ホッブズ――リヴァイアサンの哲学者 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315902

作品紹介・あらすじ

「万人の万人にたいする闘争」に終止符を打つために主権の確立を提唱したホッブズは、絶対君主の擁護者なのか。それとも、人間中心の政治共同体を構想した民主主義論者なのか。近代国家論の基礎を築いたにもかかわらず、ホッブズほど毀誉褒貶の激しい哲学者はいない。第一人者がその多面的な思想と生涯を描いた決定版評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 西洋史についての知識が乏しくカタカナについていけず。。
    ホッブスの著書リヴァイアサンについて、市民の安全、生命の確保が第一の目的とされることを押さえる。
    ただただトップがふんぞり返ってしまうような、俺に従え、というような思想ではない。

  • 近代政治学の始祖として「自由・平等」という政治原理を提起し、「法の支配」の実現による国家形成を唱え、「個人」を基本単位とする政治学体系を構想した人物として紹介。尚、生涯をバランスよく説明することを重視したせいか『リヴァイアサン』への言及は少なめな印象。
    著者がホッブズに惚れ込み過ぎていて、やや中立性に欠ける部分もあるように思えるが、賛否両論あるその政治思想に対する、著者なりの回答は参考になるところもある。ただし、「あとがき」には疑問も残る。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706057

  • ホッブズの人となりや、同時期に活動した各分野の著名人、時代背景を学ぶことができ面白かった。基本的に著作/作品と著者の人となりは別のものととらえる方が良いのではないかと思っている(キースジャレットしかり)が、やはり著者自身を知ることでなんとなくわかったような気がしてしまうのも確か。改めてリヴァイアサンでも読み直そうかと思った。

  • 当時の社会情勢、ホッブズの生涯、その理論の内容、思想史上の受容について簡潔にまとまっている。
    彼は国王大権論を主張する王党派からはクロムウェルの支持者、制限・混合王政論に依る議会派からは絶対王政の擁護者として攻撃されたが、彼の真意はそのいずれにも依拠しない、民主的に平和を盤石ならしめる理論の確立であった。彼は「最初は王党派のために書き(『市民論』)、今度はクロムウェルのために書いた(『リヴァイアサン』)」と批判されたが、人間にとっての最高善たる自己保存をいかに保証するかという問題意識は一貫していたのである。

  • 「ホッブズ リヴァイアサンの哲学者」田中浩著、岩波新書、2016.02.19
    169p ¥864 C0231 (2021.09.14読了)(2021.09.05借入)
    「一般意志2.0」東浩紀著を読むためにルソーを何冊か読み、「一般意思2.0」を読みました。
    ルソーの『社会契約論』は、その前にホッブズやロックの著作があったので書くことができた。そこで、ホッブズやロックの著作を読んでみようと思ったけど、ホッブズの『リヴァイアサン』は、分厚そうなので、概要だけわかればいいかなと思ってこの本を読みました。
    ホッブズの著作は、同時代人には正しく理解はされなかったようです。政治や宗教にかかわる発言は、命にかかわることがあるので、わかりやすく明確に描くことはできなかったのでしょう。

    ホッブズ【Thomas Hobbes】(「デジタル大辞泉」より)
    [1588〜1679]英国の哲学者・政治思想家。自然主義・唯物論・唯名論の立場に立つ。政治論では、社会の自然状態を「万人の万人に対する戦い」ととらえ、人間は、相互に契約を結んで一つの意志に服従する必要があり、ここに国家と主権が成立するとし、絶対君主制を擁護した。著「リバイアサン」「哲学原論」など。
    (田中浩氏は、絶対君主制を擁護したわけではない、と言っています。)

    【目次】
    はじめに ホッブズとはだれか
    第一章 危機の時代の申し子、ホッブズ
    「危機の時代」や「変革期」に大思想家が現れる
    『自伝』とオーブリーの『名士小伝』
    幼年時代
    オックスフォード大学時代
    第二章 ホッブズ政治学の確立
    キャヴェンディッシュ家へ
    古典と歴史研究
    第二回・第三回の大陸旅行
     ほか
    第三章 近代国家論の生誕
    亡命第一号
    『市民論』の出版
    パリの亡命宮廷
     ほか
    第四章 『リヴァイアサン』の後衛戦
    帰国後の研究活動
    『物体論』と『人間論』
    ホッブズの交友関係
     ほか
    第五章 近代政治思想史上におけるホッブズの意義
    イギリスの「二つの革命」と民主主義思想の形成―ピユーリタン革命から名誉革命へ
    ハントン、ハリントン、ロック
    プーフェンドルフ
     ほか
    おわりに なぜいまホッブズなのか
    参考文献
    ホッブズ年譜
    あとがき

    ●生命の安全(ⅱ頁)
    ホッブズは、人間にとっての最高の価値(最高善)は「生命の安全」(自己保存)にあり、これを確保するためには「平和」が最優先されるべきであると主張していた。
    ●社会契約(ⅲ頁)
    ホッブズは、人間は生来、自由で平等な存在であり、普段は平和な「自然状態」に住んでいるが、そこにはまだ国家も法律も存在しないので、「危機状態」になると、人間は生きるために「万人の万人に対する闘争状態」を引き起こすことになる。これでは人間は「自然状態」において持っている「生きる権利」=「自然権」をまっとうできない。それゆえ、各人が「自然権」を放棄し、お互いに「力を合成」して「社会契約」を結び、「共通権力」を作る。そののち、契約に参加した全員の多数決によって代表を選出する。そして、この代表が選出された時点で初めて国家=コモンウェルスが成立する。

    ☆関連図書(既読)
    「一般意志2.0」東浩紀著、講談社、2011.11.25
    「社会契約論」ルソー著・桑原武夫訳、岩波文庫、1954.12.25
    「エミール(上)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1962.05.16
    「エミール(中)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1963.07.16
    「エミール(下)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1964.07.16
    「孤独な散歩者の夢想」ルソー著・今野一雄訳、ワイド版岩波文庫、1991.01.24
    「ルソー」桑原武夫編、岩波新書、1962.12.20
    「ルソー『エミール』」西研著、NHK出版、2016.06.01
    「読書の学校・ルソー『社会契約論』」苫野一徳著、NHK出版、2020.12.30
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「万人の万人にたいする闘争」に終止符を打つために主権の確立を提唱したホッブズは、絶対君主の擁護者なのか。それとも、人間中心の政治共同体を構想した民主主義論者なのか。近代国家論の基礎を築いたにもかかわらず、ホッブズほど毀誉褒貶の激しい哲学者はいない。第一人者がその多面的な思想と生涯を描いた決定版評伝。

  • 2016/06/01

  • 【人間の,人間による,人間のための】ロック,ルソーと並んで3人まとめて学校の授業で習った人も多いであろうホッブズ。『リヴァイアサン』を世に送り出し,絶対権力の擁護者として誤解される人物の新たな側面に光を当てる作品です。著者は,一橋大学で名誉教授を務める田中浩。

    ホッブズについていかに誤解していたかを痛感させられる作品。時代背景を通して、その著作や考え方だけではなく,生き様までも含めて立体的にホッブズが捉えられるようになっています。分厚い作品でもなく平易な物語りをしているため,政治哲学に慣れ親しみのない読者にもオススメできる一冊です。

    〜ホッブズは,政治学や国家論を論じるさいに「人間」を中心に置いている。〜

    入門書のお手本のような☆5つ

  • ホッブスに的を絞って書かれた新書というのはあまり見かけない。で手に取った一冊。ちなみに『今こそルソーを読み直す(仲正昌樹)』と同時進行で読んだ。
    ちなみに帯の「なぜリヴァイアサンを書いたのか」は「解説」されていないようにも見える。

    まずホッブスは「自己保存」という、進化論と歩調を合わせられると思われる主張が好き、自己保存を前提としての自由が法の支配を受け入れるという(まとめすぎか)のも、社会生物学から見ても受け入れやすい内容で、ごく自然な思想に自分には思える。

    生物学や人類学と一致させるのが困難な思想(レヴィ=ストロースあたりか)と違い、現代のサイエンスにもストンとはまっていく辺りは面白かった。

  • 著者:田中浩 (1926-)

    本体800円+税
    通し番号:新赤版 1590
    刊行日:2016/02/19 9784004315902
    新書 並製 カバー 256ページ 在庫あり

    「万人の万人にたいする闘争」を終えるために絶対的な権力の確立を提唱した国王主権論者なのか.それとも,人間中心の政治共同体を構想した民主主義論者なのか.近代国家論の基礎を築いたにもかかわらず,ホッブズほど毀誉褒貶の激しい哲学者はいないだろう.第一人者がホッブズの多面的な思想をあますところなく描いた決定版評伝.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b226375.html

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著者プロフィール

(たなか・ひろし)
1926年佐賀県に生まれる。1952年東京文理科大学文学部哲学科卒業。東京教育大学、一橋大学(名誉)教授などを歴任。法学博士。著書『ホッブズ研究序説』(御茶の水書房、1982)『長谷川如是閑研究序説』(未来社、1989)『カール・シュミット』(未来社、1992)『国家と個人』(岩波書店、1990)『日本リベラリズムの系譜』(朝日新聞社、2000)『20世紀という時代』(NHKライブラリー、2000)『ホッブズ』(岩波新書、2016)。訳書 ホッブズ『リヴァイアサン』(共訳、河出書房新社、1966)、シュミット『政治的なものの概念』(共訳、未来社、1970)、ホッブズ『哲学者と法学者との対話』(共訳、岩波文庫、2002)ほか多数。『田中浩集』(全10巻、未来社、2012-2015)。

「2022年 『ジョン・ロック伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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