読書と日本人 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
3.43
  • (4)
  • (8)
  • (13)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 151
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316268

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 本来読み書きというのは、男性のみが行うことだった。
    「男もすなる日記を、女もしてみん」と書いたのは男である紀貫之だったけど、それでひらがなが広まったというよりも、「女が書くところのひらがなを、男も書いてみん」というところなのではないかと私は思っている。
    丸文字とかギャル文字など、若い女性は大昔もきっと、自分たちに通じる独自の文字を開発したのではないかと。

    本が…というか、紙が貴重だったころは、数少ない本を貸したり借りたりして書き写すものだった。
    その頃の大ベストセラー『源氏物語』
    日本の家屋は寝殿造といって、広い板の間だけの建物を衝立で細かく仕切って使うような作りだったので、ひとりの時間をゆったり過ごすなんてことは貴族でもできなかった。
    本(巻物)を持っている人は、得意満面でみんなの前で読み(たぶん音読)、本を読む人はあこがれの的だったのではないだろうか。

    個室ができたのは室町の頃、書院造になってから。
    狭くても壁やふすまで仕切られた部屋に、床の間や違い棚があり、そこで書を読む。
    ようやく今の読書のイメージに近くなってくる。

    江戸時代の寺子屋、明治の「学制」頒布による初等教育などにより日本人の識字率は高かった。

    “[人力車の車夫や全身に入れ墨をほどこした馬丁や]さらにどんな店でも茶店でも見かける娘たち―彼らがみんな、例外なく何冊もの手垢にまみれた本を持っており、暇さえあればそれをむさぼり読んでいた。”
    これは、明治維新の頃来日したロシアからの亡命者の書いた本からの一節。

    印刷機の普及、西洋からの文学や哲学、自然科学の本の流入などにより、出版される本は江戸時代とは比べ物にならないほど増える。

    しかし今、若者の活字離れが言われ、その若者よりも本を読まない高齢者が増えているという。
    電子出版が増え続ければ、紙の本などそのうちなくなってしまうのではという悲観論もある。

    ストーリーやトリックなどの目新しさを楽しむ、再読には向かない本はどんどん電子化すればいいと、個人的には思っている。
    あと、教科書も電子化すればいいと思う。
    タブレット一個に全教科を入れておけば、ランドセルも軽くなるし、忘れ物も減るだろう。
    少子化なんだし、国ががんばって補助をすればいい。

    本を読んでほしいと出版社が痛切に思うのなら、すべての本にルビを振ればいいと思う。
    そうしたら、想定した読者年齢より若い子も難しい本を読むことができるし、難しい本を読むことができた子は、本を好きになると思うのだ。
    難しい漢字をひらがなで書くのではなく、漢字にルビを振る。
    意味は分からなくても、読んでいるうちに何となく理解できる。
    そうやって知識は増えていくものなのでは?

    文字だけではなく行間も含めて、装丁や手触りやインクのにおいや、そういうものをすべて含めて読書の楽しみと思う人たちのために、紙の本も残してほしいなあ。

    今や本は文化の中心ではなくなっているかもしれないけれど、多様化する趣味の世界の片隅で、本への愛を叫ぶ人はきっといる。
    これからも、ずっと。

  • ●→本文引用

    ●「じぶんの本棚に好きな本がならんでるのを見ていると、なんとなく安心するんです」「本って記憶ですよね。夕方、どこかの町の喫茶店の窓際の席であの本を読んだなとか、本にはそれを読んだときの記憶がくっついてるでしょ」なのにインターネット経由、ケータイやスマートフォンで読む本(つまり電子本)には、そうした一切が欠けている。あれはやっぱり読書とは言えないんじゃないですか、というのですね。だから、やはり津村のいう「体を伴った読書」なのですよ。<紙の本>は一点一点が別の顔、べつの外見をもっている。しかし<電子の本>では、すべての表現が特定の企業や特定の技術者がつくったハードやソフトの平面に均されてしまう。

    近世の書見台での読書や素読は、遅読論でも述べられていた。

  • 読書とは、どういうスタイルで読むものか。

    紙の普及や、家の作り、文化の移り変わりによって読書が意味する姿勢もまた変化する。
    そういったことを意識してこなかったので、『更級日記』から始まる本書になるほど、と頷かされた。

    これって、海外ではどうなんだろう?

  • 本には2つの顔がある。1つは商品としての顔、もう1つが公共的な文化資産としての顔。図書館あhその本から商品性をはぎとって、されもが自由に利用できる公共的な文化資産として扱う。だから書店では金を払って購入しなければならない本も図書館に行けばただで読めてしまう。この2つの顔の実現不可能とも思える共存を出版社と図書館の双方が揃って公に承認した。見知らぬ人たちとともに本を読むという20世紀的読書の基盤には、1つにはこうした二重性を許す寛容さと大胆な制度的決断があった。

  • 黙読と音読。
    その違いを俯瞰する。

  • 編集者、評論家出身、和光大学名誉教授の津野梅太郎(1938-)による、日本の読書史。

    【構成】
    Ⅰ 日本人の読書小史
    1 はじまりの読書
    2 乱世日本のルネサンス
    3 印刷革命と寺子屋
    4 新しい時代へ

    Ⅱ 読書の黄金時代
    5 二十世紀読書のはじまり
    6 われらの読書法
    7 焼け跡からの再出発
    8 活字ばなれ
    9 <紙の本>と<電子の本>

    本書は構成の通り、前後半で内容が二分されている。
    前半は平安時代からはじまる日本の読書習慣の形成過程である。

    『更級日記』の菅原孝標娘とその先祖にあたる右大臣・菅原道真の二人を取り上げて、一人で部屋にこもって黙々とストーリーを愉しむ「小説読み」と、オープンスペースで学究的に複数の書物と首っ引きで読む「学者読み」の源流を見いだす。

    筆者は、自室でゆっくりと本が読めるようになる時期、そして書物の読み手が爆発的に増えた時期を、書院造が発達した室町時代だとする。そこには読書空間だけでなく、印刷技術の飛躍的進歩が寄与している。
    「五山版」で培った木版印刷原板の彫刻技術が「きりしたん版」に受け継がれ、江戸時代末期に漢字かな混じりの木版印刷が行われ、安価で大量の書物が世に出回った。これが江戸期の庶民向けの読本隆盛につながっていくわけだが、明治に入るとこれが、洋紙への金属活字による活版印刷へ切り替わっていく。
    面白い指摘だったのは、江戸期には複数の文字を続ける「続け字」までも活字にして組んでいたので、手書きと同じ程度に読み進めづらい印刷だった。しかし、明治に入ると、活字が一文字ごとに切り離され、文字の字体の揺れがなくなり、読書のスピードが上がったという。

    後半は、二十世紀が読書の黄金時代であった、という作者の思いを、自らの読書体験にひきつけながら語られる。大正期の大衆総合雑誌の発刊にはじまり、大正期に「円本」として売られた各種文学全集の量産、大学生を中心とした教養主義の隆盛が、戦火を経ても戦後の出版文化を支えた。十分な量・質の出版物が世に出され、中流家庭にはかなり後半にそういった本が配架された本棚が据えられることになった。

    その後の話は、紋切り型となる。1970年代に入ると、教養主義で称揚されていたようなアカデミックであったり古典的な「かたい本」は衰退し、小説やエッセーといった「やわらかい本」が中心となっていく。
    「やわらかい本」や雑誌が「かたい本」を凌駕し、そしてさらに「紙の本」に対して「電子の本」が出回るのが現在。活字離れ論から電子書籍の立ち位置を敵対的なものにせず、活用していくのはこれからというあたりで締めくくり。

    後半は、竹内洋『教養主義の没落』の劣化版という印象だが、竹内の著書は「かたい本」だが、本書は語り口も含め「やわらかい本」であるので、竹内本がとっつきにくい人にはよいのだろう。

    本書で語られている歴史がどれほど実態に即しているのかわからない。

    ただ、二十世紀という時代が読書習慣の形成という意味で、画期的な時代であったという切り口は面白いと感じたし、納得できる。

  • 源氏物語から電子書籍まで。
    それを一つにまとめられるなんて。脱帽。

  • 日本列島上の読書行為を史的に遡及・確認してゆくという展開がいささか意外だった。紙本と電子本の共存、読書の必要性を確認する、……結論に至るまでの散策路が読者側に想像を誘う。図書館本。143

  • 最初の方はとってつけたもので借り物のような議論であったが、昭和になってきて俄然著者の主張が生きてきた。

  • 読書と日本人の関係、そしてその変容の歴史を書いた図書。
    本には二つの顔があり、ひとつは商品の顔。もうひとつが文化資産としての顔。これが今や図書館も書店も商品の顔を重視してしまっているという主張は納得した。
    読書史ってあんまり研究されていないのかぁ…
    本と異なるメディアとかも混じるしなぁ…

全13件中 1 - 10件を表示

読書と日本人 (岩波新書)のその他の作品

読書と日本人 (岩波新書) Kindle版 読書と日本人 (岩波新書) 津野海太郎

津野海太郎の作品

ツイートする