水の未来――グローバルリスクと日本 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315971

感想・レビュー・書評

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  • 平成30年度全日本高校模擬国連大会書類選考の課題図書。平成29年度と30年度で合わせて10校近くが入試の国語や小論文で使っている。確かに良書。もともとローカルな資源である水がなぜグローバルリスクとなるのか、バーチャルウォーターのデータとしての意味合い、SDGとの関連、気候変動のその他の諸問題も含めての緩和策と適応策など、多岐にわたる分野の理解が一気に進む感がある。水問題とはどこかの誰かの水を奪って先進国が使いすぎている、ではなく、社会的基盤の不足と看破、言い切る説得力。

    「日本における水分野の適応策」で述べられていることはこの夏の西日本豪雨で、地方自治体が作った浸水マップと岡山県真備町の被害状況がほぼ一致していたことや、大雨の際の行動リストを住民が共有していた愛媛県大洲市の一地区では犠牲者が出なかった事象などと見事に符合する。

    8月31日日経新聞電子版「渇水リスク、企業に危機感 世界的猛暑で使用量削減へ」では企業が水削減努力を特に水不足リスクの高い国にある自社工場から始めるなどの取り組みが紹介されており、この本に書かれてある研究機関や専門家の研究調査結果が企業の戦略に活用されていることが伺われる。

    同じく最近他紙でも水害リスクに対する適応策がハード面とソフト面に分けて詳しく特集されていた。

    2016年出版。タイムリーなトピックのタイムリーな出版。タイムリーに読めて良かった。

  • ◆「水」。日本において自覚しにくい水問題は、環境問題・地球温暖化問題との関連と共に、これらに積極的にコミットしようとする多国籍企業の関心を呼んでいる。その実際を、現実的解決を考慮しつつ広範に叙述する◆

    2016年刊。
    著者は東京大学生産技術研究所教授。

     水。地球上に無尽蔵に存在しているかの如き「水」であるが、大半は海水=塩水であり、農業・工業用水や、飲料水としても不適である。山岳が多く、周囲を海で囲まれた温帯地方にある日本の場合は、利用可能な水資源が豊富で、また保水に適しており、「水問題」はなかなか自覚しにくいが、水の持つ貴重さは、将来、石油に匹敵するのではないかとの見解もあるくらいである。

     その水が危機に瀕している。それは人口増に伴う使用過多、温暖化現象に伴う渇水、使用に伴う汚染を除去する技術・機器の配置が限定的などに依るものだ。
     しかも、汚染水の浄化、温暖化対策、人口増加という問題は、エネルギー問題(特に化石エネルギー)、食糧問題と大きく連関し、相互関係は密である。

     本書は、「水」という定点から、環境問題・地球温暖化問題の解決の方向性を探り、あるいはこれまでの取組を子細に検討することを踏まえ、緩和策と適応策の両面を共に重視することで、水問題の将来像を開陳しようと試みる。

     もともと水の戦略的重要性は言われて久しく、国際河川における流域国間の緊張関係は、過去連綿と続いてきたものだ。
     ただ、本書が類書と異なるのは、
    ➀グローバル企業がその問題に気づいた点。
     その重要性(=水問題や環境問題の改善が、途上国の経済発展を促し、商売を広範囲に展開し、それを持続させることを可能にする)を認識し、自らそれにコミットしようとしている点。つまり外部コストの内生化に熱心だとの指摘である。
     俄かに信じがたいが、ダボス会議などで環境問題を熱心に議論しているのも確か(新商売のタネでもある)だ。
     また、➁水問題は、海水の淡水化技術の実行など、エネルギー問題と密に関わるとの指摘。
     あるいは、➂仮想水貿易(間接水貿易。食糧や工業製品の生産過程で水を使用しているので、それらの輸出は水の輸出と同義)。これらを総合的・相補的に考える必要性の中で、温暖化問題や地球環境問題に関する従前の取組とその長短を、現実的な視点で回顧している点だ。
     パリ協定に至るCOP(締約国会議)の流れを概観した書は、水問題に関する書では初めてである。

     ところで、緩和策(温暖化問題における温室効果ガスの削減)と適応策では、どうしても適応策(温暖化に伴う洪水被害を軽減する堤防建設など)に偏りがちであり、両面追求と言いながら、実は適応策にシフトした叙述ぶりは狡いとは感じる。
     ただ、例えば、石炭火力発電を重視し、経済発展を目指す国(例ポーランド)。ここに対して、他のエネルギー、再生可能エネルギーに転換せよとは容易には言い難く、実効性も乏しい。先進国のエゴと言われかねないからだ。
     こういう観点から見ると、次善の策としての適応策を完全に否定し、捨て去るというのも座りが悪いところではある。正直悩ましく、未だ結論は見えてこない……。

     そんな悩みを生む読後感である。
     なお、温暖化問題の国際間協議の過程を水問題に絡める観点は、本書に特異で、買いの部分である。

  • 水は量ではなく、質を使う。というのは印象に残りました。水危機というのは、水が量的に枯渇するものをなんとなくイメージしてましたが、質的に使用可能な水がなくなることもカウントされるんですね。また、循環資源なので、次のサイクルを待たずに汲み取り量が多いと、地盤沈下などが、起こるとのことです。地下水のサイクルは1000年らしいので、まぁ深刻。

    他には環境問題としての水問題にも広く言及されてました。

  • 推薦者 バイオ環境化学科の教員

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB50108022&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 水の単価は安い?
    水の国際価格は決められない?
    環境問題
    ウォーターフットプリント?

  • 水の未来 沖大幹著 危機の実態を科学的に整理
    2016/6/5付日本経済新聞 朝刊

     現代は「水危機」に直面しているといわれる。日本では意識することが少ないが、貧困国を中心に安心して飲める水が十分に得られない人々も多い。水資源は農業生産に直結し、食料安全保障を考えるうえでも重要だ。地球温暖化は利用可能な水の量に影響を及ぼし、地域によっては洪水や干ばつのリスクが増す。







     地球表層の水は循環しており数万~数十万年間は総量の変化はないと考えてよいという。では、なぜ「水は希少」なのか。水の価格が石油のように高騰し、世界経済を動かす事態はありうるのか。本書はこんな疑問に答えつつ知的好奇心を満たしてくれる。


     同時に、水資源の利用が環境に及ぼす影響を把握するのに役立つツールなど、ビジネスと関係の深い話題も提供する。水、エネルギー、食料は密接に結びついているため、これらを必要なだけ使えない状態を解消するには、3つを一体として改善する必要があるという主張はうなずける。


     本書を貫くのは、水を通して持続可能な社会、経済、環境を実現するにはどうしたらよいのか、という真剣な問いかけだ。著者自身は悲観論にも楽観論にもくみせず、読者が考える際に参考になる科学的な視点やデータを整理して示す。答えを見つけるのは容易ではないが、重要なヒントがいくつも盛り込まれている。(岩波新書・780円)

  • 2016年4月新着

  • 『水危機ほんとうの話』が基礎編であるとすれば、本書は応用編。
    水文学の王道というよりも学際的現代的な話題が多く、むしろ特定のトピック、それも、Water Footprintとか気候変動といった最近の沖先生の得意政策分野に偏っているところがある。

    逆にいえば、Water Footprintの国際標準(ISO)化や、気候変動に関するIPCC第5次報告書の内容について、日本語でかつ簡潔にまとめられた文献としては唯一無二であると考えられる。
    なのでそうしたことに関心を抱いて読むのであればニーズにマッチするであろうと思える。

    但し、いわゆる水文学だけでなく社会科学も若干かじっているらしく、その辺も見せつけているかのような記述になっているのは、かえって軽薄にさえ感じてしまう。
    「執筆によって専門家になるのだ」とは言い得て妙かもしれないが、そんな風に開き直らず、得意なアプローチで得意なことを書くことにしぼって、かつもう少し偏りなく書いてくれたらよかったなと思った。

  • 水は質の利用であると書かれていて、最初、へっ?と思いました。よく考えるとその通り。
    一軒の家で水洗トイレの水を浄化して、すぐに飲み水に利用できるだけの技術はあるとのこと。
    心理的抵抗感を持つ人はいるだろうけれど、そのようなシステムがあれば、インフラ管理はかなりらくになるのでは。

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