学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 1057
感想 : 73
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315964

作品紹介・あらすじ

「学び」とはあくなき探究のプロセスだ。たんなる知識の習得や積み重ねでなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出す。その発見と創造こそ本質なのだ。本書は認知科学の視点から、生きた知識の学びについて考える。古い知識観-知識のドネルケバブ・モデル-から脱却するための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • こんなに堅そうなテーマ、かつ堅い岩波新書…にも関わらず、
    高評価なこの本は、教育に興味があれば、読まずにはいられません。

    認知科学(これがどんな学問なのか、正確には理解していないのだけれど…)の専門家である著者が「学び」について論じた本。
    特にこれからの「学び」は大人も子供も「探求」だ、と言っていて、
    最後の章が個人的にはとても自分の価値観・考えとも合って、心地よい。

    どうやら著者は外国語の学ぶプロセスを研究している方らしく、
    学びの過程を外国語学習の過程になぞらえて説明してくれているのだが、
    本当にそれでよいのかは、素人なのでしっくりこなかった。

    それでも、これからのあるべき教育を語ってくれている良書だと思います。

  • まさに同じ、「学びとは何か」について日々悶々としていた所で、本書にドキドキさせてもらった。
    時間がないという人は、第6章以降でいいので読むといいと思う。
    きっと同じ問いを抱えている人には、何かが整理されて見えるはずだから。

    私が抱えていた問いは、学校教育における学びの揺れだった。
    考えること、と、覚えることのズレ。
    たくさん量をこなし、問題を解き、身に付けば点数になるじゃん、という考え方への違和感だった。

    第6章では、論理的思考力・批判的思考力ということばから始まる。

    事実を覚えることが知識であるという思い込み。
    そこで、事実として切り取り可能な断片を頭の中にどんどん貼り付けてゆく。
    そのことを本書では「ドネルケバブ・モデル」と呼んでいる。

    そうではなく、知識とは可変的システムである。
    そうでなければ、「使える」ようにならない。
    そこには暗記をする上でも意味合いや精査、解釈の方を重要視する。

    「批判的思考とはつまり、前項で述べた科学的思考と基本的に同じで、ある仮説、理論、あるいは言説を、証拠にもとづいて論理的に積み重ねて構築していく思考のしかたのことを言う。」

    「豊富で精緻な知識を持っていれば直観の精度は上がり、「ひらめき」になる。知識がないところで直観に頼れば、「あてずっぽう」になってしまう。」

    探究心を育てるためには粘り強さも必要だと述べる。これも、非常に納得させられた。

    「学校は「知識を覚える場」ではなく、知識を使う練習をし、探究する場となるべきた。知識を使う練習とは、持っている知識を様々な分野でどんどん使い、それによって、新しい知識を自分で発見し、得ていくということである。それこそがアクティヴ・ラーニングの本質である。」

    そこには子どもだけでなく、大人の姿勢、そして大人がどう子どもに教材を提供し、調理させるかが重要だということも忘れてはならない。

    また、もう一つ。
    「大事なことは、一人で考えることをおろそかにしないことだ。」
    もちろん、グループワークへの批判ではない。
    タイトルには「人と一緒に、人を頼らずに」とある。

    この一冊は、私がずっともやもやしていた、どっち付かずの問いに、明瞭な道を示してくれたものだった。きっと、何度も触れることになるだろう。
    心から感謝したい。

  • 学ぶということは、どういうことなのでしょう?
    多くの知識を記憶すること?
    知識とは何?
    これらの問に正面から向き合っているのが本書である。
    本書に登場する大事な言葉「スキーマ」の概念を抜粋しておく。
    このスキーマを理解し、自分自身が持っているスキーマが何かを意識することで学び方が見えてくるのだ。

    以下抜粋
     私たちは日常で起こっている何かを理解するために、常に「行間を補っている」。実際には直接言われていないことの意味を自分自身で補いながら、文章、映像、あるいは日常的に経験する様々な事象を理解しているのだ。行間を補うために使う常識的な知識、これを心理学では「スキーマ」と呼んでいる
    抜粋終わり

    母国語を学ぶ子どもたちが、どのように言葉を理解し使いこなしていくのかを紐解きながら、学ぶこととはどいうことかを考えていく。
    著者の最新作『英語独学法』でもスキーマについて触れており、本書を読むことで更に理解が深まった。

  • 『学びとは何か』

    1.生きた知識とは、状況認識&処理を高めるものである。

    2.生きた知識とは、自分で見つけるのみである。

    3.一流は、ロールモデルをみつけ、自身との差異を認識している。
    →差異の範囲を認識。
    →学ぶ目的を決定。
    →そして、学ぶ を 踏み出す。

    4.知識があるから、バイアスがかかり、結果、破壊再生の繰り返しとなる。

    社会人となり、改めて学ぶ目的を考えている。
    受け身ではなりたたないから。

    そう、生きた知識が欲しいんだと気づいた。
    さらに、それは僕がやることで、決めることなのだと気づいた。

  • 認知科学の視点から言語習得過程をベースとして書かれているのでスタンスに偏りがあるようにも思えるし、「天才」とか「才能」というキーワードを持ち出して、結果論からアレコレ論じている部分もあって全体的に論点が発散しており、まとまりがなく、問題提起に終わっている印象。最後は教育論になってしまっているし。「学ぶこと」は「知識を得ること」という「知識偏重」の否定の否定?に関しては同意。
    著者の立場からは天才や才能は「遺伝的に決定しています」とは言えないので、「努力とか根性とか慣れ」という要素を重視してしまうのは仕方ないか。そもそも母国語習得に遺伝は関係ないし。
    参考になる部分はあったが、本書からは「学び」を語る難しさを思い知らされた。(これも学びか?)

  • 子どもの母語獲得の過程の解説は大変興味深い。
    母語を獲得するが故に、外国語の習得が制限される。これは腹落ちしやすい、普通の論理展開だと思うが、解説は丁寧。
    一方で何ヶ国語も操る人も多いので、このメカニズムは別に興味深いが、本著では特に説明なし。

    全編を通じて著者の教育への真面目な思いが伝わる。

  • 知識とは覚えた事実を積み重ね増やしていくことだというエピステモロジーから脱却し、常にダイナミックに変動していくシステムであると理解すること

    スキーマについて解説してあるので、英語独習法と合わせて読むのがおすすめ

  • 「英語独習法」(今井むつみ)に紹介されている「スキーマ」だとか「学び」について著者がじっくりと考えながら自分の考えをまとめた一冊。
    知識の詰め込みではダメだ、もうググれば何でも分かるんだから覚える必要はないでしょ、これからはアクティブラーニングだとか言われても、そんなこと言ったって基礎的な「知識」が身について無けりゃ何を学ぶと言うのだ、という教育現場の疑問と混乱。昔の偉人を見れば幼少時の「論語の素読」が重要なんだ、といった保守派の主張まで飛び出す昨今。
    そもそも「学ぶ」とはどのようなことなのか、「知識」を身につけることとは違うのか、その本質について「認知」の観点で研究する専門家が、こどもが言語を獲得していく過程に関する自身の研究成果や脳科学の知見も交えて本書で解説してくれている。
    知識を短期的に脳に記憶すること、長期的に保持すること、そしてそれらを生きた知識として使えるようにすること、それらの違いを理解して、「学ぶ」ということが何なのかを理解する必要がありそう。単に試験を乗り切るだけならいわゆる一夜漬けで何とかなることはあっても、本当に知識を身につけ、自分の体に覚えさせて使えるようになるには、何度も何度も使うことが必要ようだということは、それなりに生きていけば誰もが分かっていることだと思う。そして「学ぶ」ための近道は無く、何ごとも体験し、調べ、使って、実践し、修正する、ということを何度も繰り返しながら、知りたいことを「探究」し、自分(の脳)というシステムをアップデートしていくことが必要だということ。AIでも、賢くしていくのには大量のデータ(知識)を与え、訓練して、修正していく作業が継続的に必要だ。コンピューターならその作業の時間は比較的短いかもしれないが、人間では時間が掛かる。そう言うことだろう。

  • 本書は、「学びの探求人」であろうとするときに役に立つ材料として、人の記憶や思考の仕方、心と脳の中での知識のあり方、新しい知識の獲得の仕方などについて、認知科学で明らかにされてきたことを伝え、そこから「よい学び」を考えていくためのヒントを提供することを目的としている。本書では、「学び」とは、たんなる知識の習得や積み重ね(知識のドネルケバブ・モデル)でなく、すでにある知識からまったく新しい知識を生み出すあくなき探究のプロセスであり、発見と創造こそがその本質であると主張される。
    本書におけるキー概念の一つである「スキーマ」という概念が特に勉強になった。「スキーマ」とは、行間を補うために使う常識的な知識のことであり、子どもの母国語の習得の過程でも重要な役割を果たしているという。学びを通してある分野で熟達していく上で、誤った知識を修正し、それとともにスキーマを修正していくことが重要であるという指摘は心に留めておくべきことだと感じた。
    子どもの母国語の習得の過程の解説も非常に興味深かった。生まれたときには乳児は自分の母国語になるはずの言語はもちろん、それ以外のすべての言語で使われるすべての音素の違いを識別できる能力を持っているといった事実は驚きだった。ただ、どの子どもも自然と母国語を習得できる(一方で大人になってから外国語を習得するのが困難になる)メカニズムが十分に理解できたとはいえないので、さらに詳しく知りたいと思った。

  • 筆者は「覚えた事実の量」で知識があると思ってはいけないと説く。つまり本当に大事なのは「生きた知識」でなければならないのだ。ではどうすれば獲得できるかといえば「自分で発見する」ことが大事だそうだ。
    私たちは自分が観察したり経験を自分なりにつじつまがあうように理解したいという強い欲求を持っている。その結果「スキーマ」という経験則のようなものが産まれる。スキーマは直感的につくり上げた「思い込み理論」というべきものである。人は、このスキーマによって判断を間違えることがある。つまり起こる現象を色眼鏡で見てしまうのだ。だから、自分が持っているスキーマを常に点検する必要があると著者は力説している。
    思い込みの強い人にはオススメだ。

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は発達心理学、認知科学。著書に、『ことばと思考』『学びとは何か』(岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)、『言葉をおぼえるしくみ』(ちくま学芸文庫)などがある。

「2020年 『親子で育てる ことば力と思考力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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