- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004316169
感想・レビュー・書評
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同著者の『見えないアメリカ』とセットで読了。トランプによって表面化したアメリカの分断を知りたくて購入。
民主党が元々は農村地盤の党だったけど都市部の移民とニューディールで支持を拡大したこと、1960年の公民権運動、反戦運動、女性の権利運動等がぶら下がり支持が割れたこと、などの民主党の支持基盤の推移が分かりやすかった。
教会って保守のイメージだから昔から共和党支持なのかな、と思っていけれど、本来は貧困や平和など民主党との親和性が高い一方で、中絶問題によって相容れず距離が離れてしまうことが説明されていて、なるほどと思った。
承認の政治という言葉もこの本で初めて知った。マイノリティが自分たちの存在を認めさせる/政府が認めることに重きをおいた政策で、1960年代に公民権運動を中心に民主党が傾斜、行き過ぎて共和党に支持者が流れるきっかけにもなった。
この辺を本書では砂田一郎氏の理念の政治と利益の政治という対比を使ってうまく説明している。理念の政治を大きな政府不信など政治理念を強調して自らの階層的利益に反した投票行動を取らせ支持層を広げる政治手法と定義しているのは複雑な集団を支持層に抱える現状を示していて面白い。
各論として、オバマだからこそ人種問題には踏み込めなかった、マイノリティよりマジョリティ側から歩み寄った方が実現しやすい、というのも納得。
とそれぞれ面白い点はあったものの、とにかく議論がとっ散らかって読みにくいので星3つ。両書ともに主張のある本ではなくこんな分断もあるんだよという紹介だからしょうがないとこもあるが、章はおろか節毎にも主題がなくてほいほい事例が飛び交う、段落ごとに脈絡が無い、と読んでて筋を追いにくいところばかりだった。ジャーナリスト出身であり取材相手や知人の対談を話をふんだんに載せているのは具体例にもなって大変良いのだけど、このまとまらなさは何とかならんかったのか。あとシカゴで学んだからってミアシャイマーばかり持ち出すのは、、かなり極端なリアリストだったと記憶しておりあまり主流派の紹介にならないのでは。そういった意味でも自分の経験の範囲に引きずられる部分が多く入り込めないところがあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は主に、オバマ政権の政策を巡る迷走について、共和党及び民主党内に存在する「利益の民主制」と「理想の民主制」の間の矛盾という観点から考察している。
アメリカは日本と同盟国で民主的価値を共有する国でありながら、その政治構造は全然知らないことだらけで、アメリカの政策決定の背景に多くの利害関係者の利害が絡んでいることが何となく理解できた。
インタビュー形式の語りが多く、文章にあまり馴染めなかったが、アメリカ政治で疑問に思っていたことが複数解決できたので良かった。
以下、備考
・【p.4】(誤植?)「党によっては」でなく「州によっては」では?
・【p.6】合衆国の政治的な意思決定を理解するには、権力分散と選挙の2つに注目するのが重要
・【p.8】政権運営の成否や選挙の勝敗は、「玉」(候補者の資格・経験・物語)、「風」(勢力図、世論、政治経済といった環境)、「技」(周囲の支える人材)
・【p.10】アメリカ文化をめぐる究極の「壁」は人種でなく信仰
・大統領選は、政策手腕を問うてるのではく、文化的象徴を体現する人間(その家族)を判定する選挙
・【p.32】「理念の民主制」と「利益の民主制」
・【p.83】壁の1つは「雇用」
・【p.97】壁の本丸は州の利害調整
・【p.136】一般的にアメリカでは、政権の外交は3つのアクターの影響を受ける。第一に大統領本人の思想、第二に大統領に近い側近(政策を内政の視点から篩にかける役割)、第三に外交・安保・経済などの政策エリート及び軍
・【p.138】オバマはリビアに介入するも、在ベンガシ米総領事館への襲撃があったことで、介入に消極的に
・【p.140】生物化学兵器や核兵器の実際の使用は人道的に許せないというコンセンサスがアメリカには強く存在 -
民主政を二つに分けて論じており、納得感ある。
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大きな期待とともに始まったオバマ政権は,いつの間にかフツーになった。トランプ氏は?
アメリカ政治のややこしい背景について書かれています。 -
【つぶやきブックレビュー】1/20、新大統領就任ですね・・・
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アメリカ政治の特徴をわかりやすく解説している作品。
理念の政治vs.利益の政治に加えて同じリベラル内・保守派内で対立しているうえに、その立ち位置が分極化している。 -
主にアメリカの近年〜現代民主党からみた政治のあり方であるが、大変興味深く読んだ。利益の民主政と理念の民主政という二つの政治志向の間で揺れ動くアメリカ政治がわかりやすく解説されている。今回の大統領選挙予備選でもわかったことだが、民主党・共和党支持者共に一枚岩ではないのだなということがよくわかった。トランプとサンダースは同じ現象だったのだ。自分達は虐げられているという思いを抱く層がアメリカには、アメリカにも多くなっているという事だろう。
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今年のアメリカ大統領選挙は、今までになくいろいろなスキャンダルが出ている。トランプの場合、女性問題、移民に対する態度、税金問題など。ヒラリーの場合、国家機密を自分のEメールを使ってやり取りをしていた問題、クリントン財団に関する問題など。劣悪な候補の中でどちらがまだましかというレベルの選び方をする人も出てくる。
選挙は11月9日(日本時間だと10日)に行われる。どれだけの人がトランプに投票するのか、そして第3政党の候補者にどれだけの票が流れるのか気になるところだ。
アメリカ政治は、共和党が掲げる小さな政府で保守と民主党が掲げる大きな政府でリベラルと言われるがいろいろ入り組んでいてそう簡単に区分けできない。
サブタイトルが「利益と理念の狭間で」とあるように、揺れ動いてきているアメリカ政治。今回は、どちらの方に票が動くのか。後、わずかしかないがアメリカ政治について知っておくのもいいだろう。 -
我々が今問うているのは、政府が多きするか小さすぎるかではなく、役に立つかどうかということだ。
アメリカはまだマッチョ信仰が強いから、女性大統領が核兵器のボタンを押すには許せないという男性有権者が多い。
じぇぶブッシュで決まりというメディアの報道があったので、もうイラク戦争という間違った戦争の家系から大統領を出したくなかったので、伝統的な共和党ではない、非政治家家系の候補を求めていた、それで出て来たのがトランプ。