学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
4.01
  • (36)
  • (28)
  • (28)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 519
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315964

作品紹介・あらすじ

「学び」とはあくなき探究のプロセスだ。たんなる知識の習得や積み重ねでなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出す。その発見と創造こそ本質なのだ。本書は認知科学の視点から、生きた知識の学びについて考える。古い知識観-知識のドネルケバブ・モデル-から脱却するための一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 本書は、「学びの探求人」であろうとするときに役に立つ材料として、人の記憶や思考の仕方、心と脳の中での知識のあり方、新しい知識の獲得の仕方などについて、認知科学で明らかにされてきたことを伝え、そこから「よい学び」を考えていくためのヒントを提供することを目的としている。本書では、「学び」とは、たんなる知識の習得や積み重ね(知識のドネルケバブ・モデル)でなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出すあくなき探究のプロセスであり、発見と創造こそがその本質であると主張される。
    本書におけるキー概念の一つである「スキーマ」という概念が特に勉強になった。「スキーマ」とは、行間を補うために使う常識的な知識のことであり、子どもの母国語の習得の過程でも重要な役割を果たしているという。学びを通してある分野で熟達していく上で、誤った知識を修正し、それとともにスキーマを修正していくことが重要であるという指摘は心に留めておくべきことだと感じた。
    子どもの母国語の習得の過程の解説も非常に興味深かった。生まれたときには乳児は自分の母国語になるはずの言語はもちろん、それ以外のすべての言語で使われるすべての音素の違いを識別できる能力を持っているといった事実は驚きだった。ただ、どの子どもも自然と母国語を習得できる(一方で大人になってから外国語を習得するのが困難になる)メカニズムが十分に理解できたとはいえないので、さらに詳しく知りたいと思った。

  • 筆者は「覚えた事実の量」で知識があると思ってはいけないと説く。つまり本当に大事なのは「生きた知識」でなければならないのだ。ではどうすれば獲得できるかといえば「自分で発見する」ことが大事だそうだ。
    私たちは自分が観察したり経験を自分なりにつじつまがあうように理解したいという強い欲求を持っている。その結果「スキーマ」という経験則のようなものが産まれる。スキーマは直感的につくり上げた「思い込み理論」というべきものである。人は、このスキーマによって判断を間違えることがある。つまり起こる現象を色眼鏡で見てしまうのだ。だから、自分が持っているスキーマを常に点検する必要があると著者は力説している。
    思い込みの強い人にはオススメだ。

  • 登録数やレビュー数が多いので、こちらにびっくり。
    まだまだ「学ぶ」に日本人は関心が強い。
    読みやすかったし、若い著者でもあるので「バレエ」とか「ダンサー」とかも出てきて、ちょっとうれしい。

  • 個人的に良書。英語教育を例にとって説明しているくだりは学びの本質をついていてとても分かり易い。多くの事を知ることも重要だが、一つの事を突き詰めていくことも新たな学びをつくる。才能も学びが作る、新たな考え方を吹き込んでくれる1冊。

  • まさに同じ、「学びとは何か」について日々悶々としていた所で、本書にドキドキさせてもらった。
    時間がないという人は、第6章以降でいいので読むといいと思う。
    きっと同じ問いを抱えている人には、何かが整理されて見えるはずだから。

    私が抱えていた問いは、学校教育における学びの揺れだった。
    考えること、と、覚えることのズレ。
    たくさん量をこなし、問題を解き、身に付けば点数になるじゃん、という考え方への違和感だった。

    第6章では、論理的思考力・批判的思考力ということばから始まる。

    事実を覚えることが知識であるという思い込み。
    そこで、事実として切り取り可能な断片を頭の中にどんどん貼り付けてゆく。
    そのことを本書では「ドネルケバブ・モデル」と呼んでいる。

    そうではなく、知識とは可変的システムである。
    そうでなければ、「使える」ようにならない。
    そこには暗記をする上でも意味合いや精査、解釈の方を重要視する。

    「批判的思考とはつまり、前項で述べた科学的思考と基本的に同じで、ある仮説、理論、あるいは言説を、証拠にもとづいて論理的に積み重ねて構築していく思考のしかたのことを言う。」

    「豊富で精緻な知識を持っていれば直観の精度は上がり、「ひらめき」になる。知識がないところで直観に頼れば、「あてずっぽう」になってしまう。」

    探究心を育てるためには粘り強さも必要だと述べる。これも、非常に納得させられた。

    「学校は「知識を覚える場」ではなく、知識を使う練習をし、探究する場となるべきた。知識を使う練習とは、持っている知識を様々な分野でどんどん使い、それによって、新しい知識を自分で発見し、得ていくということである。それこそがアクティヴ・ラーニングの本質である。」

    そこには子どもだけでなく、大人の姿勢、そして大人がどう子どもに教材を提供し、調理させるかが重要だということも忘れてはならない。

    また、もう一つ。
    「大事なことは、一人で考えることをおろそかにしないことだ。」
    もちろん、グループワークへの批判ではない。
    タイトルには「人と一緒に、人を頼らずに」とある。

    この一冊は、私がずっともやもやしていた、どっち付かずの問いに、明瞭な道を示してくれたものだった。きっと、何度も触れることになるだろう。
    心から感謝したい。

  • 子どもの母語獲得の過程の解説は大変興味深い。
    母語を獲得するが故に、外国語の習得が制限される。これは腹落ちしやすい、普通の論理展開だと思うが、解説は丁寧。
    一方で何ヶ国語も操る人も多いので、このメカニズムは別に興味深いが、本著では特に説明なし。

    全編を通じて著者の教育への真面目な思いが伝わる。

  •  子供は、新しいことばを覚えると、そのことばをさらに新しいことばの意味を推測するために使う。また、すでに知っていたことばの意味の修正にも使う。子どもはひとつの単語の意味を考えるとき、単語はいつも他の単語と関係づけられるものだと意識している。言い換えれば、子どもは小さい時からすでに、単語は語彙というシステムの中の要素であることを理解している。その上で、新しい単語を聞くたびに、そのシステムの中で整合性がとれるように単語の意味を理解しようとしているのだ。(p.58)

     人が科学や外国語を学び、熟達していく上で大事なことは、誤ったスキーマをつくらないことではなく、誤った知識を修正し、それとともにスキーマを修正していくことだ。(p.93)
     「学ぶ」ということは、あることに熟達し、達人の道を歩んでいくことである。その道を歩んでいく上で、スキーマを作ることは欠かせない。たとえ誤っていても、知識のシステムを素早く立ち上げるためにスキーマをつくる。しかし、スキーマが誤っている場合には、その誤ったスキーマを乗り越え、新たなスキーマをつくり直す過程を踏まなければならない。(p.94)

     物理の熟達者の問題の解き方をひとことでいえば「自由自在」あるいは「臨機応変」だろう。この背後にあるのは、問題を読むと一瞬で「何が大事かわかる」という本質をつかむ力だ。一瞬で「本質がわかる」というのは、状況を一瞬で把握し、解くべき問題がなにか、そのために何をするべきかがわかるということだ。(p.103)

     世界は客観的に存在しても、それを視る私たちは、知識や経験のフィルターを通して世界を視ているのである。聴くこと、視ることは私たちがもっとも多くの情報を得る経路である。聴いて記憶に取り込まれた情報、視て記憶に取り込まれた情報が、「解釈されたもの」であるとしたら、それを基盤に習得される知識もまた「客観的な事実」ではありえないのだ。(p.153)

  • 【夏の読書 2冊目】
    ✔️知識とは何か?

    ✔️知識のシステムを構築する

    ✔️探求人を育てる

    認知科学の視点から「学び」について書かれた本。「主体的な学び」に携わる者として大きなヒントをいただきました。さて、どうしよう。

  • 認知科学の視点から見る学び。
    まず著者は知識には大きく五つの種類があるとし、それらについての特徴や違いについて言及する。自分の身につけたい知識はどのような知識なのかをまじ見極めることが大事なのだと感じた。
    断片的な知識でなく、知識システムを作り、それを常に本当に正しいものなのか問いかけ修正していく。主体的に学ぶ。

    何度も読み直したい

  • 実用的でもあり、科学と教育、仕事術などのいいとこ取り。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学科教授。1989年、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。1994年、ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。専攻は認知科学、言語心理学、発達心理学。主な著書に『ことばと思考』『学びとは何か』(共に岩波新書)、『言語と身体性』(岩波講座コミュニケーションの認知科学第1巻〔編著〕)、『言葉をおぼえるしくみ――母語から外国語まで』(ちくま学芸文庫〔共著〕)、『新 人が学ぶということ――認知科学論からの視点』(北樹出版〔共著〕)がある。

「2017年 『科学が教える、子育て成功への道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)のその他の作品

今井むつみの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
リンダ グラット...
みうら じゅん
村田 沙耶香
有効な右矢印 無効な右矢印

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする