震までの間隔が比例する時間予測モデルを用いると、今後30年間の地震発生確率は70%となり、防災上の観点からこの確率が発表されている。

    地震は、発生頻度の対数がマグニチュードに比例して減少するグーテンベルグ・リヒター(GR)則というべき乗則に従い、マグニチュードが1増えると発生頻度は10分の1になる。この法則は固有地震モデルと相容れず、最大規模の地震は特別であるという考え方をとり入れなければならないが、議論は分かれている。

    過去の南海トラフ地震が発生する前の数十年間は特に近畿地方の地震が活発化し、南海トラフ地震が発生した後の10年程度は西日本内陸の地震活動が活発化している。プレートの沈み込みが進行するにしたがって、西日本の内陸にかかる力が増加するために発生しやすくなる断層と、巨大地震が発生した後にプレートを押していた力が抜けるために、活断層の割れ目を閉じる力が減ってずれやすくなる断層があると考えられる。

    津波による浸水の高さが30cmになると、人は倒れて流される。2mになると木造住宅が浮力で浮き上がり流される。被害を受けたライフラインのうち、電力は1週間でほとんどが回復するが、上水道や都市ガスは1週間後も6〜7割が復旧せず、95%復旧するまでに1か月から2か月かかる。LPガスの復旧時間は短い。携帯電話は、地震直後には8割程度の接続が可能。1〜2日後には基地局の非常用電源が停止するため、8割程度が利用不能になるが、1週間程度で9割以上の基地局が復旧する。

    巨大地震の前後には内陸の地震活動が活発化するとの研究結果は、地震の活動期の有無があると解釈でき、巽氏の見解とは異なるのかもしれない。プレートを押す力が増したり、抜けたりすることによって発生頻度が増えるとの説明の方に説得力があるように思う。

  • 「その日」は必ずやってくる!南海トラフ大地震が100年から200年の間に繰り返し起きてきたこと、想定される被害が膨大なこと、対策が急務なこと、が説かれ、わかりやすい説明に納得した。とにかく、事実を知ること、そして対策を練ることが大事だ。

  • 地震本部が行った計算によると、今後30年間における南海トラフの地震の発生確率は3パーセント程度。2015年は、昭和の地震から70年しか経過していないので、次の地震までの平均間隔の半分にも達しておらず、このような低い確率となる。ただし南海トラフにおける地震発生については古い時期ほど発生間隔が長い傾向にある。古い時期に発生した地震を見落としている可能性も否定出来ない。

  • ケータイスマホは基地局の電池が切れた後が使えなくなるかも。耐震性の低い建物地下街にいたら耐震性の高い建物の2階以上に逃げる。津波水深30cmで足をすくわれるリスク。2mで木造家屋が倒壊して流れる。ゼロメートル地帯は浸水に注意。倒壊して出られなくて溺死のリスク。通信手段充電用ラジオ照明付き手回し発電機はほしい。東南海対策としてはそれくらいかなあ。日本を出る、は確かに同意。

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