日本の一文 30選 (岩波新書)

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著者 : 中村明
  • 岩波書店 (2016年9月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316206

日本の一文 30選 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 一流作家30人の一文が見出しとなっており、豊富な名表現を味わいながら、楽しく読むことができた。
    伝統的に日本語表現は、細かく規定しない、相手の想像力に期待する、いわば曖昧さが文章の骨法だということが理解できる。
    また、一流作家たちの文章が、如何に練って考えられた末の表現であることか、改めて認識し感動すら覚えた。
    それにつけても、最近の次々と毎月のように刊行される書下ろし(書きなぐり?)小説を何としよう。

  • タイトルに惹かれて買ってみた。作家の裏話などもあり面白いところもあるのだが、文体学的に解説しているせいで情緒的ではなく、感動とは程遠く感じる。文体が優れているから感動するのではなく、その文章が琴線にふれるから感動すると思うのだが。まあ、どの文章に感動するかは人それぞれなので、何とも言えませんが。

  • 「私は、この事を、文学というものは、君が考えているほど文学ではないだとか、文学を解するには、読んだだけでは駄目で、実は眺めるのが大事なのだ、とかいう妙な言葉で、人に語った事がある。」(小林秀雄『井伏君の「貸間あり」』)

    著者は国語学者であり、特に「文体論」を専門とする。
    明治以降、現代までの日本の作家、30人を選び、いかにもその人らしい文章を挙げて、その文体について解説している。
    内田百閒、志賀直哉、小川洋子、谷崎潤一郎、小沼丹、梶井基次郎、川端康成、夏目漱石、永井龍男、井伏鱒二など。多彩で錚々たる顔ぶれである。

    文章、特に小説を読むときは、何となくふわりとイメージで読んでいることがあるが、その陰には、作家のたくらみがあり、技巧がある。全体の印象をぼんやりと感じるばかりではなく、背後のテクニック、例えば視点の置き方や比喩の仕方、言葉の語感などに注目していくと、それぞれの作家に固有の「文体」が見えてくる。こうした「文体」が作品に奥行きを生んでいく。
    取り上げた作家の中には、著者が雑誌の連載企画の際に、直接訪問し、言葉を交わした人もある。そうした人に関しては、作品だけでなく、その際の会話や作家の人となりにも触れている。小林秀雄、吉行淳之介、井伏鱒二、庄野潤三といった、昭和の人々が主だが、これもまた作家の素顔や時代の空気を垣間見せて興味深い。
    一文の解説の中に他の作家の文も取り上げられ、その比較から、作家の「文体」が立体的に浮かび上がってくる。

    冒頭に挙げたのは本書でも最初に取り上げられている小林秀雄の一文である。一度読んだだけではすっと理解できないような、いかにも「らしい」文章である。読む方も腰を据えてがっぷり四つに組む気合いがいる。

    「猛烈な沈黙」、「鏡の余白に澄む秋の水色」といったはっとするような比喩、「冷たい瓦の上に一つ残った(蜂の)死骸」、「お母さんの大きな下駄」、「街にあふれた黄色い光(の中を過ぎていく白い一条の雨)」といった情景描写。
    反復や畳みかけるような順序が生むおかしさや悲しさ。芳醇なオノマトペ。書かない部分を残すことで生まれる余韻。
    読者をぐっと引き込む冒頭。そして物語を記憶に留めさせるラストシーン。

    作品を読むときは何だか「主題」に注目してしまいがちだが、やはりそれを描く「筆」というものがあるのだな、と思う。
    絵画のタッチ。映画のカメラワーク。ときにはそんな役割も、アクロバティックに果たすことができるのがことばの力であるのかもしれない。

    日本語の口語で書かれた文芸は明治期以降と思えば、さして古いものではない。
    口語は意外に「若い」もの、まだ可能性があるものと見ることもできる。
    何だか幸田文のしゃきっとした文章が読みたくなる。
    川端の「曖昧さ」に身を浸してみたくなる。
    漱石の諧謔を味わい直してみたくなる。
    少し醒めた目でじっくり読んでみると、これまで見えていなかった豊穣な世界が広がっていたことに気付きそうな、そんな文学案内である。

  • 太宰とか川端とか夏目とかの日本の名作の素晴らしさを解説

    比喩とか冒頭の一文とか何気なく読んでいたが、解説されると何となく良さがわかった

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